テレワーク中の火災で労災認定される条件と会社対応のポイント

テレワーク中の火災で労災認定される条件と会社対応のポイント コンプライアンス
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「テレワーク中に自宅で火災が起きたら、会社はどう対応すればいいのか」——テレワークを導入している会社の経営者や人事担当者なら、一度は頭をよぎったことがあるのではないでしょうか。実際に事故が起きてからルールを整えようとしても、初動対応を誤ると労使トラブルに発展するリスクがあります。この記事では、テレワーク中の火災が労災認定される条件と、会社として今のうちに準備しておくべきポイントをわかりやすく解説します。

テレワーク中の火災が「労災」になるかどうかの判断基準

テレワーク中に起きた火災が労働災害(労災)として認定されるかどうかは、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの要件を満たすかどうかで判断されます。この2要件は自宅での事故であっても変わりません。

業務遂行性とは何か

業務遂行性とは、事業主の支配下・管理下で業務を行っている状態であることを指します。テレワークの場合、会社が就業時間を定め、その時間内に業務指示のもとで作業をしている状態であれば、原則として業務遂行性があると判断されます。たとえば、所定労働時間内にPCでの資料作成や会議参加をしている最中であれば、この要件を満たす可能性が高いといえます。

業務起因性とは何か

業務起因性とは、業務が原因となって災害が発生したことを意味します。火災の場合、「何が発火源になったか」「その発火源と業務との関連性」が問われます。たとえば、業務で使用しているPCの電源コードが過熱して発火した場合は業務との関連性が認められやすい一方、休憩中に料理をしていてコンロから出火したケースは私的行為による火災として扱われ、業務起因性が認められない可能性が高くなります。

「業務中か私的行為か」の判断が最大のポイント

厚生労働省のガイドラインでは、テレワーク中の災害について「業務中の行為によって生じた災害」は労災の対象となる一方、「業務の中断中の私的行為によって生じた災害」は原則として対象外と整理されています。つまり、火災発生の瞬間に「何をしていたか」が認定の核心になります。会社が事故発生時に業務の状況を確認できるよう、勤怠管理システムのログやスケジュール記録などの記録を平時から整備しておくことが重要です。

自宅火災の労災認定における具体的なケースの違い

火災の原因や発生状況によって、労災認定の可否は大きく変わります。代表的なケースを整理しておくと、いざというときの判断材料になります。

認定されやすいケース

次のような状況では、業務との関連性が認められやすく、労災認定の対象となりうる可能性があります。

  • 業務用PCや充電器の不具合・過熱による発火
  • 会社支給の電気機器が出火原因となった場合
  • 所定労働時間内に業務を行っている最中に、業務上使用している機器が原因で火災が発生した場合

認定されにくいケース

一方、以下のような状況では私的行為による災害とみなされ、労災認定が難しくなります。

  • 昼休みなど業務中断中に調理をしていてコンロから出火した場合
  • 業務とは無関係な電気機器や暖房器具が出火原因の場合
  • 業務時間外に発生した火災(時間外の自主的な作業中も含め、判断が分かれることがある)

グレーゾーンの扱い方

実務上は「業務中だったかどうか」が明確でないグレーゾーンのケースも少なくありません。たとえば、所定労働時間内であっても短時間の休憩中だった場合や、フレックスタイム制で本人が自由に時間を設定している場合などです。こうしたケースでは、当時の勤怠記録・業務ツールのアクセスログ・メールや社内チャットの送受信履歴などが判断の根拠になります。会社は事故発生後にこれらの記録を速やかに確認・保全できる体制を整えておく必要があります。

安全配慮義務は自宅にも及ぶ——会社の法的責任の範囲

「自宅は会社の管轄外だから、事故が起きても会社の責任はない」という考え方は誤りです。労働契約法第5条は、使用者が「労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働させる義務」を負うと定めており、これはテレワーク中も同様に適用されます。

安全配慮義務の具体的な内容

テレワーク環境における安全配慮義務の主な内容は以下のとおりです。

  • 作業環境チェックリストの提供(照明・電源の状態・換気・机や椅子の安全性など)
  • 長時間労働を防ぐための適切な労働時間管理
  • 安全衛生上のリスク(電気機器の取り扱い方法など)に関する情報の周知
  • 業務で使用する機器・設備の安全性の確保

労災保険の給付と民事損害賠償は別物

労災保険が支給された場合でも、会社の民事責任(損害賠償)が自動的に消えるわけではありません。労災保険はあくまで療養・休業補償等の給付であり、安全配慮義務違反が認められれば、労働者(または遺族)から慰謝料や逸失利益を求める民事訴訟を起こされるリスクが残ります。特に、作業環境の安全確認を怠っていた、テレワーク規程が整備されていなかったなどの事情があると、義務違反と認定されやすくなります。

従業員規模別の対応の考え方

専任の産業医や安全管理者を選任する義務が生じるのは、一定規模以上の事業場です。しかし、20〜50名規模の企業であっても、安全配慮義務は全事業者に課されています。産業医や社労士との契約がない場合は、少なくとも作業環境の自己チェックシートを配布し、記録として残す運用を取り入れるだけでも、義務履行の証拠として機能します。

テレワーク規程と就業規則——今すぐ確認すべき整備のポイント

テレワーク中の事故に備えるうえで、規程類の整備は会社を守るための最重要事項です。規程があるだけでは不十分で、内容の適法性と実運用との一致が問われます。

テレワーク規程に盛り込むべき主な項目

項目 確認すべき内容
適用範囲・対象者 どの従業員・業務がテレワーク対象かを明確にしているか
就業場所の条件 自宅以外の場所(カフェ等)の可否・作業環境の基準
労働時間の管理方法 始終業時刻の記録方法・中抜け時間の取り扱い
費用負担のルール 通信費・電気代等の会社負担の有無と精算方法
安全衛生上の義務 作業環境チェックリストの提出義務・確認頻度
災害発生時の報告手順 事故発生時に誰に・いつ・何を報告するかの手順

「規程があれば安心」という誤解を解く

テレワーク規程を整備しても、就業規則の本体と内容が整合していない場合や、労使間の合意が不十分な場合は、規程が有効に機能しないことがあります。特に見落とされがちなのが費用負担の規定です。電気代や通信費の一部を従業員が負担している場合、その根拠規定がなければ賃金控除として違法とみなされるリスクがあります。既存の規程がある場合も、直近の法改正や実態と乖離していないかを定期的に見直すことが必要です。

規程がない・形骸化している場合の優先対応

コロナ禍で急遽テレワークを導入し、規程を整備しないまま現在に至っているケースは少なくありません。まず確認すべきは「現在もテレワークを実施しているか」です。実施しているにもかかわらず規程がない状態は、安全配慮義務違反の一因になりえます。社労士や専門家に依頼して最低限の雛形を整備し、従業員への周知と記録保存を行うことを優先してください。

事故が発生したときの会社の初動対応と手続き

テレワーク中に火災が発生した場合、会社がとるべき初動対応を事前に整理しておかないと、現場が混乱し対応が後手に回ります。特に専任人事がいない中小企業では、対応手順の明文化が重要です。

発生直後に確認すべきこと

まず最初に、従業員の安否確認と医療機関への対応を最優先に行います。その後、事故発生時の業務状況(勤怠記録・業務ツールのログ・直前のメール・チャット履歴など)を速やかに保全します。「後で確認しよう」と後回しにすると、記録が上書きされたりシステムから自動削除されたりするリスクがあります。

労働基準監督署への報告義務

労働安全衛生法第100条および規則第97条に基づき、労働者が業務上の事故で死亡または4日以上休業した場合、事業主は労働者死傷病報告書(様式第23号)を所轄の労働基準監督署に提出する義務があります。テレワーク中の事故であっても、業務上の事故と判断される場合はこの義務が生じます。報告を怠ったり虚偽の報告をしたりする「労災かくし」は法律違反であり、厳しく処罰されます。

労災申請における会社の役割

労災申請は原則として労働者本人(または遺族)が行いますが、会社は申請に必要な証明(事業主証明)を行う義務があります。「労災にしたくない」「会社のイメージが悪くなる」などの理由で証明を拒否することは許されません。会社が証明を拒否した場合でも、労働者は証明なしで申請することができ、その旨を労働基準監督署に申し出ることができます。拒否の姿勢は、その後の民事訴訟において会社に不利に働く可能性があります。

まとめ

テレワーク中の火災が労災認定されるかどうかは、「事故発生の瞬間に業務を行っていたかどうか」が判断の核心です。業務遂行性と業務起因性の2要件を満たす場合は、自宅での事故であっても労災の対象となります。また、安全配慮義務は労働契約法第5条により自宅にも及ぶため、テレワーク規程の整備・作業環境チェックリストの配布・労働時間の適切な管理は、会社規模を問わず求められる対応です。

「うちにはテレワーク規程がない」「火災以外の在宅事故への対応も整理できていない」「事故が起きたときに誰が何をするか決まっていない」——そのような状況に心当たりがある場合は、ぜひ一度、ウェルセンス株式会社にご相談ください。専任人事がいない中小企業の実情に合わせて、規程整備から事故発生時の対応手順の構築まで、実務に即したサポートをご提供しています。

よくある質問

Q. テレワーク中の昼休みに火災が起きた場合、労災になりますか?

A. 昼休みなど業務の中断中に私的行為(調理など)が原因で起きた火災は、原則として業務起因性が認められず、労災の対象外となります。ただし、業務用機器の不具合が休憩中に発火した場合など、業務との関連性が認められるケースでは判断が分かれることがあります。具体的な状況をもとに、労働基準監督署や専門家に確認することをお勧めします。

Q. 労災保険が適用されれば、会社はそれ以上の責任を負わなくていいですか?

A. いいえ、そうではありません。労災保険の給付と会社の民事損害賠償責任は別々に判断されます。安全配慮義務(労働契約法第5条)違反が認められれば、労災保険とは別に、慰謝料や逸失利益を求める損害賠償請求を受ける可能性があります。テレワーク規程の整備や作業環境の確認を怠っていた場合は、義務違反と認定されるリスクが高まります。

Q. テレワーク規程はどのような内容を最低限盛り込めばいいですか?

A. 最低限盛り込むべき内容として、適用対象者・就業場所の条件・労働時間の管理方法・費用負担のルール・安全衛生上の義務・災害発生時の報告手順が挙げられます。また、就業規則の本体との整合性が取れていること、労使間で合意されていることも重要です。既存の規程がある場合も、実態と乖離していないかを定期的に見直してください。

Q. テレワーク中に事故が起きた場合、会社はどんな書類を提出する必要がありますか?

A. 業務上の事故で労働者が死亡または4日以上休業した場合、事業主は労働者死傷病報告書(様式第23号)を所轄の労働基準監督署に提出する義務があります(労働安全衛生法第100条・同規則第97条)。また、労災申請に必要な事業主証明も求められます。報告を怠ることは法律違反となるため、事故発生時は速やかに手続きを進めてください。

Q. 従業員が自宅で火災に遭い、労災申請したいと言ってきました。会社として拒否できますか?

A. 労災申請自体を拒否することはできません。また、申請に必要な事業主証明を正当な理由なく拒否することも許されていません。万が一証明を拒否した場合、従業員は証明なしで申請を進めることができ、その旨を労働基準監督署に申し出ることができます。証明拒否の姿勢は、その後の民事訴訟においても会社に不利な事情として扱われる可能性があります。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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