採用で年齢を絞る合法的な求人票の作り方

採用で年齢を絞る合法的な求人票の作り方 採用・定着
Photo by Gustavo Fring on Pexels

「35歳以下の方を募集したい」「できれば若手に来てほしい」——そう思いながら、求人票にどう書けばいいか迷ったことはないでしょうか。実は、求人票への年齢制限の記載は労働施策総合推進法(旧:雇用対策法)第9条によって原則として禁止されています。知らずに「20代歓迎」「35歳以下」と書いてしまい、求人媒体の担当者から削除を求められた経験がある方もいるかもしれません。この記事では、なぜ年齢制限が禁止なのか、どんな例外が認められているのか、そして合法的に求める人材像を伝えるための求人票の書き方を、実務に即して解説します。

年齢制限の記載が原則禁止である理由

採用時の年齢制限は、労働施策総合推進法第9条により、事業主が労働者を募集・採用する際に「年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定められており、原則として禁止されています。求人票に「35歳以下」「20代のみ」などと書くことは、この規定に違反します。

禁止の背景にある考え方

年齢制限が禁止された背景には、年齢によって採用機会が不当に閉ざされることへの是正があります。能力や経験ではなく、単に年齢だけを理由に応募すら認めないことは、求職者の就業機会を著しく狭めます。日本では少子高齢化の進展に伴い、年齢を問わず多様な人材が活躍できる社会を実現するため、この規制が設けられています。

違反した場合のリスク

年齢制限を記載した求人票を掲載し続けた場合、求人媒体からの掲載拒否・削除要請にとどまらず、ハローワークでは受理されないケースもあります。さらに、厚生労働省や都道府県労働局から指導・是正勧告を受ける可能性もあります。「知らなかった」では済まない法的リスクがある点を認識しておくことが重要です。

ハローワークと民間媒体の確認基準の違い

ハローワーク(公共職業安定所)は、年齢制限に関する確認が特に厳格です。例外事由に基づいて年齢制限を設ける場合でも、その理由を書面で記載・提示することが求められます。一方、IndeedやリクナビNextなどの民間媒体は媒体ごとに審査基準が異なります。もっとも厳しい基準に合わせて設計しておくことが、どの媒体でも安心して掲載できる求人票づくりの基本です。

合法的に年齢制限を設けられる例外事由

年齢制限は原則禁止ですが、厚生労働省令が定める6つの例外事由に該当する場合に限り、年齢を条件とした募集が認められています。中小企業の実務でよく使われるのは主に4つです。

例外事由の一覧と実務上の活用ポイント

例外事由 具体的な場面 注意点
定年年齢を上限とする場合 定年60歳の会社で「60歳未満」と表記 就業規則に定年制の規定が必要
長期勤続によるキャリア形成のため若年者等を無期雇用で採用する場合 若手の長期育成を目的とした正社員採用 合理的理由の文書化が必要
技能・ノウハウ継承のため特定職種で中高年齢者を採用する場合 熟練技能者の後継者育成目的 職種・目的の具体性が必要
特定職種の年齢構成の著しい偏りを解消するため 社内の年齢層バランスを整える採用 実態としての偏りの説明が必要
芸術・芸能分野の表現の真実性から一定年齢を条件とする場合 俳優・モデル等 一般企業への適用は極めて限定的
60歳以上または特定年齢層の雇用を促進する国の施策を活用する場合 補助金・助成金活用 制度ごとに個別確認が必要

中小企業で最もよく使われる例外事由

20名前後の成長企業で若手を長期育成したいケースでは、「長期勤続によるキャリア形成のため若年者等を無期雇用で採用する場合」が該当しやすい例外事由です。ただし「なんとなく若手が欲しいから」では足りません。たとえば「入社後5年かけてチームリーダーを育成する計画があり、無期雇用の正社員として採用する」という具体的な理由を、ハローワークへの申請書類や社内の採用方針として文書に残しておく必要があります。

例外事由に頼りすぎないことの重要性

例外事由は認められているとはいえ、対外的に「なぜこの年齢帯が必要か」を説明できない場合はリスクが残ります。後述する職務要件での絞り込みと組み合わせることで、法的リスクを最小化しながら採用ターゲットに近い人材を引き寄せる求人票が実現します。

職務要件・経験年数で合法的に年代を絞り込む書き方

年齢そのものを書く代わりに、業務遂行に必要な具体的な要件を記載することで、実質的に応募者の年代層を絞り込むことができます。これは合法的な設計手法であり、求人票の質を高める効果もあります。

若手を採りたい場合の書き方

長期育成・OJT前提で若手人材に来てほしい場合は、キャリアステップや育成方針を具体的に記載することが効果的です。たとえば「入社後3年間は先輩社員とのペア体制でスキルを習得し、その後独立担当を持つ」「業界未経験者でも入社6ヶ月で一人前を目指せる教育制度あり」といった記載は、社会人経験が浅い層に自然に刺さります。「20代活躍中」という表現も厳密には年齢を示唆するとして媒体によって削除対象になるため、「キャリアのスタートダッシュを切りたい方歓迎」のような表現に置き換えるほうが安全です。

即戦力・ベテランを採りたい場合の書き方

管理職候補や専門職採用でベテラン層を想定している場合は、必要な経験年数や職務実績を具体的に書くことが有効です。以下のような要件は、業務の合理的必要性があれば記載できます。

  • 同業種での営業経験3年以上
  • 部下5名以上のマネジメント経験2年以上
  • 製造ラインの工程管理経験(リーダー職以上)
  • 特定の資格・ライセンス保有(業務上必須のもの)

こうした要件は、結果として社会人経験の浅い若年層が応募しにくくなりますが、あくまで「業務に必要な能力・経験の有無」で判断しているため法的問題はありません。重要なのは、書いた要件が実際の業務内容と整合していることです。

求人票全体の設計で採用ターゲットを伝える

職務要件だけでなく、仕事内容・職場環境・キャリアパスの記載全体を通じて「この会社が求めている人物像」を明確にすることが大切です。たとえば「創業10年のベンチャーで、0から仕組みをつくる経験を積みたい方」という一文は、ある程度のリスク許容度を持つ若手層には魅力的に映り、安定志向の方には響きにくい。年齢ではなく「仕事観・志向性」で自然に絞り込む設計が、法的にも実務的にも最もバランスのとれたアプローチです。

ポイント法的にはクリアしていても、実際の採用現場で運用するなら判断基準の明確化が必須です。記事の内容で疑問が出たときは、その場で相談できる体制があると安心です。

面接・書類選考での年齢確認はどこまで許されるか

求人票の表記だけでなく、応募書類の設計や面接での質問にも注意が必要です。年齢・生年月日を確認すること自体は禁止されていませんが、目的と活用方法に配慮が求められます。

履歴書・応募書類の生年月日欄について

市販の履歴書には生年月日の記入欄があり、応募者が自ら記載してくること自体は一般的です。ただし、自社で応募フォームや書類を設計する場合、生年月日を必須項目にすることは「年齢による選考」につながりやすいとして問題になることがあります。厚生労働省が公表している「公正な採用選考の基準」においても、本人の適性・能力に関係ない事項を把握することは控えるよう求められています。生年月日の記載を任意にするか、「雇用保険・社会保険の手続きのために必要となる場合があります」と用途を明示しておくことが望ましいです。

面接での年齢に関する質問

面接中に「おいくつですか?」と直接聞くことは禁止されてはいませんが、その情報を選考に使用することで法的リスクが生じます。「年齢を理由に不採用にした」と見なされた場合、場合によっては採用差別として問題化する可能性があります。実務的には、年齢を聞かなくても「これまでの職務経歴を教えてください」「ご経験年数はどのくらいですか」と聞けば、業務能力の観点から必要な情報は十分得られます。

年齢情報の取り扱いと記録管理

選考で収集した年齢・生年月日情報は、採用後の労務管理(社会保険・雇用保険手続きなど)には必要です。一方、選考段階では「年齢を見て落とした」という事実が残ると後々のリスクになります。選考基準と記録を整理しておくことが、将来的なトラブル防止につながります。専任人事がいない企業ほど、簡単でも選考フローとその根拠を文書化しておく習慣をつけることをおすすめします。

企業規模・状況別チェックポイント

年齢制限に関するリスクと対応策は、企業の状況によって異なります。自社の状況に当てはめて確認してください。

就業規則が整備されているかどうか

定年制を根拠に年齢上限(例:「60歳未満」)を設ける場合は、就業規則に定年の規定があることが前提です。就業規則が未整備の場合、この例外事由は使えません。常時10名以上の従業員がいる事業場では就業規則の作成・届け出が法律上義務付けられていますので(労働基準法第89条)、まず就業規則の整備状況を確認してください。

社労士・専門家との連携体制があるかどうか

専任人事がいない中小企業では、求人票の法的チェックを都度行う仕組みがないことが多いです。顧問社労士がいる場合は、求人票を作成するたびに一度確認してもらう習慣をつけることで、リスクを大幅に減らせます。顧問契約がない場合でも、ハローワークの求人専門相談員や地域の労働局に相談窓口があります。

採用頻度・媒体数に応じた管理

採用頻度が高く複数の媒体を使っている場合は、求人票のひな形を整備し、「年齢制限に関するチェックリスト」を共有することが有効です。担当者が変わっても一定のクオリティを保てるよう、簡単なマニュアルを1枚用意しておくだけで属人化リスクを防げます。

まとめ

採用時の年齢制限は、労働施策総合推進法第9条により原則として禁止されています。ただし、定年年齢を上限とする場合や長期育成目的の若年者採用など、厚生労働省令が定める6つの例外事由に該当する場合は、理由を明文化した上で年齢制限を設けることが認められています。例外事由に頼らない場合でも、必要経験年数・職務内容・キャリアステップを具体的に記載することで、応募者の年代層を合法的に絞り込む求人票を設計できます。面接・書類選考でも、年齢情報の収集・活用には一定の配慮が必要です。専任人事がいない企業こそ、求人票の設計段階から法的観点のチェックを組み込む仕組みが重要です。

求人票の書き方に不安が残ったり、実際のハローワーク申請時にサポートが必要なときは、ウェルセンス株式会社にお気軽にご相談ください。採用・人事労務の実務的な課題に対応しています。

よくある質問

Q. 求人票に「若手歓迎」「20代活躍中」と書くのは違法ですか?

A. 「20代活躍中」という表現は、特定の年齢層に限定した募集と受け取られる可能性があり、求人媒体によっては掲載不可とされるケースがあります。「若手歓迎」も同様に、年齢を示唆する表現として削除を求められることがあります。「キャリアをゼロから築きたい方歓迎」「成長意欲のある方歓迎」のように、年齢ではなく志向性で表現するほうが法的リスクを避けられます。

Q. 「経験5年以上」と書くと実質的に年齢が絞られますが、問題ありませんか?

A. 業務に必要な経験年数を職務要件として記載することは、法律上問題ありません。重要なのは「その経験年数が実際の業務に必要である合理的な理由があること」です。結果として応募者の年齢層が絞られたとしても、年齢そのものを理由にした制限ではないため合法的な絞り込みとなります。ただし、実態と乖離した過度に高い要件を設定すると、ほかの観点でのリスクが生じる場合もあります。

Q. ハローワークで例外事由を使って年齢制限を認めてもらうには何が必要ですか?

A. ハローワークでは、例外事由に基づいて年齢制限を設ける場合、「年齢制限を行う理由」を求人票の所定欄に明記し、担当者の確認を受ける必要があります。たとえば「長期勤続によるキャリア形成のため若年者を採用する」という例外事由であれば、正社員(無期雇用)であること、育成計画の概要、年齢制限の具体的な上限などを具体的に説明できる状態にしておくことが求められます。事前にハローワークの求人相談窓口に確認するとスムーズです。

Q. 面接で年齢を聞いて不採用にした場合、法的にどんなリスクがありますか?

A. 年齢を理由に不採用にしたことが明らかになった場合、労働施策総合推進法違反として行政指導の対象となりえます。また、応募者から損害賠償請求訴訟を起こされるリスクもゼロではありません。「年齢を聞いたこと」自体よりも「年齢を選考基準に使ったこと」が問題になります。選考基準を能力・経験・職務要件に基づくものとして明確化し、記録として残しておくことがリスク回避につながります。

Q. 採用担当者が他の業務と兼務している場合、年齢制限リスクを減らすにはどうすればいいですか?

A. まずハローワークの求人専門相談員や都道府県労働局の雇用均等室に相談する方法があります。顧問社労士がいる場合は、求人票を作成するたびにレビューを依頼する習慣をつけるだけで効果的です。顧問契約がない場合でも、厚生労働省が公開している資料を参考に簡単なチェックシートを1枚作成しておくと、属人化を防げます。重要なのは「専門家に相談する入り口を持つ」ことです。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

不調者対応を、人事だけで抱えない。

メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談いただけます。

詳しく見る →

タイトルとURLをコピーしました