組織図と実態が違う会社に起きる5つの問題と対処法

組織図と実態が違う会社に起きる5つの問題と対処法 組織運営
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「組織図上は部長が決裁者なのに、実際はベテラン社員の一言で話が動く」——そんな状況に困った経験はありませんか。専任人事のいない中小企業では、組織図と実態のズレが放置されがちです。しかしこのズレは、ハラスメントの温床になったり、優秀な人材の離職を招いたりと、じわじわと組織の体力を奪っていきます。この記事では、組織図と実態の違いが生む5つの問題と、それぞれの対処法をわかりやすく解説します。

組織図と実態が乖離するとはどういう状態か

「公式」と「非公式」の二重構造

組織図とは、会社の指揮命令系統を図で示したものです。誰が誰の上司で、どの部署がどの役員に報告するか——これが「公式な権力構造」です。一方、実際の職場では組織図に書かれていないルートで物事が動くことがあります。たとえば、創業時からいるベテラン社員の一言で方針が変わったり、特定の派閥内でだけ重要情報が共有されたりする状態です。これを「非公式な権力構造」と呼びます。

小規模な会社ほど、この二重構造が生まれやすい傾向があります。創業期は「みんなで助け合う」風土が機能していても、人数が増えるにつれ、同じやり方が組織の混乱を招くようになります。

なぜ放置されてしまうのか

最大の理由は「うまくいっているように見える」からです。非公式な権力者が有能であれば、短期的にはスムーズに回ります。また、経営者自身がその人物と近い関係にある場合、問題だとわかっていても口を出しにくくなります。結果として「これがうちのやり方だ」と習慣化し、誰も見直せなくなるのです。

組織図と実態の違いが生む5つの問題

誰が決裁者かわからず新人が混乱する

組織図上は部長が承認者のはずなのに、実態はAさんに話を通さないと何も動かない——こうした状況は、新入社員や中途採用者を著しく混乱させます。「誰に相談すればいいかわからない」「承認をもらったのにひっくり返された」という経験が重なると、早期離職につながります。採用コストをかけて入社させた人材が3か月で辞めていく背景に、こうした権限の不透明さが潜んでいることは珍しくありません。

ハラスメントが見えにくくなる

非公式な権力者が高圧的な言動をとっていても、「あの人には逆らえない」という空気が蔓延し、誰も声を上げられなくなります。2022年4月からは中小企業にもパワーハラスメント防止法(労働施策総合推進法第30条の2)が義務化されており、「職場における優越的な関係を背景にした言動」への措置が事業主に求められています。組織図上の上下関係だけで判断していると、非公式権力者による優越的言動を見落とし、法的リスクを抱えることになります。

評価が属人化し優秀な人材が辞めていく

昇給・昇格・採用の意思決定が、制度上の評価者ではなく特定の人物の好き嫌いに依存している組織では、頑張りが正当に評価されません。「あの人に気に入られるかどうかで給料が決まる」と社員が感じるようになると、モチベーションは急速に低下します。労働基準法第3条(均等待遇)や第4条(男女同一賃金)の観点からも、恣意的な評価が特定属性への差別的処遇につながれば法令違反となりえます。

情報格差がメンタル不調を招く

本来は上長を通じて共有されるべき情報が、非公式な人脈——派閥や個人的な信頼関係——で先に流通すると、情報を得られなかった社員は疎外感を覚えます。「自分だけ知らされていなかった」という経験が繰り返されると、職場への帰属意識が薄れ、メンタル不調につながるケースがあります。ストレスチェック(労働安全衛生法第66条の10)の結果において「役割の不明確さ」や「上司のサポートのなさ」として数値に表れることも多く、組織構造の歪みが健康リスクに直結することがわかります。

組織の見直しを進めようとすると抵抗される

「これまでのやり方を変えるな」「実態に合わせれば十分だ」という声が上がり、組織設計の見直しが頓挫するケースは珍しくありません。特に、非公式権力者が経営者と近い関係にある場合、人事担当者は「余計なことを言うな」という無言のプレッシャーを感じ、動けなくなります。こうした状況が続くと、問題を認識している社員の間に諦め感が広がり、組織全体の活力が失われていきます。

対処法として最初に取り組むべきこと

実態を「見える化」する

まず最初に取り組むべきは、現状の正確な把握です。社内アンケートや1on1ヒアリングを活用して、「実際に誰に相談しているか」「情報はどのルートで届くか」「誰の発言で意思決定が変わるか」を整理します。重要なのは、外部の第三者が関与することです。内部だけで行うと「あの人への忖度」が入り、本音が出てきません。外部の専門家が聞き取りを担当することで、普段は言い出せない実態が安全に浮かび上がります。

職務権限規程を整備する

非公式な権力が育つ最大の温床は「誰が何をどこまで決めてよいか」が明文化されていないことです。これを解決するのが職務権限規程です。たとえば、「50万円以上の発注は部長決裁、100万円以上は役員決裁」といったように、金額・種類別に意思決定者を明確にします。就業規則(労働基準法第89条で10人以上の事業場に作成義務)とは別に、職務権限規程は労基法上の義務ではないため中小企業では未整備なケースが多いですが、組織の透明性を高める上で非常に有効です。

相談・報告の経路を複数確保する

非公式権力者が経営者に近い場合、社内の相談窓口だけでは機能しません。外部の相談窓口を設ける、または外部の専門機関と連携することで、社員が安心して声を上げられる環境を作ることが重要です。ハラスメント防止法が求める「相談窓口の設置」も、形だけでなく実際に使える体制にしてこそ意味があります。

組織設計を見直すときの考え方

「あるべき姿」より「現場の実態」から出発する

組織設計の見直しでよくある失敗は、理想の組織図を先に描いてから現場に押し付けることです。特に非公式な権力構造が根付いている会社では、形だけ組織図を変えても実態はまったく変わりません。まず「現場では実際に誰が何を決めているか」を把握し、そこから少しずつ公式の仕組みに近づけていく方が、現場の抵抗を受けにくく、実効性が高まります。

意思決定プロセスを「ルール」として明文化する

次に、ヒアリングで把握した実態をもとに、意思決定プロセスをルールとして文書化します。会議体の設計(誰が参加し、何を決める会議なのか)、稟議フローの整備、部門横断の連絡経路など、具体的な場面ごとに「どのように決めるか」を決めておくことで、個人の影響力に依存する構造を少しずつ解体できます。一度に全部を整備しようとせず、まず影響の大きい領域から着手するのが現実的です。

経営者のコミットメントが鍵になる

組織改革は、経営者が本気でコミットしなければ進みません。特に、非公式権力者が経営者の古くからの仲間や信頼している人物である場合、経営者自身が「公式な仕組みで動く組織にする」と意思決定しなければ、どんな施策も骨抜きになります。外部の専門家を活用することで、経営者が「社内では言いにくいことを客観的に伝えてもらう」という場を作ることも有効な手段です。

ハラスメントリスクへの具体的な対応

非公式権力者の言動を「優越的関係を背景にした行為」として捉える

パワーハラスメントの定義は「優越的な関係を背景とした言動」であり、これは組織図上の上下関係に限りません。実態として「逆らえない」存在であれば、役職がなくても優越的な関係が成立します。令和2年厚生労働省告示第5号の指針では、相談窓口の設置・事実確認・行為者への措置が具体的に求められています。「肩書きがないからハラスメントにならない」という誤解は、事業主にとって大きなリスクになります。

「身内だから動けない」を解決する外部機関の活用

人事担当者が最も頭を抱えるのは、「オーナーや経営者に近い人だから、自分では動けない」という状況です。こうしたケースでは、外部の専門機関が第三者として介在することで、社内では進められなかった対応が可能になります。事実確認・行為者へのフィードバック・被害を受けた社員へのケアを、中立的な立場で進めることができます。また、安全配慮義務(労働契約法第5条)の観点からも、メンタル不調者の増加を組織課題として経営者に伝えるルートを確保しておくことが重要です。

まとめ

組織図と実態の違いは、「なんとなく感じているけど、どこから手をつければいいかわからない」という状態で放置されがちな問題です。しかしこのズレが引き起こすのは、早期離職・ハラスメント・メンタル不調・評価の不公平・組織改革の停滞といった、会社の成長を根本から妨げる問題ばかりです。対処のポイントは、まず現状を客観的に把握すること、次に意思決定の仕組みを文書化すること、そして外部の専門家を活用しながら経営者のコミットメントのもとで少しずつ変えていくことです。

ウェルセンス株式会社では、組織の実態把握から、ハラスメント対応、メンタルヘルス支援、権限設計のアドバイスまで、中小企業の人事担当者や経営者が一人で抱えてしまいがちな課題を一緒に整理するサポートを提供しています。「うちの会社のケースはどう考えればいいのか」「今のままで大丈夫なのか」とお感じでしたら、まずお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 組織図を整備したいのですが、どこから始めればよいですか?

A. まず「現状の実態把握」から始めることをお勧めします。理想の組織図を先に描くのではなく、現場で誰が何を決めているかを社員へのヒアリングや簡単なアンケートで整理します。その実態をベースに、職務権限規程(誰が何をどこまで決裁できるか)を文書化するステップに進むと、現場の抵抗を受けにくく実効性の高い整備ができます。

Q. 役職のないベテラン社員の言動がパワハラにあたるか判断できません。

A. パワーハラスメントの定義における「優越的な関係」は、組織図上の上下関係だけを指しません。「逆らいにくい」「発言を無視できない」という実態があれば、役職がなくても優越的な関係が成立するとみなされます。2022年4月からは中小企業にもパワハラ防止法が義務化されていますので、「役職がないから問題ない」という判断は避け、言動の内容と影響を具体的に確認することが重要です。判断が難しい場合は、外部の専門機関に相談することをお勧めします。

Q. 非公式権力者が経営者の古くからの仲間で、社内では指摘できません。どうすればよいですか?

A. こうしたケースは中小企業で非常によく見られます。社内から直接指摘することが難しい場合、外部の専門機関を活用することが有効です。第三者が客観的なデータや事実を経営者に提示することで、人事担当者が直接言いにくいことを安全に伝えるルートを作ることができます。問題が表面化する前に、外部の相談窓口や支援機関と連携しておくことが重要です。

Q. ストレスチェックを実施していますが、組織の問題を把握するためにどう活用すればよいですか?

A. ストレスチェックの集団分析結果において、「仕事のコントロール度」「上司のサポート」「役割の明確さ」などの項目が低い場合、組織図と実態の乖離が背景にある可能性があります。スコアが低い部署や項目を入口に、「なぜそのような結果が出ているのか」を1on1ヒアリングや職場環境のアセスメントと組み合わせて掘り下げることで、組織構造の問題を早期に発見できます。なお、従業員50人未満の事業場はストレスチェックが努力義務ですが、任意で実施することも可能です。

Q. 組織改革を進めようとすると「これまでのやり方を変えるな」という声が出ます。どう対処すればよいですか?

A. 抵抗が起きる主な原因は、「変化への不安」と「既得権益の喪失への恐れ」です。一度に大きく変えようとするほど抵抗は強まりますので、影響の小さい領域から少しずつ変えていくことが有効です。また、「なぜ変える必要があるのか」を具体的なデータや社員の声で示すことで、感情的な反発を減らせます。経営者がコミットメントを明示することと、外部の専門家が客観的な根拠を提供することを組み合わせると、改革が進みやすくなります。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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