復職後にまた休職…を繰り返さないフォロー体制と就業規則の整え方

復職後にまた休職…を繰り返さないフォロー体制と就業規則の整え方 休職・復職対応
Photo by MART PRODUCTION on Pexels

「復職させたのに、また1ヶ月で休んでしまった」——そんな経験をされた経営者・人事担当者の方は少なくないはずです。再休職が繰り返されると、現場の疲弊や士気低下が進み、会社全体への影響も深刻になります。しかし、多くの中小企業では就業規則に再休職のルールがなく、その都度場当たり的な対応を強いられているのが実情です。この記事では、復職後の再休職を防ぐための職場フォロー体制と就業規則の整え方を、実務の視点から解説します。

なぜ「復職→再休職」が繰り返されるのか

「本人が大丈夫と言ったから戻した」という落とし穴

復職後の再休職が繰り返される最大の原因のひとつは、復職のタイミングを本人の自己申告に頼りすぎてしまうことです。メンタルヘルス不調からの回復期には「焦り」が生じやすく、本人が「もう大丈夫」と感じていても、職場の実際の業務負荷に耐えられる状態に戻っていないケースが多くあります。ある製造業の会社では、うつ病で2ヶ月休職した30代の社員が「早く職場に貢献したい」と申し出て復職したものの、6週間後に再び倒れてしまいました。本人の意欲と、業務遂行能力の回復は、必ずしも一致しません。

職場側の「優しさ」が逆効果になることがある

「戻ってきたらいつでも歓迎」という雰囲気は一見温かいようでも、逆に「職場に迷惑をかけてはいけない」というプレッシャーを本人に与えることがあります。また、フォロー体制がないまま復職させると、業務量の調整も面談も行われず、気づいたときには再び限界を超えていた、というパターンに陥ります。中小企業では特に、専任の産業医や人事担当者がいないことが多く、誰がフォローするかが決まっていないケースが大半です。

就業規則に「再休職のルール」がない問題

多くの会社の就業規則には「休職期間は最大3ヶ月」などの上限は書いてあっても、「復職後に再び休職した場合の扱い」が明記されていません。これにより、再休職のたびに休職期間がリセットされ、実質的に無期限の休職が可能になってしまいます。会社・本人ともにルールが不明確なまま対応を続けることは、長期的なトラブルの温床となります。

主治医の診断書だけで復職を決めてはいけない理由

主治医が判断するのは「日常生活の回復」

主治医の診断書に「復職可」と書かれていれば、会社はそれに従わなければならないと思っている方は多いのですが、これは誤解です。主治医は主に「日常生活が送れるレベルに回復しているか」を判断します。一方、職場での業務遂行——たとえば「週5日8時間、締め切りのあるプロジェクトを管理できるか」「クレーム対応などのストレス業務に耐えられるか」——については、主治医の診断書だけでは判断できません。

会社は独自の「復職基準」を設定できる

会社は就業規則や復職支援規程において、独自の復職基準を設けることができます。たとえば「連続2週間、通勤時間に相当する外出が継続できること」「主治医の診断書提出に加え、産業医または会社指定の医師との面談を経ること」といった条件を明記することが可能です。この基準を事前に就業規則に定めておくことで、「診断書があるのになぜ戻れないのか」というトラブルを防ぐことができます。

三者合意による復職判定フローの実務例

実務的に有効なのは、主治医・産業医(または会社指定の医師)・会社(人事または上長)の三者が情報を共有し、合意したうえで復職を判断するフローです。たとえば、まず本人が主治医の診断書を提出し、次に産業医との面談を実施、そして職場での段階的復帰プランを作成するという流れを規程に定めておきます。専任産業医を持てない中小企業でも、地域産業保健センターの産業医相談サービスや、外部の産業保健支援機関を活用する方法があります。

就業規則に盛り込むべき「再休職防止」の規定

休職期間の「通算規定」を明記する

復職後の再休職を防ぐうえで、就業規則の整備は最も重要なインフラです。特に必須なのが「休職期間の通算規定」です。これは、同一または類似の疾病で再休職した場合、前回の休職期間を通算してカウントするというルールです。たとえば「復職後1年以内に同一疾病で再休職した場合、前回の休職期間と通算する」と明記することで、実質的な無制限休職を防ぐことができます。裁判例においても、就業規則に明記された通算規定は有効と認められているケースが多く(東京高裁平成28年の事例など)、会社が合理的な規定を設けることは法的にも認められています。

「復職後の観察期間」と「再休職時の対応手順」を定める

就業規則または別規程として「休職・復職支援規程」を設け、復職後の観察期間(たとえば「復職後3ヶ月間は試用的復職期間とし、月1回の面談を実施する」)と、その期間中に再休職が発生した場合の手順を明記します。手順の例としては、「再休職の申請→休職期間の通算確認→復職支援プランの見直し→必要に応じて産業医との再面談」という流れをフロー図とともに規程に組み込む方法が実務的です。

「試し出勤(リハビリ出勤)制度」を正式に規定する

試し出勤(リハビリ出勤)を「好意で受け入れている」だけの状態は非常にリスクが高いです。試し出勤中に業務に従事していると判断された場合、賃金支払い義務が生じる可能性があり、万一怪我をした場合の労災適用も問題になります。就業規則に「試し出勤制度」として明文化し、「休職期間中の扱いであること」「賃金が発生しないこと」「1日の滞在時間と期間の上限」「実施する業務の範囲」を明確に定めておくことが必要です。厚生労働省もこの制度を推奨しており、規定の整備は会社・従業員双方を守ります。

復職後フォロー体制の具体的な設計方法

「職場復帰支援プラン」を書面で作成する

厚生労働省のガイドライン「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、職場復帰支援プランの作成が強く推奨されています。このプランには、業務内容と量の段階的な調整スケジュール、勤務時間の制限(最初の1ヶ月は残業なし、2ヶ月目から1日1時間まで可など)、フォローアップ面談の日程と担当者を含めます。書面で作成・保存しておくことで、後日「会社は何もフォローしなかった」というトラブルになった際、誠実な対応の証拠になります。

専任担当者がいなくてもできるフォロー面談の運用

産業医や専任人事がいない中小企業では、直属の上司が面談担当になることが多いですが、上司一人に任せるのは負担が大きく、「腫れ物に触る」感覚から必要なフィードバックができなくなりがちです。現実的な解決策として、面談の役割を分けるアプローチが有効です。たとえば、業務面のフィードバックは直属の上長が行い、体調・心理面の確認は経営者や人事兼務担当者が月1回担当する、というように複数人で分担します。面談では「今週しんどかった日はありましたか」「業務量は適切でしたか」といった具体的な質問項目をあらかじめ用意しておくと、担当者の心理的負担も軽減されます。

「配慮」と「就労継続の促し」のバランスをとる

会社には労働契約法第5条に基づく安全配慮義務があります。一方で、過度な配慮が復職者の自立回復を妨げることも実証されています。業務から完全に切り離してしまうと、本人の「自分はやれる」という自己効力感が育たず、復職定着が難しくなります。適切なフォロー体制のもとで段階的に業務負荷を上げていくことが、復職後の再休職防止の根本的な鍵です。逆に、フォロー体制を設けず過度な業務負荷をかけた結果の再休職は、会社側が損害賠償責任を問われるリスクにもなるため、プランの記録と実施が重要です。

中小企業が今すぐ取り組める実務チェックリスト

就業規則の確認と整備から始める

まず現在の就業規則を開き、以下の項目が記載されているかを確認してください。休職期間の上限が定められているか、同一疾病での再休職時に休職期間が通算されるか、会社独自の復職基準(業務遂行能力の確認フロー)が明記されているか、試し出勤制度の規定があるか——これらのうちひとつでも欠けている場合は、早急に整備が必要です。就業規則の変更は労働者の不利益変更にあたる場合は手続きが必要ですので、変更の際は労使間での合意形成と所轄労働基準監督署への届出を忘れずに行ってください。

復職支援プランのひな型を社内に用意する

「そのとき対応する」では遅く、あらかじめ復職支援プランのひな型(テンプレート)を用意しておくことが重要です。ひな型には、復職日・業務内容の段階別スケジュール・勤務時間の制限・面談日程・担当者名・次回見直し日などを記入する欄を設けます。このひな型を使うことで、対応の属人化を防ぎ、担当者が変わっても一貫したフォローができるようになります。

外部リソースの活用を検討する

中小企業がすべてを社内で完結させようとすることに無理があります。産業医の確保が難しい場合は、地域産業保健センター(無料相談あり)の活用や、外部の人事労務・メンタルヘルス支援サービスへの相談が現実的な選択肢です。特に、就業規則の整備・復職判定フローの設計・フォロー面談のサポートを一括で依頼できる外部専門家を持っておくことは、復職後の再休職リスクを大幅に下げることにつながります。

まとめ

「復職→再休職」の繰り返しは、職場フォロー体制と就業規則の整備で大きく防ぐことができます。主治医の診断書だけで復職を判断するのではなく、会社独自の復職基準を設け、就業規則に休職通算規定・試し出勤制度・復職後観察期間を明記する。そして、書面による職場復帰支援プランを作成し、面談を記録に残しながら段階的な業務復帰を支援する——この一連の仕組みを整えることが、復職後の再休職防止の根本的な解決策です。

ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・人事担当者の方に向けて、就業規則の再休職防止条項の整備から、復職支援プランの設計・運用サポートまでをトータルでご支援しています。「うちの規則でこのルールを作っていいのか」「どこから手をつければいいかわからない」といったお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。具体的な状況を伺いながら、御社の規模・業種に合った現実的な対応をご提案します。

よくある質問

Q. 主治医が「復職可」と書いた診断書を提出してきた場合、会社はそのまま復職させなければなりませんか?

A. 必ずしもそうではありません。主治医の診断書は「日常生活を送れるレベルに回復した」という判断であり、職場での業務遂行能力を保証するものではありません。会社は就業規則に独自の復職基準を設けることができ、たとえば「産業医または会社指定医との面談を経ること」「業務遂行能力の確認テストに合格すること」などを条件として定めることが可能です。ただし、その基準を事前に就業規則や復職支援規程に明記しておくことが、後日のトラブル防止に不可欠です。

Q. 復職後に再休職した場合、休職期間はリセットになるのですか?それとも通算できますか?

A. 就業規則に通算規定が明記されていれば、同一または類似疾病での再休職時に前回の休職期間を通算することができます。たとえば「復職後1年以内に同一疾病で再休職した場合は通算する」という規定を設けることが一般的です。裁判例でもこうした通算規定の有効性は認められています。ただし規定がない場合はリセット扱いになるケースが多く、実質無制限の休職を許してしまうリスクがあります。早急に就業規則の整備をお勧めします。

Q. 試し出勤(リハビリ出勤)中に社員が怪我をした場合、労災は適用されますか?

A. 試し出勤中に「業務に従事している」と判断される実態があれば、労災が適用される可能性があります。一方で、就業規則に「試し出勤は休職期間中の扱いであり、業務従事を目的としない」と明記している場合は、労災適用の判断が異なる場合があります。いずれにせよ、試し出勤中の位置づけ(賃金の有無・労災の扱い・勤怠管理)を就業規則や規程に明確に定めておくことが、リスク回避の観点から非常に重要です。

Q. 産業医と契約していない小規模な会社でも、復職支援プランは作れますか?

A. 作れます。産業医がいない場合でも、地域産業保健センター(50人未満の事業場向けに無料サービスを提供)の産業医相談を活用したり、主治医から職場環境に関する情報提供を求めたりすることで、復職支援プランの作成は可能です。また、外部の人事労務・メンタルヘルス支援サービスがプラン作成を代行・サポートするケースもあります。重要なのは「書面で作成し、内容を記録に残す」ことです。

Q. 復職後のフォロー面談を上司に任せると「腫れ物扱い」になってしまいます。どうすればいいですか?

A. 面談の役割を分担することが有効です。業務内容・量の確認は直属の上司が担当し、体調や精神面の確認は経営者または人事兼務担当者が別途行う形にすると、上司一人への負担が減り、「腫れ物扱い」にもなりにくくなります。また、「今週しんどかった日はありましたか」「業務量は適切でしたか」など具体的な質問項目を事前に用意しておくことで、担当者が感情的に過剰な配慮をせずに済み、必要な情報をきちんと収集できるようになります。

不調者対応を、人事だけで抱えない。精神科・心療内科の産業医が初動からサポート | ウェルセンス

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

不調者対応を、人事だけで抱えない。

メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談いただけます。

詳しく見る →

タイトルとURLをコピーしました