採用書類の保管期間に迷ったら読む廃棄手順ガイド

採用書類の保管期間に迷ったら読む廃棄手順ガイド 採用・定着
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引き出しの奥に、去年の採用選考で集めた履歴書が10枚ほど残っている——そんな状況、心当たりはありませんか。「もう捨てていいはずだけど、どう捨てればいいのか」「採用した人の書類はいつまで持っておくべきか」。専任の人事担当者がいない会社では、こうした判断が後回しになりがちです。この記事では、採用書類の保管期間と安全な廃棄手順を、法的根拠とあわせて実務目線でわかりやすく解説します。

不採用者の履歴書をいつまで持っていてよいか

不採用が確定した時点で、履歴書などの採用書類を保有し続ける法的な根拠は原則として失われます。実務では、選考終了後おおむね3〜6ヶ月以内の廃棄が目安とされています。

個人情報保護法が根拠になる理由

個人情報保護法は、個人情報を「利用目的の達成に必要な範囲」を超えて保有することを禁じています(利用目的による保有制限の原則)。採用選考という目的が終了した以上、不採用者の履歴書・職務経歴書を漫然と保持し続けることは、この原則に反します。法律条文に「不採用後〇日以内に廃棄せよ」という明文規定はありませんが、「目的外保有の禁止」が実質的な根拠となります。

3〜6ヶ月という目安の根拠

3〜6ヶ月という期間は、採用選考に関するクレームや紛争が持ち込まれる可能性を考慮した実務的な目安です。「なぜ不採用だったのか」「選考過程に問題があったのでは」といった問い合わせに対応するためには、一定期間は書類を手元に置いておく合理的な理由があります。ただし、それを超えて保有し続けると、個人情報保護法上の問題が生じやすくなります。紛争リスクが解消されたと判断できた時点で、速やかに廃棄するのが適切な対応です。

例外的に保管が認められるケース

以下の条件を満たす場合は、不採用者の書類を一定期間保管することが正当化されます。

  • 「次回の募集時に改めてご連絡する場合があります」と採用応募時に明示し、応募者から同意を得ている
  • 選考に関する紛争やクレームの対応が継続中で、証拠として保管する必要がある

同意を得ずに「候補者プール」として保管し続けることは認められません。応募フォームや求人票に明記しておくのが最も安全な方法です。

採用者の書類は法令ごとに保管期間が異なる

採用が決まり入社した従業員の書類は、複数の法令によって保管期間が定められています。書類の種類によって根拠法令と期間が異なるため、一律に扱うことはできません。

主要書類の保管期間一覧

書類の種類 根拠法令 保管期間
雇用契約書・労働条件通知書 労働基準法第109条 退職後3年(経過措置)/将来的に5年
賃金台帳 労働基準法第109条 退職後3年(経過措置)/将来的に5年
タイムカード・出勤簿 労働基準法第109条 退職後3年(経過措置)/将来的に5年
雇用保険関係書類 雇用保険法施行規則 退職後2年
健康保険・厚生年金関係書類 健康保険法施行規則等 退職後2年
マイナンバー関係書類 番号法・特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン 法定保存期間経過後、速やかに廃棄
身元保証書 民法(消滅時効の観点) 保証期間満了後、最大5年程度

労働基準法の保管期間が延長された経緯

2020年の民法改正にともなう労働基準法第109条の改正により、雇用契約書・賃金台帳・出勤簿などの保管期間は、従来の3年から5年へ延長されることが決まりました。ただし、中小企業を含む現場の対応準備期間として、当面は3年の経過措置が設けられています。現時点では3年を最低ラインとして管理しつつ、将来的に5年へ移行する準備を進めておくことが望ましい対応です。

身元保証書の扱いに注意

身元保証書は2020年の民法改正により、期間の定めのないものは最長3年、期間を定めるものは最長5年と保証期間が制限されました。ただし、保証期間が終了しても紛争リスクが残る場合があるため、保証期間満了後も時効期間を考慮して保管しておくことが実務的には安全です。目安として、保証期間終了後5年程度を廃棄のタイミングとする会社が多くあります。

マイナンバーは通常の個人情報より厳しいルールが適用される

マイナンバーは「特定個人情報」として、通常の個人情報よりも厳格な管理と廃棄義務が課されています。「給与計算ソフトに入力したら終わり」ではなく、書類の保管と廃棄にも明確なルールがあります。

収集・保管できる目的は法律で限定されている

マイナンバーを収集・利用できる目的は番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)により限定されています。給与支払いにともなう源泉徴収事務、社会保険の手続きなど、法律に定められた目的以外での利用・保管は違法です。採用選考の段階でマイナンバーを収集することも、原則として認められていません。収集できるのは、内定後に雇用関係が成立してからです。

法定保存期間が終わったら速やかに廃棄する義務がある

番号法第28条は、特定個人情報(マイナンバーを含む個人情報)について、保存期間が終了した後は速やかに廃棄・削除する義務を事業者に課しています。通常の個人情報では「廃棄することが望ましい」という表現がとられることもありますが、マイナンバーに関しては廃棄は義務です。退職後2〜3年の法定保存期間が経過したら、確実に廃棄処理を行い、その記録を残しておくことが求められます。

中小企業で起きがちなマイナンバー管理のミス

専任人事がいない中小企業でよく見られるのが、「給与計算ソフトにマイナンバーを入力した後、紙の収集票をそのまま引き出しに放置している」というケースです。ソフトへの入力が完了した後も、紙の書類は別途、安全な方法で廃棄しなければなりません。また、退職した従業員のマイナンバーが登録されたままのシステムを放置しているケースも問題です。退職後、法定保存期間が経過したらシステム上からも削除する運用を確立しておくことが必要です。

紙・電子データの安全な廃棄方法

採用書類の廃棄は「捨てた」という事実だけでなく、「情報が復元できない状態で廃棄した」という実績が求められます。紙と電子データでは、それぞれ適切な廃棄方法が異なります。

紙書類の廃棄方法と選び方

紙書類の廃棄方法として現実的な選択肢は、シュレッダー処理と機密文書廃棄業者への委託の2つです。シュレッダーを使う場合、ストリップカット(縦方向のみの裁断)では復元リスクが残るため、クロスカット以上の機種を使用することが推奨されます。マイナンバー関係書類については、特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドラインでも「確実な廃棄」が求められており、マイクロカット対応シュレッダーを使う、または業者委託を選ぶのが安全です。業者に委託した場合は、廃棄証明書(処理証明書)を必ず受領し、保管しておきましょう。万一、情報漏えいのトラブルが発生した際の証拠になります。

電子データの廃棄で見落としがちなポイント

電子データは「ファイルを削除する」「ごみ箱を空にする」だけでは廃棄したことになりません。OSの仕組み上、削除したデータは一定期間、専用のソフトウェアで復元できる状態にあります。確実な廃棄のためには、データ消去専用ソフトを使って上書き消去する、または専門業者にストレージごと廃棄を依頼するという対応が必要です。クラウドサービスに保存している場合は、そのサービスの「完全削除」機能を確認し、バックアップ領域も含めて消去されているかどうかを確認してください。

廃棄コストを抑えながらリスクを下げる現実的な対応

コストをかけたくない場合でも、最低限のルールを守ることでリスクを大きく下げることができます。まず、マイナンバーを含む書類と通常の採用書類を分けて管理し、マイナンバー関係のみ厳格な方法で処理するという区分け対応が有効です。業者委託が難しい場合は、クロスカットシュレッダーへの投資を検討してください。数万円の初期費用で、情報漏えい時の損害リスクを大幅に低減できます。また、廃棄の記録(日付・対象書類・処理方法)を簡単な台帳に残しておくだけでも、万一のトラブル時に組織としての対応姿勢を示す証拠になります。

書類管理のルール化と電子化対応

採用書類の保管・廃棄でミスが起きる根本的な原因は、会社としてのルールが存在しないことにあります。担当者が変わっても対応が一定水準に保たれるよう、簡単なルールを文書化しておくことが重要です。

最低限決めておくべき社内ルール

大がかりな規程を作る必要はありません。以下の点を1枚のフォーマットにまとめておくだけで、対応品質は大きく変わります。まず、書類の種類ごとに保管期間の一覧を作成し、担当者が誰でも確認できる場所に置くことです。次に、廃棄のタイミングと方法(シュレッダー/業者委託)を決め、廃棄後に記録を残す運用を定めます。最後に、保管場所(引き出し・キャビネット・クラウドなど)と、その場所へのアクセス権を持つ人を明確にしておきます。これだけでも「なんとなく保管」という状態からは大きく前進します。

紙をスキャンしてPDFにした場合の原本の扱い

電子化(スキャン・PDF保存)を進めている会社で多い疑問が、「原本の紙を捨ててよいか」という点です。結論として、スキャンしたからといって自動的に紙の原本を廃棄できるわけではありません。雇用契約書など法令上の保存が求められる書類については、電子帳簿保存法の要件を満たした形式での電子保存が認められている場合に限り、紙の原本に代えることができます。要件を満たさない電子データは「控え」として扱われ、紙の原本も引き続き保管が必要です。電子化を検討する際は、対象書類が電子保存の要件を満たせるかどうかを事前に確認してください。

まとめ

採用書類の保管期間と廃棄方法を整理すると、不採用者の書類は選考終了後おおむね3〜6ヶ月以内の廃棄が目安、採用者の書類は書類の種類ごとに2〜5年の保管義務があること、マイナンバーは法定保存期間後の廃棄が義務であることが主なポイントです。廃棄方法は紙ならクロスカット以上のシュレッダーまたは業者委託、電子データは専用の消去ツールや業者対応が必要です。「なんとなく保管している」という状態を続けることは、個人情報保護法上のリスクに直結します。

ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業が抱える人事労務の実務課題について、具体的な相談に対応しています。「うちの会社の書類管理、このままで大丈夫か確認したい」「廃棄方法について詳しくアドバイスがほしい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 不採用者の履歴書を返送しないで廃棄してもよいですか?

A. 応募時に「返送不要」「廃棄する旨」を明示している場合は、廃棄で問題ありません。ただし、応募者から返送を求められた場合には速やかに対応する必要があります。返送・廃棄の方針は求人票や応募フォームに事前に明記しておくことで、後のトラブルを防げます。

Q. 雇用契約書の保管期間は3年と5年のどちらですか?

A. 労働基準法第109条の改正により、本来は5年に延長されましたが、現在は経過措置として3年が適用されています。実務上は退職後3年を最低ラインとして管理しつつ、将来的な5年への移行を見据えた運用を準備しておくことが望ましい対応です。

Q. マイナンバーの収集票は給与計算ソフトへの入力後に捨ててよいですか?

A. ソフトへの入力が完了した後も、紙の収集票はシュレッダーや業者委託などの安全な方法で廃棄する必要があります。そのまま引き出しに放置することは、特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドラインに反する状態です。廃棄した日付と方法を記録に残しておくことも合わせて行ってください。

Q. 採用書類をスキャンしてPDFで保存すれば、紙の原本を捨ててよいですか?

A. スキャンしただけでは原本の廃棄は認められません。電子帳簿保存法の定める要件(タイムスタンプの付与、解像度・ファイル形式の要件など)を満たした形式での電子保存が確認できた書類に限り、紙の原本に代えることができます。要件を満たさない電子データは控えとして扱われ、紙の保管義務は継続します。

Q. 過去の採用書類をまとめて廃棄したいのですが、どこから手をつければよいですか?

A. まず書類を「不採用者のもの」「採用者(在職中)のもの」「採用者(退職済み)のもの」の3つに分類することから始めるのが効率的です。不採用者の書類は選考終了から3〜6ヶ月を超えているものを優先して廃棄します。退職済みの採用者の書類は書類の種類ごとに法定保管期間を確認し、期間を過ぎたものから廃棄処理します。マイナンバー関連書類は必ずシュレッダーまたは業者委託で処理し、廃棄記録を残してください。

【監修】ウェルセンス株式会社
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