「何日も連絡がない…どうすればいいのか」。休職中の従業員と突然連絡が取れなくなった経験はありませんか。専任人事がいない中小企業では、こうした事態に直面したとき、誰に相談すればよいかわからず、対応を先送りにしてしまいがちです。しかし「連絡取れない」という状態を放置することは、法的リスクに直結します。この記事では、休職中に連絡が取れなくなった際に会社がとるべき5つの対応手順を、法的根拠とともにわかりやすく解説します。
なぜ「様子を見よう」が危険なのか
放置が生む2つのリスク
休職中の従業員から連絡が途絶えると、多くの担当者は「明日には連絡が来るかもしれない」と考え、対応を先送りにします。しかし会社には安全配慮義務(労働契約法第5条)があります。これは「従業員の生命・健康を職場環境の整備によって守る義務」のことで、休職中であっても免除されません。
連絡が取れないまま放置した結果、万が一従業員に深刻なことが起きた場合、会社が「合理的な対応努力をしなかった」と判断されるリスクがあります。また逆に、後になって「会社から一切連絡がなかった」と従業員側に主張された場合、それを否定する証拠がない状態になってしまいます。
「何日目に動くか」の判断基準を持つ
実務的には、連絡が途絶えてから3営業日を一つの目安とする企業が多いです。3日間、電話・メールを試みても応答がなければ次の段階に移る、という社内基準を持っておくだけで、対応のスピードが格段に上がります。判断基準がないまま「もう少し待とう」を繰り返すと、気づけば2〜3週間が経過していたというケースは珍しくありません。
まず試みるべき連絡手段の多重化
電話・メール・書留郵便の組み合わせ
休職中に連絡が取れない状況では、一つの手段だけに頼らず複数の方法を組み合わせることが重要です。まず電話を複数回試み、次にメールで連絡状況を文字として残します。それでも応答がない場合は、書留郵便(配達証明付き)を活用してください。
書留郵便の配達証明は「この日にこの住所へ郵便を送達した」という事実を郵便局が証明してくれるものです。後に「連絡を受け取っていない」と言われた場合の反証になります。さらに重要な通知(後述する休職満了の予告など)は内容証明郵便を使うことで、送った内容そのものも証明できます。
対応ログを必ず残す
連絡試行の記録は、安全配慮義務を果たした証拠になります。記録すべき項目は「日時・連絡手段・内容・結果(不通・折り返しなし等)・対応者氏名」の5点です。Excelやメモアプリでかまいません。「〇月〇日14時、電話3回発信・応答なし。担当:山田」という一行でよいので、毎回必ず記録してください。この積み重ねが、後の法的手続きや労使トラブルにおける会社の誠実な対応を示す重要な証拠になります。
緊急連絡先(家族)への連絡は可能か
個人情報保護法と「目的の範囲内」という考え方
「家族に勝手に連絡していいのか」という不安を抱える担当者は非常に多いです。結論から言えば、採用時または休職開始時に「安否確認・業務上の緊急連絡」という目的を明示して緊急連絡先を取得していれば、本人の安否確認目的での連絡は個人情報保護法上も正当性があります。
個人情報保護法では、取得時に明示した利用目的の範囲内で情報を使うことが認められています(第18条・第16条)。「緊急時の連絡先」として取得している場合、連絡が取れない状況での安否確認は目的の範囲内といえます。ただし、就業規則や同意書に記載がない場合は今後のために整備が必要です。
家族に伝える情報は最小限に
家族へ連絡する際に注意すべきは、開示する情報を必要最低限にとどめることです。「○○さんの安否確認のためご連絡しました。最近ご本人から連絡が取れておらず、ご様子をお聞きできますか」という形にとどめ、病名・休職理由・給与情報などを伝えることは避けてください。プライバシーへの配慮は、後のトラブル防止にもつながります。
家族とも連絡が取れない場合は警察へ
家族へ連絡しても状況がわからない、または自傷・自殺のリスクが心配される場合は、警察への安否確認依頼(ウェルネスチェック)を検討してください。警察は本人の自宅を訪問し、安全を確認する対応をとってくれます。「大げさでは」と感じるかもしれませんが、会社として「できる限りの対応をした」という記録にもなり、安全配慮義務の履行を示すうえでも意義があります。
休職期間が満了しても戻らない場合の手続き
「自動退職」と「解雇」は別物
就業規則に「休職期間満了時に復職できない場合は自然退職とする」という規定がある場合、解雇手続きを経ずに雇用終了とすることが可能です。これを「自動退職(自然退職)」といい、会社が一方的に雇用を終了させる「解雇」とは法的に異なります。ただし、自動退職として処理するためには一定の要件を満たす必要があります。
自動退職を有効にするための3要件
自動退職の処理が後から「不当解雇」と争われないためには、以下の3点が必要です。まず、就業規則に自動退職の規定が明確に記載されていること。次に、休職満了日の前に書面(内容証明郵便が望ましい)で予告通知を送付していること。そして、復職の可能性を実質的に検討した形跡(産業医への確認・復職面談の試みなど)があることです。
特に「予告なく満了日を迎えた」というケースは危険です。労働契約法第16条(解雇権濫用法理)が適用され、不当解雇とみなされるリスクがあります。連絡が取れないまま満了日が近づいている場合は、早めに書面を送ることが最優先です。
就業規則に規定がない場合は注意が必要
就業規則に休職満了の規定がない、または規定が曖昧な場合は、自動退職処理は非常に難しくなります。この場合は安易に手続きを進めず、社会保険労務士や弁護士に相談することを強くお勧めします。中小企業では就業規則が何年も更新されておらず、現実の運用に合っていないケースが少なくありません。
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対応記録の残し方と事前の仕組みづくり
「後から証明できる」記録の作り方
対応ログに残すべき内容を改めて整理すると、「いつ・誰が・どんな方法で・何を伝えようとして・どんな結果だったか」の5点です。例えば「2025年4月1日(火)10:30、担当:鈴木、電話発信3回・応答なし。翌日再度連絡予定」のように記録します。
メールやSMSはそのままログとして残ります。書留郵便は配達証明のはがきを必ず保管してください。複数の担当者が関わる場合は、記録を一元管理するシートやフォルダを作り、情報が属人化しないようにすることが重要です。
音信不通になる前の「予防設計」が最も効果的
実は、最も効果的な対策は音信不通になる前に打つことです。休職開始時に「連絡ルール」を書面で合意しておくことが有効です。具体的には「毎月第1月曜日に担当者へ体調報告のメールを送る」「緊急時は家族経由でも連絡可とする」といった内容を、本人・家族・会社の三者で確認しておきます。
この仕組みがあれば、連絡が途絶えた際に「約束した連絡がなかったため確認しています」という正当な理由でアクションが取れます。ハラスメントと言われるリスクも大幅に下がります。専任人事がいない企業ほど、こうした「型」を事前に作っておくことが後々の負担軽減につながります。
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まとめ
休職中の従業員と連絡が取れなくなった場合、「様子を見る」だけでは安全配慮義務の観点からリスクがあります。まず複数の手段で連絡を試み、すべての対応を記録することが出発点です。次に緊急連絡先(家族)への連絡可否を確認し、必要であれば警察への安否確認依頼も選択肢に入れます。休職満了が近い場合は、就業規則の規定を確認したうえで書面による予告通知を早めに行うことが不当解雇リスクを防ぐ鍵です。そして何より、音信不通になる前に連絡ルールを書面で合意しておく「予防設計」が最も効果的です。
「うちの就業規則で自動退職処理はできるのか」「家族への連絡文をどう書けばいいか」「対応ログの雛形がほしい」など、具体的な場面で一人で抱え込まないでください。ウェルセンス株式会社では、専任人事がいない中小企業の人事担当者を対象に、こうした休職・復職に関する実務対応を一緒に考えるサポートを行っています。まずはお気軽にご相談ください。
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