介護休業の申出が突然来たら何から始めればいい?

介護休業の申出が突然来たら何から始めればいい? 労務管理
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「昨日、Aさんから介護休業を取りたいと言われて……正直、何から手をつければいいかわからなくて」。そんな状況にいる人事担当者・経営者の方は少なくありません。育児休業とは異なるルール、給付金の手続き、社会保険の取り扱いと、初めて対応するとなれば頭が混乱するのも当然です。この記事では、介護休業の申出を受けた会社が「今日からやるべきこと」を、手続きの全体像から給付金申請まで順を追って解説します。専任人事がいない中小企業でも迷わず対応できるよう、法的義務と実務の落とし穴も合わせてお伝えします。

確認すべき「申出の要件チェック」

介護休業の申出を受けたら、最初に行うべきことは「その申出が法的要件を満たしているか」の確認です。要件を満たしていれば原則として拒否できませんが、要件不足のケースは丁寧に説明したうえで対応を調整できます。

対象者(労働者側)の要件を確認する

介護休業を取得できるのは、同一事業主に継続して1年以上雇用されている労働者です。有期雇用の場合は「休業終了予定日から6か月以内に契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない」ことも条件になります(育児・介護休業法の2022年4月改正後の基準)。パート・アルバイトも要件を満たせば取得対象です。「正社員じゃないから…」と思い込んで拒否すると法令違反になるため注意が必要です。

「要介護状態」と「対象家族」の範囲を確認する

介護休業の対象となる家族は、配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫です。そして「要介護状態」とは、負傷・疾病・身体上または精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態を指します。ここで重要な注意点があります。公的介護保険の「要介護認定」とは別の概念です。介護認定を受けていなくても、この定義に該当すれば取得できます。逆に、介護認定を受けていても会社への申出書類は別途必要です。本人への確認は「要介護認定の有無」ではなく「常時介護が必要な状態であること」を書面で申告してもらう形が適切です。

申出書類の受け取りと保管

申出は書面または電磁的方法(メール等)で行うことが法令上の原則です。口頭で申出があった場合でも、後から書面(介護休業申出書)を提出してもらうよう依頼してください。厚生労働省の法定様式を活用すると、記載漏れを防げます。申出書には「休業開始予定日」「休業終了予定日」「対象家族の氏名・続柄・要介護状態」を明記してもらいます。この書類は給付金申請にも使用するため、必ず保管してください。

申出から休業開始までに会社がやること

要件確認が終わったら、休業開始日までに会社側が整えるべき対応が複数あります。期日を逃すとトラブルの原因になるため、優先順位をつけて動くことが大切です。

就業規則・労使協定の確認

まず自社の就業規則に介護休業の規定があるか確認します。法律の最低基準を下回る定めは無効ですが、上乗せ規定(有給にする、日数を延長するなど)がある場合はその内容に従います。また、労使協定で取得できない労働者の範囲を定めている場合(入社1年未満の者を除外するなど)も確認が必要です。就業規則が整備されていない場合は、育児・介護休業法の法定基準がそのまま適用されます。

休業中の賃金・社会保険の取り扱いを本人に説明する

会社として特段の定めがなければ、介護休業中の賃金支払い義務はありません。多くの企業では無給扱いとしています。ただし、育児休業と異なり、介護休業中は社会保険料(健康保険・厚生年金)の免除制度が適用されません。この点は本人が誤解しやすい重要なポイントです。休業中も会社・本人それぞれの社会保険料負担は継続するため、毎月の保険料をどのように徴収するか(休業前にまとめて預かる、復職後に分割で控除するなど)を事前に取り決め、本人に書面で説明しておきましょう。

業務の引き継ぎ・体制整備を並行して進める

20~50名規模の企業では、一人のキーパーソンが抜けると業務が止まるリスクがあります。法的手続きと並行して、業務の棚卸し・引き継ぎドキュメントの作成・一時的な業務分散や外部委託の検討を早めに始めてください。育児・介護休業法は申出の2週間前までに労働者が申し出ることを義務付けていますが、実際には「今日申し出て来週から休みたい」というケースもあります。余裕がない場合でも、まず手続きを進めながら現場対応を進める姿勢が重要です。

介護休業と業務体制の同時対応に迷ったら、人事労務の専門家に相談するのも効果的です。会社と従業員の双方にとって納得感のある対応を設計できます。

介護休業給付金の申請手続き

介護休業給付金は、雇用保険の被保険者が介護休業を取得した場合に、会社(事業主)がハローワークに申請して受け取る給付です。申請期限が厳格に定められているため、早めに準備を始めることが重要です。

給付金の受給要件と給付率

給付金を受け取るには、以下の要件をすべて満たす必要があります。まず、雇用保険の被保険者であること。次に、休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あること。そして、介護休業の取得日数が対象家族1人につき通算93日以内であることです。給付率は休業開始時賃金の67%です。受給要件を満たさない場合(雇用保険の加入期間が短い、短時間すぎるなど)は給付金が出ないため、申出の段階で確認しておくと本人への説明がスムーズです。

申請に必要な書類を整える

主な必要書類は以下のとおりです。

  • 介護休業給付金支給申請書
  • 賃金台帳(休業開始前の賃金確認のため)
  • 出勤簿またはタイムカード
  • 介護休業申出書のコピー
  • 対象家族の氏名・続柄・要介護状態を確認できる書類

書類の様式はハローワークのウェブサイトからダウンロードできます。初めての対応であれば、管轄のハローワークに事前相談することをおすすめします。担当者に「初めて介護休業の申請をする」と伝えれば、書類の書き方を丁寧に教えてもらえます。

申請期限を絶対に守る

申請期限は「支給単位期間の末日の翌日から起算して2か月以内」です。支給単位期間とは、介護休業を開始した日から1か月ごとに区切った期間のことです。つまり休業が始まったら、最初の1か月が終わった時点から2か月以内に第1回目の申請を行う必要があります。期限を過ぎると給付金が受け取れなくなるため、カレンダーに申請期限を記入し、リマインダーを設定しておきましょう。

取得回数・日数のルールと分割取得の仕組み

介護休業は、同一の対象家族について通算3回・93日まで分割して取得できます。このルールを理解しておくと、従業員の状況に応じた柔軟な対応が可能になります。

分割取得の考え方

2017年1月の育児・介護休業法改正以降、介護休業は3回まで分割して取得できるようになりました。たとえば「最初に30日取得、その後追加で40日取得、さらに23日取得」という形で合計93日を使い切ることができます。介護の状況は変化するため、まとめて長期間休むより、必要なタイミングで分けて使うほうが実態に合っていることも多いです。会社としても「最長93日」と覚えておくと、業務体制の見通しが立てやすくなります。

介護休業の取得回数・日数一覧

項目 内容
取得できる回数 同一対象家族につき通算3回まで
取得できる日数 同一対象家族につき通算93日まで
分割取得 可(2017年1月改正後)
複数の対象家族がいる場合 それぞれの家族について3回・93日が適用される
申出の期限(労働者側) 休業開始予定日の2週間前まで

複数の対象家族がいるケース

親と配偶者の親など、複数の家族が要介護状態になる場合、それぞれの家族について「3回・93日」が別々にカウントされます。会社としては、誰の介護のための休業かを申出書で明確に記録しておくことが、後の管理のトラブルを防ぐポイントです。

休業中・復職後の労務管理で準備しておくこと

休業が始まった後も、会社としての対応は続きます。特に復職後の条件設定を休業前に整備しておかないと、復職時にトラブルになるケースがあります。

休業中の連絡ルールを決めておく

介護休業中の業務連絡について、事前にルールを決めておきましょう。「緊急時のみ連絡する」「月に一度の状況確認の連絡はOK」など、双方が納得できる形で合意し、書面に残しておくことが理想です。本人の希望と会社の実情をすり合わせる機会を、休業開始前に設けてください。

復職後のポジション・勤務条件を明確にする

育児・介護休業法は、介護休業後の原職復帰を努力義務として定めています(法的には「原則として原職または原職相当職」への復帰が求められます)。復職後に「ポジションが変わっていた」「給与が下がっていた」といったトラブルを防ぐため、休業前に「復職後の職務・勤務場所・労働条件」を書面で確認しておきましょう。また、育児・介護休業法には介護のための「短時間勤務制度」や「所定外労働の制限」も定められています。自社の就業規則でこれらの措置が整備されているか、この機会に確認することをおすすめします。

就業規則が未整備の場合は早めに整える

常時10名以上の労働者を使用する事業場は就業規則の作成・届出が義務付けられています(労働基準法第89条)。介護休業の規定が不十分なまま対応すると、次回以降の申出時にも同じ混乱が繰り返されます。今回の対応をきっかけに、育児・介護関連の規定を整備するタイミングと捉えるとよいでしょう。

介護休業対応や就業規則の整備は、一人で判断すると見落としが生じやすい領域です。専門家のサポートで安心した運用体制を作ることができます。

まとめ

介護休業の申出を受けたら、まず「取得要件の確認→書面での申出受理→賃金・社会保険の説明→給付金申請の準備」という流れで対応を進めてください。特に重要な3点を押さえておきましょう。育児休業と異なり介護休業中は社会保険料の免除が適用されないこと、給付金の申請期限(支給単位期間末日の翌日から2か月以内)を逃さないこと、そして復職後の条件を休業前に明確にしておくことです。

「今回は何とか対応できたが、次回また同じ混乱をしたくない」「そもそも就業規則が介護休業に対応していない」「手続きの全体像を誰かに整理してほしい」と感じている方は、一度専門家に現状を相談してみることをおすすめします。ウェルセンス株式会社では、専任人事がいない中小企業の人事労務課題を一緒に整理するご支援をしています。「自社の状況を聞いてほしい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 介護休業の申出を会社が断ることはできますか?

A. 取得要件(雇用期間1年以上など)を満たしている場合、原則として断ることはできません。ただし、入社1年未満の労働者など、労使協定で除外が認められている場合は申出を断ることが可能です。「業務が忙しい」「代替要員がいない」といった理由では拒否できず、拒否すれば育児・介護休業法違反となります。

Q. 介護休業中の社会保険料は誰が払うのですか?

A. 介護休業中は育児休業と異なり、健康保険・厚生年金保険料の免除制度が適用されません。会社負担分・本人負担分ともに通常通り発生します。休業中は給与の支払いがない場合が多いため、毎月の保険料をどのように徴収するかを事前に本人と取り決めておくことが重要です(例:復職後に分割控除する、休業前に一括預かりするなど)。

Q. 介護休業給付金の申請は本人がするのですか?会社がするのですか?

A. 介護休業給付金の申請は、原則として事業主(会社)がハローワークに対して行います。申請に必要な賃金台帳・出勤簿などの書類も会社が準備します。給付金は会社の口座に振り込まれたうえで従業員に渡す形が一般的です。本人が直接申請するケースは少なく、会社の手続きが遅れると給付が受けられなくなる場合があるため、期限管理は会社側の責任として行ってください。

Q. 「介護休業」と「介護休暇」の違いは何ですか?

A. 介護休業は最長93日の長期にわたる休業制度で、介護休業給付金の対象です。一方、介護休暇は要介護状態の対象家族が1人いる場合に年5日(2人以上で年10日)取得できる短期の休暇制度です。介護休暇は1日または時間単位で取得でき、通院の付き添いなど短期のケアに対応します。給付金の対象は介護休業のみです。

Q. 介護休業の申出書は、市販の書式を使ってもよいですか?

A. 法令上、申出書の様式は特定の書式が義務付けられているわけではありません。ただし、厚生労働省が公開している「育児・介護休業等に関する規則の規定例」に含まれる様式を使用するのが最もトラブルが少なく安心です。記載すべき項目(対象家族の続柄・要介護状態・休業開始・終了予定日など)が網羅されており、給付金申請の際にもそのまま活用できます。厚生労働省のウェブサイトから無料でダウンロードできます。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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