離職率の正しい計算方法と業界平均の比べ方

離職率の正しい計算方法と業界平均の比べ方 採用・定着
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「今年に入って3人辞めた。これって多いのかな?」——そんなふうに感じながらも、自社の離職率を計算方法に基づいて数字で把握したことがない経営者・人事担当者は少なくありません。離職率は「計算して終わり」ではなく、業界平均と正しく比べることで初めて改善の優先度が見えてきます。この記事では、厚生労働省方式の正しい計算方法から業界別ベンチマークの読み方、改善の第一歩まで、実務に直結する形で解説します。

離職率とは何かを正確に理解する

「なんとなく多い気がする」から脱却する

離職率とは、一定期間中に会社を辞めた従業員の割合を数値化したものです。感覚で「うちは辞める人が多い」と思っていても、実際に計算してみると業界平均以下だったというケースもあれば、その逆もあります。特に20〜50名規模の企業では、1人退職するだけで離職率が2〜5%動くため、「数字の重み」をまず正しく理解することが重要です。

離職率の計算に含まれる退職の種類

離職率の計算対象となる退職には、大きく3つの種類があります。まず、従業員自身の意思による「自己都合退職」。次に、解雇や会社都合による「会社都合退職」。そして「定年退職」です。改善施策を検討するうえで本当に注目すべきなのは、このうち自己都合退職のみを抽出した数字です。会社都合退職や定年退職を含めた数字だけを見ていると、職場環境の問題を見落とす可能性があります。実務では「全体の離職率」と「自発的離職率(自己都合のみ)」を別々に把握する習慣をつけましょう。

離職率と「入職率」をセットで見る意味

厚生労働省の雇用動向調査では、離職率と並んで「入職率(採用した人の割合)」も公表されています。採用が多くて離職も多い企業と、採用が少なくて離職も少ない企業では、組織としての安定度がまったく異なります。「入職率 < 離職率」が続いている場合、組織が実質的に縮小しているサインです。採用コストがかさんでいると感じているなら、この2指標を照らし合わせてみてください。

離職率の正しい計算方法と使い方

厚生労働省方式の計算式

離職率の計算方法は複数存在しますが、業界平均と比較する際に使うべきは厚生労働省の「雇用動向調査」で採用されている以下の式です。

離職率(%)= 年間離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100

たとえば、期首(1月1日時点)の従業員数が30名で、その年に4名が退職した場合、離職率は「4 ÷ 30 × 100 = 約13.3%」となります。分母に使うのは「期首在籍者数」である点が重要です。期中に入退社があっても分母は変えないのが、この方式のルールです。

「期中平均」方式との違いに注意する

ネット上や一部の人事ツールでは、分母に「期中平均在籍者数(1年間の平均人数)」を使う計算方法も紹介されています。この方式は採用が多かった年に離職率が低く出やすく、期首方式と比べて数値が変わることがあります。社内での傾向把握ならどちらを使っても構いませんが、業界平均(厚労省データ)と比較したいなら、必ず期首方式に統一してください。異なる方式同士で比べても、正確な判断はできません。

月次・四半期での集計も有効な場面がある

年次の離職率だけでは「どの時期に辞めているか」が見えません。特定の月や四半期に退職が集中している場合、そこに何らかの組織的な問題(評価時期、繁忙期の疲弊、特定の管理職によるマネジメント課題など)が隠れている可能性があります。月次で退職者数を記録しておくだけでも、後から傾向を分析する際に役立ちます。年次計算とあわせて月次の動きも追うようにしましょう。

業界平均との正しい比べ方

信頼できるデータは厚生労働省の「雇用動向調査」

業界平均を調べるために最も信頼性が高いのは、厚生労働省が毎年公表している「雇用動向調査結果」です。直近(令和4年年計)の主要業種別離職率の目安は以下のとおりです。

業種 離職率(目安)
宿泊業・飲食サービス業 約26〜30%
医療・福祉 約14〜15%
情報通信業 約11〜13%
製造業 約9〜10%
建設業 約9〜11%
全産業平均 約15%前後

※上記は参考値です。最新データは厚生労働省の公式サイト「雇用動向調査」でご確認ください。

中小企業は業界平均より高めに出やすい理由を知る

雇用動向調査のデータは大企業を含む全規模の平均値です。20〜50名規模の中小企業では、業界平均より3〜5ポイント程度高く出ることが多いと言われています。これは福利厚生・給与水準・キャリアパスの整備状況が大企業と異なるためであり、単純に「業界平均を上回っているから問題」とは言い切れません。比較する際は「トレンド(自社の経年変化)」と「同規模企業との比較」という2つの軸を持つことが、より実務的な判断につながります。

業種分類が合わない場合の対処法

「自社の業態が厚労省の業種分類と合わない」という声はよく聞きます。たとえばBtoBのSaaS企業が「情報通信業」なのか「その他サービス業」なのか迷うケースがあります。その場合は、主たる事業内容に最も近い分類の数値を参考値として使いつつ、自社の経年変化(前年比で離職率が上がっているか下がっているか)を主軸に判断するのが現実的です。業界平均はあくまで「外部との比較の参考」であり、自社の変化を見逃さないことのほうが優先度は高いと言えます。

離職率が高いときに確認すべき原因の切り分け方

退職理由のデータを社内に残す仕組みをつくる

「辞める人に理由を聞きにくい文化がある」という企業は少なくありません。しかし、退職理由を把握しないまま「給与を上げた」「福利厚生を充実させた」という施策を打っても、原因とズレていれば離職は止まりません。まず取り組むべきは、退職者への簡単なアンケート(匿名可)や退職面談の実施です。また、雇用保険の手続きで作成する「雇用保険被保険者離職証明書」には離職理由コードが記載されます。このデータを人事記録として保存・集計するだけで、離職傾向の分析に活用できます。多くの中小企業がこのデータを手続き書類として処理して終わっており、非常にもったいない状態です。

「待遇」「人間関係」「メンタル不調」を切り分ける

離職の主な原因は大きく3つに分類されます。一つ目は待遇(給与・労働時間・休日など)、二つ目は人間関係(上司・同僚・顧客)、三つ目はメンタル不調(ストレス・燃え尽き・適応障害など)です。それぞれ打ち手がまったく異なります。待遇が原因なら報酬制度の見直し、人間関係が原因なら1on1ミーティングや配置転換、メンタル不調が原因なら産業医・EAPの導入や休職復職制度の整備が有効です。退職前に「突然辞表を出された」という経験があるなら、メンタル不調の兆候を早期にキャッチできていなかった可能性を疑ってみてください。

離職率の裏にある「休職」と「連鎖退職」を見逃さない

表面的な離職率の数字だけを追っていると、退職の前段階にある「休職者の増加」や「特定部署への負荷集中」を見落としやすくなります。20〜50名規模の企業では、1人が休職すると残った社員の業務負荷が一気に増し、それが原因でさらに退職者が出るという連鎖が起きやすい構造があります。離職率の改善には、退職後の対策だけでなく、退職に至る前の「兆候の把握」と「早期介入」が欠かせません。労働契約法第5条(安全配慮義務)の観点からも、従業員の心身の健康を守ることは企業の法的な義務です。

離職率を改善するための現実的な第一歩

まず「見える化」から始める

改善の第一歩は、現状を数値で把握することです。まず過去3年分の退職者数と期首在籍者数を洗い出し、年次離職率を計算してみましょう。次に、その退職者が自己都合か会社都合かを分類します。さらに可能であれば、退職理由(大まかな分類で構いません)を記録として整理してみてください。この3つの作業だけで「自社の離職の構造」がかなり見えてきます。専任人事がいなくても、Excelの簡単な表で十分対応できます。

採用・定着・ケアを分けて考える

離職率の改善策は「採用段階のミスマッチ解消」「入社後の定着支援」「不調者への早期ケア」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。採用段階では、仕事内容・職場環境・評価制度をリアルに伝えることでミスマッチを減らします。入社後の定着支援では、特に入社1年以内の従業員へのフォロー(オンボーディング、定期的な面談)が有効です。早期ケアの面では、ストレスチェックの活用や、管理職が部下の変化に気づくための研修が役立ちます。これらは大きなコストをかけずに、まず仕組みとして「型」を作ることが先決です。

まとめ

離職率の正しい計算方法は「年間離職者数 ÷ 期首在籍者数 × 100」。業界平均と比較するには厚生労働省の「雇用動向調査」を使い、自社規模や業種の特性を加味して解釈することが大切です。数字を出すだけでなく、自己都合退職の割合・退職理由の傾向・休職者の動きを合わせて把握することで、初めて実効性のある改善策が見えてきます。

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よくある質問

Q. 離職率の計算で、アルバイト・パートも分母に含めるべきですか?

A. 厚生労働省の雇用動向調査では「常用労働者(雇用期間の定めのない者、または1か月以上雇用される見込みのある者)」が対象です。パートタイム労働者でも1か月以上継続雇用されているなら含めるのが原則です。業界平均と比較する際は、この定義に合わせて計算することで精度が高まります。

Q. 全産業平均の離職率15%と比べて高ければ、すぐに改善が必要ですか?

A. 業界によって平均値が大きく異なるため、「全産業平均と比べて高い」だけでは判断できません。飲食業なら26〜30%が平均的な水準です。まず自社の業種の平均値と比較し、さらに自社の過去3年のトレンドが悪化していないかを確認することが重要です。数値の絶対値より「変化の方向性」を見ることが実務では優先されます。

Q. 退職理由を本人に直接聞くのが難しい場合、どうすればいいですか?

A. 退職面談が難しい場合は、匿名の退職アンケートをメールや紙で送る方法が有効です。また、雇用保険の手続き書類に記載される「離職理由コード」を記録として蓄積するだけでも、傾向の分析に役立てられます。直接のヒアリングが難しい文化的背景がある場合は、外部の相談窓口(EAPなど)を通じた情報収集という選択肢もあります。

Q. メンタル不調による退職は、離職率の改善施策で防げますか?

A. 早期対応によって防げるケースは少なくありません。メンタル不調は突然起きるのではなく、欠勤の増加・ミスの増加・コミュニケーション量の減少といった前兆サインがあることが多いです。管理職がこれらの変化に気づき、適切に声をかけられる環境を整えること、またストレスチェックや外部相談窓口の導入が有効です。労働契約法第5条(安全配慮義務)の観点からも、こうした取り組みは企業の義務として位置づけられています。

Q. 専任人事がいない小規模企業でも、離職率の管理や改善施策は取り組めますか?

A. 取り組めます。まずExcelで退職者数・在籍者数・退職理由の大分類を記録するだけでも、年次の離職率算出と傾向把握が可能です。改善施策も、最初から大きな制度をつくる必要はありません。入社後3か月・6か月時点での面談の実施、退職時の簡易アンケートの導入など、小さな「仕組み」を積み重ねることが、専任人事がいない環境でも継続できる現実的なアプローチです。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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