障害者雇用義務が生じたら?中小企業の対応5ステップ

障害者雇用義務が生じたら?中小企業の対応5ステップ 採用・定着
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「従業員が40人を超えたけど、障害者を雇用しなければいけないの?」——先日、そんな連絡がハローワークから届いて慌てた、という経営者の方がいらっしゃいます。専任の人事担当者がいない中小企業では、障害者雇用の義務が突然降りかかってくるように感じられ、何から手をつければよいか途方に暮れるのも無理はありません。この記事では、義務の確認から採用実務・活用できる助成金まで、5つのステップで整理します。

自社が義務対象かどうかを確認する

障害者雇用義務が生じるかどうかは、「常用雇用労働者数」と「法定雇用率」の2つで決まります。まずこの2つを押さえれば、自社の状況を自分で判断できます。

義務が生じる従業員数の目安

根拠となる法律は障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)です。法定雇用率は厚生労働省が定期的に引き上げており、段階的な改定が続いています。現時点の正確な雇用率は、必ず厚生労働省の公式サイトで最新情報を確認してください。

義務が発生する従業員数の目安は「法定雇用率の分母となる常用雇用労働者数が一定数以上になったとき」です。たとえば法定雇用率が2.5%であれば、常用雇用労働者が40人以上になると雇用すべき障害者数が1人以上となり、義務が生じます。従業員規模が20〜50名の企業はまさにこのボーダーラインに位置しているため、規模の変化には注意が必要です。

「常用雇用労働者数」の数え方

ここで多くの担当者が混乱するのが、パートや短時間勤務者の扱いです。週所定労働時間によって、以下のように換算して数えます。

週所定労働時間 カウント
30時間以上 1人としてカウント
20時間以上30時間未満 0.5人としてカウント
20時間未満 カウント対象外

たとえば正社員35名、週25時間のパート8名が在籍している場合、常用雇用労働者数は35+(8×0.5)=39人となります。この計算を正確に行うことが、義務の有無を判断する最初の作業です。

実雇用率の報告義務も確認する

常用雇用労働者が43.5人以上の事業主は、毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークへ報告する義務があります。この報告が行政指導の起点になるため、報告義務が生じる規模かどうかも合わせて確認してください。

義務を果たさないと何が起きるのか

障害者雇用義務を下回っている場合に直ちに刑事罰が課されるわけではありませんが、行政指導や金銭的な負担が段階的に生じます。リスクの全体像を把握しておくことが冷静な対応につながります。

障害者雇用納付金の対象になるかどうか

雇用義務数を下回っている場合、常用雇用労働者が100人を超える事業主には、不足1人あたり月額の障害者雇用納付金が課されます。一方、100人以下の事業主には納付金の支払い義務は生じません

20〜50名規模の多くの企業は「100人以下」に該当するため、今すぐ金銭的ペナルティが発生するわけではありません。ただし、雇用義務そのものは存在しており、ハローワークへの報告義務や行政指導の対象となる点は変わりません。「納付金がないから放置してよい」という理解は誤りです。

行政指導・計画提出命令の流れ

6月の雇用状況報告をベースに、ハローワークから雇入れ計画の作成命令が出ることがあります。計画の履行が不十分な場合は、企業名の公表に至るケースもあります。特に従業員規模が拡大しつつある成長企業は、気づかないうちに報告義務や指導対象のラインを超えていることがあるため、年1回は自社の常用雇用労働者数を確認する習慣をつけましょう。

採用前に社内環境を整える

いきなり求人を出す前に、受け入れ側の準備を最低限整えておくと、採用後のトラブルを大きく減らせます。「小さい会社だから難しい」と感じている方も、まずは現実的にできることから始めれば十分です。

障害の種別と必要な配慮を知る

「障害者=重い介護が必要」というイメージは実態と異なります。障害には大きく身体障害・知的障害・精神障害・発達障害の4種別があり、それぞれ必要な配慮は異なります。たとえば精神障害や発達障害のある方は、外見からは障害がわかりにくく、作業手順の明文化や定期的な面談が有効なケースが多いです。身体障害のある方でも、デスクワーク中心の業務であれば大規模な設備改修が不要な場合がほとんどです。

採用する前に「どの障害種別の方を対象にするか」「どんな業務を担当してもらうか」を大まかに決めておくと、求人票の作成もスムーズになります。

担当者と業務の棚卸しをする

専任の人事担当者がいない企業では、採用後の対応窓口を誰にするかを事前に決めておくことが重要です。一人ひとりの業務量を確認し、障害のある方でも対応しやすい業務(データ入力、ファイリング、清掃、軽作業など)を洗い出しておきましょう。業務の切り出しが難しい場合は、後述する就労移行支援事業所やジョブコーチ支援を活用することで、外部の専門家に助言を求めることができます。

求人を出す・採用活動を進める

障害者雇用の求人ルートは複数あります。中小企業にとっては、無料で活用できる公的機関から始めるのが最も現実的です。

ハローワークの障害者専門窓口を使う

ハローワーク(公共職業安定所)には、障害者専門の窓口「専門援助部門」があります。求人の無料掲載、求職者とのマッチング支援を行っており、初めての障害者採用であることを伝えると、担当者が丁寧にサポートしてくれます。まず最初に最寄りのハローワークへ相談するところから始めましょう。

就労移行支援事業所・就労継続支援との連携

就労移行支援事業所は、障害のある方が就職に向けてスキルを習得する訓練施設です。事業所側も就職先を探しているため、企業からアプローチすることで実習や見学を経た採用につながりやすくなります。いきなり採用するのが不安な場合は、後述する「トライアル雇用」と組み合わせると負担が軽減されます。

活用できる主な助成金

障害者雇用に際して活用できる助成金は複数あります。いずれも要件・上限額・申請期限が改定されることがあるため、申請前に必ずハローワークまたは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)で最新情報を確認してください。

  • 特定求職者雇用開発助成金(障害者コース):ハローワーク等の紹介で障害者を雇用した場合に、賃金の一部を一定期間助成する制度。
  • 障害者トライアル雇用助成金:短期の試行雇用(原則3か月)を経て本採用につなげる際に助成。採用リスクを下げながら適性を見極めたい場合に有効。
  • 障害者介助等助成金:職場介助者の配置・委嘱等に要した費用を助成。身体障害のある方を採用する際に活用しやすい。
  • 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業:外部のジョブコーチが職場に出向き、本人と職場の双方を支援する。採用直後の定着に不安がある場合に特に有効。

採用後の定着支援を仕組み化する

障害者雇用でつまずくのは採用時より採用後が多いという現実があります。小規模企業ほど「気づいたら辞めていた」というケースが起きやすいため、定着の仕組みを最初から作っておくことが重要です。

定期面談と記録を習慣にする

週1回または月2回程度の短い面談(15〜30分)を設定し、業務量・体調・困っていることを確認する習慣をつけましょう。面談内容を簡単に記録しておくと、不調のサインを早期に察知でき、対応のタイミングを逃しません。特に精神障害や発達障害のある方は、自分から「つらい」と言い出しにくいケースがあるため、こちらから声をかける姿勢が大切です。

障害者就業・生活支援センターを定着支援に活用する

障害者就業・生活支援センター(通称「なかぽつ」)は、採用後の職場定着支援を担う公的機関です。採用前から相談できるため、初めての障害者雇用であれば採用活動の段階からつながっておくと安心です。企業側・本人側の双方に対応してくれるため、専任担当者がいない中小企業にとって心強いパートナーになります。

就業規則や合理的配慮の取り決めを文書化する

障害者雇用促進法は、事業主に対して「合理的配慮の提供義務」を課しています。これは「過度な負担にならない範囲で、障害のある方が働きやすい調整を行うこと」を指します。たとえば通院時間の確保、業務マニュアルのわかりやすい形式への変更、休憩時間の調整などが該当します。こうした取り決めを口頭だけで済ませず、雇用契約書や覚書として文書化しておくと、後々のトラブル防止につながります。

まとめ

障害者雇用義務が生じたとき、まず行うべきことは「常用雇用労働者数の正確な把握」と「法定雇用率との照合」です。次に、納付金の対象になるかどうか(100人超かどうか)を確認し、ハローワークへの報告義務と行政指導のリスクを整理します。そのうえで、受け入れ業務の棚卸し・ハローワークへの相談・助成金の活用・定着支援の仕組み化という流れで進めると、専任担当者がいない企業でも無理なく対応できます。

「自社の状況を一度整理したい」「どこから手をつければよいか話を聞いてほしい」という場合は、ウェルセンス株式会社にお気軽にご相談ください。障害者雇用の実務対応から、受け入れ後のメンタルヘルスケア・定着支援まで、中小企業の実情に合わせたサポートをご提供しています。

よくある質問

Q. 従業員が40人を超えたばかりですが、すぐに採用しないといけませんか?

A. 雇用義務は発生しますが、即日採用が求められるわけではありません。まずはハローワークへ雇用状況を報告し、採用に向けた取り組みを開始することが重要です。報告義務が生じる常用雇用労働者43.5人以上かどうかも合わせて確認しましょう。採用に時間がかかる場合も、ハローワークに相談しながら進める姿勢を示すことが大切です。

Q. パートタイマーが多い職場では、常用雇用労働者数はどう数えればよいですか?

A. 週所定労働時間30時間以上の方は1人、20時間以上30時間未満の方は0.5人としてカウントします。週20時間未満の方は対象外です。正社員以外にも契約社員やパートタイマーが含まれるため、全スタッフの所定労働時間を確認したうえで合計を算出してください。

Q. 従業員が50人未満でも障害者雇用納付金はかかりますか?

A. 障害者雇用納付金の支払い義務は、常用雇用労働者が100人を超える事業主に限られます。50人未満であれば納付金の対象にはなりません。ただし、雇用義務と報告義務は一定規模を超えると生じますので、「納付金がないから問題ない」とはなりません。行政指導の対象になり得る点は認識しておきましょう。

Q. 障害者を採用したいが、どんな仕事を任せればよいかわかりません。

A. まず自社の業務を棚卸しし、手順が定型化できる作業(データ入力、書類整理、軽作業など)を切り出すところから始めましょう。障害の種別によって向いている業務は異なるため、ハローワークの専門援助部門や就労移行支援事業所に「こんな業務があるが、どんな方に向いているか」と相談すると具体的なアドバイスを得やすいです。

Q. 障害者を雇用してから体調不良や休職が発生した場合、どう対応すればよいですか?

A. 障害の有無にかかわらず、体調不良や休職への対応は就業規則と雇用契約の内容に沿って行うことが基本です。精神障害や発達障害のある方の場合は、主治医や支援機関(障害者就業・生活支援センターなど)と連携しながら復職の判断を進めることが重要です。社内に専門知識がない場合は、外部の専門家に相談することで適切な対応ができます。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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