外部研修の限界を感じたら考えたい内製化の始め方

外部研修の限界を感じたら考えたい内製化の始め方 組織運営
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「研修費が毎年かさんでいるのに、現場で活きている気がしない」——経営者や兼務の人事担当者から、こうした声を聞く機会が増えています。社員数が20名を超えたあたりから、外部研修の受講人数と回数が増え、気づけば年間の研修予算がかなりの額になっていた、というケースは珍しくありません。かといって「内製化しよう」と思っても、誰が教えるのか、何から始めればいいのか、見当がつかない。この記事では、外部研修と内製研修の使い分けの基準と、ノウハウのない中小企業が内製化を始めるための現実的なステップを整理します。

外部研修と内製研修、何が違うのか

外部研修と内製研修は「どちらが優れているか」ではなく、「何に向いているか」が異なります。この違いを理解することが、使い分けの出発点になります。

外部研修が得意なこと

外部研修の最大の強みは、専門知識を持つ講師から体系的なカリキュラムを受け取れる点です。ハラスメント防止、メンタルヘルス、労働法務、財務リテラシーなど、社内に教えられる人がいないテーマに向いています。また、社外の人間が講師を務めることで、社員が「外の視点」に触れられる効果もあります。公開型の集合研修に1〜2名を派遣するスタイルが多く、少人数の中小企業でも参加しやすい形式です。

内製研修が得意なこと

内製研修が力を発揮するのは、自社特有のルール・文化・業務フローを扱う場面です。入社時のオリエンテーション、自社の就業規則や業務マニュアルの説明、現場OJTのルール整備などは、外部の汎用カリキュラムでは対応できません。また、繰り返し実施する必要があるテーマ(新人の受け入れ、安全衛生教育など)は、内製化によって毎回の外部委託費を抑えられます。

20〜50名規模で起きやすいミスマッチ

この規模の企業でよく見られるのは、「汎用的な外部研修を全員に受けさせているが、内容が自社の実態と合っていない」というケースです。階層が経営者・リーダー・一般社員の3層程度しかなく、大企業向けに設計された「階層別研修」をそのまま適用すると、受講者が「自分ごとになりにくい」と感じやすくなります。外部研修を選ぶ際には、自社の規模・業種・文化に近い事例を扱っているかを確認することが重要です。

「内製=コスト削減」は本当か

内製研修は直接費用が下がりますが、担当者の工数と受講者の拘束時間を含めると、外部研修と大差ないケースがあります。内製化の判断は「安くなるか」ではなく「何が効率的か」で考える必要があります。

見えにくいコストを把握する

外部講師料や会場費がゼロになっても、内製研修には別のコストが発生します。教材の作成時間、担当者のファシリテーション準備、受講者が業務を離れる時間、これらをすべて合算すると、1回あたりのコストは想定より高くなりがちです。特に兼務担当者が教材作成を抱え込むと、本来の業務に支障が出るリスクがあります。

「内製向きのテーマ」と「外部向きのテーマ」を分類する

効率的な使い分けのために、まず自社の研修テーマを以下のような観点で整理することをお勧めします。

観点 内製向き 外部向き
専門知識の必要度 低い(自社ルール・業務手順) 高い(法改正・メンタルヘルス・財務等)
実施頻度 高い(毎月・入社のたびに実施) 低い(年1〜2回で足りる)
自社固有性 高い(自社の文化・プロセスが中心) 低い(汎用知識で対応できる)
受講対象者数 多い(全員・定期的に複数回) 少ない(代表者数名を派遣)

助成金を活用する前提で考える

厚生労働省の人材開発支援助成金は、要件を満たせば外部研修・内製研修のどちらにも活用できます。ただし、助成金を受けるためには訓練計画の事前届出、OJTの実施記録、受講証明書などの書類管理が必要です。研修を実施した後から書類を整備しようとすると間に合わないため、研修設計の段階から助成金の要件を意識することが実務上のポイントです。

法的に「やらなければならない」研修を把握する

研修の内製化・外部委託を考える前に、法令上の義務として実施が求められる研修を正確に把握しておくことが必要です。義務の有無を混同すると、知らないうちに法令違反のリスクを抱えることになります。

雇い入れ時の安全衛生教育(労働安全衛生法第59条)

新たに採用した労働者に対して、業務に関する安全衛生教育を実施することは労働安全衛生法第59条に定められた義務です。省略できない法定事項が定められており、内製・外部どちらで実施しても構いませんが、実施記録の保存が求められます。記録がないと行政の是正指導の対象になり得るため、「やった」だけでなく「記録として残っている」状態を維持することが重要です。

職長教育(労働安全衛生法第60条)

製造業や建設業など一定の業種において、新たに職長等の職務に就く者への教育が義務付けられています(労働安全衛生法第60条)。対象業種かどうかは業態によって確認が必要です。この教育も内製・外部いずれでも実施可能ですが、カリキュラムの内容・時間数に法令上の基準があります。

ハラスメント防止のための周知・啓発措置

パワーハラスメント防止措置は労働施策総合推進法、セクシュアルハラスメント防止措置は男女雇用機会均等法、マタニティハラスメント防止措置は育児・介護休業法によって、事業主の義務とされています。研修はその代表的な実施手段ですが、「年1回実施した」だけで安心してはいけません。管理職のみ受講して一般社員が未受講であったり、内容が形骸化していたりする場合、義務を果たしたとは言えないリスクがあります。「誰が・何を・いつ受けたか」を管理する仕組みが不可欠です。

内製研修を始めるための現実的なアプローチ

内製化は「全部やる」ではなく「小さく始めて仕組み化する」が成功の鍵です。まず最初に取り組むべきは、繰り返し発生していてすでに社内に知見があるテーマの標準化です。

入社時オリエンテーションを最初の題材にする

内製化の第一歩として取り組みやすいのが、入社時オリエンテーションです。自社のルール・文化・業務フローを説明するこのプログラムは、外部に委託できない性質のものであり、採用が続く限り繰り返し必要になります。まず「いつも口頭で説明していること」をスライドやチェックリストに書き起こすところから始めてみてください。担当者が変わっても同じ内容を伝えられる状態にすることが、最初の目標です。

社内講師を育てる前に「教材」を先に作る

「社内に教えられる人がいない」という悩みに対して、最初から講師を育てようとするとハードルが上がります。まず教材(スライド・マニュアル・動画など)を先に整備し、それを使って経営者や管理職が話す形にするのが現実的です。教材があれば、担当者が替わっても研修の品質が一定水準以下に落ちにくくなります。また、外部研修で得た知識を社内に展開する「勉強会形式」を活用することも有効です。外部研修に派遣した社員が帰社後に内容を共有する場を設けることで、1人分の投資を組織全体の学びに変えられます。

記録と効果測定の仕組みを最初から設ける

研修を実施したら必ず記録に残す習慣をつけてください。記録すべき最低限の項目は「実施日・テーマ・受講者氏名・実施者(講師)名」です。これは法的義務の観点からも必要ですし、助成金申請の際の根拠にもなります。さらに、研修後のアンケートや一定期間後の行動観察など、簡易的な効果測定を加えることで、次回の研修計画に根拠を持たせることができます。「去年と同じメニューで」から脱するための第一歩は、記録の蓄積です。

複数の判断が必要な研修体制の整備は、人事だけで抱え込まず専門家に相談することで、より実用的な計画立案が可能です。

外部研修を活かし切るための工夫

外部研修を継続する場合も、受講させて終わりにしない工夫で費用対効果は大きく変わります。研修の効果は「受講中」よりも「受講後の現場」で決まります。

派遣前に「目的と期待」を明確にする

外部の公開研修に社員を派遣する前に、「なぜこの研修を受けてもらうのか」「受講後に何が変わることを期待しているか」を本人と事前に話し合ってください。目的が曖昧なまま受講させると、研修の内容が個人の体験で終わり、組織への還元がなくなります。特に1〜2名を派遣する形式では、受講者が帰社後に知識・気づきを社内に伝える役割を担うことを最初から設定しておくことが重要です。

受講後の「共有の場」を制度化する

外部研修から戻った社員が、チームや全社に向けて学びを共有する15〜30分程度の場を設けることを仕組みとして組み込んでください。発表の準備をすることで受講者自身の理解も深まり、社内への知識移転(トランスファー)が促進されます。この仕組みは、大きなコストをかけずに研修投資の波及効果を高める最も手軽な方法の一つです。

「何が現場で活きていないのか」その原因特定と改善施策の立案なら、ウェルセンス株式会社がサポートできます。初回相談でまず状況をお聞きします。

まとめ

外部研修と内製研修の使い分けは、「コストの安さ」ではなく「テーマの性質・実施頻度・自社固有性」で判断することが基本です。法令上の義務(労働安全衛生法第59条・第60条、ハラスメント防止措置など)を把握したうえで、義務的な研修を確実に記録・管理しながら、汎用的なテーマは外部、自社固有のテーマは内製という分類を進めていくことが現実的なアプローチです。内製化は「全部やる」ではなく、入社時オリエンテーションのような繰り返し発生するテーマから教材を整備し、小さく仕組み化することから始めてください。

ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・兼務担当者の方々から、研修体制の整備やメンタルヘルス対応に関するご相談をお受けしています。「何から手をつければいいかわからない」という段階からでも、状況を整理するところからお手伝いできます。まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 社員が30名程度ですが、内製研修を始めるには専任担当者が必要ですか?

A. 専任担当者がいなくても始められます。まず入社時オリエンテーションのように、繰り返し発生していてすでに口頭で説明しているものをスライドやチェックリストに書き起こすところから着手してください。兼務担当者でも「教材の整備」から入れば、準備の負担を分散できます。

Q. ハラスメント防止研修は年1回やっていれば法的に問題ないですか?

A. 回数だけで義務を果たしたとは言えません。労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法・育児介護休業法が定める措置義務は、研修の実施に加えて「誰が受けたか」の記録管理、内容の妥当性、全社員への周知が求められます。管理職のみ受講で一般社員が未受講の場合や、内容が形骸化している場合はリスクが残ります。

Q. 人材開発支援助成金は内製研修でも使えますか?

A. 要件を満たせば内製研修(OJT含む)でも活用できます。ただし、訓練計画の事前届出・実施記録・受講証明などの書類が必要で、研修実施後から整備しようとすると間に合わないケースがあります。助成金の活用を検討する場合は、研修設計の段階から社会保険労務士等に相談することをお勧めします。

Q. 外部研修に社員を派遣しても、現場で活かされない気がします。何が問題でしょうか?

A. 「トランスファー問題」と呼ばれる課題です。研修で得た知識が現場に移転されないまま個人の体験で終わるケースは多くあります。対策として、派遣前に受講目的と期待成果を本人と話し合い、帰社後に社内で学びを共有する場(15〜30分程度の報告会など)を仕組みとして組み込むことが有効です。

Q. メンタルヘルス研修は外部に任せた方がいいですか、内製できますか?

A. メンタルヘルスの基礎知識(セルフケア・ラインケアの考え方)は専門性が求められるため、最初は外部講師に依頼する方が安全です。一方、「不調のサインに気づいたときの社内の連絡・相談フロー」などは自社固有の内容になるため、外部研修と組み合わせて内製部分を補う形が現実的です。従業員50名未満はストレスチェックが義務でなく努力義務ですが、研修と組み合わせてメンタルヘルスへの感度を高めておくことが望まれます。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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