社員インタビューを断られた時の5つの協力引き出し策

社員インタビューを断られた時の5つの協力引き出し策 採用・定着
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「お願いしたら、やんわり断られてしまった」「何度か声をかけているが、毎回同じ人に頼ることになる」——採用広報のために社員インタビューを企画したものの、協力が得られずに行き詰まる経営者・人事担当者は少なくありません。専任人事がいない中小企業では、頼める人も限られ、一度断られると次の手が見えなくなりがちです。この記事では、断られる本当の理由を整理したうえで、無理なく協力を引き出すための具体的な5つの策を解説します。強制・命令でよいのかという法的な疑問にも正面からお答えします。

そもそも「業務命令」として強制できるのか

結論からいえば、就業規則に根拠規定がない場合、社員インタビューへの協力を業務命令として強制することは法的に難しく、ハラスメントリスクも伴います。まずこの前提を押さえることが、その後の対策を正しく設計するうえで欠かせません。

労働契約上の「命令できる範囲」とは

使用者は、労働者に対して職務遂行に合理的に関連する命令を出すことができます(民法上の指揮命令権)。しかし、顔写真や氏名・個人的なエピソードを対外的に公開する採用広報への参加は、「職務の遂行そのもの」とは言えません。社員である以上は協力が当然、という考え方は残念ながら法的には通りません。

肖像権・個人情報保護法との関係

社員の顔写真・発言内容・経歴情報は「個人情報の保護に関する法律」上の個人情報に該当しえます。採用広報での使用という取得目的を明示し、本人の同意を得ることが必要です。採用サイトやSNSへの掲載では特に注意が必要で、口頭だけの同意は後日トラブルになるリスクがあります。使用目的・掲載先・修正権の有無・掲載期間・撤回ルールを明記した同意書(モデルリリースフォーム)の整備が実務上の標準対応です。

断った社員への不利益扱いはパワハラになりうる

断った社員に対して執拗に依頼を繰り返したり、評価や業務配置で不利益な扱いをしたりした場合、労働施策総合推進法第30条の2が定めるパワーハラスメント防止義務の観点からリスクが生じます。「お願いしているだけ」のつもりでも、立場の差がある経営者・上司からの繰り返しの要求は、受け手にとってはプレッシャーとなりえます。強制路線ではなく、「任意協力+インセンティブ設計」が持続可能な方針です。

断られる本当の理由を理解する

「恥ずかしい」「忙しい」という表面上の断り文句の背後には、もう少し具体的な不安や懸念が潜んでいます。原因を正確に把握することが、対策の出発点です。

発言が「どう使われるか」がわからない不安

インタビューに応じた後、自分の言葉がどのように編集・加工されて公開されるのかが見えないことは、断りの大きな一因です。意図しないかたちで切り取られたり、思っていた以上に個人情報が露出したりすることへの警戒は、決して過剰ではありません。掲載前の原稿確認・修正のフローが明示されていれば、この不安は大きく減らせます。

「自分だけ損をする」という感覚

会社の採用活動に役立つのはわかる。でも、自分にとってのメリットは何か——この問いに答えが出ないままお願いされると、協力する動機が生まれません。インタビューに応じることで社内評価が上がるわけでもなく、時間だけが取られると感じれば、断りの心理的ハードルは下がります。

特定の人に依頼が偏っている構造問題

20〜50名規模の企業では「話がうまい」「会社への貢献意識が高い」一部の社員に依頼が集中しがちです。同じ人が繰り返し頼まれる状況では、最初は快諾していた社員も徐々に疲弊し、断るようになります。依頼の公平性を設計できていないこと自体が、断られる構造をつくっています。

協力を引き出す5つの策

断られにくい環境をつくるには、打診の方法だけでなく、仕組みそのものを整える必要があります。以下の5つを組み合わせることで、特定の人に負担が集中せず継続しやすい採用広報体制が生まれます。

打診前に「不安の解消材料」を用意する

依頼のメールや口頭の一声より先に、「インタビューの流れ・所要時間・掲載前確認の有無・掲載範囲」を1枚にまとめたインタビュー案内シートを作成しましょう。「こんなことを聞かれる」「公開前に必ず確認できる」「いやな部分は削除できる」という情報が事前に伝わるだけで、警戒感は大幅に和らぎます。実際のインタビューの所要時間の目安(例:事前ヒアリング15分+本番60分)を示すことも効果的です。

掲載前確認フロー(修正権)を制度として明示する

「原稿ができたら必ずご本人に確認してもらい、修正・削除のご要望に対応します」というフローを、依頼時点で明文化します。口頭での約束ではなく、依頼文書または同意書の中に条項として盛り込むことが重要です。また、退職後の掲載継続ルール(「退職後○ヶ月で自動的に非公開にする」など)も事前に取り決めておくと、後々のトラブルを防げます。

非金銭インセンティブで動機づける

金銭的な謝礼が難しい場合でも、協力した社員の動機づけになる非金銭インセンティブはあります。たとえば、社内報・全社ミーティングでのインタビュー協力への感謝の言及、インタビュー記事を本人のSNSでシェアできる形式にして個人ブランディングに活用してもらう、勤務時間内にインタビューを完結させる(時間的コストを会社が吸収する)といった設計が有効です。「自分の話が採用に役立った」という実感を返報することも、次回の協力意欲につながります。

依頼ローテーションと「最初の一人」を慎重に選ぶ

特定の社員への集中を防ぐために、部署・年次・職種ごとにインタビュー候補者のリストを事前に作成し、ローテーションで依頼する仕組みをつくります。また、最初のインタビュイーの選び方は非常に重要です。会社への貢献意識が高く、快諾が見込める社員に最初に依頼し、掲載後に「参加してよかった」という声を社内で共有することで、次の候補者の心理的ハードルを下げる効果があります。

就業規則・雇用契約書に根拠条項を整備する

中長期的な対策として、就業規則や雇用契約書に「採用広報・社内広報活動への任意協力」に関する条項を設けることが実務上の正攻法です。「業務として命じる」のではなく、「会社が協力をお願いすることがあり、本人の同意のもとで実施する」という趣旨の条項であっても、制度として明文化されているだけで、打診時の対話がスムーズになります。新入社員の採用時には、同意書の取得と合わせて入社時説明に組み込む設計が望ましいです。

20〜50名規模の企業特有の制約と分岐

規模によって取れる手段は変わります。自社の状況に照らして、現実的な運用フローを選ぶことが重要です。

従業員数が少ないほど「一人の断り」の影響が大きい

100名以上の組織なら「誰かは協力してくれる」で動けますが、20〜50名では全員の顔が見え、断られると採用広報コンテンツが止まりかねません。この規模では、インタビュー以外のコンテンツ形式(社員の日常を紹介するショート動画・匿名コメント形式の声・代表インタビュー)を並行して用意しておき、一形式に依存しない多様なコンテンツミックスを設計することが現実的です。

就業規則の整備状況による対応の違い

就業規則の状況 推奨アクション
採用広報協力の条項がない 今後の打診は「任意依頼」として進め、並行して条項整備を検討する
協力条項はあるが同意書がない モデルリリースフォームを作成し、依頼時に取得するフローに切り替える
条項・同意書ともに整備済み インセンティブ設計とローテーション管理に注力する

外部リソース活用で担当者の負荷を分散する

採用広報コンテンツの制作が担当者一人に集中すると、依頼から撮影・執筆・公開・SNS展開まで全工程が止まるリスクがあります。ライターや撮影カメラマンの外部委託、採用広報支援サービスの活用も選択肢として検討することで、社内担当者の負担を「依頼と調整」に絞ることができます。小規模企業ほど一人の欠員や業務過多が全体に響くため、外部化できる工程は早めに切り分けることが持続可能な運用につながります。

まとめ

社員インタビューへの協力を断られたとき、まず押さえるべきは「強制は法的に難しく、むしろリスクを伴う」という現実です。断られる背景には、発言の使われ方への不安・動機の欠如・依頼の偏りといった構造的な問題があります。これらに対して、打診前の情報提供・掲載前確認フローの明示・非金銭インセンティブ・ローテーション設計・就業規則の整備という5つの策を組み合わせることで、無理なく継続できる採用広報体制をつくることができます。専任人事がいない中小企業では、仕組みを整えることが属人的な頼み込みよりもはるかに効果的です。

人事の悩みを一社で抱えず、早めに専門家に相談することが長期的な運用安定につながります。ウェルセンス株式会社では、採用広報の仕組みづくりや就業規則整備について、中小企業の実情に合わせた支援を行っています。お困りの点があれば、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 社員に「断る権利はない」と伝えてもよいですか?

A. 伝えるべきではありません。就業規則に採用広報協力の根拠条項がない場合、顔出し・個人情報の対外公開を業務命令として強制することは法的に難しく、断った社員への不利益な扱いはパワーハラスメント(労働施策総合推進法第30条の2)に該当するリスクがあります。「任意協力をお願いしている」というスタンスで進めることが適切です。

Q. 協力してくれた社員に謝礼を支払うことはできますか?

A. 可能ですが、金額・支払い方法・税務上の扱い(給与所得か雑所得かなど)を事前に整理しておく必要があります。金銭的な謝礼が難しい場合は、勤務時間内にインタビューを完結させる・個人ブランディングに活用できる記事形式にする・社内で感謝を伝えるなど、非金銭インセンティブを組み合わせる方法が現実的です。

Q. インタビュー後に社員から「削除してほしい」と言われた場合、どう対応すべきですか?

A. 基本的には本人の意向を尊重し、速やかに対応することが望ましいです。退職後の掲載継続は個人情報保護の観点でも注意が必要です。こうしたトラブルを防ぐために、依頼時点で「掲載期間・退職後の扱い・削除リクエストのフロー」を明記した同意書(モデルリリースフォーム)を取得しておくことが実務上の標準対応です。

Q. 顔出しなしの匿名インタビューでも採用広報として効果がありますか?

A. 顔出しに比べると求職者への訴求力は下がりますが、リアルな業務内容や職場の雰囲気を伝えるうえでは十分な効果があります。顔出しを断られた場合の代替として、イラストアイコン+テキストインタビュー形式や、部署ごとの匿名コメント集といった形式を組み合わせることで、コンテンツが止まらない体制をつくることができます。

Q. 就業規則に採用広報への協力条項を追加する際、注意点はありますか?

A. 「強制義務」ではなく「会社が協力をお願いすることがある(本人同意のうえで実施)」という任意協力の趣旨で条項を設けることが重要です。就業規則の変更は労働者への不利益変更にあたらないかを確認し、変更後は労働者への周知(労働基準法第106条)と、必要に応じて労働基準監督署への届出が必要です。社会保険労務士や専門家に確認しながら進めることをおすすめします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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