「お断りの連絡を出さなければいけないのはわかっている。でも、何と書けばいいのか……」。採用担当を兼務しながら、そんな状態で通知メールの下書きを何度も書き直した経験はありませんか。特に紹介経由の候補者や、何度も面接を重ねた方への連絡は、言葉を選ぶほど手が止まってしまいます。この記事では、採用見送りの理由をどう伝えれば関係を壊さずに済むか、法的な根拠と実務的な文例を交えて整理します。
採用見送り理由の開示に法的義務はない
結論から言えば、採用見送りの理由を候補者に開示する法的義務は、日本の法律上原則として存在しません。ただし「理由を言わなくていい」ことと「何を理由にしてもいい」ことは全く別の話です。
採用の自由と判例の考え方
最高裁判所は昭和48年の三菱樹脂事件において、使用者は採用する人材を自由に決定できるという「採用の自由」を認めています。これが、不採用理由の開示義務がない根拠のひとつです。企業は「なぜ採用しなかったか」を説明する法的責任を負いません。
開示できない・してはいけない理由がある
一方、以下の事由を理由とした不採用は、各法令との関係でリスクが生じます。もし通知文にこれらを連想させる表現が含まれていた場合、法的なクレームに発展する可能性があります。
- 性別・婚姻・妊娠・出産(男女雇用機会均等法第5条・第6条)
- 国籍・信条・社会的身分(労働基準法第3条)
- 障害(障害者雇用促進法)
- 年齢(雇用対策法に基づく年齢制限の原則禁止)
- 組合活動歴(労働組合法第7条)
誠実さから「正直な理由」を書こうとすることで、かえってこれらの法令に抵触するリスクのある表現が紛れ込む場合があります。詳細な理由の記載は、善意であっても法的リスクを高めることがあるのです。
「正直に書くのが誠実」という誤解を解く
「スキルが要件に合いませんでした」と書いた場合、「なぜそう判断したのか根拠を示せ」「年齢で判断したのではないか」といった反論を招くことがあります。誠実さは、理由の詳細さで表現するのではなく、連絡のスピードと丁寧な言葉遣いで示すものです。具体的な理由を書かないことが、むしろプロフェッショナルな対応です。
不採用通知の基本構成と文例
不採用通知の実務的な定石は、「選考理由を具体的に書かず、感謝と今後の活躍を願う言葉を添えて完結させる」ことです。シンプルな構成が、余計なトラブルを防ぎます。
メール通知の基本テンプレート
書類選考段階や一次面接後の候補者には、以下のようなメール文が実務上広く使われています。
| 項目 | 文例 |
|---|---|
| 件名 | 選考結果のご連絡/株式会社〇〇 |
| 冒頭 | このたびは弊社求人にご応募いただき、誠にありがとうございました。 |
| 結果通知 | 慎重に選考を重ねた結果、誠に残念ながら今回は採用を見送らせていただくこととなりました。 |
| 理由への言及 | 選考の詳細についてはお答えしかねますが、何卒ご了承ください。 |
| 締め | ご多忙の中お時間をいただきましたことに、改めて感謝申し上げます。〇〇様の今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。 |
| 書類返却 | (郵送応募の場合)ご応募いただきました書類は、弊社にて責任を持って廃棄させていただきます。 |
複数回選考後の候補者への対応
二次面接・三次面接と段階を経た候補者や、条件面の詳細まで話し合った候補者には、メールだけでなく電話を先に入れることが望ましいです。「メールでお送りしますが、まず直接お伝えしたくてご連絡しました」という一言が、関係性の維持につながります。電話では理由の詳細を聞かれることもありますが、「総合的な判断の結果です」と簡潔に答えるのが適切です。
応募書類の取り扱いを明示する
個人情報保護法の観点から、不採用後に応募書類を無断で保持し続けることは問題が生じます。通知メールに「書類は責任を持って廃棄します」または「ご希望の方は返送いたします」と一言添えておくことで、候補者の不安を取り除き、会社への信頼感を高める効果もあります。
紹介・リファラル経由の候補者への断り方
紹介経由の候補者を断る場合、連絡の順番が関係維持の鍵になります。候補者本人より先に、紹介者に一報を入れることが原則です。
紹介者への先行連絡が関係を守る
社員や取引先からの紹介で応募してきた方を断る場合、紹介者が「なぜ先に知らせてくれなかったのか」と感じることがあります。候補者本人へ通知を送る前に、紹介者へ電話などで「今回は採用が難しい判断となりました。先にご連絡させていただきたくて」と伝えておくだけで、紹介者との信頼関係は大きく変わります。
紹介者への伝え方のポイント
紹介者への連絡では、候補者の具体的な評価(特にネガティブな内容)を伝える必要はありません。「今回の募集要件との兼ね合いで、採用には至りませんでした」という表現に留めることで、紹介者が候補者との間で気まずくなるリスクを避けられます。また、「ご紹介いただいた気持ちは大変ありがたい」という感謝を必ず添えることが関係維持の基本です。
候補者本人への通知は通常どおりに
紹介者への連絡を済ませた後、候補者本人への通知文は通常の不採用通知と同様の内容で問題ありません。「紹介いただいたにもかかわらず」という過剰な謝罪表現は、かえって候補者を傷つけることもあるため、丁寧さの中に過度な恐縮を込めすぎない文章を心がけましょう。
「惜しい候補者」に使う「また機会があれば」の正しい使い方
「今回は採用できないが、将来は一緒に働きたい」と感じる候補者への言葉は、曖昧な期待を持たせず、具体性を持たせるか、または使わないかのどちらかが適切です。
曖昧な「またご縁があれば」が招くリスク
善意で使う「またご縁があれば」「機会がありましたらぜひ」という言葉が、候補者の転職活動を止めてしまったり、定期的に連絡が来る状態を生んだりするケースがあります。言葉を受け取った側は期待を持ちやすいため、使う場合は「何ヶ月後に採用枠が生じる可能性がある」など、具体的な条件と組み合わせることが誠実な対応です。
タレントプールとして関係を続けたい場合
将来の採用を具体的に想定している場合は、「半年後に再度ポジションが生じた際には、ぜひご連絡させていただきたいと考えています。その際は改めてご意向を確認させてください」のように、次のアクションを自社主導にする文章が適切です。候補者が「待っていればいい」という状態にならないよう配慮します。また、候補者情報を保持してタレントプールとして管理する場合は、個人情報の保持について同意を得るプロセスを設けることが望ましいです。
「今回は縁がなかった」で完結させてよいケース
将来的な採用可能性が低い場合、または確信を持てない場合は、期待を持たせる表現は使わない方が親切です。「今後のご活躍をお祈りします」という標準的な結びで完結させることが、候補者の次の行動を後押しすることになります。
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通知のタイミングと手段の選び方
採用見送りの連絡は、できる限り早く行うことが候補者への配慮です。選考の段階と経路に応じて、適切な手段を選ぶことで会社の印象も変わります。
連絡が遅れることのダメージ
候補者は多くの場合、複数社の選考を並行しています。合否の連絡が遅れると、他社への応募機会を逃したり、内定承諾の判断が遅れたりするなど、候補者に実害が生じます。専任人事がいない環境では通知が後回しになりがちですが、「どう書くか」に悩む前に、まず送ることを優先する習慣を持つことが大切です。面接から1〜2週間以内の連絡が、ビジネスマナーとして定着しています。
選考段階と通知手段の使い分け
書類選考段階であればメール一本で十分です。一方、最終面接後や詳細な条件面談を経た後は、メールだけでなく電話で先に結果を伝えることが丁寧な対応として機能します。紹介経由の場合は前述のとおり、紹介者への先行連絡を加えた三段階のフローが理想的です。
テンプレートをあらかじめ用意しておく
通知が遅れる最大の原因は「文章を書くのに時間がかかる」ことです。書類選考後・一次面接後・最終選考後の3パターンのテンプレートをあらかじめ準備しておくことで、日常業務と並行しながらでもスピーディーに対応できます。テンプレートの内容をその都度一部カスタマイズするだけで、定型文の冷たさも和らげられます。
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まとめ
採用見送りの理由を開示する法的義務はありませんが、「理由を書かないこと」こそが誠実かつリスクの少ない実務対応です。大切なのは、連絡のスピード・丁寧な言葉遣い・紹介経由の場合は紹介者への先行連絡という三点です。「また機会があれば」は具体性を持たせるか使わないかに留め、曖昧な期待を持たせないことが候補者への本当の配慮になります。
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よくある質問
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