年末が近づいてきたとき、ふと気づく。「そういえば、今年の春から休職している○○さんの年末調整、どうすればいいんだろう?」——人事専任者がいない職場では、こうした疑問が年末になって突然浮かび上がることがあります。給与がゼロの社員に源泉徴収票は必要なのか、傷病手当金は年末調整に含めるのか、書類を送っていいのかどうか。この記事では、休職中社員の年末調整・源泉徴収票発行で会社側が押さえるべき実務手順を、5つのポイントに整理して解説します。
休職中でも年末調整の対象になるかを確認する
結論からお伝えすると、年末時点で在籍している社員は、給与の支払いが一時的にゼロであっても、原則として年末調整の対象です。ただし、年の途中で退職になった場合は扱いが変わります。まず自社の休職者がどのケースに当たるかを確認することが最初の判断です。
在籍・退職による分岐の整理
年末調整の対象かどうかは、年末時点の在籍状況によって変わります。下表を参考に、社員の状況を照らし合わせてください。
| 年末時点の状況 | 年末調整の扱い | 源泉徴収票の発行 |
|---|---|---|
| 在籍中・給与支払いあり | 通常通り実施 | 翌年1月31日までに発行 |
| 在籍中・給与ゼロ(傷病手当金のみ) | 対象(支払金額ゼロで実施) | 翌年1月31日までに発行 |
| 年の途中で退職(休職中含む) | 不要(本人が確定申告) | 退職後1か月以内に発行 |
「今年は1円も給与を払っていない」場合の注意点
前年から引き続き休職しており、当年は一度も給与を支払っていないケースがあります。この場合、その年に給与等の支払いがなければ源泉徴収票の発行義務は生じないと解釈されることがあります。ただし、在籍関係が続いている以上、扶養控除等申告書の回収や翌年以降の手続きへの影響がありますので、税務署や社会保険労務士に個別に確認することを強くお勧めします。
退職が年をまたぐケースに注意
12月末ギリギリに退職が決まった場合、年末調整を実施するかどうかで処理が変わります。12月31日時点で在籍していれば年末調整の対象ですが、12月中に退職した場合は年末調整は不要で、退職後1か月以内に源泉徴収票を発行する義務があります(所得税法第226条)。退職日の確定が遅れると手続きが後手に回りやすいため、人事側は早めに退職日を確認しておくことが重要です。
源泉徴収票の発行義務と「給与ゼロ」の関係を理解する
「給与がゼロなら源泉徴収票を出さなくていいのでは?」と思われがちですが、これは誤りです。その年に一度でも給与を支払った実績がある場合、雇用関係が継続している限り、翌年1月31日までに源泉徴収票を本人に交付する義務があります(所得税法第226条)。
発行義務が生じる根拠
所得税法第226条は、給与等の支払いをした者に対して、その年分の源泉徴収票を翌年1月31日までに交付することを義務づけています。年の途中から休職して給与がゼロになったとしても、その年に給与を支払った期間がある以上、発行義務は免除されません。給与支払金額の欄に実際に支払った金額を記載し、源泉徴収税額や社会保険料等の金額を正確に転記します。
給与ゼロ期間がある場合の記載内容
たとえば4月から休職に入り、1月から3月の3か月分のみ給与を支払った社員であれば、その3か月分の支払金額・源泉徴収税額・社会保険料控除額を記載します。傷病手当金は記載しません(後述)。年末調整を実施した場合は、年末調整後の過不足税額も反映させます。
🔗 メンタル不調の社員への連絡時期や方法に不安がある場合は、医学的な判断を含めて適切にアドバイスをもらうことが大切です。 →
傷病手当金は年末調整・源泉徴収票に含めない
傷病手当金は非課税であり、源泉徴収票にも年末調整にも含める必要はありません。これを知らずに給与所得として計上すると、課税額の誤りや各種控除の判定ミスが連鎖して発生するため、特に注意が必要です。
傷病手当金が非課税である根拠
傷病手当金は健康保険法に基づく保険給付であり、所得税法第9条第1項第3号により非課税所得とされています。したがって、社員が受け取る傷病手当金の金額は、源泉徴収票の「支払金額」欄に一切記載しません。また、年末調整の計算においても傷病手当金を所得として加算する必要はありません。
会社独自の上乗せ給付は課税対象になる場合がある
一方、会社が独自の規程に基づいて支給する「休職補償給付」や「見舞金」などは、その内容・金額・支払い方法によって課税対象となる場合があります。傷病手当金と混同してそのまま非課税扱いにしてしまうと、申告漏れになるリスクがあります。自社の休職規程や賃金規程を確認し、不明な場合は税理士や社会保険労務士に確認しましょう。
社員の配偶者控除・扶養控除への影響
傷病手当金は非課税所得であるため、社員本人の合計所得金額には算入されません。ただし、配偶者や扶養親族として登録されている別の家族が傷病手当金を受け取っている場合も同様に非課税扱いとなり、扶養判定には影響しません。この点について担当者が誤解しているケースがありますので、申告書を回収した際に内容を確認するとよいでしょう。
休職中社員への書類送付と扶養控除等申告書の回収
年末調整を行うには、社員本人から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を回収する必要があります。休職中でも書類の送付・回収は必要ですが、特にメンタル不調の場合は連絡方法に配慮が求められます。
メンタル不調の休職者への連絡の注意点
うつ病などメンタル不調で休職している社員へ突然連絡することは、回復の妨げになる可能性があります。書類を送付する前に、主治医や産業医(在籍している場合)に連絡の可否・方法について確認することが望ましい対応です。産業医がいない場合は、主治医の意見書や休職中の連絡ルールを休職開始時に取り決めておくことで、こうした場面でスムーズに動けます。
メンタル不調の社員との連絡時期や方法に不安がある場合は、医学的な判断を含めて適切にアドバイスをもらうことが大切です。
書類送付の具体的な方法
連絡が可能と判断した場合は、書面を郵送するのが基本です。電話やメールで突然連絡することは避け、あらかじめ送付の旨を手紙で案内してから申告書を送る方法が丁寧です。本人への直接連絡が難しい場合は、緊急連絡先として届け出ている家族(配偶者など)を経由して書類を渡すことも選択肢となります。どの方法を取ったかを記録しておくと、後のトラブル防止になります。
連絡が取れない場合の対応
何度試みても本人と連絡が取れない、書類が返送されてこないといった状況では、一人で判断せず税務署に相談することを検討してください。申告書が未提出の場合でも、会社側が源泉徴収票の発行義務を免れるわけではないため、手続きを止めることなく並行して対応を進めることが重要です。
住民税の特別徴収切り替えも忘れずに対応する
給与支払いがゼロになった時点で、住民税の給与天引き(特別徴収)が継続できなくなります。この手続きを放置すると、社員本人が住民税を滞納する事態につながるため、休職開始時点で速やかに対応することが必要です。
異動届の提出先と内容
住民税の特別徴収ができなくなる場合、市区町村に対して「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出します。この届出により、特別徴収から普通徴収(本人が直接納付)へ切り替わります。提出先は社員の住所地の市区町村となります。複数の市区町村に在住の社員がいる場合は、それぞれの市区町村に個別に提出が必要です。
社員本人への案内も忘れずに
普通徴収に切り替わると、住民税の納付書が社員の自宅に届くようになります。社員がこれを把握していないと、納付書の意味がわからず放置してしまうことがあります。切り替えの事実と納付方法について、書面で本人に案内しておくことが親切な対応です。また、復職後は特別徴収に戻す手続きが必要になるため、そのタイミングも事前に確認しておきましょう。
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まとめ
休職中社員の年末調整・源泉徴収票対応は、「在籍か退職か」の確認から始まり、源泉徴収票の発行義務の把握、傷病手当金の非課税処理、扶養控除等申告書の回収、住民税の切り替えという流れで進みます。特にメンタル不調の社員への連絡は、主治医・産業医と連携しながら慎重に行うことが大切です。専任人事がいない環境では、こうした対応が年末に一気に重なり、手が回らなくなることも少なくありません。
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よくある質問
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