1on1のやり方に迷ったら:部下が本音を話す場のつくり方

1on1のやり方に迷ったら:部下が本音を話す場のつくり方 採用・定着
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「1on1を始めてみたものの、毎回『特に問題ないです』で終わってしまう」「突然の休職で、もっと早く気づいてあげられたはずなのに」——そんな後悔を抱える経営者・人事担当者は少なくありません。専任人事がいない中小企業ほど、1on1のやり方のノウハウが社内に存在せず、形だけの実施になりがちです。この記事では、部下が本音を話せる1on1のやり方を、質問の選び方・記録の残し方・定着のコツまで実務視点で解説します。

1on1が「雑談で終わる」のはなぜか

目的が曖昧なまま始めている

多くの企業で1on1が形骸化する最大の原因は、「なんとなく始めた」ことにあります。「コミュニケーションを増やしたい」という漠然とした動機のまま実施すると、当然ながら何を話せばよいかわからず、業務報告の場に成り下がります。1on1のやり方として重要なのは、本来部下のコンディションを把握し、成長を支援し、不調の兆候を早期に発見するためのラインケア(管理監督者によるケア)の場であることを理解することです。厚生労働省の「メンタルヘルス指針」でも、管理職による1on1はラインケアの中核的手段として位置づけられています。まず「この時間は何のためにあるのか」を上司・部下の双方が理解した上でスタートすることが重要です。

「最近どうですか?」という質問の落とし穴

オープンすぎる質問は、かえって部下を戸惑わせます。「最近どうですか?」と聞かれても、何をどこまで話せばよいのか判断できず、「特に問題ないです」という無難な回答に落ち着きがちです。1on1のやり方として有効なのは、質問に聞きたい軸を決めることです。具体的には「業務上の困りごと」「職場の人間関係」「体調や気力のコンディション」という三つの軸を意識して問いを立てると、話が広がりやすくなります。たとえば「今週、仕事で一番エネルギーを使ったのはどの場面でしたか?」のように具体的な場面を問うと、自然と本音に近い話が出てきます。

上司側の「聞く姿勢」が準備できていない

1on1のやり方はテクニックよりも姿勢が先です。スマートフォンをテーブルに置いたまま、PCの画面を見ながら話を聞く——こうした行動は、部下に「ちゃんと聞いてもらえていない」という印象を与えます。1on1の場では、視線を合わせ、うなずき、相手の言葉を繰り返す「傾聴」の基本姿勢が求められます。小規模企業では経営者が直接1on1を行うケースも多く、権力勾配(上下関係のプレッシャー)が本音を引き出す妨げになります。だからこそ「ここでの話は評価に使わない」という安心感を言葉で伝えることが重要です。

本音を引き出す質問の設計

三つの軸で質問リストをつくる

1on1のやり方として、質問はアドリブに頼らず、あらかじめリストを用意しておくことをおすすめします。専任人事がいない企業でも使いやすい三つの軸は次のとおりです。

まず「業務・環境の軸」として「今、最も時間がかかっている仕事は何ですか?」「やりにくさを感じている場面はありますか?」といった問いを用意します。次に「コンディション・状態の軸」として「最近、十分に眠れていますか?」「仕事に対してやる気が出ない日はありますか?」という問いを加えます。そして「成長・将来の軸」として「最近、自分が成長できたと感じた場面はありましたか?」「半年後、どんな仕事をしていたいですか?」という問いで締めます。

すべてを一度に聞こうとせず、1回の1on1で一つの軸に集中するだけでも十分です。

「クローズド質問」と「オープン質問」を使い分ける

クローズド質問とは「はい/いいえ」で答えられる質問、オープン質問とは自由に答える質問のことです。1on1のやり方として、部下が話しやすい空気をつくるには、最初にクローズド質問でウォームアップし、そのあとオープン質問で深掘りするのが効果的です。たとえば「先週の仕事は順調でしたか?(クローズド)」→「どんなところが大変でしたか?(オープン)」という流れです。この順序を意識するだけで、部下の言葉が格段に増えます。

メンタル不調の兆候を見落とさない問い

1on1は「簡易版ストレスチェック」の役割も担えます。従業員50名以上ではストレスチェックが法律(労働安全衛生法第66条の10)で義務化されていますが、50名未満の企業は努力義務にとどまります。だからこそ、1on1のやり方の中に不調の早期発見を目的とした質問を意識的に組み込むことが重要です。

「最近、仕事中に集中力が続かないと感じることはありますか?」「何となく気が重い朝が続いていませんか?」といった問いは、遅刻の増加・返信の遅延・表情の変化など、行動面の変化に気づくきっかけになります。「大丈夫です」という返答が続く場合も、「具体的にはどんな状態のときを『大丈夫』と感じていますか?」と言葉を掘り下げることで、隠れたサインを引き出せる場合があります。

記録の残し方と個人情報の取り扱い

記録する目的を明確にする

1on1の記録を取らないまま続けると、前回話した内容を忘れ、部下から「全然聞いてもらえていない」と感じられます。一方で「プライベートな話を書いていいのか」「記録が残ることを部下が嫌がるのでは」という不安から、記録自体をやめてしまうケースも多くあります。大切なのは、記録の目的を最初に部下と共有することです。「前回話した内容を次回に活かすために書き留めます」「評価ではなく、あなたのサポートのための記録です」と伝えるだけで、心理的な抵抗は大きく下がります。

記録フォーマットと残すべき項目

1on1のやり方として、記録は凝ったフォーマットよりも、続けられるシンプルな形式が最適です。残す項目は「実施日・参加者・話したテーマ・部下の状態メモ・次回のフォロー事項」の五つで十分です。特に「部下の状態メモ」は、「元気そうだった」「疲れた様子だった」「業務量に不満があるようだった」といった短い観察メモで構いません。記録はスプレッドシートやメモアプリで管理できます。大切なのはツールよりも「毎回必ず残す」という習慣です。

個人情報保護とアクセス権限の考え方

1on1で得た健康状態・家族状況・経済的な悩みなどの情報は、個人情報保護法の対象になりえます。記録を管理する際は、まず「誰が閲覧できるのか」を明確にすることが必要です。原則として、直属の上司と人事担当者のみが閲覧できる状態にし、経営者が全員分を閲覧する場合もその旨をあらかじめ社内に周知しておくことが望まれます。また、保管期間と廃棄ルールも設定しておくと、「書いた情報がいつまでも残り続ける」という部下の不安を軽減できます。

なお、1on1の場での質問・フィードバックが圧迫的になることはパワーハラスメント(労働施策総合推進法)にも抵触しうるため、記録とともに言動のガイドラインを整えておくことも重要です。

1on1を定着させる運用の仕組み

頻度と時間の「最小設計」

「月1回・30分」が多くの企業で採用されているスタンダードです。ただし繁忙期に後回しになりやすいため、カレンダーへの固定予約が最も効果的な対策です。毎月第2水曜日の10時、のように曜日と時間を固定してしまうと、後回しにするという選択肢がなくなります。

時間は30分が理想ですが、15分の短時間1on1を週1回行う企業もあります。頻度よりも「途切れないこと」のほうが信頼関係の構築には重要です。3ヶ月以上空いてしまうと、部下は「自分は気にかけてもらえていない」と感じるようになります。

1on1を「安全な場」として機能させる工夫

1on1の定着のカギは、部下が「話してよかった」と感じるかどうかです。1on1で話した内容が評価につながったり、他のメンバーに共有されたりすると、次回から部下は本音を話さなくなります。「この場での話は評価に使わない」「第三者に共有する場合は事前に確認する」というルールを明文化し、最初の1on1で伝えておくことが大切です。

また、毎回の冒頭で「前回話してくれた〇〇、その後どうなりましたか?」とフォローアップすることで、「ちゃんと聞いてもらえている」という実感が生まれ、部下の発言量が増えていきます。

管理職・経営者へのトレーニングが定着を左右する

1on1のやり方として、質問リストやフォーマットを整えても、実施する側のスキルが伴わなければ効果は半減します。厚生労働省の「メンタルヘルス指針」でも、管理監督者が部下の変化に気づくための教育・研修の実施が推奨されています。

特に「本音を引き出す傾聴技術」「不調サインの観察ポイント」「NGな対応(追い詰めるような質問・プライベートへの過剰な立ち入り)」は、一度体系的に学ぶことで実践精度が大きく上がります。外部の専門家による研修を1回導入するだけでも、社内のラインケアの質は変わります。

安全配慮義務と1on1の関係

「知っていた」責任が問われる時代

労働契約法第5条は、使用者が労働者の生命・身体・精神の健康を守る安全配慮義務を負うことを定めています。1on1はその義務を果たすための実践手段の一つです。不調のサインを知り得る立場にありながら、適切な対応を取らなかった場合、安全配慮義務違反として損害賠償請求につながるリスクがあります。「まさかあの人が休職するとは」という驚きは、多くの場合「サインはあったが見逃していた」という状況です。1on1は「万が一の際に対応した記録」にもなりえます。

1on1は「記録としての証拠」にもなる

部下が突然休職した場合、「会社が適切なケアを行っていたかどうか」が問われることがあります。1on1の記録が残っていれば、会社として定期的に部下のコンディションを確認していた事実を示す証拠になります。「何も知らなかった」よりも、「定期的に確認し、問題が見えた時点で対応した」という記録のほうが、法的にも道義的にも会社の立場を守ることにつながります。記録は部下のためだけでなく、会社自身を守るためのものでもあるのです。

まとめ

1on1が形骨化する原因は、目的の曖昧さ・質問設計の不足・記録の不在・運用の途切れ、この四つに集約されます。「メンタル不調・業務・成長」の三軸で質問を設計し、個人情報への配慮を踏まえたシンプルな記録フォーマットを用意し、カレンダーに固定することで、専任人事がいなくても1on1のやり方は着実に定着させられます。

ウェルセンス株式会社では、中小企業の実情に合わせた1on1質問リストの提供・管理職向けラインケア研修・記録運用ルールの設計支援を行っています。「うちでも使えるのか?」という段階からでも構いません。まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 1on1のやり方として、頻度はどのくらいが適切ですか?

A. 月1回30分が多くの企業で採用されているスタンダードです。繁忙期に途切れやすい場合は、週1回15分の短時間1on1に切り替えるのも有効です。最も避けるべきは「3ヶ月以上空いてしまう」ことで、部下が「自分は気にかけてもらえていない」と感じる原因になります。カレンダーへの固定予約が最も効果的な対策です。

Q. 部下がどうしても「大丈夫です」しか言わない場合、1on1のやり方としてどうすればよいですか?

A. 「大丈夫」という言葉を掘り下げることが有効です。「具体的にはどんな状態のときを『大丈夫』と感じていますか?」と返すと、部下が自分の状態を言語化するきっかけになります。また「ここでの話は評価に使わない」という安心感を言葉で伝えることも重要です。1回の1on1で本音が出なくても、継続することで信頼関係が築かれ、徐々に話しやすくなります。

Q. 1on1の記録はどこまで書いてよいのでしょうか?プライベートな情報の取り扱いに不安があります。

A. 記録する内容と目的を部下にあらかじめ伝えることが大切です。健康状態・家族状況・経済的な悩みなどは個人情報保護法の対象になりえるため、「誰が閲覧できるか」「いつ廃棄するか」を明確にした上で管理してください。記録の目的は「あなたをサポートするため」であることを共有すれば、部下の不安は大きく軽減されます。

Q. 従業員が50名未満なのでストレスチェックは義務ではありませんが、1on1で代替できますか?

A. 完全な代替にはなりませんが、50名未満の企業こそ1on1が「簡易版ストレスチェック」として機能する実務的な意味を持ちます。ストレスチェックは匿名での数値把握が目的ですが、1on1は個別の状態を継続的に観察できる点で補完的な役割を担えます。不調のサインを早期に発見するための質問を意識的に組み込むことで、休職リスクの低減につながります。

Q. 1on1で部下の不調サインに気づいた場合、次にどう対応すればよいですか?

A. まず、1on1の場で無理に解決しようとせず「一緒に考えましょう」というスタンスで受け止めることが大切です。その上で、社内に産業医や保健師がいる場合はつなぎ、いない場合は外部のEAP(従業員支援プログラム)や専門相談窓口へのエスカレーションを検討します。「どこに相談すればよいか」を事前に決めておくことで、いざというときに迷わず動けます。不調発見後の対応フロー設計についても、ウェルセンス株式会社にご相談いただけます。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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