採用面接で給与決定ロジックを説明できていますか?

採用面接で給与決定ロジックを説明できていますか? 人事制度
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「御社の給与はどう決まるのですか?」——採用面接でこの一言を聞かれたとき、自信を持って答えられますか?「経験やスキルを見て判断します」「頑張りを評価します」と返しているだけでは、候補者の不安は解消されません。給与の決め方を明確に説明できない企業は、優秀な人材ほど「不透明な会社」と判断して離れていきます。この記事では、採用面接で給与決定ロジックを説明できる状態にするために、何を整理し、どう伝えればよいかを実務的に解説します。

「給与の決め方」を説明できない会社が損していること

給与決定ロジックを言語化できていない会社は、採用面接という大切な接点で候補者の信頼を失っています。特に転職市場の情報量が増えた今、候補者は複数社を同時に比較しながら選考を受けています。

候補者が本当に知りたいのは「入社後の見通し」

候補者が「給与の決め方を教えてください」と聞く背景には、単純な金額への興味だけではなく、「この会社で働き続けると、自分の収入はどう変わっていくのか」という将来見通しへの不安があります。入社時の提示額だけを伝えても、昇給・昇格のルールが不明なままでは説明は完結しません。「入社後のキャリアと収入の見通し」をセットで伝えられる会社が、候補者に安心感を与えられます。

「感覚採用」が引き起こす内定辞退と社内格差

給与額が「前職給与を参考に社長が判断した」「交渉の結果」で決まっている場合、採用が重なるたびに新入社員の給与がバラバラになります。採用競争が激しい職種では市場相場に合わせて高い金額を提示せざるを得ず、気づけば在籍5年目の社員より新入社員の方が給与が高い——という逆格差が生まれます。これは社内の公平感を大きく損ない、既存社員の離職リスクにもつながります。

賃金規程はあるのに「使われていない」問題

「就業規則の一部として賃金規程は作っている」という企業は少なくありません。しかし実態を確認すると、等級や基準額の欄が空白か「別途定める」と書かれているだけで、実際の給与決定には使われていないケースがほとんどです。ルールが実態と乖離した状態では、書類上は整っていても採用面接で説明することはできません。

給与決定ロジックを説明できる状態に必要な4つの要素

給与決定ロジックを候補者に説明できる状態にするには、最低限4つの要素が揃っている必要があります。この4点が言語化されていれば、面接での説明は十分に可能です。

要素 内容
等級定義 どんな役割・能力の人がどの等級に該当するか
等級別賃金レンジ 各等級の最低額〜最高額(または基準額)
採用時の等級認定基準 経験・スキルをどう等級に当てはめるか
昇給・昇格のルール 何がどう評価されると給与が上がるか

等級定義——「あなたはこのポジションです」と言えるか

等級とは、社員の役割や能力のレベルを区分する仕組みです。20〜50名規模の会社であれば、複雑な10段階制は不要です。「メンバー・リーダー・マネージャー」といった3〜5段階のシンプルな構造で十分機能します。重要なのは、各等級に「どんな業務を独立してこなせるか」「どのような判断が求められるか」を言葉で定義しておくことです。これがあれば、候補者の経験を聞きながら「あなたはおそらくこの等級に当てはまります」と説明できます。

賃金レンジと採用時の認定基準——「なぜその金額なのか」を説明する

各等級に対して賃金の幅(例:月給25万円〜30万円)を設定しておくと、「この等級の場合、経験年数や直近の業務内容によってこの範囲内で決定します」という説明ができます。採用時の認定基準とは、候補者の職歴・スキルをどの等級に当てはめるかの判断軸です。たとえば「同職種での実務経験3年以上かつ部下マネジメント経験があればリーダー等級」のように文章化しておくだけで、面接担当者が一貫した説明をできるようになります。

昇給・昇格ルール——「入社後どうなるか」を見せる

昇給のルールは、少なくとも「いつ(年1回の査定など)」「何を評価して(目標達成度・等級基準への到達度など)」「どのくらい上がるか(定額or定率の目安)」の3点が整理されていれば候補者への説明に使えます。「頑張りを評価します」という抽象的な言葉は候補者に何も伝えていません。具体的なサイクルと評価軸を示すことで、入社後のキャリアパスが見えるようになります。

整理する順番——何から手をつければいいか

給与制度の整理は、まず現状の「見える化」から始めます。いきなり新制度を設計しようとすると手が止まります。今ある状態を整理してから設計に入るのが最も効率的な順序です。

現状の給与分布を書き出す

まず、在籍社員の役職・勤続年数・現在の給与額を一覧にします。これをExcelなどで並べると、社内の給与の「実態」が見えてきます。同じ役職なのに給与差が大きいケース、勤続年数が長くても給与が低いケース、逆に勤続が短くても高いケースなど、現状の問題点が視覚化されます。この作業を省いて制度を設計すると、完成した制度が実態と乖離したものになります。

等級と現在の社員を対応させる

次に、設計した等級定義に現在の社員を当てはめてみます。「この人はリーダー等級、この人はメンバー等級」と仮置きすることで、等級定義が実態に合っているかを確認できます。当てはめてみると「全員が同じ等級になってしまう」「どの等級にも当てはまらない人がいる」という問題が出ることがあります。そのフィードバックをもとに等級定義を微調整するのが現実的な進め方です。

賃金レンジを現状給与から逆算して設定する

等級と社員の対応が固まったら、各等級に属する社員の現在給与の分布をもとに賃金レンジを設定します。完全にゼロから数字を作る必要はありません。既存社員の給与が大きく外れないような範囲を設定したうえで、採用時に提示する金額の上下限を決めます。このとき、採用給与が既存社員の賃金レンジを大きく超えないよう注意することが、社内の公平感を維持するポイントです。

法的に押さえておくべきポイント

給与決定ロジックの整理は、法令上の義務とも直結しています。「制度がないから仕方ない」では済まない場面があることを理解しておきましょう。

就業規則と賃金規程の記載義務

常時10人以上の労働者を使用する事業場は、労働基準法第89条により、賃金の決定・計算・支払方法に関する事項を就業規則に記載し、労働基準監督署に届け出る義務があります。「賃金規程はあるが形骸化している」という状態では、実質的に義務を果たしているとは言えません。また、労働基準法第15条は、採用時に賃金の決定・計算方法を書面で明示することを使用者に義務づけています。面接で口頭説明しただけでは、この義務を果たしたことにはなりません。

同一労働同一賃金と性別による差異

パートタイム・有期雇用労働法(いわゆる同一労働同一賃金)により、正社員と非正規社員の間に不合理な待遇差を設けることは禁止されています。給与決定ロジックを整理する際には、雇用形態が異なる場合の差異の根拠も明文化しておくことが必要です。また、男女雇用機会均等法により、性別を理由とした賃金差別は禁じられています。採用時の給与提示において、客観的なルールがないと意図せず法令違反のリスクが生じます。

採用面接での伝え方——どこまで開示するか

制度を整理したとしても、採用面接でどう伝えるかを準備していなければ意味がありません。「書類は整ったが面接で説明できない」という状態は意外と多く、対策が必要です。

開示レベルの考え方

候補者への開示について、「等級の詳細な定義文書」「全社員の給与一覧」などを見せる必要はありません。伝えるべき内容は、大きく3点です。まず採用時の等級と、その等級に対応する賃金レンジの目安を示すこと。次に、昇給はいつ・どんな評価をもとに行われるかの概要を伝えること。そして、入社後にどのようなキャリアパスが想定されるかを例示することです。この3点を伝えられれば、候補者の「不透明感」は大幅に解消されます。

説明スクリプトを用意する

制度整備と並行して、採用面接で使う「説明スクリプト」を作っておくことを強くお勧めします。経営者や兼務担当者が毎回違う説明をすると、候補者間で情報のブレが生じ、トラブルの原因になります。たとえば「当社では社員を3つの等級に分けています。今回の求人はリーダー等級で、月給28万〜33万円の範囲で、ご経験に応じて決定します。昇給は年1回、上半期・下半期の評価をもとに判断します」という形で、話す内容を文章化しておくと、誰が面接しても一貫した説明ができるようになります。

従業員数・状況による対応の分岐

自社の状況によって、整備の優先順位が変わります。常時10人未満の場合は就業規則の作成・届出義務はありませんが、採用時の労働条件明示義務(労基法第15条)は人数にかかわらず適用されます。すでに賃金規程がある場合は、まず現状の規程と実態の乖離を確認することが先決です。人事担当者がおらず制度をゼロから作る場合は、複雑な等級制度より「3等級・シンプルなレンジ表・年1回昇給」というミニマム構成から始め、運用しながら精緻化する方が現実的です。

まとめ

採用面接で給与決定ロジックを説明できる状態にするには、等級定義・賃金レンジ・採用時の認定基準・昇給ルールという4つの要素を言語化することが出発点です。「社長の感覚」で決まっていた給与を整理することは、採用競争力の向上だけでなく、既存社員との公平性確保や法令上の義務履行にもつながります。まず現状の給与分布を書き出し、等級と社員を対応させ、賃金レンジを設定するという順序で進めると、制度設計の手が動きやすくなります。「何から手をつければいいかわからない」「整理しようとしたが止まっている」という場合は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。給与体系の整理から採用場面での伝え方まで、20〜50名規模の企業に合ったかたちでサポートします。

よくある質問

Q. 社員が10人未満でも給与決定ルールを整理する必要がありますか?

A. 就業規則の作成・届出義務(労働基準法第89条)は常時10人以上の事業場に適用されますが、採用時に賃金の決定・計算方法を書面で明示する義務(労働基準法第15条)は従業員数にかかわらず全ての事業場に適用されます。また、採用競争力や社内の公平感の観点からも、規模にかかわらず給与決定ルールを言語化しておくことは有益です。

Q. 採用面接で賃金レンジを開示することに抵抗があります。開示は必須ですか?

A. 法的には、採用内定時または採用時に賃金の決定・計算方法を書面で明示することが義務です。面接段階での詳細な開示は義務ではありませんが、賃金レンジの目安を伝えることは候補者の不安解消と採用競争力向上に直結します。「月給25万〜32万円、経験に応じて決定」程度の開示が現実的な落としどころです。

Q. 採用強化のために給与を上げたいのですが、既存社員との逆格差が心配です。どうすればいいですか?

A. まず賃金レンジを設定し、採用給与がそのレンジの上限を超えないよう管理することが基本です。既存社員の給与がレンジ下限を下回っている場合は、定期昇給や特別昇給で是正する計画を合わせて立てることが重要です。逆格差が顕在化すると既存社員の離職リスクが高まるため、採用給与の設定と既存社員の処遇改善はセットで検討することをお勧めします。

Q. 社労士に相談しても「現場に合わせてください」と言われ、制度が作れずにいます。何が問題ですか?

A. 社労士は法的な適法性の確認や書類作成を得意としますが、「自社の等級をどう定義するか」「どんな評価軸で昇給を決めるか」という経営・組織設計の判断は、企業側が先に方針を決める必要があります。制度の”考え方の整理”から支援してもらえる人事コンサルタントや、実務経験のある支援者に相談することで、手が動き始めることが多いです。

Q. パートや契約社員も含めて給与ルールを整理する必要がありますか?

A. はい、パートタイム・有期雇用労働法(同一労働同一賃金)により、正社員と非正規社員の間に不合理な待遇差を設けることは禁止されています。給与ルールを整理する際には、雇用形態ごとの賃金差異の根拠も明文化しておく必要があります。「正社員は責任の範囲が広い」「非正規は業務が限定されている」など、差異の合理的な説明ができる状態にしておくことが求められます。

【監修】ウェルセンス株式会社
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