遅刻早退の注意の仕方|関係を壊さず改善するフィードバック術

遅刻早退の注意の仕方|関係を壊さず改善するフィードバック術 採用・定着
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「また今日も遅刻か……でも、どう声をかければいいんだろう」。そう思いながら、結局何も言えずに一日が終わった経験はありませんか。専任の人事担当者がいない中小企業では、遅刻・早退への対応は経営者や兼務担当者が「感覚」で乗り切るしかない場面が多く、注意の仕方を誤れば関係悪化・休職という最悪の展開を招くこともあります。この記事では、関係を壊さず、かつ問題をきちんと改善につなげる遅刻早退への注意の仕方、実践的なフィードバック方法を解説します。

遅刻・早退を「怠慢」と決めつける前に確認すること

遅刻・早退への対応で最初にすべきことは、「なぜ起きているか」を把握することです。背景を確認しないまま「もっとしっかりしてほしい」と伝えると、的外れな指導になるだけでなく、状況をさらに悪化させるリスクがあります。

行動の変化に着目する

特に注意が必要なのは、「今まで真面目だった人が突然崩れてきた」パターンです。これはメンタル不調・睡眠障害・適応障害・うつ病などの兆候である可能性があります。以前と比べて元気がなくなった、ミスが増えた、表情が暗い——こうした変化が遅刻・早退と重なる場合は、怠慢ではなくサインとして受け取る視点が不可欠です。

背景として考えられる主な要因

遅刻・早退の背景には、大きく分けて「業務・職場環境」と「プライベート」の二つが存在します。前者には過重労働・人間関係のトラブル・業務のミスマッチが含まれ、後者には育児・介護・本人の体調不良・家庭問題などが挙げられます。どちらに起因するかによって、取るべき対応はまったく異なります。まず状況を確認してから対応策を決める、という順番を必ず守ってください。

「怠慢」と「サイン」の判断基準

以下の表を参考に、どちらに近いかを整理してみましょう。

怠慢が疑われるパターン 不調のサインが疑われるパターン
以前から同様の傾向がある ある時期から急に変化した
理由を聞いても明確な説明がない 言葉にできないが表情・態度が暗い
業務への意欲・成果は変わっていない ミスの増加・集中力の低下が見られる
特定の曜日・状況に偏っている 頻度が増加傾向にある

注意する前に整えておく「社内のルール」

遅刻早退への注意の仕方の効果は、社内ルールが整備されているかどうかで大きく変わります。ルールがない状態での注意は属人的になりやすく、「なぜ自分だけ指摘されるのか」という不満を生む原因になります。

就業規則への明記が必要な理由

遅刻・早退・欠勤の取り扱いは、就業規則に定めておくことが労働基準法第89条で義務付けられています(常時10名以上の事業場)。口頭でのルール共有は法的根拠として弱く、後に紛争が生じた際のリスクになります。賃金控除を行う場合も、労働基準法第24条(全額払いの原則)および第91条(制裁規定の制限)に基づいた適切な運用が必要です。減給制裁には「1回の額が平均賃金の1日分の半額以内、かつ総額が1賃金支払期の賃金総額の10分の1以内」という上限があります。

記録をつける習慣を持つ

いつ・何回・どのような状況で遅刻・早退が発生したかを客観的に記録することは、後の対応を大きく助けます。口頭注意の内容・日時も簡単にメモしておきましょう。記録は「証拠を集める」という目的ではなく、「事実に基づいた対話をするため」のものです。感情的な印象ではなく、具体的な事実を持って話すことが、フィードバックの質を高めます。

「何回から注意するか」の目安を決める

注意のタイミングを個人の感覚に委ねると、対応のばらつきが「えこひいき」と受け取られかねません。たとえば「月に3回以上の遅刻が続いた場合は面談を行う」など、社内で共通の基準を持つことが理想です。専任人事がいない場合は、就業規則の整備と合わせて、シンプルな運用ガイドラインを文書化しておくだけでも効果があります。

関係を壊さない「伝え方」の4つのステップ

フィードバックの核心は「何を言うか」より「どう言うか」にあります。気づき→確認→合意→記録という順序を踏むことが、法的にも関係性の面でも最も有効なアプローチです。

まず「気づき」を伝える

最初のステップは、相手を責めるのではなく、事実として気づいていることを穏やかに伝えることです。「最近、出社の時間が遅くなっているように感じていて、少し気になっています」という言い方が出発点として適切です。「また遅刻したね」という言い方は、相手を責める印象を与えるため避けてください。小規模組織では毎日顔を合わせるからこそ、フォーマルな呼び出しより「少しだけ話せますか」という自然な切り出し方のほうが、相手の防衛反応を和らげます。

次に「状況を確認する」

気づきを伝えた後は、すぐに指導に入らず、相手の状況を聞く時間を設けます。「何か困っていることや、体調面で気になることはありますか?」と問いかけることで、背景にある事情を引き出しやすくなります。プライベートな事情(介護・育児・体調など)が出てきた場合は、「話してくれてありがとうございます。一緒に対応策を考えましょう」というスタンスで受け取ることが重要です。踏み込みすぎず、かといって突き放さない距離感を意識してください。

「合意」を形成し、「記録」に残す

状況の確認ができたら、具体的な改善策について本人と一緒に考えます。「来月末までに月2回以内に改善することを目指して、2週間後にもう一度状況を確認しましょう」のように、期限・目標・次のアクションを明確にします。この合意内容は必ず記録に残してください。記録は「監視のため」ではなく、「約束を共有し、次の対話を具体的にするため」のものです。

フィードバック後のフォローアップが成否を決める

一度注意の場を設けただけでは行動変容は起きません。「注意した=対処した」で終わらせてしまうことが、最も多い落とし穴の一つです。フォローアップの設計がセットであることを忘れないでください。

翌日以降の接し方

面談の翌日から「どう接すればいいかわからない」という声はよく聞かれます。話しかけすぎると監視に見え、距離を置きすぎると無関心に見える——この葛藤を解消するシンプルな方法は、「普段どおりに接しながら、変化に気づいたら短く声をかける」ことです。「最近どう?」という軽い一言でも、相手には「見ていてくれている」というメッセージになります。

定期的な状況確認の場を設ける

面談で合意した「2週間後に確認する」というアクションを必ず実行してください。改善していれば「変化に気づいている、頑張りを認めている」ことを伝え、改善していなければ「次のステップを一緒に考える」対話に移ります。フォローアップのない注意は、当事者に「やり過ごせばいい」と学習させる逆効果を生みます。

状況が改善しない場合の対応分岐

フォローを続けても改善が見られない場合、対応の分岐点が生じます。就業規則と産業医の有無によって取れる手段が異なります。

  • 就業規則が整備されている場合:書面での注意・指導、懲戒手続きへの移行が法的根拠をもって行えます。
  • 産業医が選任されている場合(50名以上が義務):産業医による面談を活用し、メンタル不調の有無を専門的に確認することができます。
  • 就業規則・産業医がともにない場合(20〜49名規模で多い):外部の人事・メンタルヘルス支援機関に相談することが現実的な選択肢になります。

パワハラにならない注意の仕方

「注意すること自体がパワハラになるのでは」という不安から動けなくなっている経営者・担当者は少なくありません。しかし、業務上適切な指導・注意は、たとえ相手が不快に感じても原則としてパワハラには該当しません。

パワハラの定義と境界線

労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)では、パワハラは「優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」と定義されています。つまり、「何をしたか」ではなく「どのように言ったか」が重要です。遅刻の事実を穏やかに確認する行為はパワハラには当たりません。一方、「人格否定」「過度な叱責」「繰り返しの執拗な追及」は該当しうるため、言葉の選び方と頻度・強度に注意が必要です。

「事実」に基づいて話すことが最大の防御

「いつも遅い」「だらしない」といった感情的・人格的な表現は避け、「今月に入って3回、9時15分以降の出社が記録されています」のように、具体的な事実を基に話すことがパワハラリスクを下げる最善の方法です。感情ではなく事実を語ることは、同時にフィードバックの説得力も高めます。

安全配慮義務との関係

なお、注意しないことにもリスクがあります。労働契約法第5条に定める安全配慮義務により、メンタル不調の兆候がある社員に対して何も対処しなかった場合、使用者が義務違反を問われるリスクがあります。遅刻・早退の増加を「見て見ぬふり」することは、法的観点からも望ましくありません。適切に関わることが義務であり、適切に関わる限りパワハラにはなりません。

まとめ

遅刻・早退への注意の仕方で最も重要なのは、「怠慢か、サインか」を見極めることから始め、「気づき→確認→合意→記録」の順序でフィードバックを行うことです。注意した後のフォローアップを設計し、継続的に関わることで初めて行動変容が生まれます。また、就業規則の整備・記録の習慣・法的知識を持つことが、パワハラリスクを下げながら適切に指導できる土台になります。

「うちの社員への伝え方、これで合っているのだろうか」「改善が見られないが次にどう動けばいいかわからない」——そのような場面で、ウェルセンス株式会社では勤怠悪化・休職予防・メンタルヘルス対応について、中小企業の実態に合わせた相談対応を行っています。一人で抱え込む前に、まず話してみてください。

よくある質問

Q. 遅刻が1〜2回だけでも注意すべきですか?

A. 1〜2回であれば、正式な注意より「最近どう?」程度の軽い声かけが適切です。ただし、そこで「体調が悪い」「職場で困っていることがある」などのサインが見られた場合は、早めに個別の対話の場を設けることをおすすめします。回数ではなく「変化の有無」を基準にするのが実務的な目安です。

Q. 遅刻の理由を聞くことはプライバシーの侵害になりますか?

A. 業務運営上の合理的な範囲で状況を確認することは、プライバシーの侵害にはなりません。ただし、「なぜ遅刻したのか詳しく報告せよ」という強制的な尋問ではなく、「何か困っていることはないか」という関わり方が適切です。本人が話したくないことを無理に引き出そうとすることは避けてください。

Q. 注意したら翌日から来なくなりました。どうすればいいですか?

A. まず連絡を取り、体調の確認を最優先にしてください。「注意したことへの反発」なのか「メンタル不調が深刻化した」のかによって対応が異なります。休みが続く場合は、メール・電話に加えて産業医や外部の支援機関への相談も検討してください。対応が遅れると、労働契約法第5条に基づく安全配慮義務違反を問われるリスクが高まります。

Q. 就業規則がない場合、遅刻を理由に給与を減額することはできますか?

A. 遅刻した時間分の賃金を控除すること(ノーワーク・ノーペイの原則に基づく計算)は、就業規則がない場合でも一定の条件下で認められますが、制裁としての「減給」は就業規則への明記がなければ行えません。また、就業規則がないこと自体が労働基準法第89条違反となるケースがあるため、早急に整備することをおすすめします。

Q. 産業医がいない20〜30名規模の会社でも、メンタル不調への対応はできますか?

A. 産業医の選任義務は常時50名以上の事業場に生じるため、それ以下の規模では選任していないケースがほとんどです。その場合は、外部のメンタルヘルス支援機関・EAP(従業員支援プログラム)の活用、地域の産業保健総合支援センターへの相談、かかりつけ医や精神科への受診勧奨などが現実的な選択肢となります。社内だけで抱え込まず、外部リソースをうまく活用することが重要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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