リファラル採用で双方退職、どう防げばいい?

リファラル採用で双方退職、どう防げばいい? 採用・定着
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「紹介してくれた同僚が辞めた。そして紹介された本人も3ヶ月後に辞めた」——こうした経験をした経営者・人事担当者から、「あのとき何ができていたのか」という声が多く届きます。リファラル採用(社員紹介採用)は、採用コストが低く定着率も高いとされていますが、設計やフォロー体制が不十分だと、紹介者・被紹介者の双方退職という最悪のパターンに陥ることがあります。この記事では、双方退職が起きる構造的な原因と、再発させないための制度・運用の具体策をお伝えします。

なぜリファラル採用で双方退職が起きるのか

双方退職の根本原因は「人間関係の近さ」を「仕事の適合性」と混同してしまう点にあります。加えて、インセンティブ設計やフォロー体制の不備が、問題を早期に発見できない状況をつくり出しています。

「仲がいい」が「合う」に変換される錯覚

リファラル採用では、紹介者が「気心の知れた友人・知人だから大丈夫」という感覚で推薦するケースが大半です。しかし、友人としての信頼関係と、職場での業務適性・カルチャーフィットはまったく別の話です。「細かい仕事内容まで話し合わなかった」「残業の多さを伝えていなかった」といった情報のギャップが、入社後のミスマッチを生みます。リファラル採用であっても、通常の採用と同様に面談・業務説明・適性確認のプロセスを省略しないことが大前提です。

被紹介者が「言い出せない」状況に陥るメカニズム

入社後に仕事や職場環境に違和感を感じても、被紹介者は「紹介してくれた○○さんに迷惑をかけたくない」という心理的な遠慮から、問題を抱え込んでしまいます。上司やHRへの相談も「紹介者を経由しなければ気まずい」と感じ、相談できないまま限界を迎えて突然退職、という流れが典型的です。この状況はフォロー体制を整備することでしか防ぎようがありません。

インセンティブが「義理」を生み、離職を促す逆効果

入社時に紹介インセンティブを一括支給する設計では、インセンティブを受け取った紹介者が「自分の役割は果たした」という感覚を持ちやすくなります。そこに職場での不満が重なると、「もう十分やった」と退職に踏み切るケースがあります。制度の設計ミスが、離職を後押しするリバース効果を生んでしまうのです。

インセンティブ設計で定着率を変える

リファラル採用で双方退職を防ぐには、インセンティブの支払いタイミングが重要です。入社直後の一括支給ではなく、分割払いに設計することで、紹介者が継続的に定着を意識する仕組みをつくれます。また、名称・課税処理・返還条件を正しく整備しないと、後々のトラブルに発展します。

分割払いが定着率を高める理由

インセンティブの全額を入社直後に支払うと、紹介者はその後の被紹介者の定着に関心を持ちにくくなります。一方、後半の支払いを入社3〜6ヶ月後に設定すると、紹介者は「あの人にちゃんと馴染んでいるか」を自然に気にかけるようになります。紹介者を非公式なオンボーディングサポーターとして機能させる設計です。

支払いタイミング 割合の目安 設計の意図
入社確定時 30〜40% 紹介モチベーションの確保
入社3〜6ヶ月後 60〜70% 定着を条件とした後払いで関心を継続させる

職業安定法・課税処理・返還条項の整備

リファラル採用で双方退職を防ぐためにも、インセンティブ支給時の法令面を整理しておくことが重要です。厚生労働省の解釈では、自社の社員が自社への採用紹介を行う行為は職業安定法上の「有料職業紹介(第30条)」には該当しないとされており、通常のインセンティブ支給は許容されています。ただし、以下の点は必ず整備してください。

  • 名称:「紹介料」ではなく「採用協力手当」「リファラル手当」とし、就業規則または社内規程に明記する
  • 課税処理:現金支給の場合は給与所得として源泉徴収が必要。ギフト券等も課税対象になるため、経理部門と事前にルールを決める
  • 返還条項:「入社後○ヶ月以内退職で返還」という条項は、労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)に抵触するリスクがある。後払い設計で返還リスク自体を回避するほうが現実的

規模別の注意点

従業員20〜30名規模では、就業規則の付属規程として「リファラル採用規程」を別途作成することをおすすめします。口約束や慣習でインセンティブを運用していると、「聞いていた金額と違う」「支払われなかった」といったトラブルが発生しやすく、既存社員の不信感につながります。50名に近い規模であれば、採用要領に組み込んで全社員に周知する体制が望ましいでしょう。

被紹介者を孤立させないフォロー体制の作り方

リファラル採用で双方退職を防ぐには、被紹介者専用の相談ルートを紹介者とは別に設けることが最大のポイントです。「紹介者に頼らなくていい」環境をつくることが、被紹介者の心理的安全性を保ちます。

三者構造で相談ルートを明確化する

リファラル採用後の関係図を「被紹介者・紹介者・HR(または経営者)」の三者で明確に設計します。具体的には、被紹介者の入社後フォローは直属の上司またはHRが担当し、紹介者はあくまで「職場の先輩・友人」としての立場に留めます。被紹介者が何か困ったとき、紹介者を経由せずにHRや上司に相談できる経路が明示されていることが重要です。これにより、被紹介者が「紹介者への遠慮」で問題を抱え込む状況を防げます。

入社後30日・60日・90日の定点フォロー

オンボーディングとは別に、被紹介者専用の1on1を入社後30日・60日・90日のタイミングで設けることをおすすめします。質問の内容は「業務の理解度」ではなく、「職場環境・人間関係・仕事への期待値のズレ」に焦点を当ててください。「思っていた仕事内容と違う点はありますか?」「困っていることを誰かに相談できていますか?」といったオープンな問いかけが、早期にミスマッチを発見する手がかりになります。

紹介者へのフォローも並行して行う

被紹介者のケアに注力するあまり、紹介者のケアが漏れるケースがあります。紹介者は「被紹介者がうまくやっているか」という心理的負担を入社後も抱えています。定期的に「最近どう?」と声をかけ、紹介者自身の業務状況や気持ちも確認することが、紹介者の退職防止にもつながります。小規模組織ほど、この「人間関係の連鎖」が職場全体のエンゲージメントに直結します。

双方退職が起きてしまった後の職場修復

もし双方退職が起きてしまった場合、放置すると残留社員の会社への信頼感が損なわれます。事後対応として最初にすべきことは、既存社員への丁寧な状況説明と、職場の心理的安全性の再構築です。

残留社員へのコミュニケーションをどうとるか

20〜50名規模の組織では、全員が顔見知りであることが多く、双方退職の「気まずさ」は職場全体に伝播します。この段階でリーダーや経営者が何も言わないでいると、「会社は何も感じていない」「同じことが繰り返される」という不信感が広がります。全体ミーティングや個別の1on1を通じて、「今回のことを踏まえて制度・フォロー体制を見直す」という姿勢を明確に伝えることが、残留社員の安心感につながります。

採用プロセスと制度を見直す具体的タイミング

双方退職が発生した後は、「なぜ起きたか」の原因分析を採用プロセスの観点から行いましょう。確認すべき点は、入社前に業務内容・労働条件・職場環境を十分に伝えていたか、選考を省略していなかったか、インセンティブの支払い設計が適切だったか、フォロー体制が機能していたかの4点です。この分析を基に社内規程を改定し、次の採用に活かすことが再発防止の核心です。

リファラル採用を続けるかどうかの判断基準

一度トラブルが起きると「リファラル採用をやめよう」という結論になりがちですが、制度設計とフォロー体制を整えれば、リファラル採用は中小企業にとって依然として有力な採用手法です。ただし、以下の状況に当てはまる場合は、制度を整備してから再開することを強くおすすめします。

  • リファラル規程が書面化されていない
  • 入社後の1on1フォローを行っていない
  • インセンティブを入社時に全額一括支給している
  • 被紹介者の相談窓口が紹介者しかない

制度を整備する前に確認すべき社内の前提条件

リファラル採用の制度を設計する前に、まず社内の採用・労務の基盤が整っているかを確認することが必要です。基盤が整っていない状態でリファラルの仕組みだけを整えても、根本的な問題は解決しません。

就業規則・採用要領の整備状況を確認する

リファラル採用規程は、就業規則の体系のなかに位置づけられる必要があります。まず、就業規則自体が最新の法令(労働基準法・育児介護休業法など)に対応しているかを確認してください。就業規則が10人以上の事業場では労働基準監督署への届出が必要です。規程の整備が不十分な場合は、リファラル採用の制度を単独で整えるより、就業規則全体の見直しを先に行うことで、ほかの採用・労務トラブルも併せて防ぐことができます。

産業医・外部相談窓口の有無で対応が変わる

常時50人以上の事業場では産業医の選任が義務づけられており、メンタル不調のリスクを抱えた被紹介者のフォローを産業医と連携して行える体制を整えられます。一方、50人未満の事業場では産業医の選任義務はなく、外部のEAP(従業員支援プログラム)や産業保健総合支援センターの活用が現実的な選択肢になります。リファラル採用で入社した社員が精神的な不調を抱えた場合にどこへつなぐかを、採用前に決めておくことが大切です。

まとめ

リファラル採用で双方退職が起きる背景には、「関係性の近さ」を「適合性」と混同する採用前の過信、入社後のフォロー体制の不在、そしてインセンティブ設計のミスという三つの構造的な問題があります。再発を防ぐためには、採用プロセスの省略をなくすこと、インセンティブを分割払いに設計すること、被紹介者専用の相談ルートを紹介者とは別に設けること、そして制度を就業規則・社内規程として書面化することが必要です。20〜50名規模の組織では、人間関係の影響が職場全体に広がりやすいだけに、一度起きたトラブルが全体のエンゲージメント低下につながるリスクがあります。

ウェルセンス株式会社では、中小企業の人事担当者・経営者の方からの「採用後のフォロー体制をどう整えればいいか」「就業規則やリファラル規程の整備から相談したい」といったご相談をお受けしています。専任の人事がいない状況でも対応できる、実務的なサポートを提供していますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. リファラルインセンティブの金額はどのくらいが相場ですか?

A. 業種・職種・採用コストの削減額によって大きく異なるため、一律の相場はありません。一般的には、採用エージェントに支払う想定費用(理論年収の20〜30%程度)と比較して、その一部をインセンティブに充てるという考え方で設定するケースが多いです。重要なのは金額より支払いタイミングであり、入社3〜6ヶ月後に後払いする分割設計が定着効果を高めます。

Q. リファラル採用で「早期退職したらインセンティブを返還してほしい」という条項は有効ですか?

A. 返還を強制する条項は、労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)に抵触するリスクがあります。強制的な返還請求は法的に難しいため、「前払い分を少なくし、後払いを定着後に支給する」設計で、返還リスクそのものを回避するほうが実務的に安全です。どうしても返還条項を設ける場合は、労働法に詳しい専門家に相談したうえで書面化してください。

Q. リファラル採用で双方退職後、既存の社員へどう説明すればいいですか?

A. 退職の詳細な理由を開示する必要はありませんが、「今回の経験を踏まえてフォロー体制や制度を見直す」という会社の姿勢を伝えることが重要です。何も言わずにいると「また同じことが起きるのでは」という不安が残留社員に広がります。全体ミーティングか1on1のいずれかで、改善に向けた具体的な取り組みを共有してください。

Q. リファラル採用であっても、通常の採用と同じ選考プロセスを行うべきですか?

A. はい、必ず行ってください。リファラル採用で双方退職を招く最大の落とし穴は、「知っている人だから」という理由で選考を省略することです。業務内容の説明・面談・適性確認を通常の採用と同様に行うことで、入社後のミスマッチを防げます。選考を省略することは紹介者への配慮ではなく、被紹介者にとっても職場にとっても不利益になります。

Q. 専任の人事担当者がいなくても、リファラル採用の制度は整備できますか?

A. 整備できます。まずリファラル採用規程の骨子(対象者・インセンティブ金額・支払いタイミング・相談ルートの明示)を1〜2ページの社内文書として作成し、就業規則の付属規程として位置づけることから始めてください。専任人事がいない場合は、社会保険労務士や外部の人事コンサルタントに規程作成を依頼するのが現実的な方法です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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