社員の派閥はどうすれば解消できる?

社員の派閥はどうすれば解消できる? 組織運営
Photo by Yan Krukau on Pexels

「あのチームとこのチームで、明らかに情報が共有されていない」「会議になると決まった顔ぶれだけで話が進む」——気がつけば、社内に見えない壁ができていた。そんな状況に心当たりはあるでしょうか。

社員派閥の問題は、感情的なもつれに見えて、実は組織設計の欠陥から生まれていることがほとんどです。しかし、専任人事がいない20〜50名規模の職場では、「確証がない」「動いて悪化させたくない」という迷いから、対処が後回しになりがちです。この記事では、社員派閥が生まれる構造的な原因から、失敗しない介入方法まで、順を追って解説します。

派閥はなぜ生まれるのか——「人間関係の問題」ではない

社内派閥の本質的な原因は、人の相性ではなく、組織の設計上の欠陥にあります。この認識を持てるかどうかが、根本解消できるかどうかの分岐点です。

役割の曖昧さが派閥を育てる

誰が何を決めるか、誰の守備範囲かが明確でない職場では、社員は「判断軸」を上司や制度ではなく、信頼できる人間に求めるようになります。「あの先輩の言うことを聞けば間違いない」「このグループにいれば守ってもらえる」という心理で集団が固まっていくのです。

特に、創業期から在籍している古参メンバーと、成長期に採用された中途社員の間で役割の境界が曖昧なまま放置されている職場は、派閥化しやすい構造になっています。

情報の非対称が「格差感」を生む

経営者が意図せず特定メンバーにだけ情報を伝えている状態が続くと、社内には「知っている側」と「知らされない側」の分断が生まれます。情報格差は不公平感に直結し、「自分たちは軽視されている」という認識が派閥意識を強化します。

評価制度の不透明さが不満を蓄積させる

評価基準が明文化されておらず、経営者の主観や好感度で処遇が決まっている職場では、社員は「評価される側」と「されない側」に自然と分かれていきます。この不満が、同じ境遇の仲間を求める行動につながり、やがて派閥へと発展します。

経営者が気づくべき早期発見のサイン

派閥は、いくつかの行動パターンとして表れます。「確証がない」と感じる場合でも、以下のサインが複数当てはまるなら、早期対処を検討すべき段階です。

会議・コミュニケーションの変化に注目する

会議で発言するメンバーが固定化されている、特定の人が発言すると別の人が黙る、チャットツールでの返信が一部メンバー間だけで速い——こうした変化は、派閥化の初期サインです。特に情報共有の偏りは、業務上の支障として比較的早く可視化されるため、見落としにくい指標になります。

離席・昼食・時間外行動のパターン

ランチメンバーの固定化、喫煙室や休憩スペースでの特定グループの集まり、業務時間外の交流の偏りなどは、派閥化の進行度を測るバロメーターになります。これ自体は問題行動ではありませんが、複数のサインと重なっている場合は注意が必要です。

退職・異動後の組織変化を振り返る

過去に特定メンバーが退職した後に、連続して退職が発生していないか振り返ってみてください。連鎖退職が起きていた場合、そのメンバーを中心とした派閥が存在していた可能性があります。採用コストの増大や採用ブランドの低下という形で、派閥の影響はすでに表れているかもしれません。

失敗しない介入方法

派閥への介入で最も多い失敗は、「感情的に動く」か「放置する」かの二択に陥ることです。正しい介入には、順序と根拠が必要です。

介入前に「事実」と「感情」を分けて記録する

経営者が動く前に必要なのは、観察と記録です。「誰が・誰に・どんな行動をとっているか」を具体的に整理してください。「なんとなく雰囲気が悪い」という感覚論で動くと、当事者から「経営者の恣意的な判断」と反発を受け、かえって関係が悪化します。

記録すべき内容の例を以下に整理します。

観察対象 記録すべき内容
情報共有の偏り 誰が誰にだけ報告しているか、誰が情報を受け取っていないか
発言パターン 会議で誰が誰の発言を遮る・無視するか
問題行動 特定人物への無視・嫌がらせ・業務の押しつけ
退職・異動の経緯 直近1〜2年の離職者と、残ったメンバーとの関係性

「問題行動」と「不満・不公平感」を別々に扱う

派閥に関連する事象は、大きく二種類に分けて対処する必要があります。一つは、情報の隠蔽や特定人物への排除行為といった「問題行動」です。これは就業規則の服務規程・懲戒規定に基づいた対処が必要になります。就業規則に「職場秩序を乱す行為の禁止」が明記されているか、まず確認してください。

もう一つは、評価への不満や業務分担の不公平感といった「蓄積された不満」です。こちらは懲戒で対処するものではなく、組織設計や評価制度の見直しによって解消すべき問題です。この二つを混同すると、制度面の問題を個人への指導で済ませようとする誤りが生じます。

「中立のつもり」が通じない理由を理解する

経営者が「自分は公平に動いている」と思っていても、社員から見ると「あの社長はAグループ寄り」という認識が固定化していることがあります。過去の抜擢人事、飲み会の頻度、気軽に声をかける相手——こうした行動の積み重ねが、経営者への信頼度を左右します。

介入する前に、信頼できる社外の第三者に「経営者自身のポジショニングが社内でどう見えているか」の見立てを依頼することが有効です。内部から見えない死角を確認してから動くことで、「なぜ今さら」という不信感を防ぐことができます。

構造的に解消する——組織設計からのアプローチ

派閥を根本から解消するには、「仲裁」「食事会」といった関係修復策より先に、派閥を生み出している組織の構造を変える必要があります。表面的な関係修復だけでは、半年後に再燃するケースが多く見られます。

役割と権限を明文化する

まず最初に取り組むべきは、誰が何を決める権限を持つかを文書で明確にすることです。特に古参メンバーと新しいメンバーの間で役割が曖昧になっている職場では、「誰の言うことが正しいか」という権力構造が非公式に形成されています。これをジョブディスクリプション(職務記述書)や決裁フローの明文化によって解消します。

情報共有の仕組みをフラットにする

次に取り組むべきは、情報の流れを可視化することです。経営者が特定のメンバーだけに話す機会を持っている場合、それが意図せず「情報格差」を生んでいます。全社向けの定例共有の場を設ける、重要な決定はドキュメント化して全員が確認できるようにするといった仕組みが有効です。

評価基準を開示し、納得感を高める

評価基準が曖昧なまま処遇に差がついていると、不満が蓄積し派閥の温床になります。完全な評価制度の構築には時間がかかりますが、まずは「何を重視して評価しているか」を言語化し、社員に説明するだけでも認識のギャップは縮まります。評価への納得感は、派閥の抑止力として直接機能します。

法的リスクを見落とさない

派閥化が進行し、特定の社員が集団的に排除される状況になった場合、会社には法的責任が発生します。人間関係の問題として放置することのリスクを正確に理解しておく必要があります。

安全配慮義務とハラスメント防止義務

労働契約法第5条は、使用者に「職場環境を適切に保つ義務(安全配慮義務)」を課しています。派閥による孤立化や排除が生じている場合、この義務違反として会社が責任を問われる可能性があります。

また、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)では、「人間関係の切り離し」がパワーハラスメントの6類型の一つとして定められています。集団による無視・孤立化が確認された場合、雇用主には防止措置義務があり、対処を怠った場合は行政指導の対象になり得ます。厚生労働省「職場におけるハラスメント防止のための指針」にも、具体的な防止措置の内容が示されています。

就業規則の整備状況を確認する

問題行動に対して懲戒処分を行う場合、就業規則の服務規程・懲戒規定に「職場秩序を乱す行為の禁止」が明記されていることが前提になります。記載がない場合、懲戒処分の根拠が弱くなり、不当解雇・不当処分として争われるリスクがあります。現在の就業規則の内容を一度確認しておくことをお勧めします。

  • 就業規則に服務規程・懲戒規定があるか確認する
  • 「職場秩序を乱す行為の禁止」が明記されているか確認する
  • 最終更新から時間が経過している場合は見直しを検討する
  • 社員数が常時10名以上の場合、就業規則の作成・届出は法律上の義務(労働基準法第89条)

まとめ

社内派閥の多くは、人間関係の相性ではなく、役割の曖昧さ・情報の非対称・評価の不透明さという組織設計の問題から生まれています。解消するには、感情的な仲裁より先に、派閥を育てている構造を変えることが必要です。介入のタイミングでは、事実と感情を分けて記録すること、問題行動と蓄積された不満を別々に扱うこと、そして経営者自身のポジショニングを客観的に確認することが失敗しないポイントになります。

また、派閥が孤立化・排除行為に発展した場合は、労働契約法の安全配慮義務やパワハラ防止法に基づく法的責任が生じます。放置することのリスクは、動くことのリスクより大きくなるケースがほとんどです。

「どこから手をつければいいか整理できていない」「自社の状況を客観的に見てほしい」という場合は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。組織の構造的な問題の整理から、具体的な対処の順序まで、御社の規模と状況に合わせてお話しします。

よくある質問

Q. 派閥の中心人物に直接話すのは逆効果ですか?

A. 目的と準備によって結果が大きく変わります。事前に事実を記録し、「問題行動の確認」なのか「不満のヒアリング」なのかを明確にしてから話す分には有効です。ただし、何も準備せず「派閥をつくっているのでは」という曖昧な指摘をすると、反発を招くか、表面的な否定で終わるかのどちらかになりやすいです。話す前に、伝える内容と目的を整理することが重要です。

Q. 派閥のリーダー格の社員が退職したら、派閥は自然に解消されますか?

A. 短期的には落ち着くように見えることもありますが、組織の構造的な問題(役割の曖昧さ、評価の不透明さなど)が残っていれば、時間をおいて別の軸で派閥が形成されます。また、退職に連動して同じグループのメンバーが連鎖退職するリスクもあります。退職後も組織設計の見直しを行わない限り、根本的な解消にはなりません。

Q. 会社のイベントや食事会で仲良くさせるのは意味がありますか?

A. 関係性のウォームアップとして一定の効果はありますが、派閥の根本解消にはなりません。役割の曖昧さや評価への不満が解決されていない状態でイベントを行っても、表面的な交流で終わり、半年後には状況が元に戻るケースが多く見られます。イベントは組織設計の改善と並行して行うものとして位置づけてください。

Q. 派閥による孤立が起きているとき、会社はどんな義務を負いますか?

A. 労働契約法第5条の安全配慮義務に基づき、使用者は職場環境を適切に保つ義務を負っています。また、集団による無視・孤立化は、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が定めるパワーハラスメントの類型(人間関係の切り離し)に該当しうるため、雇用主には防止措置義務があります。「知らなかった」では免責にならないため、早期に実態を把握し、対処の記録を残すことが重要です。

Q. 専任人事がいない職場でも、派閥問題に対処できますか?

A. 対処できます。ただし、経営者が現場と近すぎて「中立的に動けない」と感じる場合や、社内だけでは客観的な見立てが難しい場合は、社外の専門家を活用することが有効です。特に、経営者自身が派閥の一方と近い関係性にある場合、内部だけで解決しようとするとかえって状況が悪化するリスクがあります。外部の視点を入れることで、経営者が中立的な立場で動きやすくなります。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

不調者対応を、人事だけで抱えない。

メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談いただけます。

詳しく見る →

タイトルとURLをコピーしました