休職規定がない会社で困ったら読む緊急対応と整備のポイント

休職規定がない会社で困ったら読む緊急対応と整備のポイント メンタルヘルス対応
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「社員が突然、体調不良で出社できなくなった。でもうちには休職の規定がない……」。中小企業の現場では、こうした事態が突然やってきます。給与はどうするのか、社会保険の手続きは何が必要なのか、いつまで休ませれば良いのか——規定がないと判断の根拠がなく、対応が止まってしまいます。この記事では、休職規定がない会社が今すぐ取れる緊急対応と、再発防止のための規定整備のポイントを実務目線で解説します。

休職規定がないこと自体は違法ではないが、リスクは高い

就業規則と休職規定の法的な位置づけ

まず前提として整理しておきましょう。常時10人以上の労働者を使用する事業場は、労働基準法第89条により就業規則の作成・届出が義務です。違反した場合は30万円以下の罰金の対象となります。しかし、休職制度そのものは法律で設置を義務づけられたものではありません。あくまで会社が任意で設ける制度です。

つまり「休職規定がないこと」は直ちに違法ではありません。ただし規定がない場合、長期欠勤が続いた社員への対応の裁量が広くなる分、判断を誤ったときのリスクも高くなります。

規定がないと「解雇できる」は大きな誤解

「休職規定がないから、長期欠勤した社員はそのまま解雇できる」と思い込んでいる経営者・担当者の方は少なくありません。しかしこれは大きな誤解です。

労働契約法第16条の解雇権濫用法理により、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない解雇は無効と判断されます。裁判例では「休職の機会を与えずに行った解雇」が解雇権の濫用として無効とされたケースが複数あります。規定がないからこそ、対応の一つひとつに慎重な判断が求められるのです。

安全配慮義務は規定の有無に関わらず課される

労働契約法第5条は、使用者が労働者の生命・身体・健康を守るための安全配慮義務を負うことを定めています。メンタル不調のある社員を放置したり、十分なサポートなしに解雇したりすることは、安全配慮義務違反として損害賠償請求につながるリスクがあります。規模の小さな会社でも、この義務から逃れることはできません。

休職規定がない状態で社員が倒れたときの緊急対応

まず「書面による合意」で根拠をつくる

休職規定がない状態で社員が長期欠勤になった場合、最初にすべきことは「書面での合意形成」です。就業規則に規定がなくても、会社と本人が個別に合意した内容を書面(休職合意書・覚書)に残すことで、対応の根拠をつくることができます。

合意書には「休職開始日」「休職期間(例:3か月、最長6か月など)」「給与の取り扱い(無給または有給)」「社会保険料の本人負担分の支払い方法」「復職の条件の概要」を明記します。この書面がないと、後から「そんな話は聞いていない」「いつまで休めると思っていた」といったトラブルに発展しやすくなります。

給与と社会保険の処理を止めない

緊急対応でもう一つ止まりやすいのが、給与と社会保険の処理です。休職中の給与については、規定がない場合でも「無給」とすることが一般的です。無給とすることで、健康保険の傷病手当金を本人が受給しやすくなります。傷病手当金は、業務外の傷病で4日以上労務不能になった場合に、標準報酬日額の3分の2が最長1年6か月支給される制度で、就業規則の休職規定の有無は受給要件に含まれていません。

一方、社会保険料(健康保険・厚生年金)は休職中も発生し続けます。会社負担分だけでなく、本人負担分も毎月徴収が必要です。徴収方法は「毎月指定口座への振込」または「復職後の給与から分割精算」など、本人と事前に合意したうえで書面に残してください。これを曖昧にしたまま復職まで放置すると、数か月分の未徴収が積み重なり、回収が困難になるケースがあります。

本人・家族への丁寧な説明が後のトラブルを防ぐ

メンタル不調や重篤な傷病の場合、本人が冷静に書類を確認できる状態でないこともあります。その場合は家族(緊急連絡先)とも連絡を取り、会社の対応方針と傷病手当金の手続き方法を丁寧に説明することが重要です。特に「給与が止まる時期」「いつから傷病手当金が振り込まれるか」は生活に直結するため、タイムラインを含めて具体的に伝えましょう。

解雇・退職扱いの判断基準を整理する

「休職期間満了」と「自然退職」の考え方

休職規定がある会社では、規定の休職期間が満了しても復職できない場合に「休職期間満了による自然退職(または退職扱い)」とする定めを設けているのが一般的です。では規定がない場合はどうなるのでしょうか。

規定がない場合、合意書で定めた休職期間が終了しても復職できないときは、改めて本人と協議のうえで退職か継続かを判断することになります。この段階で「もう解雇する」と一方的に通告すると解雇権濫用のリスクが生じます。少なくとも「退職勧奨」のプロセスを踏み、本人の意思確認を行うことが重要です。

解雇を検討する前に確認すべきこと

解雇を検討する前に、次の点を確認してください。まず最初に、休職の機会を十分に与えたかどうかです。突然の長期欠勤に対して何の期間も設けず即座に解雇した場合、解雇権の濫用と判断されるリスクが高くなります。次に、復職に向けた配慮(業務内容の変更・軽減等)を検討したかどうかです。そして最後に、本人と書面で退職の合意を取れているかどうかです。これらを確認せずに解雇に踏み切ることは避けてください。

退職合意書で双方の認識を一致させる

合意退職とする場合は、「退職合意書」を作成し、退職日・退職理由・有給休暇の精算・社会保険の手続きについて双方が確認したうえで署名・捺印します。この書面があることで、後日「解雇された」「強制的に辞めさせられた」という主張を防ぎやすくなります。特にメンタル不調の場合、本人の記憶や認識がその時点とは異なることがあるため、書面の重要性はより高くなります。

復職を安全に進めるための判断と手順

主治医の診断書だけで判断しないことが原則

「主治医から復職可の診断書が出た」という連絡を受けたとき、その診断書だけで復職を認めてしまうのは危険です。主治医は日常生活が送れるかどうかを中心に判断しますが、職場環境・業務負荷・対人関係など実際の就労可否については、産業医や会社との連携なしには判断できない部分があります。

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、復職プロセスを5つのステップで整理しており、産業医意見・職場環境の整備・試し出勤(リハビリ出勤)などを組み合わせた多面的な判断を推奨しています。産業医が選任されていない50人未満の事業場でも、地域産業保健センターを活用することで専門家の意見を得ることができます。

試し出勤の位置づけと注意点

復職前に「週2〜3日・短時間から徐々に業務に慣れる」試し出勤(リハビリ出勤)を取り入れることは、再発防止に効果的です。ただし、試し出勤中の労働時間・賃金・労災の取り扱いについてはあらかじめ明確にしておく必要があります。特に「試し出勤中に事故が起きた場合の労災適用」は、労働時間・指揮命令の有無によって判断が分かれるため、事前に確認しておくことを推奨します。

復職後のフォローアップ体制をつくる

復職直後の3か月間は再発リスクが最も高い時期です。上司や担当者が定期的に面談し、業務量・体調・人間関係のサポート状況を確認するフォローアップ体制を設けることが重要です。「復職したら終わり」ではなく、復職後の経過観察が再休職防止の鍵になります。

休職規定の整備で押さえるべきポイント

規定に盛り込むべき最低限の項目

休職規定を新たに整備する際、最低限盛り込むべき項目は次のとおりです。休職事由(傷病・メンタル不調・私傷病・家族の介護など)、休職期間(勤続年数に応じて段階的に設定するのが一般的)、給与の取り扱い(無給・有給の別)、社会保険料の徴収方法、復職の手順と条件(主治医診断書・産業医意見・試し出勤の扱い)、休職期間満了時の扱い(自然退職か退職扱いか)、の6点です。

これらが欠けていると、実際の場面で「規定はあるのに何も決まっていない」という状態になりかねません。

雛形・テンプレートをそのまま使うリスク

インターネット上には休職規定の雛形・テンプレートが多数公開されています。手軽に使える反面、自社の業種・雇用形態・就業時間・パート・アルバイトの扱いなどが反映されていないケースがほとんどです。たとえば、飲食業でシフト制のアルバイトが多い会社と、フルタイム正社員中心のIT企業とでは、休職期間の設定や給与ルールが大きく異なります。雛形はあくまで「たたき台」として活用し、自社の実態に合わせた修正が必要です。

規定整備は「あってから考える」では遅い

休職規定の整備は、トラブルが起きてから慌てて行うものではありません。「今は問題が起きていないから」という理由で後回しにしている会社ほど、突然の休職発生時に対応が止まります。従業員が20〜50名規模になってくると、体調不良や精神的不調による長期欠勤は統計的に起きやすくなります。今の段階から整備に着手することが、会社と社員双方を守ることにつながります。

まとめ

休職規定がない状態で社員が長期欠勤になったとき、「規定がないから解雇できる」「後で考えれば良い」という判断は、後に深刻なトラブルにつながります。まず書面による合意で対応の根拠をつくり、給与・社会保険の処理を止めないことが緊急対応の基本です。解雇や退職扱いの判断は段階を踏んで慎重に行い、復職は主治医の診断書だけに頼らず多面的に判断することが再発防止に直結します。そして中長期的には、自社の実態に合った休職規定を整備することが、会社と社員を守る最善の策です。

「うちの会社はどこから手をつければ良いのか」「突然の休職発生で今すぐ相談したい」という方は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。20〜50名規模の成長企業の休職・復職支援と規定整備を一体的にサポートする体制で、御社の状況に合った対応をご提案します。

よくある質問

Q. 休職規定がなくても傷病手当金を申請できますか?

A. はい、申請できます。傷病手当金は健康保険の制度であり、就業規則に休職規定があるかどうかは受給要件に含まれていません。業務外の傷病で継続して4日以上労務不能な状態であれば、標準報酬日額の3分の2が最長1年6か月支給されます。ただし給与が支払われている期間は傷病手当金との調整が発生するため、無給で休職させるほうがスムーズに受給できるケースが多いです。

Q. 休職中の社会保険料は会社が全額負担しなければなりませんか?

A. いいえ、休職中も通常どおり会社と本人で折半です。本人負担分の徴収方法については、毎月指定口座に振り込んでもらうか、復職後の給与から分割精算するかを事前に書面で取り決めておくことを強くおすすめします。これを曖昧にしたまま復職まで放置すると、未払い分が大きくなり回収が困難になるケースがあります。

Q. 主治医が「復職可」と言っているのに会社側が復職を拒否できますか?

A. 状況によっては可能です。主治医の判断はあくまで日常生活における回復度合いが中心であり、実際の職場環境・業務負荷への対応可否とは異なる場合があります。産業医や会社側が業務遂行能力を独自に判断したうえで、必要な職場環境の整備が整っていないと判断した場合は、復職時期の調整を行うことができます。ただし、一方的に復職を拒み続けることも問題になりうるため、理由を明示した書面での対応が必要です。

Q. 社員が10人未満の会社でも就業規則は作るべきですか?

A. 法律上の作成義務は常時10人以上からですが、10人未満でも就業規則(または雇用契約書・労働条件通知書に準じた社内ルール)を整備することを強くおすすめします。特に休職・復職・解雇・退職に関するルールは、従業員が少ないからこそ一人の問題が会社全体に大きく影響します。最低限「休職に関する個別合意書」の雛形だけでも用意しておくと、緊急時の対応が格段にスムーズになります。

Q. 休職規定を整備するには社労士に頼まないとできませんか?

A. 社労士への依頼は必須ではありませんが、自社の業種・雇用形態・既存の就業規則との整合性を考えると、専門家のサポートを受けることで抜け漏れや法的リスクを大幅に減らせます。特に「雛形をそのままコピーしたら自社に合わない内容だった」というケースは中小企業に多く見られます。ウェルセンス株式会社では、休職・復職支援の観点から規定整備のサポートも行っており、社労士と連携しながら自社に合った対応をご提案することができます。

【監修】ウェルセンス株式会社
社会保険労務士・産業カウンセラーと連携し、中小・成長企業の人事課題に向き合う実務ノウハウをお届けします。
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