支える側が潰れる前に知る3つの組織対応の切り替えサイン

支える側が潰れる前に知る3つの組織対応の切り替えサイン メンタルヘルス対応
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「あの社員、最近どうも元気がないと思ったら、ずっと同僚のフォローをしていたらしくて…」。そんな事後発覚のエピソードを、経営者や人事担当者からよく耳にします。メンタル不調者を支える側の社員が、静かに、しかし確実に消耗していく。気づいたときには「2人目の休職者」が出ていた——そうなる前に、組織として動くための判断基準を持っておく必要があります。この記事では、支える側が潰れる前に見落としがちな3つの切り替えサインと、その対応策を実務的に解説します。

「支える側の疲弊」が見えにくい本当の理由

非公式の「支え役」は組織図に現れない

メンタル不調者が出たとき、その人の隣の席にいる同僚や直属の上司が、自然と「支え役」になるケースがほとんどです。これは会社から正式に任命されるわけではなく、日常のやり取りの中でじわじわと役割が固定していきます。経営者や人事担当者の目には見えにくく、気づいたときには支え役の社員が深刻なストレス状態に陥っていた、という事後発覚パターンが典型的です。

「頑張ってくれている人」を放置してしまう構造

支え役になっている社員は、多くの場合「自分が何とかしなければ」という責任感から動いています。そのため「大丈夫?」と聞かれても「大丈夫です」と答えてしまいがちです。管理する側も、「うまくやってくれている」と誤認してしまう。この構造が、支え役の疲弊を見えにくくしている根本原因です。少人数の職場では、たった1人が消耗するだけで業務の質と雰囲気が大きく変わります。支える側を守ることは、組織全体を守ることと同義です。

「共感疲労」というリスクを知っておく

不調者をそばでフォローし続けることで支え役が受けるストレスは、専門的には「共感疲労(Compassion Fatigue)」や「セカンダリーストレス(二次的ストレス)」と呼ばれます。自分自身が直接つらい経験をしていなくても、他者の苦しみに長期間寄り添うことで心身が消耗していく状態です。厚生労働省の「職場における心の健康づくり指針」でも、職場環境の改善と管理職による部下のケア(ラインケア)の重要性が示されており、支え役への対応は会社の義務的観点からも無視できません。

見落とすな——組織対応に切り替えるべき3つのサイン

サイン1:支え役の業務パフォーマンスが落ち始めた

以前は納期通りにこなしていた業務に遅れが出始めた、ミスが増えた、会議中の発言が減った——こうした変化は、支え役社員が認知的・感情的なリソースを使い果たしつつあるサインです。「本人の体調問題では?」と見過ごしがちですが、不調者のフォローを始めた時期と重なっている場合は要注意です。パフォーマンスの低下は、疲弊の末期ではなく中期以降から現れます。この段階で動けるかどうかが、2人目の休職を防ぐカギになります。

サイン2:フォロー期間が2か月を超えている

個人の気遣いや善意で成り立つフォローには、持続できる限界があります。経験上、2か月を超えると支え役社員の負担は急速に蓄積されやすくなります。目安として、不調者が通院・療養を始めてから2か月が経過しても「周囲の特定の1~2名に頼りきりの状態」が続いているなら、組織として正式に関与を始めるタイミングです。「うまくやっているから大丈夫」ではなく、「2か月経ったから確認する」という機械的な判断軸を持つことが現実的です。

サイン3:支え役が『私は大丈夫』を繰り返すようになった

心配して声をかけたときに「大丈夫です、気にしないでください」という言葉が続くようになったら、むしろ警戒が必要です。これは「もう限界ですが、言える状況ではない」という心理的なサインであることが多い。責任感の強い社員ほど、自分の疲弊を認めることができません。「大丈夫」という言葉の裏にある状態を組織として読み取り、判断する仕組みが必要です。

「個人の気遣い」から「組織対応」に切り替える実務ステップ

支え役が誰かを特定して記録する

組織的な対応の第一歩は、「誰が非公式にフォロー役を担っているか」を経営者・人事担当者が把握することです。チームリーダーや直属の上司にヒアリングし、名前・関わり方・期間を記録しておきましょう。この記録は、後に対応の適切さを証明する意味でも重要です。労働契約法第5条の安全配慮義務は、不調者だけでなく、その周囲でフォローしている社員にも適用されます。「本人が自発的にやっていた」では、会社の責任は免れません。

声のかけ方を工夫して状態を確認する

「大丈夫?」という直接的な問いかけは、支え役社員にプレッシャーを与えかねません。代わりに「最近の仕事量、無理になっていないか確認したくて」「あなた自身のことが心配で」という形で、業務の文脈から入るアプローチが有効です。また、「〇〇さんの件とは別に、あなた自身の調子を聞かせてほしい」と明示することで、当事者社員への批判と受け取られるリスクも下がります。声かけは1回だけではなく、2~3週間ごとに継続することが大切です。

外部リソースを「支える側」にも使う発想を持つ

EAP(従業員支援プログラム)や産業医面談は、不調者本人のためのリソースという認識が一般的ですが、支え役社員にも同様に活用できます。「少し話を聞いてもらえる場所があるよ」とカジュアルに案内するだけでも、支え役社員の心理的な負荷を下げる効果があります。「大げさに思われないか」という躊躇はよくある懸念ですが、外部の専門家への相談を日常的なこととして位置づける職場文化が、心理的安全性を育てます。

2人目の休職を出さないための組織設計の考え方

フォロー役を1人に集中させない仕組みを作る

誰か1人に不調者のフォローが集中する状態は、構造的なリスクです。可能であれば、フォロー役を複数名で分担する体制を意図的に設計しましょう。たとえば「Aさんが業務面のサポート、Bさんが日常の声かけ」と役割を分けることで、1人あたりの負担が軽減されます。20~50名規模の職場では難しく感じるかもしれませんが、「全員が少しずつ関わる」という形にするだけで、特定の誰かへの集中を防げます。

復職時にも「支え役への負荷集中」が再発しやすい

厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」でも、復職支援においてチーム全体の業務分担調整が重要だと示されています。休職者が復職する際、「あの人なら慣れているから」と再び同じ支え役に任せてしまうケースが多いですが、これが再燃の火種になります。復職支援の計画を立てる段階から、支え役社員の業務量や精神的余裕を確認する工程を組み込むことが、組織全体の安定につながります。

ストレスチェックを「支え役の発見ツール」として活用する

従業員50名未満の企業ではストレスチェック(労働安全衛生法第66条の10)は努力義務ですが、任意で実施することで支え役社員のストレス状態を早期に把握するツールになります。集団分析を活用すれば、特定のチームや部署に負荷が集中していることが数字として見えやすくなります。「感覚ではなくデータで判断できる」という点で、経営者・人事担当者にとって動きやすい根拠にもなります。年1回ではなく、半年ごとの実施も検討してみてください。

職場の心理的安全性と「支え側のケア」はセットで考える

「助けを求められる文化」が支え役を守る

心理的安全性が高い職場では、支え役の社員も「つらい」と言いやすくなります。逆に、「弱音を吐くと評価が下がる」「頑張っている人が損をする」という空気があると、支え役は消耗するまで声を上げられません。日頃から「大変なときは言ってほしい」という姿勢を経営者や人事が示すこと、そして実際に声を上げた社員を否定しない対応を積み重ねることが、心理的安全性の土台になります。

「支える人を支える」という視点を制度化する

気遣いや感謝の言葉だけでなく、業務量の調整・相談窓口の案内・外部専門家へのアクセス提供など、具体的な支援を制度として用意することが重要です。「あなたのことを会社として気にかけている」というメッセージを、言葉ではなく行動で示すことが、支え役社員の安心感につながります。小規模な会社であっても、「困ったときに相談できる外部の窓口がある」という事実だけで、支え役の精神的な余裕は大きく変わります。

まとめ

支える側の社員が疲弊するのは、意志や体力の問題ではなく、組織としての仕組みが整っていないことが根本にあります。「パフォーマンスの低下」「フォロー期間が2か月超」「『大丈夫』を繰り返す」という3つのサインを見落とさず、個人の善意に頼りきった状態から組織主体の対応へ切り替えることが、2人目の休職を防ぐ最短ルートです。安全配慮義務の観点からも、支え役社員は明確に会社の配慮対象です。「何かあってから動く」では遅い——そう感じているなら、まずは現状を専門家と一緒に整理してみることをおすすめします。

ウェルセンス株式会社では、支える側・支えられる側の双方を含めた組織対応の設計を、経営者・人事担当者と一緒に考えています。支え役社員の疲弊を防ぐための具体的な施策や、メンタルヘルス対応の体制づくりについて、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 支え役の社員が「大丈夫」と言っている間は、様子を見ていていいですか?

A. 「大丈夫」という言葉を額面通りに受け取ることは危険です。責任感の強い社員ほど、自分の疲弊を認めにくい傾向があります。フォロー開始から2か月が経過している、業務のミスや遅れが出ている、発言が減ったなどのサインがあれば、言葉ではなく状態で判断してください。「言ってくれないから大丈夫」ではなく、「言えない状況かもしれない」という前提で関わることが大切です。

Q. 支え役の社員に「負担を減らしたい」と伝えると、不調者への批判と受け取られませんか?

A. 伝え方を工夫することで、その誤解を避けられます。「あなた自身の業務量が増えていることが気になっている」「会社全体でサポート体制を整えたい」という形で、当事者社員の問題としてではなく、組織の課題として伝えることがポイントです。支え役への声かけは、不調者への評価ではなく、あなた自身へのケアであることを明確にしましょう。

Q. 従業員が30名以下でもストレスチェックは役に立ちますか?

A. はい、有効です。50名未満の企業では法律上の義務はありませんが、任意で実施することで個々の社員のストレス状態を客観的に把握できます。特に、不調者が出たタイミングで周囲の社員にも実施することで、支え役になっている社員の状態を早期に発見するきっかけになります。実施コストも低く、外部の専門機関に依頼することも可能です。

Q. 支え役社員が不調になった場合、会社は法的な責任を問われますか?

A. 可能性はあります。労働契約法第5条の安全配慮義務は、すべての労働者が対象であり、不調者のフォローをしていた社員も含まれます。「本人が自発的にやっていた」「気づかなかった」という事情は、会社の責任を完全には免除しません。支え役社員の業務量の変化や相談対応の記録を残しておくことが、会社側の適切な対応の証拠にもなります。対応に迷う場合は、専門家に相談することをおすすめします。

Q. 専任の人事担当者がいない会社でも、組織的なサポート体制は作れますか?

A. 作れます。大切なのは「仕組み」と「外部リソースの活用」です。社内でできることは、支え役が誰かの把握・定期的な声かけ・業務量の記録の3点から始めるだけでも大きく変わります。それ以上の対応——専門的な状態アセスメントや相談窓口の設置——は、外部の専門機関に委ねることで、兼務人事担当者の負担を増やさずに体制を整えることができます。一人で抱え込まず、外部に頼る視点を持つことが重要です。

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【監修】ウェルセンス株式会社
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