役職と等級の対応表の作り方|中小企業向け3ステップ解説

役職と等級の対応表の作り方|中小企業向け3ステップ解説 人事制度
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「課長は何等級にすればいい?」「等級を作ろうとしたら、既存の社員の処遇をどう整理すればいいかわからなくなった」——人事制度の整備に着手しようとした瞬間、こうした疑問に直面する経営者・人事担当者は少なくありません。役職と等級は密接に関係しますが、同じものではありません。この二つを混同したまま対応表を作ると、後から制度が機能しなくなる原因になります。この記事では、役職と等級の違いを整理したうえで、中小企業が実際に使える対応表の作り方を3つのステップで解説します。

「役職」と「等級」は別のものと理解するところから始める

役職と等級は、それぞれ別の目的で使われる概念です。この区別を最初に明確にしないと、制度全体が混乱します。

役職とは何か

役職(肩書き)とは、組織上のポジションを指します。部長・課長・主任・リーダーといった言葉がこれにあたります。役職は「組織の中でどのような責任・権限を持つポジションか」を示すものであり、人ではなくポジションに紐づいています。たとえば「課長ポジションが1つあり、現在Aさんがそのポジションにいる」という考え方です。

等級とは何か

等級とは、個人の能力・職務遂行レベル・貢献度に応じた序列です。「この人は何等級か」と個人に紐づくもので、給与の基準や昇給の根拠になります。等級制度を持つことで、「なぜこの給与なのか」「次のステップに進むには何が必要か」を従業員に説明できるようになります。

二つを混同するとどうなるか

「課長=3等級」と1対1で固定してしまうと、3等級でない人を課長に登用できなくなったり、課長を外した瞬間に等級も自動的に下がってしまったりといった問題が生じます。人材配置の柔軟性が著しく損なわれるうえ、給与の不利益変更にも直結しかねません。役職と等級は「連動するが、分離可能」な設計にすることが実務上の鉄則です。

対応表を作る前に確認すること

役職と等級の対応表を作り始める前に、自社の現状を棚卸しする必要があります。この準備を省くと、対応表が形だけのものになります。

現在の役職と人数を洗い出す

まず、社内に存在する役職・肩書きをすべてリストアップします。「部長」「課長」「主任」といった一般的な肩書きだけでなく、「シニアエンジニア」「プロジェクトリード」など独自の肩書きも含めて整理してください。肩書きのインフレ(慰留や評価代わりに肩書きを乱発してきたケース)が起きている会社では、この棚卸しの時点で混乱が表面化することがあります。それ自体は問題の可視化であり、制度整備のスタートとして正しい姿です。

給与の実態と役職の関係を確認する

次に、現在の給与水準と役職の対応関係を確認します。「課長Aさん」と「課長Bさん」の給与が大きく乖離しているケースや、「主任のCさんが課長のDさんより給与が高い」というケースは、中小企業では珍しくありません。これらは等級制度を整備する際に「既存社員をどの等級に位置づけるか」という調整問題に直結するため、事前に把握しておく必要があります。

就業規則・賃金規程の現状を確認する

常時10人以上の労働者を雇用する事業場には、就業規則の作成・届出義務があります(労働基準法第89条)。等級制度や役職の定義・降格の条件は、就業規則本体または別規程(賃金規程・等級規程)に明記しておかないと、後日トラブルになったときに会社側が不利になります。既存の就業規則に等級・降格に関する記載がない場合は、今回の制度整備と合わせて規程の整備も検討してください。

役職と等級の対応表を作る3つのステップ

役職と等級の対応表は「この役職にはこの等級が必要」という要件定義として設計します。固定値ではなく等級レンジ(幅)を持たせることが、柔軟な運用のポイントです。

等級の数と定義を決める

まず最初に、自社に必要な等級の数を決めます。20〜50名規模の企業では、4〜6等級程度が現実的です。7等級以上は管理コストが高く、等級間の違いを言語化するのが難しくなります。各等級には「求める能力・行動・貢献度」を簡潔に定義します。たとえば以下のような形です。

等級 定義(例) 想定する役割イメージ
1等級 指示のもとで業務を遂行できる 入社1〜2年目の一般職
2等級 自律的に担当業務を遂行できる 一般職(中堅)
3等級 後輩への指導・小チームの取りまとめができる 主任・リーダー候補
4等級 チームを率いて成果を出せる 主任・係長クラス
5等級 部門全体の方針立案・人材育成ができる 課長クラス
6等級 経営方針を踏まえた部門運営・意思決定ができる 部長・管理職上位

役職ごとに「対応する等級レンジ」を設定する

次に、各役職に対して単一の等級ではなく「等級レンジ(範囲)」を設定します。たとえば「課長職の要件は5〜6等級」とすることで、5等級の人も6等級の人も課長になれる仕組みになります。これにより、等級が異なる二人が同じポジションに就くことも可能になり、個人差を吸収しやすくなります。また、課長を外れたとしても等級は維持されるため、役職変更が即座に賃金の不利益変更につながるリスクを軽減できます。

既存社員を等級に当てはめ、調整方針を決める

最後に、現在在籍している社員を新しい等級に当てはめます。このとき、等級定義に照らして「現時点での能力・貢献度」をもとに判断します。問題になりやすいのは、等級の当てはめによって給与水準との乖離が生じるケースです。労働契約法第9条・第10条では、就業規則の変更によって労働条件を不利益に変更することは原則として個別同意が必要であり、合理的な変更であれば就業規則変更によって対応できる余地がありますが、その「合理性」の判断は慎重に行う必要があります。給与が実質的に下がる社員が出る場合は、専門家(社会保険労務士・弁護士)への相談を強くおすすめします。

運用上の注意点と制度を形骸化させないポイント

役職と等級の対応表を作っただけでは制度は機能しません。運用フェーズで起きやすい問題と対策を押さえておくことが、制度の実効性を左右します。

例外対応を積み重ねない仕組みを作る

「今回だけ特別に」という例外対応が積み重なると、制度は形骸化します。特に兼務人事担当者は日常業務の中で例外判断を迫られやすい状況にあります。対策として、昇格・降格の判断基準と手続き(誰が・いつ・どのプロセスで決定するか)をあらかじめルール化しておくことが重要です。年1回の等級見直しタイミングを設け、その外での変更は原則として行わないと決めるだけでも、運用の安定性が大きく変わります。

対外肩書きと社内等級の乖離に注意する

名刺上は「部長」だが社内的には等級が低い、というケースは中小企業によく見られます。等級制度を整備するとこの矛盾が可視化され、当事者から「では給与はいつ上がるのか」という不満が噴出しやすくなります。制度整備のタイミングで、対外肩書きと処遇の関係を社内向けに丁寧に説明する機会を設けることをおすすめします。

降格・役職外しには就業規則上の根拠が必要

等級の引き下げ(降格)や役職の変更には、就業規則上の根拠と合理的な理由が必要です。懲戒や業績不振を理由とする場合であっても、手続き・基準の明文化がなければ無効と判断されるリスクがあります。複数の裁判例でも同様の判断がされています。制度を整備する際は、降格の要件と手続きも必ず規程に盛り込むようにしてください。

20〜50名規模企業が制度設計で陥りやすい落とし穴

中小企業ならではの制約を踏まえた設計をしないと、大企業向けの制度をそのまま導入して運用が回らなくなります。

等級数は少なめに設定する

100名超の企業に多い7〜10等級制は、等級間の違いを言語化するコストが高く、兼務人事担当者には管理しきれません。20〜50名規模であれば4〜6等級で十分です。等級の数が少ない分、各等級の定義を明確にすることに注力してください。

昇格審査は「重くしすぎない」設計にする

大企業では論文・面接・上司評価・委員会審査など多段階の昇格審査が一般的ですが、中小企業でこれをそのまま導入すると運用負荷が高すぎて続きません。直属の上長と経営者による確認・承認のプロセスを明確にするだけでも、「なんとなく昇格が決まる」状態からは大きく前進します。スモールスタートで始め、従業員数や組織の成熟度に合わせて徐々に精緻化していくアプローチが現実的です。

同一労働同一賃金への対応基盤にもなる

正規・非正規を問わず、職務内容が同じであれば不合理な格差は禁止されています(パートタイム・有期雇用労働法)。役職と等級の対応表に基づいた等級制度を整備し、役職・職務と処遇の関係を明文化することは、同一労働同一賃金対応の基盤にもなります。非正規社員を雇用している場合は、等級制度の整備と合わせて待遇の見直しを検討してみてください。

まとめ

役職と等級の対応表を作るには、まず「役職は組織上のポジション、等級は個人の能力・貢献度の序列」という概念の違いを整理することが出発点です。その後、等級の数と定義を決め、役職ごとに等級レンジを設定し、既存社員を当てはめながら調整方針を決めていきます。制度を形骸化させないためには、昇降格の手続きルール化と就業規則への明文化が欠かせません。

「自社の役職と給与の整理から始めたい」「既存社員への影響が心配で制度整備に踏み出せない」——そうした段階から、ウェルセンス株式会社はご相談をお受けしています。人事専任者がいない中小企業の人事課題に日々向き合っているチームとして、貴社の状況に合った現実的な対応表づくりと制度設計を一緒に考えます。まずはお気軽にご連絡ください。

よくある質問

Q. 等級制度は何人以上の会社から必要ですか?

A. 法律上の義務はなく、会社の規模にかかわらず任意で整備できます。ただし、従業員が増えるにつれて「なぜこの給与なのか」「昇給の基準は何か」という疑問が生まれやすくなります。20名を超えた頃から対応表を含めた制度の骨格を作っておくと、採用・評価・給与交渉のすべてで説明力が上がります。

Q. 等級制度を新しく作ると、既存社員の給与が下がる可能性はありますか?

A. 等級の当てはめによっては、賃金テーブル上の水準と現在の給与に乖離が生じることがあります。実際に給与が下がる場合は、労働契約法第9条・第10条に基づき、原則として個別同意が必要です。既存の給与は維持しつつ、新制度への移行期間を設ける「経過措置」を設けるケースも多いです。社会保険労務士への相談を推奨します。

Q. 役職と等級の対応表は就業規則に書かなければなりませんか?

A. 常時10人以上の労働者を雇用する事業場では、就業規則の作成・届出義務があります(労働基準法第89条)。等級の定義・降格の条件・役職の要件は、就業規則本体または等級規程・賃金規程などの別規程として明記し、労働基準監督署へ届け出ておくことが望ましいです。明文化がないと、降格や役職変更をめぐるトラブル時に会社側が不利になります。

Q. 等級を下げる(降格させる)ことはできますか?

A. 降格自体は可能ですが、就業規則に降格の要件・手続きが明記されていることが前提です。懲戒事由や明確な業績不振を理由とする場合でも、根拠規定がなければ無効と判断されるリスクがあります。降格の基準と手続きは対応表を含めた制度設計の段階で必ず盛り込んでおきましょう。

Q. 対外向けの肩書き(名刺の肩書き)と社内等級は必ず一致させる必要がありますか?

A. 法律上の一致義務はありませんが、乖離が大きいと「名刺には部長と書いてあるが処遇は主任レベル」といった不満が生まれやすくなります。役職と等級の対応表を整備する際は、対外肩書きと処遇の関係について社内向けに説明する機会を設けることが、トラブル予防として有効です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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