副業でパフォーマンスが落ちた社員との面談、5つの進め方

副業でパフォーマンスが落ちた社員との面談、5つの進め方 採用・定着
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「最近、Aさんの仕事が雑になってきた。副業を始めたと聞いたが、それが原因だろうか。でも、どう切り出せばいいのか……」。そんな状況で面談を先送りにしている経営者・人事担当者の方は少なくありません。副業が原因とは断言できない段階で問い詰めてしまうとハラスメントになるのでは、という不安もあるでしょう。この記事では、副業とパフォーマンス低下の関連を感情的にならず確認しながら、本人と建設的な対話につなげる面談の進め方を5つのステップで解説します。

面談の前に確認すること

面談に臨む前に、「何を根拠に話すか」と「どこまで聞けるか」を整理しておくことが、トラブルのない面談の前提条件です。

就業規則に副業の規定はあるか

中小企業では、就業規則に副業について「禁止」とも「許可」とも書かれていないケースが珍しくありません。ただし、就業規則に根拠がなければ、面談で副業を制限・禁止する指導は法的に成立しにくくなります。厚生労働省が2018年に策定し2022年に改定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、副業・兼業を原則として容認する方向性を打ち出しています。副業の事実だけを理由に懲戒処分等を行うことは、就業規則に禁止規定があっても法的リスクを伴います。

面談前に自社の就業規則を確認し、「副業禁止」「届出制」「自由」のどれに該当するかを把握してください。もし規定が曖昧なら、今回の面談とは別に整備の検討を始めることをお勧めします。

指摘の対象は「副業」ではなく「本業への影響」

重要な原則として、面談で取り上げるべきは「副業をしていること」ではなく、「遅刻・ミスの増加・業務品質の低下など、本業に生じている具体的な影響」です。副業を容認している会社でも、本業の労務提供義務は当然存在します。「副業OKだから何も言えない」という遠慮は不要です。また、使用者には労働契約法第5条に基づく安全配慮義務があり、過重労働による健康被害を知りながら放置することは義務違反につながる可能性があります。「本人の健康と業務品質を守るための面談」という位置づけが、法的にも実務的にも正しいスタンスです。

面談記録の準備をする

面談後のトラブルを防ぐため、日時・参加者・確認した事実・今後の対応方針を記録するフォーマットを事前に用意してください。また、面談内容を誰と共有するかを本人に事前に説明しておくと、信頼感が高まり本音を引き出しやすくなります。20〜50名規模の職場では「話が広まるのでは」という本人の警戒心が強いため、「この内容は私と〇〇さんの間で管理します」と明言することが有効です。

パフォーマンス低下の原因を整理する

面談の前に、観察された事実を整理し、副業以外の要因も含めてフラットに検討しておくことが、感情的でない面談の土台になります。

「事実」と「推測」を分けてメモする

「なんとなく元気がない」「以前より仕事が雑な気がする」という印象ではなく、具体的な事実を箇条書きにしてください。たとえば「先月の納期遅延が3件」「週に1〜2回の遅刻が続いている」「クライアントからのクレームが2件あった」といった記録です。事実に基づいて話すことで、面談が「叱責」ではなく「現状確認」として機能します。

副業以外の要因も視野に入れる

パフォーマンス低下の原因は副業に限りません。家族の介護、体調不良、職場の人間関係、業務量の増加、メンタルヘルスの問題なども考えられます。副業が原因だと決めつけて面談に臨むと、本人との信頼関係を損ない、本当の課題が見えなくなるリスクがあります。あくまで「何が起きているかを一緒に確認する」姿勢で臨むことが重要です。

パフォーマンス低下の要因例 確認できるサイン
副業による疲労・睡眠不足 遅刻、午前中の集中力低下、業務中の居眠り
メンタルヘルスの問題 表情の変化、コミュニケーション量の減少、ミスの増加
家庭・プライベートの事情 急な早退・欠勤、以前との態度の変化
業務量・スキルのミスマッチ 特定の業務でのミス集中、締め切り管理の乱れ

面談の入り方と副業の確認方法

副業の話題を切り出す際は、最初から「副業が問題だ」という文脈で入らず、「業務と健康状態の確認」として面談を設定することが実務上の安全ラインです。

面談のアジェンダを事前に伝える

突然呼び出して質問するのではなく、「最近の業務の進捗と体調について話したい」とあらかじめ伝えてから面談を設定してください。これにより本人が心の準備をしやすくなり、防衛的な反応を和らげることができます。面談の所要時間は30〜45分程度を目安にし、プライバシーが守られる個室で行います。

オープンクエスチョンで始める

面談の冒頭は、こちらの観察を伝えた上で、本人に話してもらう形で始めるのが効果的です。たとえば「先月あたりから、以前より業務のペースが変わったように感じています。最近、仕事以外の面も含めて、何か変化はありますか?」という問い方は、副業という単語を使わずに状況を確認できます。本人が副業について自ら話し始めたときに初めて、副業の話題を深掘りする流れにするのが自然です。

就業規則に届出義務がある場合の確認方法

就業規則に副業の事前届出・申告義務が定められている場合は、「就業規則の確認事項として伺います」という文脈で直接聞くことができます。一方、就業規則に根拠がない場合、「副業をしていますか」と直接聞くことは可能ですが、強制的な開示を求めることは慎重に行う必要があります。その場合は「業務への影響を確認するための参考情報として聞かせてもらえますか」というトーンで、任意の回答として扱うのが適切です。

副業が確認できた場合の対話の進め方

本人が副業を認めた場合、否定や批判ではなく「本業への影響を一緒に解決する」という姿勢で対話を継続することが、関係性を保ちながら問題を改善する鍵です。

副業の内容・規模・時間数を確認する

副業が確認できたら、「どんな仕事を、週に何時間程度しているか」を把握します。この情報は、本業へのパフォーマンス影響を判断するためだけでなく、労働基準法第38条に基づく労働時間の通算管理の観点からも必要です。複数の事業場で働く場合、労働時間は通算されるため、自社での残業との調整が求められる場合があります。「副業の詳細を詮索したい」という印象を与えず、「法的な管理上、確認が必要な範囲で聞かせてください」と説明すると、本人の理解を得やすくなります。

具体的な事実を示しながら影響を確認する

感情的な指摘を避けるために、事前に整理した「事実ベースのメモ」を活用します。「先月、納期の遅れが3件ありました。本人としては、今の業務量や体調について、どう感じていますか?」という問い方は、責める意図を排除しつつ、現状の深刻さを伝えることができます。本人自身に自分の状況を語ってもらうプロセスが、自主的な改善意識につながります。

会社として対応できることを伝える

一方的に「改善してください」で終わらせず、「会社としても業務量の調整や、必要であれば産業医・相談窓口の利用をサポートできます」と伝えます。特に産業医が選任されていない20〜50名規模の会社(常時50人未満の事業場は産業医の選任義務がない)では、外部のメンタルヘルス支援や専門相談サービスの活用が有効な選択肢になります。

面談後のフォローと就業規則の整備

面談は「終わり」ではなく「スタート」です。面談後の具体的なフォロー体制と、今後の再発予防のための環境整備が、長期的な問題解決につながります。

フォローアップの時期と内容を決める

面談の最後に「1か月後に改めて状況を確認します」とフォローアップの日程を設定してください。その際の確認内容(業務品質の変化・健康状態・副業の継続状況)もあらかじめ共有しておくと、本人が具体的な目標を持ちやすくなります。面談が「注意で終わり」にならないよう、継続的な対話の仕組みを作ることが重要です。

改善が見られない場合の対応方針

フォロー面談でも改善が見られない場合は、段階的な対応を検討します。就業規則に副業制限の根拠がある場合は、副業の縮小・中断を求めることが可能です。一方、就業規則に根拠がない場合、「副業をやめなければ処分する」という指導は法的リスクを伴います。その場合でも、「本業への影響が継続する場合は業務上の評価・配置に影響する可能性がある」という業務管理の観点からの対応は可能です。対応に迷う場合は、社労士や専門機関への相談を早期に行ってください。

就業規則の副業条項を整備する

今回の経験を踏まえ、就業規則の副業関連条項を整備することをお勧めします。「禁止」「届出制(原則許可)」「自由」のいずれを選択するにせよ、明確な規定があることで、次回以降の面談の根拠が確立されます。特に「届出制」は、副業を頭ごなしに禁止することなく、会社として状況を把握できる仕組みとして多くの中小企業で採用されています。

  • 禁止規定型:競業避止や機密保持の観点から副業を禁止。法的リスクを考慮した規定の書き方が重要。
  • 届出制(原則許可型):副業前に会社への届出を義務付け、業務への支障がある場合は制限できると明記。現在最も標準的な方法。
  • 自由型:届出不要。ただし、本業への影響は業務評価として対応することを明確にする。

まとめ

副業によるパフォーマンス低下への面談は、「副業を責める場」ではなく「本業への影響を一緒に確認し、解決策を探る場」として設計することが重要です。面談前には就業規則の確認と事実の整理を行い、面談ではオープンクエスチョンを使って本人に話してもらう形で進めます。副業が確認できた場合は内容と時間数を把握し、会社側のサポートも提示しながら具体的な改善目標を設定します。面談後は1か月以内のフォローアップを設定し、就業規則の整備も並行して検討してください。

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よくある質問

Q. 副業を届出なしでやっていた社員を、就業規則違反として懲戒処分にできますか?

A. 就業規則に届出義務が明記されており、かつ本業への具体的な支障が生じている場合は、懲戒処分の根拠となりえます。ただし、届出義務違反だけで直ちに重い処分を下すことは法的リスクを伴います。まずは事実確認の面談を行い、改善機会を与えた上で段階的に対応することが実務上の基本です。処分の前に社労士や弁護士への確認を強くお勧めします。

Q. 副業の内容(どんな仕事か)を聞くことはプライバシー侵害になりますか?

A. 「競業先での就業でないか」「機密情報の漏洩リスクがないか」「本業への支障がないか」といった業務管理上の合理的な理由がある範囲での確認は、プライバシー侵害には当たりません。ただし、副業の収入額や詳細な顧客情報など、業務管理と無関係な情報まで開示を強制することは慎重に行ってください。

Q. 副業を認めている会社ですが、パフォーマンスが落ちた場合に副業をやめるよう指示できますか?

A. 副業を容認している場合でも、就業規則に「本業への労務提供に支障が生じる場合は副業を制限できる」旨の規定があれば、副業の縮小・中断を求めることは可能です。規定がない場合でも、「本業のパフォーマンスが一定期間改善しない場合は業務評価・配置に影響する」という通常の業務管理として対応できます。副業そのものを禁止する指示よりも、本業のパフォーマンス目標を明確にした上でのフォローアップが実務上は安全です。

Q. 本人が「副業は関係ない」と主張した場合、どう対応すればいいですか?

A. 副業との因果関係にこだわらず、「本業で確認されているパフォーマンス低下の事実」に焦点を戻してください。「原因が何であれ、現状として〇〇という影響が出ています。改善に向けて何が必要か、一緒に考えましょう」という進め方が有効です。原因の証明よりも、改善目標と支援策の設定に会話を向けることで、防衛的な反応を和らげることができます。

Q. 産業医がいない小規模な会社でも、こういった面談対応はできますか?

A. 常時50人未満の事業場には産業医の選任義務はありませんが、外部のメンタルヘルス支援サービスや社会保険労務士、専門の相談機関を活用することで、産業医なしでも適切な対応は可能です。特に、本人に専門的な相談先を案内すること自体が、安全配慮義務の観点から有効な取り組みとして評価されます。社内での面談に加え、外部リソースを組み合わせた体制を整えることをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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