ハラスメント調査中、加害者と分離できない時の5つの暫定措置

ハラスメント調査中、加害者と分離できない時の5つの暫定措置 コンプライアンス
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「加害者を動かしたら業務が回らない。でも被害者をそのままにしておくわけにもいかない」——ハラスメント調査 中に加害者と被害者を同じ部署で隔離できない中小企業の経営者・人事担当者が最初に直面するのが、この壁です。専任人事もいなければ、異動先の部署もない。物理的な隔離が難しい職場でも、会社には被害者を守る法的義務があります。この記事では、ハラスメント調査 における暫定措置として、人員配置に余裕がない職場でも今すぐ実行できる5つの方法を、法的根拠とともに具体的に解説します。

「隔離できない」は仕方がないではない

人員配置に余裕のない小規模職場でも、物理的な隔離の代わりに取れる暫定措置は複数存在します。「隔離できないから何もできない」ではなく、「隔離できないからこそ、別の手段を組み合わせる」という発想が重要です。

会社が負う安全配慮義務とは

労働契約法第5条は、使用者に対して「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」義務を課しています。これはハラスメント調査 中であっても変わりません。申告を受けた段階で、会社は被害者が安全に就労できる環境を維持する義務を負います。「調査が終わってから対処する」という姿勢では、安全配慮義務違反と判断されるリスクがあります。

小規模職場特有のジレンマを整理する

20〜50名規模の企業では、部署数が2〜5程度であることが珍しくありません。加害者を異動させれば業務が回らず、被害者を動かせば本人への不利益取扱いになりかねない。このジレンマは、大企業向けのハラスメント対応マニュアルでは解決できません。重要なのは、「物理的な距離」ではなく「業務上の接触をどう遮断するか」という視点に切り替えることです。

被害者を動かしてはいけない理由

厚生労働省の「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)は、被害者への配慮措置を明確に求めています。その原則として、被害者に不利益な配置転換(降格・遠方への異動など)は二次被害・不利益取扱いとして違法になり得ます。ハラスメント調査 中の暫定措置は、原則として加害者側に適用するか、両者の業務上の接点を物理的接触なしに断ち切る形で設計する必要があります。

今すぐ実行できる5つの暫定措置

物理的隔離ができない場合でも、業務上の接触を遮断する暫定措置は複数あります。以下の5つを組み合わせることで、調査期間中の被害者保護と会社の安全配慮義務の履行を両立できます。

指揮命令関係の一時的な切り離し

加害者が被害者の直属上長である場合、その指揮命令関係を調査期間中だけ一時的に外し、別の上長(経営者または他の部門責任者)が被害者の業務指示を担う体制に切り替えます。これは部署異動ではないため業務への影響を最小限に抑えられ、かつ日常的な「命令・報告」という接点を断ち切る効果があります。小規模職場でも、この暫定措置は比較的取り組みやすい方法です。

会議・打ち合わせの分離と業務連絡の書面化

朝礼・チームミーティング・1on1など、両者が同席する場を当面の間分けます。どちらかをオンライン参加にする、時間をずらして個別に実施するなどの工夫で対応できます。あわせて、加害者から被害者への業務連絡を直接の口頭禁止とし、メールまたはチャットのみに限定する旨を両者に文書で通知します。この「書面化」が後の調査証拠になる点でも重要です。

テレワーク・時差出勤の活用

どちらかが在宅勤務や時差出勤に切り替えられる場合は積極的に活用します。適用するのは原則として加害者側です。被害者に在宅や時差出勤を強いることは、場合によっては不利益取扱いとみなされる可能性があるため注意が必要です。テレワーク環境が整っていない職場でも、1〜2時間の時差出勤であれば物理的な接触を大幅に減らせます。

接触禁止通知の書面交付

調査開始と同時に、加害者に対して「調査期間中、被害者への個人的な接触・謝罪・説得・連絡を禁止する」旨を記した文書を交付し、受領のサインをもらいます。口頭だけでは「そんな指示は受けていない」と後で言われるリスクがあります。この書面は、加害者が被害者に非公式に謝罪や口止めを試みるいわゆる「根回し」を防ぐためにも有効です。内容は簡潔で構いませんが、日付・会社名・担当者名・禁止事項・違反時の対応方針を明記してください。

被害者への定期的な状況確認

暫定措置を講じた後も、被害者に対して週1回程度、当事者と接触していないか・業務上困っていることはないかを担当者が確認します。この「継続的な関与」が、会社として安全配慮義務を履行していることを示す記録にもなります。確認の方法は対面でなくてもよく、メールや社内チャットで構いません。ただし確認した内容と日時は必ず記録に残してください。

調査期間中に証拠を守るための初動対応

ハラスメント調査 開始直後に証拠保全の初動を済ませておかないと、データの上書き・削除・口裏合わせのリスクが一気に高まります。専門知識がなくても今日から実行できる手順を整理します。

デジタル証拠の保全手順

チャット(Slack・LINE・Teams等)・メール・勤怠データなどのデジタル証拠は、発覚した時点で速やかにバックアップを取ります。具体的な手順として、まず該当のメッセージや記録をスクリーンショットで保存し、あわせてPDF出力(印刷ではなくPDF保存)を行います。システム管理者がいる場合は管理ログの保全も依頼してください。勤怠記録・シフト表・業務日報なども同時期のものをコピーして確保します。

被害者提供データの受け取り方

被害者が自ら保存したスクリーンショットやメモは、正式な証拠として扱われ得ます。受け取る際は「いつ・誰から・何を受け取ったか」を記した受領書を作成し、会社側と被害者の双方が控えを持つ形にします。データの原本性を担保するため、受け取った後に内容を変更していないことが確認できる状態で保管することが重要です。

証拠の管理と閲覧制限

保全した証拠は、施錠できるキャビネットまたは暗号化した電子媒体で保管し、閲覧できる人間を調査担当者に限定します。個人情報保護法の観点からも、ハラスメント調査 で得た情報は目的外に利用・漏洩してはなりません。調査終了後も一定期間は保管しておくことを推奨します(労働関係の記録は一般的に3〜5年の保存が目安とされています)。

調査体制が取れない場合のリスクと対処法

専任人事がいない小規模職場では、調査担当者自身が当事者と日常的に接触している場合があります。この「第三者性の欠如」は調査の公正性に直接影響し、後の紛争で会社側が不利になる要因になります。

利害関係者が調査を担うリスク

経営者が加害者と親しい、または被害者の直属上長が調査担当者を兼ねるといった状況では、どれだけ丁寧にハラスメント調査 を行っても「公正ではなかった」と判断されるリスクがあります。労働施策総合推進法(パワハラ防止法)第30条の2は、事業主に対してハラスメント相談への適切な対応を義務付けており、調査の中立性はその「適切な対応」の要件の一つです。

外部専門家の活用を検討すべきケース

以下のいずれかに当てはまる場合は、社会保険労務士・弁護士・外部EAP機関などの専門家に調査の補助または委託を検討してください。

状況 対応の目安
調査担当者と当事者が顔見知り・利害関係あり 外部専門家への調査委託を強く推奨
被害者が会社対応への不信感を示している 外部第三者の介入で中立性を担保
加害者が管理職・経営幹部である 外部機関による調査で公正性を確保
法的紛争(労働審判・訴訟)に発展しそう 弁護士への早期相談が必須
就業規則にハラスメント対応手順の定めがない 専門家とともに手順を整備してから対応

就業規則・相談窓口の有無で対応が変わる

就業規則にハラスメント対応の手順が明記されている場合は、その手順に従ってハラスメント調査 を進めることが原則です。記載がない場合でも厚生労働省の指針に基づいた対応は求められます。相談窓口(内部・外部問わず)を設置していない企業は、今回の件を機に整備することを検討してください。産業医が選任されている場合(常時50名以上の事業場では義務)は、被害者のメンタルヘルス面での支援を依頼することも有効です。

やってはいけない対応——よくある失敗パターン

「とにかく早く収めたい」という判断が、かえって会社を法的リスクにさらすことがあります。ハラスメント調査 期間中に絶対に避けるべき行動を明確にしておきます。

当事者同士に直接解決させようとする

「二人で話し合って仲直りしてほしい」という対応は、ハラスメント案件では厳禁です。被害者に心理的圧力をかけることになり、二次被害に該当します。また「会社が何もしなかった」という証拠を残すことにもなります。申告を受けた時点で、会社が主体となってハラスメント調査 に対応することが法的義務です。

調査結果が出る前に加害者を処分する

申告内容が事実かどうか確認する前に、加害者を解雇・降格・異動させることは、事実と異なる場合に不当解雇・不当処分として逆に会社が訴えられるリスクがあります。暫定措置はあくまで「調査中の保護措置」であり、「処分」ではないことを明確に区別してください。

関係者への聴取内容を口外する

ハラスメント調査 のヒアリングで得た内容を、関係のない社員に話したり、加害者に被害者の証言内容を詳しく伝えたりすることは厳禁です。個人情報保護法の観点からも問題になりますが、それ以上に証言者が萎縮して調査に協力しなくなる実害があります。聴取の内容は「知る必要がある人だけ」に限定して共有します。

まとめ

ハラスメント調査 中に加害者と被害者を同じ部署で物理的に隔離できない場合でも、指揮命令関係の切り離し・会議の分離・業務連絡の書面限定・接触禁止通知の書面交付・被害者への定期確認という5つの暫定措置を組み合わせることで、被害者保護と会社の安全配慮義務の履行は両立できます。重要なのは「何もできない」と立ち止まらず、今日からできることを記録に残しながら実行することです。

ただし、調査担当者と当事者の利害関係が近い・加害者が幹部職員である・被害者がすでに心理的に追い詰められているといったケースでは、社内対応だけでは限界があります。ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業からのハラスメント対応相談を受け付けており、調査体制の整備・暫定措置の設計・被害者支援まで実務に即したサポートを行っています。「何から手をつければいいかわからない」という段階でもお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 加害者が被害者への謝罪を強く希望しています。調査前に謝罪させてもよいですか?

A. ハラスメント調査 が完了する前の個人的な謝罪は、原則として避けるべきです。被害者が望んでいない場合、謝罪という形をとった接触が精神的圧力になります。また「謝罪した=事実を認めた」という記録が残ることで、その後の処分内容に影響する場合もあります。加害者には接触禁止通知を交付し、調査完了後に改めて対応を検討することを伝えてください。

Q. 調査期間はどれくらいが目安ですか?暫定措置はいつまで続ければよいですか?

A. 法令上の明確な期限規定はありませんが、厚生労働省の指針は「迅速な対応」を求めています。実務上は申告受付から事実確認・報告書作成まで2〜4週間程度がハラスメント調査 の一つの目安です。関係者が多い・事実関係が複雑な場合は1〜2か月になることもあります。暫定措置は調査結果に基づく本格的な対応措置(加害者への処分・部署変更など)が決定するまで継続します。長引く場合は被害者に現状と見通しを定期的に伝えることが重要です。

Q. 被害者がヒアリングを拒否しています。どう対応すればよいですか?

A. 被害者がヒアリングを拒否する場合、その背景に「会社に話しても守ってもらえない」という不信感や、「相手に内容が伝わるのが怖い」という不安があることが多いです。まずは「何が不安か」を聞き、守秘の範囲・情報の扱い方・調査後の流れを丁寧に説明することから始めてください。それでもハラスメント調査 への拒否が続く場合は、書面による陳述や、被害者が信頼できる第三者(外部相談員など)を同席させる方法も検討できます。無理に聴取を強行することは避けてください。

Q. 被害者がLINEのトーク画面を証拠として持ってきました。これは証拠として有効ですか?

A. 被害者が自ら保存したスクリーンショットは、ハラスメント調査 の証拠として活用できます。ただし「いつ・誰が・何のアプリで保存したか」が明確であること、内容が改ざんされていないことが確認できる状態であることが重要です。受け取る際は受領記録を作成し、元データの保管状況も確認しておきましょう。法的紛争に発展した場合は、弁護士に証拠としての有効性を確認することをお勧めします。

Q. 加害者とされている人物が「身に覚えがない」と強く否定しています。それでも暫定措置は必要ですか?

A. はい、必要です。暫定措置は加害者の有責性を認定するものではなく、ハラスメント調査 が完了するまでの間、被害者の安全を確保するための予防的措置です。加害者が否定していても、調査期間中に両者が接触する機会があれば、証言の一致・口裏合わせのリスクが生じます。「疑わしきは罰せず」の原則は処分の場面で適用されるものであり、調査中の暫定措置とは別の話です。加害者への説明では「調査の公正性を保つための手続き」として丁寧に伝えてください。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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