社員増加で生まれた派閥の空気を解消する方法

社員増加で生まれた派閥の空気を解消する方法 組織運営
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「休憩室に入ると、いつも同じメンバーが固まっている。別に誰かが傷ついているわけじゃないけど、何となく空気が重い……」。社員が増えてきた頃から、こんな感覚を抱いている経営者や人事担当者は少なくありません。証拠もなく、問題と断言もできない。だからこそ判断が難しい。この記事では、社員増加で生まれた派閥的な空気を「放置すべきか・介入すべきか」の判断基準と、現場で使える具体的な対処法を整理します。

「仲良しグループ」と「派閥」はどう違うのか

職場のグループ化は自然な現象ですが、「仲良しグループ」と「派閥」には明確な違いがあります。その違いを理解することが、介入すべきかどうかを判断する最初の基準になります。

グループ化が始まるタイミング

社員が20名を超えてくると、全員が顔見知りで自然に混ざり合っていた小規模フェーズは終わります。人間は無意識に「安心できる集団」を求めるため、共通点のある人同士が固まるのは本能的な行動です。創業メンバーと後から入った社員、正社員とパートタイマー、部署ごとのまとまりなど、属性や入社時期によってグループが形成されやすくなります。

「派閥化」のサインを見極める

グループ自体は問題ではありません。問題になるのは、そのグループが「排除」の機能を持ち始めたときです。以下のいずれかに当てはまる場合、単なる仲良しグループを超えている可能性があります。

  • 新入社員が休憩室やランチに「入りにくい」と感じている
  • 特定のグループ外の社員に情報が伝わりにくくなっている
  • 「あの人は○○グループだから優遇された」という見方が出てきている
  • 管理職が特定グループと常に行動をともにしている

感覚だけで判断しにくい場合は、「新入社員が3ヶ月以内に孤立していないか」「情報の非対称が業務に影響していないか」という観点で見ると、より客観的に状態を把握しやすくなります。

放置すると「固定化」が加速する

よくある誤解として、「少人数のころは自然に混ざっていたから、もう少し待てば戻る」という期待があります。しかし実態は逆です。物理的な場所(いつもの席、いつもの休憩スペース)が固定されると、グループは習慣として強化されていきます。意図的な介入なしに自然解消することは稀で、放置するほど介入コストは上がります。

放置した場合の法的リスクを知っておく

「誰も傷ついていないなら問題ない」と判断しがちですが、派閥的な空気が続いた場合、会社は法的責任を問われる可能性があります。現時点でハラスメントが顕在化していなくても、放置による責任は生じます。

安全配慮義務違反になり得るケース

労働契約法第5条は、使用者が労働者の「生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務」を定めています。グループによる孤立・排除が続き、社員が精神的な不調をきたした場合、「会社が把握していたにもかかわらず放置した」として安全配慮義務違反に問われる可能性があります。

パワハラ防止措置の義務(中小企業も対象)

労働施策総合推進法第30条の2に定めるパワーハラスメントの6類型のひとつに「人間関係からの切り離し」があります。グループによる特定人物の無視・排除は、上司・先輩からであればパワハラに該当し得ます。同僚間であっても、会社が状況を把握しながら放置すれば使用者責任が生じる余地があります。また、2022年4月からは中小企業もパワハラ防止措置(相談窓口の設置・周知など)が義務化されています。20〜50名規模でも「窓口がない」は法令違反になりますので、まだ整備していない場合は早急に対応が必要です。

従業員数による対応の分岐

従業員数 対応上の注意点
49名以下 ストレスチェックは努力義務。ただし安全配慮義務・パワハラ防止措置は義務。産業医も選任義務なし(任意)
50名以上 ストレスチェック・産業医選任が義務化。問題の早期把握の仕組みを整備する必要がある

専任人事や産業医がいない企業では、「なんとなく気になっていた」状態のまま問題が記録されず、後から対応しようとしたときに証拠がなく後手に回るリスクがあります。気になる点があれば、メモ・日時・状況を記録しておく習慣を経営者や担当者がつけておくことが実務上の重要なポイントです。

介入すべきタイミングの判断基準

介入のタイミングは「ハラスメントが起きてから」では遅すぎます。「排除の機能が生まれ始めた段階」で動くことが、最も少ないコストで問題を解消できるタイミングです。

今すぐ動くべきサイン

次のいずれかに該当する場合は、すぐに行動を起こすことを推奨します。

  • 新入社員が入社から3ヶ月以内に「ランチ・休憩の居場所がない」と感じているような様子がある
  • 管理職やリーダーが特定グループと常に行動をともにし、評価の公平性が疑われている
  • 採用・昇進の判断に対して「グループ依怙贔屓では」という声(直接・間接問わず)が出ている
  • 業務上の情報共有がグループをまたがって行われていない

様子を見てよいケース

一方、以下のような状態であれば、すぐに強硬な介入をするより、環境の小さな変化から始めるアプローチが適切です。

  • グループは固まっているが、業務上の協力関係は維持されている
  • 新入社員も特定のグループに無理なく溶け込めている
  • 「空気が重い」という感覚はあるが、具体的な排除行動は確認できていない

ただし「様子を見る」は「何もしない」ではありません。この状態でも後述する環境設計の工夫を始めておくことが、悪化予防として効果的です。

現場で使える「構造を変える」介入の方法

派閥的な空気の解消には、「話し合い」より「日常の接点の設計」を変えることが先決です。当事者を集めて対話を強制するアプローチは逆効果になりやすく、感情・人格の問題に発展してからでは介入コストが格段に上がります。

物理的な環境を小さく変える

グループの固定化は「いつもの場所」「いつもの習慣」によって強化されます。まず最初に取り組みやすいのが、物理環境の小さな変更です。たとえば休憩室の家具配置を変えて「いつもの席」を自然に崩すこと、席替えのサイクルを設けること、フリーアドレスが難しい場合でも昼食の席順をローテーションする仕組みを作ることなどが挙げられます。大がかりなリノベーションではなく、「いつもと違う」状況を意図的に作ることがポイントです。

日常の「誰と・どこで・何をするか」を設計する

飲み会やイベントを増やすアプローチは、既存グループが同じメンバーで固まって参加するだけになりがちで、接点の多様化には繋がりにくい傾向があります。必要なのはイベントの量ではなく、日常の業務の中で異なるグループの人が自然に関わる機会を設計することです。具体的には、プロジェクトチームをグループ横断で編成する、朝礼・ミーティングの進行役をローテーションする、ランチを部署横断でとる機会を月に数回設けるといった方法があります。「やらされ感」を生まないよう、強制参加ではなくゆるやかな仕組みとして組み込むことが重要です。

管理職・リーダーの行動を先に変える

管理職が特定グループに属しているように見える場合、現場への影響は大きくなります。管理職本人に悪意はなくても、「あの上司はあのグループの味方」という見え方が定着すると、評価の公平性への信頼が損なわれます。次に取り組むべきは、管理職のランチや休憩の相手・場所を意識的に分散させることです。経営者や人事が直接「特定の人と固まらないように」と伝えると角が立つ場合は、「いろんな社員と話す機会を意識的に作ってほしい」という行動目標のかたちで伝えると受け入れられやすくなります。

新入社員の孤立を早期に防ぐ仕組み

グループが固定化した職場で最もダメージを受けるのは、新入社員や異動してきた社員です。「どちらのグループにも入れない」状況が続くと、定着率の低下・早期離職に直結しますが、本人が言語化しないまま退職してしまうケースが多い点に注意が必要です。

オンボーディングにグループ横断の接点を組み込む

入社後の最初の数週間は、職場の人間関係のパターンを学ぶ時期でもあります。この時期に意図的にグループをまたいだ接点を設けることで、新入社員が「どちらにも属せる」関係を築きやすくなります。具体的には、OJTの担当者と昼食の相手を別の人に設定する、入社後1ヶ月以内に異なる部署・グループの人と1対1で話す機会(短い面談でも可)を設けるといった方法が実践しやすいです。

早期に「居場所のなさ」を察知するチェックポイント

新入社員が孤立しているかどうかは、本人からは言い出しにくいものです。入社後1ヶ月・3ヶ月のタイミングで「休憩室やランチで困っていることはないか」「職場に話しかけやすい人はいるか」という問いを面談や簡単なアンケートに盛り込むことで、問題の芽を早期に摘むことができます。専任人事がいない環境でも、経営者や兼務担当者が月に1回、短い1on1を行うだけで察知力は大きく変わります。

まとめ

社員増加にともなう派閥的な空気は、放置すると固定化・強化されます。「誰も傷ついていないから大丈夫」という判断は、安全配慮義務やパワハラ防止措置の観点からもリスクがあります。介入のポイントは、対話の強制ではなく「日常の接点の設計」と「物理環境の小さな変更」から始めること。管理職の行動を先に変え、新入社員の孤立を早期に察知する仕組みを整えることが、組織文化の維持につながります。

「うちの職場はこの状態に当てはまるのか」「何から手をつければいいかわからない」という場合、ウェルセンス株式会社では中小企業の組織・職場環境の課題について個別に相談をお受けしています。専任人事がいない環境でも実践できる対応策を一緒に考えますので、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 社員が20名を超えた頃からグループができ始めました。これは自然なことですか?

A. グループが形成されること自体は自然な現象です。人間は共通点のある仲間と集まりやすく、組織規模が大きくなるほどその傾向は強まります。問題になるのは、グループが「排除」の機能を持ち始めたとき——特定の社員が情報から外される、休憩室に入りにくくなるといった状態が生じたときです。その段階になる前に、日常の接点を設計しておくことが予防として有効です。

Q. 飲み会や社内イベントを増やせば、グループの雰囲気は改善しますか?

A. イベントを増やすだけでは解消しにくいケースが多いです。既存のグループが同じメンバーで固まって参加することが多く、接点の多様化には繋がりにくい傾向があります。必要なのはイベントの量ではなく、日常業務の中でグループをまたいだ関わりが自然に生まれる仕組みです。プロジェクトチームの編成やミーティングの進行役のローテーションなど、業務に組み込む形のほうが効果的です。

Q. ハラスメントが明確に起きているわけではないのに、会社が責任を問われることはあるのでしょうか?

A. 可能性はあります。労働契約法第5条に定める安全配慮義務は、明確なハラスメントが起きていない段階でも、職場環境が社員の精神的健康を損なうリスクをはらんでいると判断された場合に問われ得ます。また、会社が状況を把握しながら放置した場合は、使用者責任が生じる余地もあります。「証拠がない」ではなく「気になっている段階から記録と対応を始める」姿勢が、会社を守ることにも繋がります。

Q. 専任人事がいない状況で、派閥問題にどこまで対応できますか?

A. 専任人事がいなくても、物理環境の変更や接点の設計といった「構造を変える」アプローチは経営者や兼務担当者でも実践できます。一方、相談窓口の整備やメンタル不調者への対応は専門知識が必要な場面も出てきます。自社内で完結しようとせず、外部の専門家や支援サービスを活用することで、限られたリソースでも適切な対応が可能になります。

Q. 管理職が特定グループと仲良くなりすぎているように見えます。どう対処すればいいですか?

A. 管理職本人に悪意がなくても、「あの上司はあのグループ寄り」という見え方が定着すると、評価の公平性への信頼が損なわれます。直接「特定の人と固まるな」と伝えるより、「いろんな社員と話す機会を意識的に作ってほしい」という行動目標のかたちで伝えるのが受け入れられやすいです。また、1on1面談の相手や昼食の機会を定期的に記録・振り返ることで、管理職自身が自分の行動パターンを客観視できるようになります。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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