キャリア面談で「合わない」と気づいたときの3つの対処法

キャリア面談で「合わない」と気づいたときの3つの対処法 採用・定着
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キャリア面談の場で、社員からこんな言葉を受け取ったことはありませんか。「正直に言うと、自分のやりたいことと会社の方向性が合っていないと感じていて……」。その瞬間、頭の中が真っ白になった、あるいは「どう返せばいいんだろう」と焦った経験のある方は少なくないはずです。

専任人事がいない中小企業では、面談スキルを体系的に学ぶ機会もなく、その場の対応がそのまま社員の会社への信頼に直結します。しかし、難しく考える必要はありません。この記事では、キャリア面談で「合わない」と気づいたときに取るべき対処法を、受け止め方の整え方・背景の分類・面談後のフォローという実務的な順序で整理します。

「合わない」を聞いたとき、まず受け止め方を整える

キャリア面談で「合わない」と打ち明けられたとき、最初にすべきことは「退職フラグ」として処理しないことです。社員が面談の場で本音を話せたこと自体、まだ会社への期待が残っているサインと捉えてください。

「どうせ辞める気だろう」という先読みが関係を遠ざける

担当者がその場で退職を決意済みと判断し、会社側が関係を精算モードに切り替えてしまうケースがあります。しかし、その先読みこそが社員を本当に遠ざける引き金になります。

声を上げた段階では、まだエンゲージメント(仕事への愛着・貢献意欲)を回復できる余地があります。「腫れ物扱い」や「あからさまな距離感」は、エンゲージメント回復どころか、加速度的に失わせてしまいます。

面談後に態度が変わったと社員に感じさせないよう、普段どおりの関係性を意識して維持することが最も重要です。

「合わない」の中身を一緒に整理する

「合わない」という言葉は、実は多くの異なる不満を一言で包んでいます。業務内容なのか、上司との関係なのか、給与水準なのか、将来のビジョンなのか——それぞれ対応策がまったく異なります。

その場でいきなり解決策を出そうとせず、「もう少し聞かせてもらえますか。具体的にどのあたりが気になっていますか」と問い返すことから始めましょう。担当者が答えを持っていなくてもよいのです。まず聞き切ることが、対話の土台になります。

その場で即答しないことも「対応のうち」

面談中に何かを約束したり、即座に結論を出そうとしたりする必要はありません。「今日聞かせてもらったことを、もう少し考えさせてください。来週また時間をとりましょう」と伝えるだけで、社員は「ちゃんと受け取ってもらえた」と感じます。

焦って場当たり的な約束をして守れなかった場合のほうが、信頼の毀損は大きくなります。

「合わない」の背景を4つの軸で分類する

社員が感じる「合わなさ」の背景を整理するには、不満の種類を分類することが有効です。何に対して対応するかが明確になるだけで、次のアクションの質が大きく変わります。

不満の種類を分類する4つの軸

分類 よくある訴えの例 対応の方向性
業務内容 「自分のスキルが活かせていない」「やりたい仕事と違う」 業務アサインの見直し・プロジェクト参加の検討
人間関係 「上司と合わない」「チームの雰囲気が苦手」 関係者を含めた面談・配置の検討(規模次第)
処遇・評価 「給与が見合っていない」「評価基準がわからない」 評価制度の説明・報酬見直しの可能性確認
将来ビジョン 「この会社での成長イメージが持てない」「将来やりたいことが別にある」 キャリアパスの提示、または転職支援の検討

この4つの中でも、「将来ビジョンのズレ」は会社側が短期間で解消できないケースが多く、対応の選択肢が変わってきます。逆に、業務内容や評価基準への不満は、会話と情報提供だけで大きく改善できることもあります。

20~50名規模特有の制約を把握しておく

大企業であれば「部署異動」「ローテーション」という選択肢が現実的ですが、20~50名規模では部署数もポジション数も限られています。担当者が「何か変えたい」と思っても提示できる選択肢が少ない、というのが実情です。

そのとき重要なのは「選択肢を出せないまま終わらせない」ことです。業務の一部を変える、特定のプロジェクトに関与させる、外部の勉強機会を会社として支援するなど、規模に合わせた小さな変化を具体的に提示することが、社員の「話して意味があった」という感覚につながります。

引き止めるか転職を支援するか、判断の軸を持つ

「引き止めるべきか、転職を応援すべきか」という問いに対する答えは、感情論ではなく「社員にとっての最善」と「会社として誠実に提供できるもの」の重なりで判断することです。

引き止めることが逆効果になるケース

不満の根本が「業務内容や人間関係」ではなく「将来やりたいことへの強い意志」にある場合、引き止めは根本解決になりません。曖昧な言葉で引き止めを続けることで、社員のエンゲージメントはさらに低下し、最終的に「あのとき辞めておけばよかった」という感情とともに退職されるリスクが高まります。

引き止めを選ぶならば、「何を変えられるか」を具体的に提示することとセットでなければ意味をなしません。

転職支援に踏み込む判断軸

「転職を後押しするのは会社として負けでは」という感覚を持つ経営者・担当者は少なくありません。しかし、社員が望む方向に誠実に向き合い、転職という選択肢を一緒に考えた会社は「辞め方がいい会社」として評判が残ります。採用ブランドにとってもプラスに働くことがあります。

逆に、強引な引き止めを続けた末に退職した社員が、ネガティブな口コミを残すリスクと表裏一体です。転職支援の具体的な内容としては、転職サービスの情報を案内する、履歴書の書き方をアドバイスする、といった範囲から始められます。

なお、会社が特定の転職先を紹介し対価を得る形は職業紹介業の許認可が必要になるため、その点は注意が必要です。

会社都合・自己都合の認定には注意が必要

会社側が主導して退職を促す形での「転職支援」は、雇用保険の離職理由の認定(会社都合か自己都合か)に影響を与える可能性があります。社員の意向を尊重しながら支援する場合でも、面談の記録と経緯を整理しておくことが、後日のトラブル防止につながります。

面談後のフォローをアクションとして設計する

キャリア面談は「実施すること」がゴールではなく、面談後に何が変わるかで価値が決まります。言いっぱなし・聞きっぱなしで終わらせないために、面談後のフォローをあらかじめ設計しておきましょう。

面談記録を残す習慣をつける

面談の内容を記録しておくことは、単なる管理の問題ではなく、後日「あのとき話したのに何も変わらなかった」という不満や、「そんな話は聞いていない」という主張への備えになります。

記録すべき内容は、以下の5点を最低限押さえてください。

  • 日時
  • 主な話題
  • 社員が希望したこと
  • 会社として回答したこと
  • 次回の確認事項

議事録のような精密な記録でなくてよいですが、記録があることで次の面談の質が格段に上がります。また、労働契約法第3条が示す労使対等の原則に基づいても、社員の意向を無視した処遇は紛争リスクになりうるため、対話の記録は会社側の誠実な姿勢の証明にもなります。

次のアクションを「何を・いつまでに」で具体化する

面談の終わりに、「次回は2週間後にまた時間をとりましょう」「業務アサインについて〇〇さんに確認して、来週中に結果を伝えます」という形で、次のアクションを明確にして終わることが重要です。

社員にとって「話した結果、何かが動いた」という実感が、会社への信頼を形作ります。逆に、フォローなしに時間だけが過ぎることが、最も退職リスクを高めます。

フォロー面談の頻度と内容を決めておく

「合わない」と打ち明けてくれた社員には、通常のキャリア面談とは別に、1~2ヶ月以内に短時間のフォロー面談を設けることをすすめます。「あのとき話してくれたこと、その後どうですか」という一言から始めるだけで十分です。

厚生労働省が推進する「セルフ・キャリアドック」の考え方でも、定期的なキャリア面談は「退職を防ぐ手段」としてではなく、「社員が主体的に働き続けられる環境をつくる仕組み」として位置づけられています。フォロー面談はその延長線上にあります。

就業規則・産業医の有無で変わる対応の選択肢

会社の体制によって、「合わない」への対応で使える手段は変わります。自社の状況を把握し、使えるリソースを整理しておくことが実務の第一歩です。

就業規則が整備されているかどうか

常時10名以上の従業員がいる場合、就業規則の作成と届出が労働基準法上の義務です。異動・職種変更・評価基準について就業規則に明記されていれば、面談の中で「会社として提示できる選択肢の根拠」として示すことができます。

逆に就業規則が不整備な場合、「会社として何を提供できるか」が不明確になり、社員の不信感を高めることがあります。キャリア面談を機に、就業規則の整備状況を見直す契機にすることもできます。

産業医・外部相談窓口の活用

「合わない」の背景にメンタルヘルスの問題が潜んでいる場合、担当者だけで抱え込むことには限界があります。常時50名以上の事業場では産業医の選任が義務ですが、50名未満の場合でも、外部のEAP(従業員支援プログラム)や産業保健スタッフを活用することで、専門的な視点からのサポートが可能になります。

不満やキャリアのズレが、実は長期間の疲弊やストレスから来ているケースは少なくありません。面談担当者が「これはキャリアの話ではなく、健康の問題かもしれない」と感じたときは、専門職につなぐことを選択肢に入れてください。

まとめ

キャリア面談で「合わない」と気づいたとき、まず大切なのはその声を「退職フラグ」として処理しないことです。社員が本音を打ち明けた瞬間は、まだエンゲージメントを回復できる余地がある局面です。

「合わない」の中身を4つの軸(業務・人間関係・処遇・ビジョン)で整理し、引き止めるか転職を支援するかは感情論ではなく「社員に誠実に提供できるもの」を基準に判断する。そして面談で終わらせず、記録・フォロー・次のアクションをセットで設計することが、信頼される人事対応の基本です。

20~50名規模の企業では選択肢が限られる分、「話した意味があった」と社員に感じてもらえる小さな変化を積み重ねることが大きな差を生みます。

相談窓口
ウェルセンス株式会社では、専任人事がいない中小企業の経営者・兼務担当者が直面するキャリア面談の進め方・休職復職対応・メンタルヘルス対応について、実務に即した形でご相談をお受けしています。「自社のケースでどう対応すればいいかわからない」という段階からでも、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. キャリア面談で「会社と合わない」と言われたとき、その場でどう返せばよいですか?

A. その場で解決策を出そうとする必要はありません。まず「話してくれてありがとうございます。もう少し詳しく聞かせてもらえますか」と受け止め、聞き切ることを優先してください。即答を避けて「少し考えてから改めて話しましょう」と伝えることも、誠実な対応のひとつです。焦って場当たり的な約束をすることのほうがリスクになります。

Q. 「合わない」と言った社員を引き止めるべきか、転職を支援すべきか、どう判断すればよいですか?

A. 判断の基準は「会社として誠実に提供できる変化があるかどうか」です。業務内容や評価基準への不満なら、具体的な改善策をセットにした引き止めが有効です。一方、「将来やりたいことが明確に別にある」という場合は、無理な引き止めがエンゲージメントをさらに低下させるリスクがあります。転職支援を選ぶ場合も、誠実な対応が「辞め方がいい会社」という評判につながります。

Q. 面談の記録はどこまで残せばよいですか?

A. 精密な議事録でなくてかまいません。日時・主な話題・社員が希望したこと・会社として回答したこと・次回の確認事項の5点を最低限残してください。記録があることで、後日「何も変わらなかった」という不満や「そんな話は聞いていない」という主張への対応が可能になります。また、労働契約法の観点からも、対話の事実を残すことは会社側の誠実な姿勢の証明になります。

Q. 20~50名規模では部署が少なく、配置転換の選択肢がありません。どうすればよいですか?

A. 大きな異動が難しい場合でも、業務の一部を変える・特定プロジェクトへの参加機会をつくる・外部の学習機会を会社として支援するなど、小さな変化を具体的に提示することが重要です。社員にとって「話した結果、何かが動いた」という実感が信頼につながります。選択肢を出せないまま面談を終わらせることが、最も退職リスクを高める行動です。

Q. 「合わない」の背景にメンタルヘルスの問題があるかもしれません。どう対応すればよいですか?

A. 「合わない」の背景に長期的な疲弊やストレスが潜んでいるケースは少なくありません。担当者が「これはキャリアではなく健康の問題かもしれない」と感じた場合は、専門職(産業医・外部EAPなど)につなぐことを検討してください。常時50名未満の事業場でも外部の産業保健スタッフやメンタルヘルス支援サービスを活用することができます。担当者一人で抱え込まないことが、社員にとっても会社にとっても最善です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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