紹介予定派遣を中小企業が使いこなすポイント

紹介予定派遣を中小企業が使いこなすポイント 採用・定着
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「面接では感じがよかったのに、入社3か月で辞めてしまった」——採用担当を兼務しながら、そんな経験をした経営者は少なくありません。20〜50名規模の企業では、1人の採用ミスが部署全体の雰囲気や業務フローに直結します。そのリスクを減らす手段として、「紹介予定派遣」への関心が高まっています。本記事では、仕組み・コスト・活用のポイントを実務目線で整理します。

紹介予定派遣とは何か

紹介予定派遣とは、最長6か月の派遣期間終了後に直接雇用(正社員・契約社員など)へ移行することを前提とした派遣の形態です。通常の派遣や直接採用とは法的位置づけが異なり、正しく理解することが活用の前提になります。

法的な定義と根拠

紹介予定派遣は、労働者派遣法第2条第4号に「派遣先が派遣終了後に当該派遣労働者を雇用することを前提に行う派遣」として定義されています。根拠法は労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)です。派遣期間の上限は同法第26条第5項により最長6か月と定められており、通常の派遣(同一職場3年上限)とは別の規定が適用されます。

通常の派遣・直接採用との違い

「試用期間の代わり」と説明される記事もありますが、法的性質は全く異なります。試用期間中はすでに雇用契約が成立していますが、紹介予定派遣中は雇用契約を結んでいない第三者が働いている状態です。そのため、派遣期間中に直接雇用を見送っても、それは「解雇」ではなく「直接雇用の申し込みをしない」という意思決定になります。

また、通常の派遣では派遣先が候補者と事前面接したり履歴書を受け取ったりすることは原則禁止ですが、紹介予定派遣では労働者派遣法第26条第6項により、これが例外的に認められています。面接や書類選考を経てから受け入れられる点が、通常の派遣と大きく異なります。

項目 紹介予定派遣 通常の派遣 直接採用
雇用主(派遣期間中) 派遣元(派遣会社) 派遣元(派遣会社) 自社
事前面接・履歴書収受 可能 原則禁止 可能
最長派遣期間 6か月 3年(同一職場)
直接雇用への移行 前提(双方の合意) 任意 即時

コストの全体像と費用の考え方

紹介予定派遣のコストは「派遣期間中の派遣料金」と「直接雇用時の紹介手数料」の二重構造になっています。この構造を事前に把握せずに進めると、予算オーバーになりやすいため注意が必要です。

派遣期間中にかかる費用

派遣期間中は、派遣社員の時給に派遣会社のマージンを加えた派遣料金が発生します。マージン率は派遣会社によって異なりますが、おおむね時給の2〜3割程度が加算されるケースが多いです。たとえば時給1,500円のスタッフを月160時間受け入れる場合、実際に支払う派遣料金は月30〜40万円程度になることがあります。6か月間受け入れる場合は、それだけでも相応の金額になります。

直接雇用時の紹介手数料

派遣期間終了後に直接雇用が成立した際、派遣会社(有料職業紹介事業者として届出済みの会社がほとんど)に紹介手数料を支払います。職業安定法の規定に従い、届出手数料制または上限手数料制のいずれかが適用されます。実務的には年収の20〜35%程度が相場とされていますが、契約前に上限・算出根拠を必ず書面で確認してください。

「高い」ではなく「何に払っているか」で判断する

「派遣料金を払っているのだから採用時の手数料は不要では」と感じる担当者は多いですが、両方発生するのが紹介予定派遣の仕組みです。一方で、直接採用で求人媒体に掲載するコスト、複数回の面接にかかる工数、採用ミスによる早期離職コストを合算すると、紹介予定派遣のトータルコストが割高とは言い切れない場面もあります。費用対効果の視点で比較検討することが重要です。

直接雇用への転換実態と、双方の意思決定の仕組み

紹介予定派遣における直接雇用への転換は、企業側だけでなく派遣社員側も「雇用を希望する・しない」を判断できます。つまり、転換は双方の合意によって成立するものであり、どちらか一方が見送ることも可能です。

企業側が直接雇用を見送る場合のルール

派遣先が直接雇用を行わない場合、派遣元から求められたときはその理由を書面等で明示しなければなりません(労働者派遣法第26条第7項)。「なんとなく合わなかった」という曖昧な理由では法的に対応が不十分です。スキル面の評価基準や職場適性に関する具体的な根拠を記録しておくことが、後のトラブル防止につながります。

派遣社員側が辞退するケースとその予防

派遣期間中に「この会社での正社員雇用は希望しない」と派遣社員側が判断し、転換を辞退することもあります。こうした辞退を防ぐためには、派遣受入れ期間中から職場の雰囲気・評価制度・キャリアパスなどを積極的に伝えることが有効です。「見極める側」としてだけでなく、「選ばれる企業」として対応することが、転換率の向上につながります。

転換後の雇用形態と条件提示のタイミング

直接雇用への転換時は、正社員・契約社員・パートなど雇用形態や給与条件を改めて提示します。派遣期間中の業務内容や評価を踏まえた条件設定が望ましく、「派遣中と待遇が大きく変わる」と感じさせると転換辞退につながります。条件面は派遣期間の途中から双方で認識を合わせておくとスムーズです。

中小企業が紹介予定派遣を使いこなすポイント

紹介予定派遣を有効活用できるかどうかは、受入れ前の準備と派遣期間中の関わり方で大きく変わります。特に専任人事がいない中小企業では、いくつかの実務ポイントを押さえておくことが重要です。

向いている職種・場面を見極める

紹介予定派遣は、スキルや適性を実務の中で確認したい職種に特に向いています。事務・経理・人事補佐などのバックオフィス職や、一定のスキルが求められるITサポート・設計補助などの専門職は活用しやすいとされています。一方で、営業や経営幹部候補など「人脈・関係性が成果を左右する職種」は、6か月間では評価が難しい場合もあります。

場面別では、次のような状況で有効です。

  • 急な退職で生じた欠員を補充しつつ、適切な人材を見極めたい場合
  • 新規部署・ポジションを立ち上げるにあたり、適性を確認してから正式採用したい場合
  • これまで採用ミスが続いており、入社前に業務適性を見たい場合

派遣期間中の労務管理で注意すべきこと

派遣社員は派遣元(派遣会社)と雇用契約を結んでいますが、日々の業務指示は派遣先(自社)が行います。この「指揮命令は自社、雇用は派遣元」という関係性を社内に周知しておかないと、トラブル発生時の対応窓口が曖昧になります。労働時間の管理・安全配慮・ハラスメント対応などは派遣先にも義務があります。特に労働安全衛生法上の安全配慮義務は、派遣先企業にも課せられています。「雇っていないから関係ない」は誤りです。

派遣会社との連携を密にする

専任人事がいない企業こそ、派遣会社のコーディネーターを「人事の相談相手」として活用することが有効です。派遣期間中に「業務の習熟度に懸念がある」「本人のモチベーションが気になる」といった場合、派遣元に連絡して間に入ってもらうことができます。問題をため込まずに早期に相談することで、期間終了時の判断をより明確に行えます。

紹介予定派遣を使う前に確認しておくこと

導入前に確認すべきポイントを整理しておくと、契約後のトラブルや認識のずれを防げます。特に中小企業では、契約内容の細部を後から確認する余裕がない場面も多いため、事前整理が重要です。

契約書で必ず確認すべき項目

派遣会社と締結する労働者派遣契約には、派遣期間・業務内容・紹介手数料の算出方法・直接雇用不成立時の取り扱いなどが記載されます。特に紹介手数料については、年収のどの部分を基準に計算するか(基本給のみか、賞与込みかなど)を明示してもらうことが重要です。口頭での説明だけで進めず、必ず書面で確認してください。

就業規則・雇用条件の整備状況を確認する

直接雇用への転換時に、雇用条件を提示できる状態になっているかを事前に確認しましょう。就業規則が整備されていない、または正社員の給与テーブルが曖昧な企業では、転換時の条件提示に手間取ることがあります。常時10人以上の労働者を使用する事業場では就業規則の作成・届出が義務(労働基準法第89条)ですが、それ以下の規模でも整備しておくことが信頼感につながります。

メンタルヘルス対応の体制も確認しておく

派遣期間中に派遣社員がメンタル不調を起こした場合、対応は派遣元と派遣先の双方に関わります。「どちらが何をするか」を事前に確認せずにいると、不調が深刻化してから対応を協議することになります。派遣会社に「不調時の連絡フロー」を確認し、自社内の相談窓口や対応担当者も明確にしておくことが望ましいです。

まとめ

紹介予定派遣は、採用ミスマッチのリスクを減らしながら人材を確保できる仕組みです。ただし、コストの二重構造・法的な義務・労務管理の役割分担など、事前に把握すべきポイントが複数あります。特に専任人事がいない中小企業では、「採用して終わり」ではなく、派遣期間中の関わり方と転換後の受け入れ体制まで含めて準備することが成功の鍵です。

ウェルセンス株式会社では、紹介予定派遣の活用に限らず、採用・労務・メンタルヘルス対応まで、専任人事がいない中小企業の人事課題をトータルでサポートしています。「うちの会社で使えるのか」「どこから整えればいいかわからない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 紹介予定派遣は何人規模の会社から利用できますか?

A. 従業員規模の下限は特に定められておらず、10名未満の企業でも利用できます。ただし、派遣期間中の業務指示や労務管理を担える担当者がいることが実務上の前提になります。規模が小さいほど1人の影響が大きいため、受入れ体制の準備は丁寧に行いましょう。

Q. 派遣期間中に「この人は合わない」と判断したら、途中で終了できますか?

A. 派遣契約の途中終了は可能ですが、契約書に定めた条件や派遣元との協議が必要です。また、派遣社員の生活に影響を与える行為であるため、合理的な理由と誠実な対応が求められます。一方的な打ち切りはトラブルにつながりやすいため、懸念が生じた段階で早めに派遣会社に相談することをお勧めします。

Q. 紹介予定派遣で受け入れた人が直接雇用を辞退した場合、費用は返金されますか?

A. 派遣期間中に発生した派遣料金は、直接雇用に至らなくても返金されないのが一般的です。紹介手数料については直接雇用が成立した時点で発生するため、転換辞退の場合は支払いが生じません。契約書の条件を事前に確認しておくことが重要です。

Q. 派遣社員がメンタル不調になった場合、会社はどこまで対応が必要ですか?

A. 派遣先企業にも労働安全衛生法上の安全配慮義務があります。不調のサインに気づいた場合は速やかに派遣元(派遣会社)に連絡し、連携して対応することが基本です。「雇用関係がないから関係ない」という対応は法的リスクを伴います。不調時の連絡フローを事前に派遣会社と確認しておくことをお勧めします。

Q. 直接雇用への転換時、雇用形態は正社員以外でも問題ありませんか?

A. 転換後の雇用形態は正社員に限られません。契約社員・パートタイムなどでも法的には問題ありませんが、最初から「契約社員での転換を前提とする」場合は、派遣期間の開始前にその旨を派遣社員に明示しておくことが重要です。後から雇用形態が異なると不信感につながり、転換辞退の原因になりやすいです。

【監修】ウェルセンス株式会社
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