試用期間中に有給は発生する?使わせる義務はあるか

試用期間中に有給は発生する?使わせる義務はあるか 採用・定着
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「うちは試用期間中だから有給はないよ」——採用面接や入社手続きの場で、そう伝えてきた経営者・人事担当の方は少なくありません。しかし実際には、この説明は法的に誤りであり、後になって労働基準監督署への申告やトラブルに発展するケースがあります。試用期間中でも有給休暇は発生します。そして、発生した有給を使わせる義務も原則として生じます。この記事では、試用期間と有給休暇をめぐる法律の基本から、中小企業ならではの実務上の注意点まで、具体的に解説します。

試用期間中でも有給休暇は発生する

結論から述べます。試用期間中であっても、法律上の要件を満たせば年次有給休暇は発生します。「試用期間中は有給なし」という扱いに法的根拠はありません。

有給休暇が発生する2つの条件

年次有給休暇の発生要件は、労働基準法第39条に定められています。条件はシンプルで、次の2点をどちらも満たした場合に、10日間の有給休暇が付与されます。

  • 雇入れの日から継続して6ヶ月が経過していること
  • その期間の全労働日に対して、8割以上出勤していること

この条件のどこにも「試用期間でないこと」という要件は含まれていません。試用期間中に働いた日数は、継続勤務期間としてそのままカウントされます。つまり、4月1日に入社した社員は、試用期間が3ヶ月であれ6ヶ月であれ、10月1日時点で出勤率8割以上であれば、10日間の試用期間 有給が付与されます。

「試用期間中は有給なし」と伝えていた場合のリスク

入社時に口頭や書面で「試用期間中は有給はありません」と説明していたとしても、それは法的に無効です。労働基準法第13条は「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分については無効とする」と定めており、有給を与えないという取り決めは最初から効力を持ちません。

こうした説明をしてきた場合、後から本人が労働基準監督署に申告すると、是正指導の対象になります。また、未付与の有給について遡って請求されるリスクもあります。過去の対応を振り返り、問題があれば早めに整理しておくことが重要です。

就業規則に「試用期間中は有給なし」と書いてある場合

就業規則に試用期間中の有給を制限する旨の記載があったとしても、法令に反する部分は無効です(労働基準法第13条)。就業規則の内容が法律を下回ることはできません。もし就業規則にこうした記載がある場合は、削除または修正が必要です。なお、年次有給休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)であり、正確な内容を記載する義務があります。

試用期間中の有給申請、断ることはできるか

試用期間中の社員から有給申請があっても、原則として拒否することはできません。ただし、時期を変更させることは一定の条件のもとで認められています。

労働者の「時季指定権」とは

労働者は自分が取得したい日を指定して有給を申請する権利(時季指定権)を持っています。この権利は試用期間中の社員にも同様に認められます。経営者や人事担当者が「試用期間だから」という理由で申請を拒否することは、法的に認められません。

使用者の「時季変更権」の範囲

使用者には「時季変更権」が認められています。これは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、申請された時季を別の日に変更させることができる権利です。ただし、あくまでも「別の日への変更」であり、有給取得そのものをなかったことにする権限ではありません。

たとえば「その日は重要な取引先との打ち合わせがあり、その社員でなければ対応できない」といった具体的な業務支障がある場合には時季変更権を行使できますが、「試用期間中だから」「まだ慣れていないから」といった理由は認められません。また、代替要員がいないことを理由にすることも難しく、「別の日を提示して変更を求める」という対応が必要です。

繁忙期に申請が来たときの対応

20〜50名規模の企業では、部署やチームの人数が少なく、「代わりがいない」状況が生じやすいです。しかしそれでも、有給取得を完全に拒否することはできません。現実的な対応としては、できる限り早めに「別の日では取得できないか」を本人に確認し、双方が合意できる日程を調整することが基本となります。対応を誤ると、後のトラブルや不信感につながるため、丁寧なコミュニケーションが重要です。

有給取得を理由に本採用拒否できるか

試用期間中に有給を取ったことを理由に本採用を拒否することは、法的に重大なリスクを伴います。こうした対応は「不当解雇」と判断される可能性があります。

試用期間中の本採用拒否は「解雇」に準じて扱われる

試用期間中の本採用拒否は、単なる「採用見送り」ではなく、実質的に解雇と同じ性質のものとして扱われます。最高裁判所の三菱樹脂事件(1973年)でも、試用期間中の解雇(本採用拒否)には「客観的合理的理由」が必要であるとされています。有給を取得したという事実は、この「客観的合理的理由」には該当しません。

労働基準法第136条の不利益取扱い禁止

労働基準法第136条は、有給休暇を取得した労働者に対して使用者が不利益な取り扱いをしないよう求めています。この規定は努力義務とされていますが、有給取得を直接の理由とした本採用拒否は「不利益取扱い」として問題視され、訴訟や労働審判に発展するリスクがあります。

欠勤の多さを評価したい場合の正しい考え方

「欠勤が多い社員の本採用を見送りたいが、有給で処理されてしまった」という悩みを持つ担当者もいます。しかし、有給取得は適法であるため、その期間を「欠勤扱い」として評価することはできません。業務習熟度、勤務態度、コミュニケーション能力など、有給取得とは切り離した評価基準を設け、書面で記録しておくことが重要です。評価基準が曖昧なまま本採用拒否をすると、後から「有給を取ったから拒否されたのでは」と疑われ、トラブルになりやすくなります。

年5日取得義務と試用期間社員への適用

2019年の法改正により、年10日以上の有給が付与された労働者に対しては、使用者が年5日を取得させる義務が生じました。これは試用期間を経て本採用となった社員にも適用されます。

5日取得義務の対象と管理方法

試用期間中の社員が6ヶ月後に10日の有給を付与された場合、その付与日から1年以内に5日を取得させる義務が発生します。この管理を怠ると、1人あたり30万円以下の罰金が科される可能性があります(労働基準法第120条)。

20〜50名規模の企業では入社月がバラバラなことが多く、個人ごとに異なる起算日を管理する必要があります。専任人事がいない場合、エクセルや手書きで管理しているケースも多く、取得義務の見落としが発生しやすい状況です。

試用期間延長と有給付与の起算日の関係

試用期間を延長した場合、延長分の期間も継続勤務期間として算入されます。有給付与の起算日はあくまで「雇入れの日」であり、試用期間の長短によって変わることはありません。ただし、試用期間延長中に出勤率が8割を下回った場合は、有給が発生しないケースもあります。判断が難しい場合は、社会保険労務士などの専門家に確認することをお勧めします。

就業規則と有給管理の整備ポイント

試用期間と有給に関するトラブルの多くは、就業規則の不備や有給管理の仕組みがないことから生じています。整備すべきポイントを確認しましょう。

就業規則に明記すべき内容

常時10名以上の労働者を使用する事業場は、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務です(労働基準法第89条)。20名以上の企業であれば当然この義務があります。年次有給休暇に関しては、以下の内容を正確に記載する必要があります。

記載が必要な事項 記載例・ポイント
有給休暇の付与要件 雇入れから6ヶ月継続勤務・出勤率8割以上
付与日数 勤続年数に応じた付与日数(法定通りまたはそれ以上)
有給の申請手続き 申請方法・申請期限(前日まで、など)
時季変更権の行使基準 事業の正常な運営を妨げる場合に変更できる旨
年5日取得の計画的付与 会社が時季を指定して取得させる場合の規定

「試用期間中は有給なし」などの法令に反する記載は削除し、法律に沿った内容に修正してください。

有給管理台帳の整備と起算日管理

有給管理台帳は、年次有給休暇管理簿として作成・保存が義務付けられています(労働基準法施行規則第24条の7)。記録すべき項目は、基準日(付与日)・付与日数・取得日・残日数の4点です。個人ごとに付与日が異なる場合は、誰の有給がいつ付与され、いつまでに5日取得させるべきかを一覧で管理できる形式にしておくことが重要です。専任人事がいない企業では、管理漏れが起きやすいため、定期的に確認するタイミングを設けることをお勧めします。

まとめ

試用期間中であっても、雇入れから6ヶ月経過・出勤率8割以上という要件を満たせば有給休暇は発生します。「試用期間中は有給なし」という説明や就業規則の記載は法的に無効であり、過去にこうした対応をしていた場合はリスクがあります。また、試用期間中の有給申請を拒否することは原則としてできず、有給取得を理由に本採用を拒否することも不当解雇リスクを伴います。さらに、2019年から義務化された年5日取得ルールは、試用期間を経た社員にも適用されます。

これらの対応は、就業規則の整備と有給管理台帳の適切な運用が土台になります。「うちの就業規則、試用期間の記載が曖昧かもしれない」「有給の管理が属人的になっている」と感じている方は、ぜひウェルセンス株式会社にご相談ください。人事の専任担当者がいない中小企業の実情に合わせて、実務に即した整備をサポートします。

よくある質問

Q. 試用期間が3ヶ月の場合、有給はいつ発生しますか?

A. 試用期間の長さに関係なく、雇入れの日から継続して6ヶ月が経過し、かつ全労働日の8割以上出勤していれば有給が発生します。試用期間が3ヶ月であれば、その3ヶ月も継続勤務としてカウントされます。入社日から6ヶ月後が付与日となります。

Q. 試用期間を延長した場合、有給の付与日も後ろにずれますか?

A. 有給付与の起算日は「雇入れの日」であり、試用期間を延長しても起算日は変わりません。ただし、試用期間延長中に出勤率が8割を下回った場合は、有給が発生しない可能性があります。出勤率の計算は実態に基づいて確認が必要です。

Q. 試用期間中に体調不良で欠勤が多い社員は、出勤率8割を下回れば有給が発生しませんか?

A. 全労働日の8割未満の出勤であれば、法律上は有給が発生しません。ただし、業務上の傷病・産前産後休業・育児・介護休業などによる休業期間は、出勤率の計算上「出勤したもの」として扱われます。単純に「欠勤日数が多いから有給なし」とは判断できないため、ケースごとに確認が必要です。

Q. 試用期間中の有給申請に対して、時季変更権はどの程度使えますか?

A. 時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り行使できます。試用期間中であることは理由になりません。「代替要員がいない」という状況も、それだけでは時季変更権の行使理由として認められにくいとされています。変更を求める場合は、具体的な業務上の支障を示したうえで、別の日を提案することが必要です。

Q. 就業規則に「試用期間中の有給は与えない」と記載しています。このまま運用しても問題ありませんか?

A. 問題があります。労働基準法に反する就業規則の規定は無効です(労働基準法第13条)。就業規則にそのような記載があっても、法律上は有給が発生します。記載を削除・修正のうえ、労働基準監督署へ変更届を提出することをお勧めします。対応を放置すると、後から社員に有給の遡及請求をされたり、是正勧告を受けるリスクがあります。

【監修】ウェルセンス株式会社
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