試用期間のミスマッチを早期に解決する対処法

試用期間のミスマッチを早期に解決する対処法 採用・定着
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「なんとなく合わない気がする。でも、まだ1ヶ月だし……」。試用期間中の社員に違和感を覚えながらも、どう動けばいいかわからず時間だけが過ぎていく。専任人事のいない中小企業では、こうした判断を経営者や兼務担当者が一人で抱え込むケースが少なくありません。この記事では、試用期間中のミスマッチに気づいたとき、何をどの順番で行えばよいのかを法的リスクも含めて整理します。

「向いていない」を感じたら、まず事実を記録する

試用期間中のミスマッチ対処において、最初にすべきことは感覚を「事実の記録」に変換することです。感覚のまま動くと、本人への説明が曖昧になり、後の法的リスクにもつながります。

感覚を事実に変換する

「なんとなく合わない」という印象は、そのままでは対応の根拠になりません。たとえば「覚えが悪い」と感じているなら、「業務マニュアルAの手順を3回説明したが、4回目も同じ手順で誤りがあった(〇月〇日)」というように、日付・状況・具体的な行動の3点を記録します。感情ではなく行動ベースで書くことがポイントです。

記録しておくべき項目

記録に含める情報は、日時・場所・具体的な行動・指示した内容・その結果の5点が基本です。遅刻・業務ミス・指示への対応など、問題と感じた場面が起きるたびにメモしておきましょう。「後でまとめて書けばいい」と思っていると、細部が曖昧になります。その場で簡単にメモするだけで構いません。

記録がなければ改善支援も解雇も成立しない

後述する本人との面談・改善支援・最終判断のすべてにおいて、記録はその根拠になります。「いきなり解雇された」「何も指摘されなかった」という社員側の主張に対抗できるのは、客観的な記録だけです。試用期間中であっても雇用関係は成立しているため、事実の積み重ねなしに動くことは避けてください。

試用期間の法的位置づけと解雇のルール

「試用期間中なら自由に辞めさせられる」は誤りです。試用期間中も雇用契約は成立しており、解雇には客観的合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。

「解約権留保付き労働契約」とは何か

判例上、試用期間中の雇用関係は「解約権留保付き労働契約」と呼ばれます。企業側が一定の解約権(解雇できる権利)を留保しているという意味ですが、これは無条件に辞めさせられるという意味ではありません。労働契約法第16条が類推適用され、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。「向いていないと感じる」だけでは、法的な解雇理由として不十分です。

14日ルールと解雇予告手当

試用期間中であっても、継続勤務が14日を超えた社員を解雇する場合は、労働基準法第20条に基づき、30日前の解雇予告か、それに相当する解雇予告手当の支払いが必要です。「試用期間だから予告なしで即日解雇できる」という対応は法律違反になります。入社直後の14日以内であっても、丁寧な対応が後のトラブル防止につながります。

試用期間の延長は就業規則次第

試用期間をもう少し延ばして様子を見たい場合、就業規則に延長規定がある場合のみ有効です。規定がない場合は原則として延長できません。延長する場合は必ず本人に明示し、同意を得ることが実務上望ましいとされています。自社の就業規則を今一度確認し、規定がなければ専門家への相談を検討してください。

本人との対話をどう進めるか

記録が整ったら、次に行うのが本人との対話です。この面談は「問題を通知する場」ではなく、「現状認識を共有し、改善の方向性を一緒に考える場」として設定することが重要です。

面談前に準備すること

面談では感情的にならないよう、事前に伝える内容を整理しておきましょう。「何が具体的に問題なのか」「どのような改善を期待しているのか」「改善の期限をいつに設定するか」の3点を明確にしてから臨みます。漠然と「頑張ってほしい」と伝えるだけでは、社員側も何をどう改善すればよいかわかりません。

面談中に気をつけること

退職勧奨は違法ではありませんが、複数回にわたる執拗な勧奨や、辞めるよう追い詰めるような言動は不法行為(民法第709条)となりえます。面談は原則として1対1を避け、もう一人が同席する形が安全です。面談後は日時・同席者・話した内容・本人の反応を記録に残してください。「言った・言わない」の争いを防ぐ最大の手段は記録です。

改善目標の設定と期間の明示

面談では、改善してほしい行動を具体的に伝え、期間を明示します。「次の1ヶ月で〇〇ができるようになることを目標にしましょう」のように、測定できる形で設定しましょう。口頭だけでなく、改善目標を記載した書面を双方で確認し、コピーを渡すことも有効です。これが後の判断(継続か退職勧奨か)の材料になります。

改善支援から最終判断までのステップ

対話の後は改善期間を設け、その結果をもとに最終的な判断を行います。この流れを踏むことが、法的トラブルを避けるうえで最も重要なプロセスです。

三段階プロセスの全体像

段階 やること 残すもの
気づき・観察 具体的な行動ベースで記録を開始する 日付・行動・指示内容のメモ
対話・フィードバック 現状を共有し、改善目標と期間を設定する 面談記録・改善目標書面
改善評価・最終判断 期間終了後に結果を評価し、継続か否かを決定する 評価記録・判断根拠のメモ

改善が見られた場合の対応

改善期間中に目標に向けた変化が見られた場合は、そのことも記録に残しつつ、本人にフィードバックします。「できていること」を具体的に伝えることは、モチベーション維持にもつながります。試用期間中のミスマッチは、環境への不慣れや業務説明の不足が原因であることも多く、適切なサポートで解決するケースも少なくありません。

改善が見られない場合の判断

改善期間を経ても目標に対する進捗がなく、業務遂行に客観的な問題が続いている場合は、退職勧奨を検討する段階です。この際も、「記録」「面談実施の事実」「改善機会の付与」という三段階のプロセスを踏んでいることが、不当解雇の主張に対する根拠になります。退職勧奨は任意であるため、本人が拒否した場合は解雇か雇用継続かを改めて判断する必要があります。判断に迷う場合は、社会保険労務士や弁護士への相談を検討してください。

20〜50名規模の企業が特に注意すること

中小企業では、大企業と違い配置転換の選択肢が少なく、就業規則の整備が不十分なケースもあります。この規模ならではの注意点を確認しておきましょう。

配置転換での解決が難しい

大企業であれば「別の部署に異動させて適性を見る」という対応もできますが、20〜50名規模では部署やポジションが限られており、ミスマッチが退職に直結しやすい傾向があります。そのため、採用段階での適性確認と、入社後の早期フォローアップがとりわけ重要になります。試用期間を「様子を見る期間」ではなく、「積極的に関与してミスマッチを解消する期間」と捉え直すことが必要です。

就業規則の整備状況を確認する

就業規則に試用期間の期間・評価基準・延長規定が明記されていない場合、後から社員に「そんな規定は知らなかった」と言われても反論が難しくなります。常時10名以上の従業員がいる事業所は就業規則の作成と届出が法的義務(労働基準法第89条)です。10名未満であっても、試用期間に関するルールを書面で整備しておくことを強くお勧めします。

評価者が経営者・上司と兼任になる問題

中小企業では、経営者や直属の上司が評価者を兼ねることが多く、評価の客観性が担保されにくい状況があります。「感じが合わない」という主観だけで判断が進まないよう、評価の基準を事前に言語化しておくことが大切です。可能であれば複数名で評価に関与し、記録を分散させることで、特定の一人の主観への依存を減らすことができます。

まとめ

試用期間中のミスマッチは、「感じた段階で記録し、すぐに対話する」ことが解決の出発点です。試用期間中であっても雇用関係は成立しており、解雇や退職勧奨には法的な根拠と正しいプロセスが必要です。まず具体的な事実を記録し、本人との面談で現状を共有し、改善目標と期間を設定する。この三段階を踏むことが、法的リスクを回避しながらミスマッチを解決するための基本です。

就業規則の整備状況や配置転換の難しさなど、中小企業ならではの制約もあります。「どこから手をつければいいかわからない」「判断に迷っている」という段階なら、一人で抱え込まず早めに専門家の力を借りることをお勧めします。ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・人事担当者からの試用期間・採用に関する相談を受け付けています。ぜひお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 試用期間中であれば、理由なく解雇しても問題ないですか?

A. 問題があります。試用期間中も雇用契約は成立しており、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法第16条が類推適用)。「なんとなく合わない」という感覚だけでは法的な解雇理由として不十分であり、具体的な事実の記録と改善機会の付与が必要です。

Q. 試用期間を延長することはできますか?

A. 就業規則に延長規定がある場合のみ有効です。規定がない場合は原則として延長できません。延長する場合は本人への明示と同意取得が実務上望ましく、一方的な延長は後のトラブルにつながる可能性があります。まず自社の就業規則を確認してください。

Q. 退職を促す(退職勧奨)ことは違法ですか?

A. 退職勧奨自体は違法ではありません。ただし、繰り返し執拗に退職を迫ったり、本人が拒否しているにもかかわらず辞めるよう追い詰める行為は不法行為(民法第709条)となりえます。面談は記録を残しながら進め、強制・脅迫と受け取られる言動は避けてください。

Q. 試用期間中に解雇する場合、解雇予告は必要ですか?

A. 継続勤務が14日を超えている場合は、試用期間中であっても労働基準法第20条に基づき30日前の解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要です。14日以内であれば予告なしでの解雇は法律上可能ですが、丁寧な対応が後のトラブル防止につながります。

Q. 専任人事がいない会社でも、こうした対応は一人でできますか?

A. 記録の開始と本人との対話は社内で進めることができます。ただし、退職勧奨の進め方や就業規則の解釈、最終的な解雇判断については法的リスクを伴うため、社会保険労務士や専門支援機関への相談を検討することをお勧めします。一人で抱え込むほど対応が遅れ、試用期間内に必要なステップを踏めなくなるリスクが高まります。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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