育児休業の手続きで迷ったら読む中小企業の対応マニュアル

育児休業の手続きで迷ったら読む中小企業の対応マニュアル 採用・定着
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「社員から妊娠の報告を受けたけど、まず何をすればいいんだろう…」専任の人事担当者がいない中小企業では、育児休業の対応が突然始まることも珍しくありません。申請書類・社会保険の手続き・給付金の申請・復職準備と、やるべきことは多岐にわたります。この記事では、育児休業に関する手続きの全体像を時系列で整理し、中小企業が押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。

育児休業手続きの全体像を把握する

育児休業の対応は、大きく「申請受付」「社会保険」「給付金」「復職準備」の4つのフェーズに分けて考えると整理しやすくなります。まず全体の流れを頭に入れてから、個別の手続きに進みましょう。

社員からの申し出を受けたら確認すること

育児・介護休業法では、育休の申し出は育休開始予定日の1ヶ月前までに書面等で行うことが定められています(第5条)。社員から「育休を取りたい」と申し出があった段階で、以下を確認しておきましょう。

  • 育休の開始・終了予定日
  • 雇用形態(有期雇用の場合は契約期間の確認が必要)
  • 産後パパ育休(出生時育児休業)の希望の有無
  • 育休の分割取得を希望するかどうか

なお、有期雇用労働者が育休を取得するには「1歳6ヶ月までの間に労働契約が満了することが明らかでない」ことが条件です。2022年の法改正で要件が緩和されたため、以前より多くのパート・契約社員が対象となっています。

2022年法改正で変わった3つのポイント

2022年10月の育児・介護休業法改正は、中小企業にも大きく影響します。特に押さえておきたいのは以下の3点です。

  • 産後パパ育休の創設:子の出生後8週間以内に、最大4週間取得できる新制度。通常の育休とは別枠で取得可能です。
  • 育休の分割取得:通常の育休を2回に分けて取得できるようになりました。業務調整の観点から計画が立てやすくなります。
  • 個別周知・意向確認の義務化:社員またはその配偶者が妊娠・出産を申し出た際、会社は育休制度を個別に周知し、取得するかどうかの意向を確認しなければなりません。これは規模を問わず全事業主に課される義務です。

手続き全体のスケジュールイメージ

育休開始が決まったら、以下の順で手続きを進めます。まず申し出の受理と雇用環境の整備を行い、次に社会保険料免除の申請をハローワークと年金事務所へそれぞれ提出します。その後、2ヶ月ごとの給付金継続申請を忘れずに行いながら、復職に向けた職場準備を並行して進める流れになります。

社会保険料免除の手続きを見落とさない

育児休業中は、本人・会社の両方が支払う健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。知らないままでいると、双方にとって経済的な損失が生じます。この手続きを確実に行うことが、会社と社員の双方を守ることになります。

免除の対象と条件

育休期間中の社会保険料免除を受けるためには、日本年金機構(管轄の年金事務所)へ「育児休業等取得者申出書」を提出する必要があります。提出は育休開始後、速やかに行いましょう。

2022年10月の改正で、月内に14日以上育休を取得した場合、その月の社会保険料も免除対象となりました。それ以前は月末時点での在籍状況が基準でしたが、短期の育休でも免除が受けやすくなっています。また、育休期間中の月末を含む月に支給された賞与についても、社会保険料が免除される点は見落としがちなポイントです。

申請を忘れた場合のリスク

申出書を提出しないと、会社も社員も通常どおり社会保険料を支払い続けることになります。標準報酬月額30万円の社員が6ヶ月育休を取得した場合、免除される保険料(会社・本人合計)はおよそ30万円前後に上ることもあります。手続きひとつで大きな差が生まれるため、育休が確定した時点で速やかに対応しましょう。

育児休業給付金の申請で絶対に外せないポイント

育児休業給付金は、雇用保険から支給される給付金で、ハローワークへ事業主経由で申請します。支給額は休業開始時の賃金日額をもとに計算され、育休開始から180日間は67%、それ以降は50%が支給されます。たとえば月給25万円の社員であれば、最初の6ヶ月はおよそ月16万円が給付される計算です。

2ヶ月ごとの継続申請を必ず行う

育児休業給付金は、育休期間中に2ヶ月ごとに継続して申請する仕組みです。初回申請は育休開始からおよそ2ヶ月後が目安となります。この「継続申請が必要」という点を知らずに放置してしまい、社員が給付を受けられなかったというトラブルが中小企業で多く発生しています。

申請期限は、支給単位期間の末日翌日から2ヶ月以内と定められています。この期限を過ぎると不支給となる場合もあるため、カレンダーや管理シートで申請スケジュールを必ず記録・管理するようにしましょう。

産後パパ育休の給付金は別制度として管理する

2022年10月に創設された「出生時育児休業給付金(産後パパ育休給付金)」は、通常の育児休業給付金とは別の給付制度です。育休期間中に一定の条件のもとで就業した場合でも、給付の対象となる点が通常の育休給付金と異なります。男性社員が産後パパ育休を取得する際には、この給付制度の説明もあわせて行うと丁寧です。

男性育休の取得を職場全体でサポートする

男性社員から「育休を取りたい」と相談を受けたとき、戸惑う経営者や担当者は少なくありません。しかし2022年の法改正により、会社には雇用環境の整備と個別周知・意向確認が義務づけられています。「男性が育休を取るイメージがない」という職場環境こそ、意識的に変えていく必要があります。

会社に求められる雇用環境整備の具体策

法改正により、全事業主は以下の4つの措置のうち少なくとも1つを実施する義務があります。

  • 育休に関する研修の実施
  • 育休に関する相談窓口の設置
  • 育休取得事例の収集・提供
  • 育休取得促進に関する方針の周知

中小企業であれば、まずは「育休を取得した先輩社員の体験談を社内で共有する」「上司が積極的に声かけをする」といった取り組みから始めることが現実的です。形式的な整備ではなく、実際に取得しやすい雰囲気づくりが重要です。

手続き面での確認事項

男性社員が産後パパ育休を取得する場合、子の出生後8週間以内に申し出る必要があります。期間は最大4週間で、休業中に一定の範囲で就業することも可能(労使協定の締結が必要)。通常の育休と組み合わせれば、合計で長期間の育休取得も実現できます。社員から相談があった際に「どの制度をどう組み合わせるか」を一緒に整理できると、取得のハードルが下がります。

復職前に会社が準備しておくこと

育休からの復職は、社員にとって大きな環境変化です。「戻ってくる場所がある」と感じてもらえるかどうかが、早期離職を防ぐ鍵になります。復職準備は育休の終盤から始め、会社側から積極的に動きましょう。

短時間勤務制度・残業免除の整備

育児・介護休業法第23条では、3歳未満の子を養育する労働者に対して、1日6時間の短時間勤務制度を設けることが会社に義務づけられています。また、同じく3歳未満の子を養育する社員が請求した場合、残業をさせてはなりません。

復職前に「短時間勤務を希望するか」「勤務時間の希望はどのくらいか」を本人に確認し、業務分担の調整を行うことが大切です。この段階での丁寧なコミュニケーションが、復職後のモチベーション維持につながります。

周囲の社員への配慮と不利益取扱いの禁止

育休取得や復職を理由とした降格・減給・雇止めは、育児・介護休業法第10条により禁止されています。また、いわゆるマタニティハラスメント(マタハラ)・パタニティハラスメント(パタハラ)の防止措置も全事業主に義務づけられています。

復職する社員の周囲にいるメンバーに対しても、「短時間勤務になること」「業務の再配分が生じること」を事前に丁寧に説明しておきましょう。説明なしに負担が増えた同僚の不満が、職場の雰囲気を悪化させることがあります。復職者だけでなく、チーム全体をフォローする視点が求められます。

復職面談で確認すべき内容

復職の1〜2ヶ月前には面談の機会を設けることをおすすめします。確認すべき主な内容は以下のとおりです。

  • 復職予定日の確認
  • 短時間勤務・所定外労働の免除の希望
  • 保育園の状況・送迎の時間帯
  • 復帰後の担当業務・役割の確認
  • 体調・不安に感じていることのヒアリング

この面談をていねいに行うだけで、「会社が自分の復職を歓迎してくれている」という安心感が生まれます。数十分の面談が、採用・育成にかかるコストを守ることにつながります。

まとめ

育児休業の手続きは、申請受付・社会保険料免除・給付金申請・復職準備の4つのフェーズを順に対応することが基本です。特に社会保険料免除の申出書や、育児休業給付金の2ヶ月ごとの継続申請は、知らないままでいると会社・社員双方に損失が生じます。また2022年の法改正で男性育休の取得促進や個別周知・意向確認が義務化されたことも、中小企業として見逃せないポイントです。

とはいえ、専任の人事担当者がいない中で、こうした対応をすべて自社だけで整備するのは容易ではありません。「手続きの漏れが心配」「育休に関する社内整備を進めたいが何から手をつければいいかわからない」とお感じでしたら、ウェルセンス株式会社にご相談ください。人事の専門知識がなくても対応できるよう、御社の状況に合わせて一緒に整理するところからお手伝いします。

よくある質問

Q. 育児休業給付金の申請は会社がするのですか?社員が自分でするのですか?

A. 育児休業給付金の申請は、原則として事業主(会社)がハローワークへ代わりに行います。社員が直接申請することも可能ですが、一般的には会社が手続きを代行します。申請に必要な書類(賃金台帳・出勤簿など)は会社側で用意し、2ヶ月ごとに申請を繰り返す必要があります。申請スケジュールの管理は会社側の責任で行いましょう。

Q. 社会保険料免除の申出書は、いつまでに提出する必要がありますか?

A. 「育児休業等取得者申出書」は、育休開始後速やかに管轄の年金事務所へ提出することが求められています。法律上の厳密な期限は育休終了後まで遡って申請できる場合もありますが、遡及が認められるかどうかはケースによって異なります。免除の取りこぼしを防ぐためにも、育休開始が決まった時点で早めに提出するのが安全です。

Q. 男性社員が1週間程度の短い育休を取る場合も、同じ手続きが必要ですか?

A. はい、短期間であっても育児休業には変わりなく、基本的な手続きは必要です。ただし社会保険料の免除については、2022年10月改正以降、月内に14日以上育休を取得した月が免除対象となるため、1週間程度では免除が適用されない月もあります。また、産後パパ育休(出生時育児休業)として取得する場合は、通常の育休給付金ではなく「出生時育児休業給付金」の申請になります。取得の形態によって手続きが異なるため、事前に確認しましょう。

Q. 育休中の社員に連絡を取ることは問題ありませんか?

A. 業務上の最低限の連絡(例:給付金手続きに必要な確認など)は問題ありませんが、業務の指示や過度な連絡はハラスメントになる可能性があります。育休中は業務から切り離されている期間であることを会社として明確にし、連絡が必要な場合は事前に「どの程度の連絡なら可能か」を本人と合意しておくことをおすすめします。復職準備のための連絡は、育休終盤(復職1〜2ヶ月前)から始めるのが一般的です。

Q. 育休取得者が復職後に早期退職してしまうケースを防ぐには何ができますか?

A. 復職後の早期離職には、「時短勤務への評価低下感」「職場への居場所のなさ」「育児との両立の限界」などが主な原因として挙げられます。対策として有効なのは、復職前面談での丁寧なヒアリング、短時間勤務・残業免除制度の整備と周知、復職後のフォローアップ面談の定期実施などです。また、周囲の社員への事前説明を怠ると、チーム内の不満が復職者へのプレッシャーとなることもあります。制度の整備だけでなく、職場の雰囲気づくりが離職防止の鍵です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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