入社3ヶ月でパフォーマンスが出ない社員、どう判断すればいい?

入社3ヶ月でパフォーマンスが出ない社員、どう判断すればいい? 採用・定着
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「なんとなく仕事が遅い」「指示の理解が薄い」「周囲との温度差がある」——入社から3ヶ月が経とうとしているのに、期待していたパフォーマンスが出てこない。そう感じている経営者・人事担当者の方は少なくありません。しかし、「本人の能力の問題なのか」「会社側の教育に課題があるのか」の切り分けができないまま、対応を先送りにしているケースがほとんどです。この記事では、判断基準の整理から法的リスクの回避、具体的な対応アクションまでを実務視点で解説します。

パフォーマンスが出ないを分解する前に確認すること

まず問うべきは「何を期待していたか、本人に伝えていたか」です。期待値が共有されていなければ、そもそもパフォーマンスを評価する土台がありません。

期待値は書面で伝えていたか

「なんとなく使えない」という感覚が積み上がっている場合、多くのケースで入社時の期待値が口頭のみ、あるいはまったく伝えられていません。「3ヶ月後にはこの業務を一人でこなせるようになる」「週次の報告書を自分でまとめられる」といった具体的な目標が書面で示されていなければ、本人も会社も「何が不足しているか」を共通認識として持てません。まず最初に、入社時または入社直後に渡した資料・面談記録を振り返ってみてください。

評価基準があいまいなまま進んでいないか

「もう少し積極性がほしい」「理解が遅い」といった主観的な評価は、本人への説明責任を果たせないだけでなく、後に労務トラブルとなったときに会社側の主張を裏付けられません。「何をどのレベルでできることを求めていたか」を言語化し直すことが、正確な判断の出発点になります。

能力・意欲・環境を切り分けて考える

パフォーマンスが出ない原因は、本人の能力や意欲だけでなく、職場環境や教育体制にある場合も多くあります。この三つを切り分けずに「本人の問題」と結論づけると、後から「適切な支援がなかった」と主張されるリスクがあります。

能力の問題かどうかを見極めるポイント

能力の問題として判断できるのは、適切な指導・環境・時間が与えられたうえで、それでも求めるレベルに達しない場合です。たとえば「マニュアルを読んで練習する機会を与えたが、同期と比べて習得に著しく時間がかかる」「同じミスを繰り返し、フィードバック後も改善が見られない」といった事実があれば、能力面の課題として記録に残せます。

意欲・態度の問題として記録できる事実はあるか

「やる気がない」という印象は主観ですが、「指示された業務を期日までに着手しなかった」「フィードバックに対して返答がない」「遅刻・無断欠勤が複数回あった」といった行動事実は記録として残せます。意欲・態度の問題を論じるなら、こうした具体的な行動の記録が必要です。

環境アセスメントを先に行う

本人に原因を帰属させる前に、以下の環境要因を確認してください。これを怠ると、後に「指導・環境整備を怠った」として会社側の責任を問われる可能性があります。

  • 業務の引き継ぎ・マニュアルが整備されていたか
  • 質問できる相手(OJT担当・上司)が明確だったか
  • 業務量は他の同職と比較して適切だったか
  • 職場内で孤立していなかったか(心理的安全性が確保されていたか)

20〜50名規模の会社では、教育担当者が明示されていないケースや、入社後にOJTが機能していないケースが少なくありません。「教わる機会がなかった」という状況は、本人の能力問題ではなく会社側の環境問題として整理されます。

試用期間中の本採用拒否——法的に何ができるか

試用期間中であっても、本採用拒否(解雇)には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。「なんとなく期待に届かない」という理由では、法的に無効となる可能性があります。

試用期間の法的位置づけを理解する

試用期間中の雇用契約は「解約権留保付き労働契約」とされており、通常の解雇よりは広い範囲で本採用拒否が認められます。しかし、労働契約法第16条に定める解雇権濫用の法理は試用期間中にも適用されます。最高裁昭和48年の三菱樹脂事件判決は、この試用期間の法的性格を示した代表的な判例として、実務上広く参照されています。「期待に届かない」という感覚だけでは不十分で、具体的な事実・指導履歴・本人への告知がセットで必要です。

試用期間延長には規定の確認が必須

「もう少し様子を見たい」と試用期間を延長しようとする場合、就業規則に延長に関する規定がなければ、一方的な延長は契約上の問題を生じさせる可能性があります。延長する場合は、「就業規則の規定を確認する→本人へ書面で通知する→延長の理由を明示する」という手順を踏む必要があります。就業規則がない、または整備されていない場合は、この段階で専門家への相談が必要です。

「3ヶ月は様子見でいい」という思い込みが最大のリスク

試用期間中に何も記録せず、本採用後に「やはり合わなかった」と気づくケースが非常に多く見られます。本採用後の解雇は、試用期間中よりも実質的にハードルが上がります。入社1ヶ月目から期待値の明示・フィードバックの記録を開始することが、後のリスクを最小化する正しいアプローチです。「3ヶ月間は何もしなくていい期間」ではありません。

パフォーマンス不振の背景にメンタルヘルス課題が隠れていないか

パフォーマンスが出ない理由として、適応障害・発達障害傾向・うつ状態が背景にあるケースがあります。この場合、単純な「能力不足による解雇」の判断は法的リスクを伴います。

こんなサインが出ていたら注意が必要

以下のような状態が続いている場合、心身の不調が影響している可能性を考慮する必要があります。

  • ミスの頻度が増えている、または同じミスを繰り返す
  • 表情が乏しくなった、会話が減った
  • 遅刻・早退・欠勤が増えてきた
  • 業務の優先順位がつけられなくなっている
  • 本人から「しんどい」「集中できない」といった言葉が出ている

合理的配慮の義務が発生する可能性を知っておく

採用時に申告がなかった場合でも、入社後に障害や疾患の状態が明らかになった時点から、障害者雇用促進法第36条の3に基づく合理的配慮の検討義務が生じる可能性があります。「言っていなかったのだから会社には関係ない」とはなりません。20〜50名規模の会社では産業医が常駐していないケースも多いですが、そのような場合でも、外部の産業保健スタッフや支援機関への相談窓口につなぐことが「合理的配慮の第一歩」として評価されます。

メンタルヘルス課題が疑われるときは、対応方法を誤ると企業側のリスクが大きく増します。判断に迷ったら、メンタルヘルス対応の専門家に一度相談することをお勧めします。

今すぐできる対応アクション

判断を先送りにするほどリスクは高まります。現時点でできるアクションを整理し、まず動き出すことが重要です。

記録を今日から始める

「何度も言ったのに改善しなかった」と感じていても、日付・指導内容・本人の反応が記録されていなければ、後から証明できません。今日から「業務改善指導記録」として、以下の項目を残し始めてください。

記録すべき項目 記録の具体例
日時 2025年○月○日 14:00〜14:30
指導内容 報告書の提出期限を守ること、記載すべき項目の説明を再度行った
本人の反応 「わかりました」と答えたが、具体的な質問はなかった
改善目標と期限 次回提出分(○月○日)から期限どおりに提出する
確認者 上長氏名・本人署名または受領確認

書面を本人に交付し、受領確認をとることで証拠力が高まります。

面談で期待値を再共有する

記録を整えたうえで、本人との1対1の面談を設定してください。目的は「叱責」ではなく「期待値の再共有」です。「今、この業務がこのレベルに達していないと認識している」「○月末までにここまでできるようになることを期待している」という形で、具体的かつ前向きに伝えます。本人が「知らなかった」「聞いていなかった」と言えない状況を作ることが、会社側の説明責任を果たすことでもあります。

会社の規模・体制に応じた判断分岐

20〜50名規模の会社では、配置転換の選択肢が少なく「別の職種に異動させて再挑戦」という対応が実質とりにくいことがあります。退職勧奨・本採用拒否・改善継続のどの選択肢をとるにしても、就業規則の規定・指導記録の有無・メンタルヘルスの状況・本人への説明の経緯が判断の根拠になります。専任人事がいない環境では、この判断を一人で抱えることに限界があります。

記録・面談・メンタルチェックの3つを同時進行させるのは、専任人事がいない中小企業では現実的に負担が大きいものです。必要に応じて、人事労務の専門家に相談することも検討してみてください。

まとめ

入社3ヶ月でパフォーマンスが出ない社員への対応で最も重要なのは、「本人の問題か、環境・教育の問題か」を事実に基づいて切り分けることです。期待値の明示・指導記録の蓄積・メンタルヘルスの視点・法的リスクの把握——これらを同時に進めるのは、専任人事がいない中小企業では容易ではありません。「どこから手をつければいいかわからない」という状態が続くほど、対応の選択肢は狭まり、リスクは高まります。

ウェルセンス株式会社では、メンタルヘルス対応・休職復職支援・人事労務の実務課題を、20〜50名規模の成長企業の実情に合わせてサポートしています。判断を先送りにする前に、まずは「現在の状況をどう整理すればいいか」という段階からのご相談も歓迎しています。

よくある質問

Q. 試用期間は何ヶ月まで設定できますか?

A. 法律上の上限規定はありませんが、実務上は3〜6ヶ月が一般的です。ただし、就業規則に定めのない期間を一方的に設定することは問題となる場合があります。また、期間が長すぎると「事実上の本採用」とみなされるリスクもあります。就業規則に明記されている期間と、実態が一致しているかを確認してください。

Q. 口頭で何度も指導しているのに、記録がありません。今からでも遡って記録を作れますか?

A. 遡って作成した記録は、作成日を明示したうえで「振り返りメモ」として残すことは可能ですが、事後作成であることは正直に扱う必要があります。証拠力は今後の記録に比べて弱くなります。今日から正式な記録をスタートし、今後の指導・面談の事実を積み上げることが最善の対応です。

Q. 本人がメンタル不調かもしれないと感じていますが、どう確認すればいいですか?

A. 直接「メンタルが悪いのでは」と問い詰めるのは禁物です。まずは「最近しんどいことや、業務で困っていることはないか」と状態を確認する1対1の面談を設定することが入り口です。産業医がいない会社では、外部の産業保健スタッフや支援機関、あるいはメンタルヘルス支援の専門会社に相談することで、適切なアセスメントと対応の方向性を得ることができます。

Q. 本採用後に「やはり合わない」と気づいた場合、解雇はできますか?

A. 本採用後の解雇は、労働契約法第16条に基づき「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要で、試用期間中より実質的にハードルが高くなります。解雇を検討する場合は、改善指導の記録・面談の経緯・本人への説明の有無などが重要な根拠となります。解雇の判断は必ず弁護士や社会保険労務士など専門家に相談のうえ進めてください。

Q. 就業規則がない(または古くて整備されていない)場合、どうすればいいですか?

A. 常時10人以上の労働者を雇用する事業場は、就業規則の作成・届出が労働基準法で義務付けられています。10人未満の場合も、就業規則がなければ試用期間の延長・解雇・懲戒などの根拠規定がなく、会社側が不利な立場に立たされます。まずは現状の就業規則の有無と内容を確認し、不備がある場合は社会保険労務士への相談を検討してください。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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