採用活動の記録保管期間と廃棄ルールの整え方

採用活動の記録保管期間と廃棄ルールの整え方 採用・定着
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「採用が終わったあと、不採用者の履歴書ってどうしてますか?」——そう聞かれて、引き出しの奥に何年分も眠っている書類の山を思い浮かべた方もいるかもしれません。実は、採用活動にまつわる記録の保管期間や廃棄ルールは、法律で一律に決まっているわけではありません。だからこそ、企業側が自分たちでルールを設計しなければならず、それが後回しになりがちな現状があります。この記事では、採用活動の記録保管に関わる法的な考え方と、実務で使えるルール整備の進め方をわかりやすく解説します。

採用活動の記録保管に関わる法律の基本

採用活動における記録の保管は、主に個人情報保護法の枠組みで考えます。労働基準法が定める書類保存義務は採用に至った労働者の記録が対象であり、不採用者の書類には直接適用されません。

個人情報保護法が採用活動に適用される理由

応募者の氏名・住所・生年月日・職歴・顔写真などは、すべて個人情報保護法(正式名称:個人情報の保護に関する法律)における「個人情報」に該当します。したがって、採用活動を行う企業は、応募者から個人情報を取得する際に、その利用目的を明示する義務(同法第17条・第18条)を負います。たとえば「採用選考のために使用します」と明記することがこれにあたります。

また、採用選考という目的が終了した後は、「利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければならない」(同法第19条)と定められています。これは努力義務ですが、対応しなかった場合にトラブルが生じたとき、企業の管理姿勢が問われることになります。

労働基準法の保存義務は不採用者には適用されない

労働基準法第109条は、労働者名簿や賃金台帳などの「重要な書類」を5年間(当面の間3年間)保存することを義務付けています。ただし、この規定が対象とするのは実際に採用された労働者に関する書類です。不採用者の履歴書や面接メモは、この義務の対象外となります。

つまり、不採用者の書類については「労働基準法で3年保管が義務」という理解は誤りであり、企業が自主的に保管ルールを設ける必要があります。

「法律が期間を決めてくれる」という誤解を解く

採用担当者の方から「個人情報は3年保管のルールがあると思っていた」という声をよく聞きます。しかし、採用関係書類に一律の法定保存期間はありません。個人情報保護法は「いつまで保管せよ」ではなく、「利用目的が終わったら速やかに消去せよ」という方向性を示しているだけです。ルールが存在しないこと自体がリスクになる、というのが実態です。

実務上の保管期間の目安と根拠

法令で保管期間の数値は定められていませんが、実務慣行としては不採用者の書類を選考終了後6ヶ月〜1年程度保管するケースが多く見られます。この期間を設定する理由は、紛争リスクの時間軸と関係しています。

不採用者の書類を一定期間残す必要がある理由

不採用者の応募書類や面接評価シートをすぐに廃棄してしまうと、後になってトラブルが生じたときに対応できなくなる場合があります。具体的には、次のようなケースが想定されます。

  • 不採用者から「選考の根拠を開示してほしい」という問い合わせが来た場合
  • 「性別・出身地・年齢を理由とした不当な不採用だ」という就職差別のクレームが来た場合
  • 内定を一度出したあとに取り消した場合の紛争対応

こうした紛争は、選考終了後1年以内に顕在化するケースが大半です。そのため、実務上は「選考終了後1年」を保管期間の目安とする企業が多くなっています。

書類の種類別・保管期間の目安

対象書類 実務上の保管期間の目安 主な根拠・理由
不採用者の応募書類(履歴書・職務経歴書) 選考終了後6ヶ月〜1年程度 紛争リスクが概ね1年以内に顕在化するため
不採用者の面接評価シート・選考メモ 選考終了後6ヶ月〜1年程度 差別的選考クレームへの対応根拠として
採用者の応募書類 雇用終了後5年(当面3年) 労働基準法第109条の精神に準じた管理

これらはあくまで実務慣行であり、法的に義務付けられた数値ではありません。社内規程として明文化することで、はじめて組織としての「ルール」になります。

採用者と不採用者で管理を分けることの重要性

採用に至った方の書類は労働関係書類として長期保管が必要な一方、不採用者の書類は利用目的(採用選考)が終了した時点で消去の方向に動かす必要があります。同じフォルダや引き出しにまとめて保管していると、廃棄のタイミングを見誤るリスクがあります。採用・不採用で保管場所や管理ルールを分けて整備することが、実務上の第一歩です。

廃棄の方法と個人情報漏えいリスクへの対応

廃棄のタイミングと同様に重要なのが「廃棄の方法」です。不適切な廃棄は個人情報の漏えいにつながり、企業としての信頼を大きく損なう可能性があります。

紙の書類を廃棄する際の注意点

履歴書・職務経歴書など紙の書類は、必ずシュレッダーを使って裁断廃棄するか、機密文書専門の溶解処理サービスに委託します。ゴミ袋にそのまま入れて廃棄することは、個人情報保護法上の「安全管理措置」(同法第23条)に反する可能性があります。溶解処理サービスを使う場合は、処理完了の証明書を受け取り、一定期間保管しておくと安心です。

デジタルデータを削除する際の注意点

採用管理システムや共有フォルダに保存した応募者情報を削除する場合、「ゴミ箱に移動してそのまま」という状態は削除とは言えません。ゴミ箱を空にする操作はもちろん、クラウドストレージやバックアップデータにも同じ情報が残っていないかを確認する必要があります。採用管理ツールを使用している場合は、そのツールの「データ削除機能」と「バックアップポリシー」を事前に確認しておきましょう。

廃棄記録を残しておく

廃棄したこと自体を記録しておくことも重要です。「いつ・誰が・どの書類を・どのように廃棄したか」を簡単なログとして残しておくと、万が一クレームや問い合わせが来た際に「適切に廃棄しました」と説明できる根拠になります。複雑な書式は不要で、Excel等で管理する簡易台帳で十分です。

社内ルールの整備と応募者への情報開示

採用記録の保管・廃棄ルールは、担当者の頭の中ではなく、文書として明文化することが組織運営の基本です。担当者が変わっても同じ水準で対応できる仕組みを整えましょう。

社内規程に盛り込むべき項目

採用活動に関する個人情報の取り扱い規程には、最低限以下の内容を含めることを推奨します。

  • 取得する個人情報の種類と利用目的
  • 採用者・不採用者別の保管期間(例:不採用者は選考終了後1年)
  • 廃棄の方法(紙:シュレッダーまたは溶解委託、データ:完全削除の手順)
  • 廃棄の実施担当者と承認フロー
  • 廃棄記録の残し方と保管期間
  • 応募者から開示・削除請求があった場合の対応手順

既存の個人情報保護方針(プライバシーポリシー)に採用活動に関する条項を追加する形でも対応できます。

求人票・応募フォームへの明示が信頼につながる

個人情報保護委員会のガイドラインでは、個人情報の利用目的を本人に明示することが求められています。求人票や応募フォームに「ご応募いただいた個人情報は採用選考のみに使用し、選考終了後〇ヶ月以内に廃棄します」と明記しておくことは、法的な要件を満たすだけでなく、応募者からの信頼を高めることにもつながります。

応募者から開示・削除請求が来たときの対応

個人情報保護法は、本人が保有個人データの開示や削除を請求する権利を認めています(同法第33条・第34条)。不採用者から「自分の履歴書を返してほしい」「情報を削除してほしい」といった問い合わせが来ることは、実際に起こり得るケースです。あらかじめ「受付窓口・回答期限・対応手順」を整備しておくことで、慌てず対応できるようになります。対応手順が整っていないと、対応の遅れ自体が問題視される場合があります。

規模別・状況別に見るルール整備の優先順位

専任人事がいない企業では、すべてを一度に整備しようとすると動けなくなります。自社の状況に合わせて、優先順位を絞って進めることが現実的です。

まだ何もルールがない場合

まず最初に取り組むべきは「保管期間と廃棄方法の社内ルールを1枚の紙(またはドキュメント)にまとめること」です。「不採用者の書類は選考終了後1年で廃棄、シュレッダー使用」という一文でも、ルールがあるとないとでは大きく違います。次に、既存の書類を棚卸しして、保管期間を過ぎたものから順に廃棄します。

すでに採用管理ツールを使っている場合

採用管理システム(ATS)を活用している企業は、ツール上での保存データの削除ポリシーを確認してください。多くのツールは自動削除機能やデータ保持期間の設定ができます。ツールのポリシーと自社のルールを一致させておくことが、管理上の矛盾を防ぐポイントです。

複数名で採用活動を行っている場合

採用担当が複数いる、または兼務で担当が変わりやすい企業では、ルールを「文書化して共有する場所を決める」ことが最重要です。社内Wikiや共有ドライブに採用個人情報取り扱い手順書を置き、採用活動の開始前に必ず確認する習慣をつけると属人化を防げます。

「ルールは分かったけど、どこから手をつけていいか…」と迷っても大丈夫。人事の負担を減らすため、実務的なサポートができるパートナーに相談するのも一つの方法です。

まとめ

採用活動における記録の保管期間は、法令で一律に定められているわけではありません。個人情報保護法は「利用目的が終わったら速やかに消去」という方向性を示しており、企業が自らルールを設定・明文化することが求められています。実務上は、不採用者の書類を選考終了後1年程度を目安に適切な方法で廃棄し、採用者の書類は労働基準法の趣旨に沿って雇用終了後3〜5年保管するのが一般的です。また、廃棄の記録を残すこと、応募者への情報開示を求人票等で明示すること、開示・削除請求への対応手順を整備することも、組織としての信頼性を守るうえで欠かせません。

採用ルール・人事規程の整備は、経営者や兼務人事が一人で抱え込むものではありません。ウェルセンス株式会社では、実現性を重視した人事体制の相談をお受けしています。「手がつけられていない書類整備から一緒に進めたい」という段階からでもお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 不採用者の履歴書は、選考が終わったらすぐ捨ててもいいですか?

A. 法律上「すぐに捨ててはいけない」という規定はありませんが、選考後に不採用理由の問い合わせや差別的選考に関するクレームが来た場合に対応できなくなるリスクがあります。実務上は選考終了後6ヶ月〜1年程度保管したうえで廃棄するケースが多く見られます。自社でルールを決めて明文化しておくことが重要です。

Q. 採用活動の記録に関して、個人情報保護法は何年保管と定めているのですか?

A. 個人情報保護法は採用活動の書類について「何年保管」という具体的な期間を定めていません。同法第19条では「利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努める」という努力義務を課しているのみです。保管期間は企業が自主的に設定し、社内規程として明文化することが求められます。

Q. 不採用者から「履歴書を返してほしい」と言われたらどうすればいいですか?

A. 個人情報保護法に基づき、本人から保有個人データの削除や返却を求められた場合は、原則として対応する義務があります(同法第34条)。あらかじめ「応募書類は返却しない」旨を求人票等に明記しておく方法もありますが、削除請求には応じる必要があります。窓口と対応手順を事前に整備しておきましょう。

Q. 面接メモや評価シートも保管が必要ですか?

A. 面接メモや評価シートには応募者個人に関する情報が含まれるため、個人情報として扱う必要があります。特に「なぜ不採用にしたか」という選考根拠は、差別的選考のクレームが来た際の証拠資料になります。応募書類と同様に選考終了後6ヶ月〜1年程度を目安に保管し、その後は適切に廃棄することをおすすめします。

Q. 採用管理システム(ATS)を使っている場合、データ削除はどうすればよいですか?

A. 採用管理システムを利用している場合は、ツール上の削除機能を使うだけでなく、バックアップデータや関連するメール・添付ファイルにも同じ情報が残っていないかを確認することが必要です。また、ツールのデータ保持ポリシー(何日後に完全削除されるか等)を事前に把握し、自社の保管ルールと整合させておくことが重要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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