「また今月も、採用エージェントへの紹介料が100万円を超えた」——中小企業の経営者や兼務人事担当者から、こうした声をよく聞きます。人材紹介会社の手数料は内定者の想定年収の15〜35%前後が相場とされており、数名採用するだけで経営に響く負担になることも珍しくありません。だからといって「エージェント以外の方法をやったことがないし、リソースもない」と立ち止まっているうちに、採用単価を下げる機会を失ってしまうのは悔しいところです。本記事では、採用費用の膨らみから抜け出すための考え方と具体的な方法を、優先順位とともに解説します。
採用単価を下げるために最初に考えること
採用コスト削減に着手する前に、「今自社はどのくらいのコストをかけているか」を把握することが出発点です。チャネルを変える前にコスト構造を整理しないと、手間だけ増えて費用は変わらないという結果になりかねません。
採用単価の正しい計算方法
採用単価とは「1名を採用するためにかかった総費用」のことです。エージェントへの紹介手数料だけを見ていると実態を見誤ります。以下の項目をすべて合算したうえで採用人数で割るのが正確な計算方法です。
- エージェント紹介手数料
- 求人広告費
- 採用担当者の工数(時給換算)
- 面接に参加した管理職の時間コスト
- 入社後のオンボーディング費用
チャネルを変えても、工数コストが増えれば結果的に割高になるケースがあることを念頭に置いてください。
エージェント依存が起きやすい理由
エージェントに頼り続ける最大の理由は「手軽さと即効性」です。求人票を渡せば候補者が届き、採用担当者の負担が最小化される——この構造は、日々の業務と並行して採用対応する兼務担当者にとって非常に魅力的です。
しかし、採用が発生するたびに高額な費用が発生する仕組みは、成長期の中小企業にとってキャッシュフローの大きなリスクになります。「楽だからエージェント」という判断の積み重ねが、依存状態を生み出しているケースがほとんどです。
チャネル分散は「費用ゼロ化」ではなく「リスク分散」
よくある誤解として「エージェントをやめれば採用コストがゼロになる」という考え方があります。現実には、求人広告の掲載費・運用工数・採用サイト制作費などが発生するため、総コストはむしろ増えることもあります。
チャネル分散の本質は次の2点にあります。
- エージェントへの依存度を下げて、コスト変動幅を小さくすること
- 自社の採用力そのものを底上げすること
短期的な費用削減だけを期待すると失望しやすいため、中期的な視点(6ヶ月〜1年単位)で取り組む必要があります。
エージェント以外の主な採用チャネルと特徴
採用単価を下げるには、エージェント以外の選択肢を知ることが重要です。それぞれ費用構造・向いている職種・必要なリソースが異なるため、自社の状況に合わせて選ぶことが大切です。
求人広告(Indeed・求人ボックス等)
IndeedやHelloworkなどの求人プラットフォームは、無料掲載または成果報酬型・クリック課金型で利用でき、エージェントに比べてコストを抑えやすいチャネルです。
ただし、掲載するだけでは応募が集まらず、求人票のライティングや更新頻度の管理が成否を左右します。職業安定法第5条の3に基づく労働条件の明示義務は求人広告にも適用されるため、以下の項目は正確に記載することが必須です。
- 賃金(基本給・手当の内訳を含む)
- 労働時間(勤務時間・残業の有無)
- 雇用形態(正社員・契約社員等)
Indeedは無料掲載とスポンサー(有料)掲載を組み合わせることで、掲載順位を上げることができます。
Wantedly・Greenなどのダイレクト系媒体
Wantedlyは「給与より仕事の内容や企業文化で共感を得る」ことを重視した採用媒体です。月額固定費用がかかりますが、採用1名あたりの費用はエージェントより大幅に抑えられる可能性があります。
企業の雰囲気や価値観を発信するブログ記事(ストーリー)を継続的に投稿することで、応募の質・量が高まる傾向があります。エンジニア・デザイナー・営業など幅広い職種に対応していますが、成果を出すには「発信を継続できる体制」が必要です。
ハローワークの活用
公共職業安定所(ハローワーク)への求人申込みは無料で利用できます。「中小企業・無名企業には集まらない」と思われがちですが、地域密着の職種(事務・製造・サービス業等)では一定の効果が報告されています。
ただし、求人票の内容は審査があり、記載内容に不備がある場合は修正を求められます。採用コストを最優先で抑えたい場合、まずハローワークを試すことは合理的な選択です。
紹介料を減らす現実的な方法としてのリファラル採用
リファラル採用(社員紹介制度)は、エージェント費用をかけずに採用できる手法として注目されていますが、「ただ社員に声をかけるだけ」では機能しません。制度として設計することが成功の前提です。
リファラル採用の基本的な仕組み
自社の社員が知人・友人を候補者として紹介し、採用に至った場合に報奨金を支払う制度です。エージェント手数料と比べると費用を大幅に抑えられる可能性があるうえ、紹介者(既存社員)が企業文化や職場環境を事前に説明しているため、入社後のミスマッチが少ないという傾向があります。
報奨金の金額設定は職種や採用難易度に応じて設計することが一般的です。例えば、営業職は10万円、事務職は5万円といった具合に、職種別に金額を設定する企業が多いです。
制度設計で見落としがちなポイント
リファラル採用でよくある失敗は、「不採用になった際の関係修復の仕組みがない」ことです。紹介した社員と、紹介された候補者の両方に対してどう連絡するか、どのようにフォローするかを事前に決めておかないと、社員間・社員と社外の人間関係に摩擦が生じることがあります。
また、紹介インセンティブ(報奨金)は税務上、支払い方法や金額によって取り扱いが異なる場合があります。実際に運用する前に、顧問税理士または会計士に確認したうえで処理方法を決めることをおすすめします。
さらに、外部の個人(副業者など)が紹介料を受け取るビジネスモデルを活用する場合は、職業安定法上の「有料職業紹介事業許可」が必要かどうかの確認が不可欠です。
リファラルが機能しやすい職場の条件
リファラル採用が活性化する職場には共通点があります。「自分の会社を知人に紹介したいと思えるか」という社員満足度の高さが基盤です。職場環境や待遇に不満を持っている社員が多い状態では、制度を作っても紹介は生まれません。
採用担当者が「リファラルをどう動かすか」を考える前に、「なぜ今の社員はここで働いているか」を言語化することが先決です。社員の声を聞き、職場の魅力を整理することからはじめましょう。
採用チャネルを選ぶ優先順位の考え方
採用単価を下げるには、どのチャネルから始めるかの優先順位が重要です。採用チャネルは多数存在しますが、すべてを同時に始めることはリソース不足の中小企業には現実的ではありません。自社の状況に応じた優先順位の付け方が、費用対効果を最大化するカギです。
会社の状況別チャネル選択の目安
| 状況 | 優先すべきチャネル | 理由 |
|---|---|---|
| 今すぐ採用が必要・リソース少 | ハローワーク+Indeed(無料) | 費用ゼロまたは低コストで即時掲載可能 |
| 3〜6ヶ月以内に数名採用予定 | リファラル制度を並行整備 | 制度設計に時間がかかるが、採用単価が最も低くなりやすい |
| 採用ブランドを育てたい | Wantedly+採用広報(SNS・ブログ) | 中長期で自然応募を生む基盤を作れる |
| エンジニア・専門職の採用 | Green・Findy等専門媒体 | 職種特化で候補者の質・量を確保しやすい |
「何から始めるか」の判断軸
優先順位を決める際に有効な判断軸は「採用まで許容できる期間」と「対応できる工数」の2点です。
欠員補充が急務であれば、まず無料チャネルで掲載しながら、並行してリファラル制度の骨格を設計するという二段構えが現実的です。「全部一気にやろう」とすると中途半端になり、どのチャネルも機能しないまま工数だけが消費されてしまいます。
兼務担当者には、まず最初に1〜2チャネルに絞って成果を測り、次のチャネルに展開する順序が最も無理のないアプローチです。
エージェントをゼロにする必要はない
採用単価を下げるために「エージェント依存を減らす」ことが目的であり、完全にゼロにすることが正解ではありません。専門性の高いポジションや経営幹部採用など、エージェントの方が効率的な場面は存在します。
「高単価な求人はエージェント、汎用的な職種は自社チャネル」という使い分けを設計することで、トータルの採用コストを計画的にコントロールできます。
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採用コスト削減の落とし穴と対策
採用コスト削減に取り組む際には、「やり方を変えただけで思わぬ出費や工数増が発生する」という落とし穴があります。事前に把握しておくことで、対策を講じながら進めることができます。
「チャネルを増やしたのにコストが増えた」パターン
採用単価が増える主な原因は、表面的なコストだけを見落とすことにあります。
- 求人広告への掲載費
- 採用担当者の対応工数(時給換算)
- 求人票の作成・更新に費やした時間
これらを合算すると、チャネルを増やした結果としてエージェント1回分以上のコストが発生するケースがあります。特に「掲載料がかかる媒体」と「成果報酬型の媒体」の違いを理解せずに複数媒体に同時掲載すると、管理工数が膨大になります。
導入前にチャネルごとの想定費用と工数を試算し、採用単価の上限を設定しておくことが重要です。
求人票の質が採用単価に直結する
どのチャネルを使っても、求人票の質が低ければ応募は集まりません。「仕事内容・給与・勤務地・雇用形態」の基本情報は職業安定法上の明示義務として正確な記載が求められますが、それ以上に「なぜこの仕事がこの会社で面白いのか」という動機づけが応募率を左右します。
既存社員に「この会社に入ってよかったこと」を聞き、そのまま求人票に反映するだけでも、採用広報として機能することがあります。
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まとめ
採用単価を下げるためには、エージェントへの依存を段階的に減らし、自社に合ったチャネルを組み合わせる戦略が必要です。まず現状の採用コスト構造を把握し、次にハローワーク・Indeed等の低コストチャネルを試しながら、リファラル採用の制度設計を並行して進める——この順序が、リソースに限りのある中小企業には最も現実的なアプローチです。
チャネルを変えるだけでコストが自動的に下がるわけではなく、求人票の質・管理体制・制度設計がセットで機能してはじめて結果につながります。
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