「外国人を採用したいが、何から始めればいいかわからない」——そう感じている経営者・人事担当者は少なくありません。在留資格の確認方法、雇用契約書の作り方、ハローワークへの届出……やるべきことは多く、専任人事がいない中小企業にとっては大きな負担です。この記事では、外国人採用の手続きを順序立てて解説し、採用から定着までの全体像を把握できるようにしました。
在留資格の確認と就労可否の判断
在留カードで確認すべき3つのポイント
外国人採用の手続きの第一歩は、在留カードの確認です。在留カードには「在留資格の種類」「在留期限」「就労制限の有無」が記載されており、採用可否を判断するための基本情報が詰まっています。
カードの表面で在留資格と期限を確認し、裏面の就労制限記載内容を必ず確認してください。コピーを保管しておき、在留期限が近づいたら再確認する運用ルールを社内で定めておくと安心です。
就労できる在留資格とできない在留資格
在留資格は大きく4つに分類できます。
- 就労制限なし:「永住者」「日本人の配偶者等」「定住者」など、幅広い職種で働ける
- 就労可能だが職種に制限あり:「技術・人文知識・国際業務」「介護」「特定技能」など
- 原則として就労不可:「留学」——ただし「資格外活動許可」を取得していれば週28時間までアルバイト就労が認められる
- 就労一切認められない:「短期滞在」
留学生の場合、資格外活動許可がなければ正社員としての雇用はできません。資格外での就労を前提とした雇用は、会社側のリスクになることを認識しておくことが重要です。
不法就労助長罪のリスクを知っておく
就労できない在留資格の外国人を雇用した場合、会社側も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。「知らなかった」では免責されません。
在留カードの確認を採用プロセスの必須ステップとして組み込み、疑問があれば出入国在留管理庁(入管)や社会保険労務士に相談するようにしましょう。採用担当者が一人で判断を抱え込まない体制づくりが、外国人採用を安全に進めるためのポイントです。
雇用契約書と労働条件通知書の作り方
日本人と同じ労働法が適用される
「外国人だから契約内容を簡略化してもよい」という考え方は誤りです。労働基準法・最低賃金法・社会保険関連法は、国籍に関係なくすべての労働者に適用されます。
例えば、最低賃金を下回る賃金設定は違法ですし、健康保険・厚生年金への加入も日本人と同様に義務付けられています。雇用契約書や労働条件通知書は、既存の日本人向け書式をそのまま活用して問題ありませんが、相手が実際に内容を理解できるかどうかが重要な視点です。
労働条件通知書は母国語での交付が望ましい
厚生労働省は、労働条件通知書を「労働者が理解できる言語で交付することが望ましい」としています。日本語能力が十分でない外国人従業員に対して、日本語だけの書面を交付した場合、「契約内容を理解していなかった」というトラブルに発展するケースがあります。
厚労省が提供する多言語の労働条件通知書モデルを活用すると、コストをかけずに対応できます。英語・中国語・ポルトガル語・ベトナム語など主要言語のひな型が公開されており、ダウンロードして使用できます。
契約書に盛り込むべき重要事項
外国人雇用の契約書には、一般的な記載事項に加えて以下の点も明記しておくと安心です。
- 試用期間の設定と条件
- 解雇事由と手続き
- 社会保険の加入について
- 在留資格の状況が変わった場合の取り扱い(例:「在留資格が更新されなかった場合は雇用継続が困難になる旨」)
これらを事前に明文化しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
ハローワークへの外国人雇用届出
届出は法的義務であり、怠ると罰金対象
外国人を雇用・離職させた場合、事業主はハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を行う法的義務があります(労働施策総合推進法第28条)。届出期限は、雇入れまたは離職の翌月10日までです。
この届出を怠った場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。実際には届出漏れに気づかないまま運用している中小企業も多く、監督署の調査で発覚するケースもあります。「採用したらすぐ届出」を社内ルールとして徹底しましょう。
雇用保険加入者は手続きが一体化されている
雇用保険の被保険者となる外国人(週20時間以上勤務・31日以上雇用見込みなど)については、雇用保険の資格取得届と外国人雇用状況の届出を一体で手続きすることができます。ハローワークの窓口で「外国人であること」を伝えれば、担当者が手続きを案内してくれます。
一方、雇用保険に加入しない短時間労働者やアルバイトの場合は、届出様式「外国人雇用状況届出書」を別途提出する必要があります。どちらの区分かを確認した上で手続きを進めてください。
在留資格の変更・更新が必要なケース
採用内定後に「現在の在留資格では担当予定の業務が認められない」とわかった場合、内定者は出入国在留管理庁へ在留資格変更許可申請を行う必要があります。審査には概ね1〜3ヶ月かかるため、入社予定日から逆算して早めに動くことが大切です。
申請には会社側が準備する書類(登記簿謄本・直近の決算書・採用理由書・業務内容説明書など)も多数含まれます。初めての場合は、入管申請を専門とする行政書士に依頼するのが現実的です。
特定技能制度を活用する際の注意点
1号・2号の違いと対象12分野を把握する
2019年に創設された特定技能制度は、人手不足が深刻な特定産業分野で即戦力となる外国人を受け入れるための制度です。製造業・飲食料品製造・介護・建設・農業・宿泊など12分野が対象となっています。
特定技能1号と2号では権利・義務に大きな違いがあります。1号は通算5年の在留期間で家族の帯同が原則不可、2号は更新可能で家族帯同も認められます。自社の業種が対象分野かどうかをまず確認することが出発点です。
支援計画の策定と登録支援機関の活用
特定技能1号の外国人を雇用する場合、受け入れ企業は「支援計画」を策定し、生活オリエンテーションや定期面談などの支援を実施する義務があります。この支援業務を自社で行うことが難しい場合は、出入国在留管理庁に登録された「登録支援機関」に業務を委託することができます。
委託費用は月額2〜5万円程度が相場で、手続きや日常サポートを代行してもらえるため、専任人事がいない中小企業には特に有効な選択肢です。
定期報告義務を見落とさない
特定技能外国人を雇用している企業には、出入国在留管理庁への定期報告義務があります。四半期ごと(年4回)に、受け入れ状況や支援の実施状況などを報告書にまとめて提出しなければなりません。
報告漏れが続くと行政指導の対象になるほか、最悪の場合は受け入れ資格を失うリスクもあります。カレンダーに報告期限を入れておくなど、管理の仕組みを最初から整えておくことをおすすめします。
🔗 社員のメンタル不調に、精神科・心療内科医によるスポット産業医サービス →
社内受け入れ体制の整備と定着支援
既存社員との認識ズレを防ぐコミュニケーション設計
外国人従業員が職場に馴染めない原因の多くは、文化的背景の違いに起因しています。例えば「報・連・相」の文化は日本特有であり、問題が起きても自発的に報告しない、曖昧な指示を「わかりました」と言いながら理解していない、といったケースが中小企業でもよく起こります。
入社時のオリエンテーションで「日本の職場文化」を明文化して説明する、業務マニュアルに図解を多用するなど、伝える工夫が定着率を高める鍵になります。
宗教・文化的配慮を社内ルールに組み込む
イスラム教徒の従業員がいる場合は礼拝時間の確保や食事への配慮が必要です。特定の宗教行事のための休暇申請をどう扱うかも、事前にルールを作っておかないと公平性をめぐるトラブルになりかねません。
「外国人だから特別扱い」でも「日本人と完全に同一」でもなく、文化的多様性を尊重しながら職場のルールを設計するという視点が重要です。社内でダイバーシティに関する簡単な勉強会を開くだけでも、既存社員の理解が深まります。
外国人従業員のメンタルヘルスケアは別途設計が必要
外国人従業員は言語・文化・生活環境の不安を抱えやすく、精神的な不調を抱えていても相談できないまま離職するケースが多くあります。ストレスチェックや産業保健の仕組みが日本語前提になっていると、外国人社員が実質的に対象外になってしまいます。
「採用して終わり」ではなく、定着・活躍まで視野に入れた支援体制が、外国人採用を成功させる上で欠かせない要素です。相談窓口を設ける、母国語対応の支援リソースを案内するといった取り組みが有効です。
🔗 人事だけで抱えない。メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談 →
まとめ
外国人採用の手続きは、在留資格の確認・雇用契約書の整備・ハローワークへの届出・社内受け入れ体制の構築と、複数のステップが重なり合っています。専任人事がいない中小企業では、一つひとつを抜け漏れなく対応するだけでも大きな負担です。さらに、採用後の定着やメンタルヘルスまで目を向けると、対応すべきことはより広範囲にわたります。
ウェルセンス株式会社では、外国人従業員を含む職場環境の整備や、メンタルヘルス支援体制の構築について、中小企業の実情に合わせたサポートを提供しています。「何から始めればいいかわからない」「採用後の定着に不安がある」という方は、まず気軽にご相談ください。
よくある質問
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。
不調者対応を、人事だけで抱えない。
メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談いただけます。


