退職意向面談が効果ない時はどうすればいい?

退職意向面談が効果ない時はどうすればいい? 採用・定着
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面談を終えた後、社員から「やっぱり辞めます」という言葉が返ってきた。何を伝えればよかったのか、もう手はないのか——退職意向面談が「効果がない」に終わったとき、多くの経営者・人事担当者がこの問いに直面します。しかし実は、その面談の設計そのものに問題があるケースが大半です。この記事では、翻意しない社員への構造的な理解から、退職が決まった後の実務対応フローまでを体系的に解説します。

退職意向面談が「効果がない」に終わる本当の理由

退職意向面談が機能しない最大の原因は、「翻意させること」を目的に設定してしまっていることにあります。この前提を変えない限り、何度面談を重ねても同じ結果になります。

退職意向は「決断」ではなく「結果」である

多くの経営者が見落としがちなのが、退職意向を固めた社員は「その日に突然決めた」わけではないという事実です。職場への不満・消耗感・信頼の喪失が長期間にわたって蓄積し、すでに臨界点を超えた状態で面談の場に来ています。「給与を上げます」「配置を変えます」という言葉をその場で伝えても、「今さら言われても」「また同じことが繰り返される」という不信感を覆すには至りません。

「次のステップ」がある状態で面談に臨んでいる

退職意向を伝えてくる社員の多くは、面談の時点ですでに転職先の目処が立っているか、あるいは退職後の生活設計をある程度描いています。つまり、退職意向面談は翻意の余地を探る場ではなく、退職のプロセスを進める意思確認の場として本人の中では位置づけられています。この認識のズレが、「話したのに効果がなかった」という感覚につながります。

退職意向面談の目的を「3つ」に再設定する

効果的な退職意向面談を行うには、目的そのものを設定し直す必要があります。翻意させることではなく、以下の3点を目的として面談に臨むことが実務上有効です。

  • 円満な退職の着地点を合意する
  • 残留社員への影響を最小化する
  • 退職の背景から組織課題を把握する

この3点に絞ると、面談での問いかけも自然と変わります。「なぜ辞めるのか」を責めるトーンから、「どうすれば気持ちよく次に進めるか」を一緒に考えるトーンへ切り替えることができます。

翻意しない社員の「本音」を構造的に理解する

「一身上の都合」という言葉の裏には、複合的な要因が隠れていることがほとんどです。本音にたどり着けない構造を理解しておくことで、次の採用・定着施策に活かすことができます。

表向きの理由と本音が乖離するメカニズム

退職理由として伝えられる「家庭の事情」「キャリアアップ」「体調管理」は、多くの場合、本音をそのまま伝えることへの心理的コストを回避した言葉です。特に上司との関係悪化・職場内の人間関係の摩耗・メンタルヘルスの悪化といった理由は、「言ったところで変わらない」「言うと気まずくなる」という判断から伏せられるケースが多くあります。

退職背景の4つの層

退職の背景は、大きく以下の4つの層で整理すると構造が見えやすくなります。

具体例
待遇・条件 給与・労働時間・休日・福利厚生への不満
関係性 上司との摩擦・同僚との対立・孤立感
成長・意味 キャリアの行き詰まり・仕事の意義が感じられない
健康・生活 メンタルヘルスの悪化・プライベートとの両立困難

面談の場で本音を引き出すには、「何が一番つらかったですか」という直接的な問いよりも、「いつ頃からそう思い始めましたか」「どんなタイミングで考えが変わりましたか」という時系列での問いかけが有効です。責めるためではなく、組織の課題として受け取る姿勢を示すことが前提です。

退職背景の把握を「次」につなげる

把握した退職背景は、退職者本人への対応だけでなく、残留社員の定着施策・採用基準の見直し・マネジメント改善に活用できます。退職者に「この会社が良くなるために伝えておきたいことはありますか」と問いかけ、組織改善のインプットとして記録に残しておく姿勢が、中長期的な組織づくりにつながります。

引き留めを続けるリスクと「辞める前提の着地交渉」

引き留め面談を繰り返すことには、法的リスクと組織的リスクの両方が存在します。翻意の見込みが低い段階での強引な引き留めは、むしろ会社に不利益をもたらします。

強引な引き留めはパワーハラスメントになりうる

退職を認めない発言・感情的な拘束・脅迫的な言動は、労働施策総合推進法第30条の2に基づくパワーハラスメント防止措置義務の観点から、パワハラに該当しうる行為です。また、「引き継ぎが不十分だから損害賠償を請求する」という対応も、民法第709条の不法行為を根拠とするには立証が極めて困難であり、原則として認められないか認められても限定的にとどまります。退職者を追い詰める言動は、Openworkなどの口コミサイトへのネガティブな投稿や採用ブランドへのダメージというかたちで、後から会社に跳ね返ってきます。

民法上の退職効力と就業規則の関係

民法第627条により、期間の定めのない雇用契約では、労働者は2週間前に申し出ることで退職の効力が生じます。就業規則に「1ヶ月前の届け出」と定めている場合、慣行・判例上はその規定が有効とされる場合が多いものの、会社側が強制することはできません。「就業規則に書いてあるから辞めさせない」という対応は法的根拠として成立しません。

着地交渉で合意できること・できないこと

翻意が見込めない段階に入ったら、「辞める前提の着地交渉」に切り替えることが会社・社員双方にとって合理的な判断です。交渉で合意できる内容としては、退職日・有給消化の方法・引き継ぎ範囲・退職理由の社内公表方法などがあります。一方で、有給休暇の取得を拒むことは労働基準法第39条に反するため合意の対象にはなりません。口頭ではなく書面(退職届または退職合意書)で意思確認を行うことがトラブル防止の基本です。合意退職なのか自己都合退職なのかも、雇用保険の給付に影響するため明確にしておく必要があります。

退職が決まった後の実務対応フロー

退職意向を承諾した後には、期限を伴う法的手続きが複数発生します。専任人事がいない環境では特に、対応の抜け漏れがトラブルの原因になります。

退職届受け取りから引き継ぎまで

まず退職届(または退職合意書)を書面で受け取ります。次に引き継ぎのスケジュールと範囲を合意し、業務マニュアルや取引先への挨拶対応を計画します。有給休暇の残日数を確認し、退職日までの消化スケジュールを双方で確認しておきます。社員証・PC・社用携帯などの会社備品の返却日時も事前に決めておくとスムーズです。

退職日前後の社会保険・雇用保険手続き

退職後に対応が必要な手続きのうち、特に期限が短いのが雇用保険の処理です。退職日翌日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークへ提出する必要があります(雇用保険法施行規則第7条)。また、労働者から請求があった場合、離職票の交付は義務となっています(雇用保険法第76条)。健康保険・厚生年金については、退職日の翌日から被保険者資格が喪失するため、月末退職と月中退職で保険料の扱いが異なります。顧問社労士がいない場合は、この手続きで漏れが生じやすいため注意が必要です。

残留社員への影響を最小化する伝え方

退職者への対応は、残留社員に必ず見られています。感情的な扱いや退職者を責めるような発言は、「自分が辞めるときも同じ扱いをされるのか」という不安感を残留社員に与えます。社内への周知は、退職者本人と「いつ・どんな言葉で伝えるか」を事前に合意した上で行うことが理想です。「一身上の都合により退職することになりました」という定型文でも、丁寧に扱われたという事実が残留社員の安心感につながります。

まとめ

退職意向面談が「効果がない」に終わったとき、それは面談の失敗ではなく、面談の目的設定そのものを見直すべきサインです。翻意させることから、円満な着地・組織課題の把握・残留社員への影響最小化へと目的を切り替えることで、退職対応は「損失の管理」から「組織の学習機会」へと変わります。また、退職承諾後の手続き(雇用保険・離職票・書面での意思確認など)は期限と法的根拠を伴うため、専任人事不在の環境ほど事前に対応フローを整えておくことが重要です。

ウェルセンス株式会社では、退職意向面談の設計・着地交渉の進め方・退職後の組織づくりまで、中小企業の現場に即した支援を行っています。「今まさに対応に困っている」という段階でも、「今後こういったケースに備えておきたい」という段階でも、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 退職意向面談を何回行えば翻意の可能性が出てきますか?

A. 面談の回数よりも、退職意向がどの段階にあるかが重要です。すでに次の転職先が決まっている・退職届を提出済みという段階では、翻意の可能性は極めて低いと考えてください。翻意が起きやすいのは、「迷っている段階」で早期にキャリア上の悩みや職場環境の改善策を具体的に提示できたときに限られます。繰り返し面談を求めることは、むしろパワーハラスメントのリスクを高めるため注意が必要です。

Q. 就業規則に「退職は1ヶ月前に申し出ること」と書いてありますが、効力はありますか?

A. 就業規則の「1ヶ月前申告」は、慣行・判例上は有効とされる場合が多いですが、民法第627条により2週間経過後には退職の効力が生じるため、会社が強制的に引き止め続けることはできません。実務上は、引き継ぎをスムーズに進めるためにも、社員と合意のうえで退職日を設定することが最も合理的な対応です。

Q. 退職する社員に「引き継ぎが不十分だから損害賠償を請求する」と伝えても問題ありませんか?

A. 損害賠償を脅しのように用いることはパワーハラスメントに該当する可能性があります。実際に損害賠償が認められるには、民法第709条の不法行為として故意・過失・損害の因果関係を立証する必要があり、引き継ぎ不足を理由とした請求は法的に認められるケースが極めて限定的です。引き継ぎを確実に進めたいのであれば、脅しではなく具体的なスケジュールと範囲を合意することが有効です。

Q. 退職者が有給を全部消化したいと言っています。拒否できますか?

A. 原則として拒否できません。有給休暇の取得は労働基準法第39条で保障された労働者の権利です。業務上の都合で「時季変更権」を行使できるケースもありますが、退職日が決まっている場合は変更できる余地がなく、実質的に行使できません。退職が決まった段階で残有給の日数を早めに確認し、引き継ぎスケジュールと組み合わせて調整するのが実務的な対応です。

Q. 退職届を受け取った後、雇用保険の手続きはいつまでに行う必要がありますか?

A. 退職日翌日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークへ提出する必要があります(雇用保険法施行規則第7条)。また、退職者から離職票の交付を求められた場合は、雇用保険法第76条に基づき交付する義務があります。この手続きを怠ると退職者の失業給付に影響が出るため、退職日が確定した段階で速やかに準備を進めることをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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