採用選考で犯罪歴を確認する際の適法な進め方

採用選考で犯罪歴を確認する際の適法な進め方 コンプライアンス
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「うちの会社に、過去に問題を起こした人が入ってきたらどうしよう」——採用担当者なら一度は頭をよぎる不安です。経理や財務を任せる人材、子どもや高齢者と接する職種、現金や顧客情報を扱うポジション。リスク管理の観点から「犯罪歴を確認したい」と考えるのは自然なことです。しかし、「採用選考で犯罪歴を聞くのは違法らしい」という情報を耳にして、何が許されて何がNGなのか判断できないまま採用活動を続けている企業は少なくありません。この記事では、法令の根拠から実務上の対応まで、専任人事のいない企業でも判断できるように採用選考での犯罪歴確認のルールを整理します。

採用選考で犯罪歴を確認することは「一律に違法」ではない

結論から述べます。採用選考で犯罪歴を確認することは「すべてが違法」ではありません。ただし、目的・職種・取得方法の3つの観点から適法かどうかが変わってくるため、「聞いてもOK」とも「必ず聞ける」とも言い切れないのが実態です。

違法と言われる理由

採用選考での犯罪歴確認が問題とされる根拠は、主に3つの法令・指針にあります。まず、職業安定法第5条の4・第5条の5では、求職者から収集できる個人情報は「業務の目的達成に必要な範囲」に限定されると定められています。業務と関係のない個人情報の収集は職業安定法違反となりうるのです。

次に、個人情報保護法の問題があります。刑事事件に関する情報は「要配慮個人情報」(個人情報保護法第2条第3項)に該当し、取得には原則として本人の明示的な同意が必要です。要配慮個人情報とは、本人の身体・健康・財産または権利などに影響を与える恐れのある個人情報のことを指します。さらに、厚生労働省が定める「公正な採用選考の基本」では、本人の適性・能力とは無関係な事項を選考基準にすることを不適切としており、犯罪歴も一律に確認・選考基準にすることは問題とされています。

一律に違法でない理由

上記の法令・指針はいずれも「目的と必要性のある確認を禁止する」ものではありません。業務との関連性が明確であり、本人の同意を適切に取得した上での採用選考での犯罪歴確認は、一定の合理性を持ちます。重要なのは「なぜ確認するのか」「どの範囲まで確認するのか」「どのように取得するのか」を整理した上で進めることです。

法令で欠格事由が定められている職種では確認できる

特定の職種・業種では、法令上の「欠格条項」として一定の犯罪歴(禁錮以上の刑など)を理由に資格・免許が取得・保持できない場合があります。このケースでは、法令上の欠格事由を確認する目的での質問は合理的な根拠を持ちます。

欠格事由が定められている職種の例

たとえば、宅地建物取引士(宅地建物取引業法第18条)、社会福祉士・介護福祉士(社会福祉士及び介護福祉士法第3条)、警備員(警備業法第14条)などは、特定の刑事罰を受けた者が資格を取得・保持できない旨が法令に明記されています。これらの職種では、採用要件として法令上の欠格事由に該当しないことを確認することに合理的な根拠があり、採用選考での犯罪歴確認が許可される典型的な例です。

欠格事由がない職種での確認はハードルが高い

一方、法令上の欠格事由が定められていない一般的な職種(営業職、事務職、エンジニアなど)では、業務との関連性を自社で明確に説明できなければ、犯罪歴の確認は職業安定法や公正採用選考の観点から問題になりやすいです。「なんとなく不安だから採用選考で確認したい」という理由では、適法性の根拠として不十分と判断されるリスクがあります。

面接で「聞いてよい質問」と「聞いてはいけない質問」の線引き

採用面接で何を聞いてよいかの基本的な考え方は「その質問が、業務上の適性・能力の判断に必要かどうか」です。犯罪歴に限らず、本人の適性・能力と無関係な質問は、公正採用選考の観点から不適切とされます。

採用面接で問題となりやすい質問の類型

厚生労働省の採用選考指針では、本籍・出身地、家族の職業・続柄、住宅状況、宗教・支持政党、犯罪歴などを一律に確認・選考基準にすることを問題としています。これらは「本人の責任ではない事項」や「本来自由であるべき事項」として整理されており、同じ考え方が採用選考での犯罪歴確認にも適用されます。

質問の内容 適法性の考え方
「これまでに逮捕・起訴されたことはありますか?」(一律・全職種) 業務との関連性が不明確なため問題になりやすい
「宅建士の資格をお持ちですか。欠格事由に該当する事実はありますか?」 法令上の欠格事由確認として合理性がある
「警備員として勤務するにあたり、警備業法上の欠格事由に該当しますか?」 法令根拠があるため採用選考で確認できる
「業務上の不正や横領に関する問題を起こしたことはありますか?」 業種・職務内容との関連次第でグレーゾーン。法的リスクあり

「聞けた」と「選考に使ってよい」は別の問題

見落とされがちなポイントがあります。応募者が面接中に自発的に犯罪歴を話したとしても、企業側がそれを選考基準として使うことは別の問題です。要配慮個人情報として取得した情報は、利用目的の範囲内でのみ扱わなければならず、「聞けた情報だから採用選考に使ってよい」とはなりません。記録・管理・利用のすべてのプロセスで個人情報保護法の対応が求められます。

バックグラウンドチェックを外注する場合の注意点

バックグラウンドチェック(身元調査)会社を利用すれば安心と考えている企業もありますが、外注したからといって自社の法的責任がなくなるわけではありません。依頼した企業が個人情報保護法・職業安定法上の責任主体であることは変わりません。

外注時に自社が確認すべき3つのポイント

バックグラウンドチェック会社に依頼する際、自社として確認・整備しておくべき事項があります。まず、収集する情報の範囲を業務との関連性に基づいて明確に定めること。次に、本人への同意取得のプロセスが適切かどうかを確認すること。そして、採用選考での利用目的を応募者に明示していることを確認することです。この3点が不十分な状態で外注しても、自社に法的リスクが残ります。

同意取得の具体的な方法

個人情報保護法上の「明示的同意」を取得するためには、応募書類や採用プロセスの中で「バックグラウンドチェックを行うこと」「確認する情報の範囲」「採用選考での利用目的」を具体的に記載した上で、応募者から書面またはデジタルフォームで同意を得ることが一般的です。口頭での同意確認だけでは後々のトラブル時に証明が難しくなります。

犯罪歴を確認できない場合の採用リスク管理

「聞けないなら、どうやってリスクを管理すればいいのか」という疑問は当然です。犯罪歴の直接確認に頼らなくても、採用リスクを下げるためにできることはあります。

採用プロセス自体でリスクを下げる方法

採用面接では、業務上の適性・能力・価値観に関連する質問を丁寧に行うことが基本です。たとえば、過去の業務上のトラブル経験とその対応を聞くことで、誠実さや問題解決能力を見極める材料になります。また、リファレンスチェック(前職の上司・同僚に本人の業務上の評価を確認する)は、業務適性の確認として適法に実施できる手段のひとつです。リファレンスチェックも本人の同意を得た上で行うことが前提です。

入社後のリスク管理も同時に整備する

採用時の確認だけに頼るのではなく、入社後の管理体制を整えることも重要です。経理・財務ポジションであれば、承認フローの複数化や定期的な内部チェックの仕組みを作ること。顧客情報を扱うポジションであれば、情報アクセス権限の管理を徹底することが、採用後のリスク低減につながります。採用選考での確認と入社後のマネジメントをセットで考えることが、中小企業における現実的なリスク管理です。

専任人事がいない企業こそ「判断基準の文書化」が必要

専任人事や法務担当がいない企業では、面接官が善意で「安全確認のために」採用選考時に聞いてしまうことが起きやすい環境です。面接官向けに「聞いてよい質問・聞いてはいけない質問」のリストを作成し、採用に関わる全員が共通の基準で動けるようにすることが、法的リスクを防ぐための実務上の第一歩です。

まとめ

採用選考での犯罪歴確認は「一律に違法」ではありませんが、職業安定法・個人情報保護法・公正採用選考の観点から、目的・職種・取得方法によって適法かどうかが変わります。法令上の欠格事由が定められている職種(宅建士・社会福祉士・警備員など)では合理的根拠を持ちますが、それ以外の職種では業務との関連性を明確に説明できなければリスクがあります。また、本人が自発的に話した情報を採用選考に使うこと、外注したバックグラウンドチェックの責任が自社にあることも、見落とされやすい重要なポイントです。犯罪歴を直接確認できない場面でも、リファレンスチェックや入社後の管理体制整備など、採用リスクを下げる手段は複数あります。

「自社の採用プロセスが適法かどうか判断できない」「面接官に伝えるべき基準を整備したい」といった採用選考に関する判断でお困りの企業は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。採用選考の法的整合性チェックから、実務に即した対応フローの整備まで、専任人事のいない中小企業の実情に合わせてサポートします。

よくある質問

Q. 採用面接で犯罪歴を聞くと、どのような罰則がありますか?

A. 直接的な罰則規定は一概には言えませんが、職業安定法違反として行政指導・勧告の対象になる可能性があります。また、個人情報保護法上の要配慮個人情報を同意なく取得・利用した場合は、個人情報保護委員会による是正勧告・命令、さらに命令違反には罰則(法人には最大1億円の罰金)が定められています。「罰則がないからグレーゾーン」と考えるのは危険です。

Q. 応募者が履歴書に自分から犯罪歴を書いてきた場合、採用選考に使っても問題ありませんか?

A. 本人が自発的に記載・申告した場合でも、企業側がその情報を採用選考の基準として使うことは別の問題です。要配慮個人情報の利用目的は採用選考の段階で明示する必要があり、「聞けた(書かれた)」と「採用選考に使ってよい」は別の判断になります。記録・管理・利用のすべてで個人情報保護法の対応が求められます。

Q. バックグラウンドチェック会社を使えば、自社で犯罪歴を直接聞かなくて済みますか?

A. バックグラウンドチェック会社を利用しても、依頼した自社が個人情報保護法・職業安定法上の責任主体であることは変わりません。収集する情報の範囲・本人同意の取得方法・利用目的の明示について、自社として責任を持って設計する必要があります。外注すれば法的責任が免除されると考えるのは誤りです。

Q. 経理・財務担当を採用する際、横領リスクが不安です。犯罪歴以外にどんな確認ができますか?

A. 採用選考では、業務上のトラブル経験とその対応についての行動面接(過去の具体的な行動を聞く手法)や、本人同意を得た上でのリファレンスチェックが有効です。また、入社後の対策として、経費・支払い承認フローの複数化、定期的な帳簿チェック、アクセス権限の管理など、組織側の仕組みを整えることが現実的なリスク低減策です。

Q. 採用面接で「聞いてはいけない質問」を面接官全員に周知するには、何から始めればよいですか?

A. まず、厚生労働省が公表している「公正な採用選考の基本」を参考に、自社の採用面接で使っている質問リストを棚卸しすることから始めてください。次に、「聞いてよい質問・聞いてはいけない質問」を一覧化した社内ガイドラインを作成し、採用に関わる全員で共有します。専任人事がいない企業では、このガイドラインの法的整合性をウェルセンス株式会社などの社労士や専門支援会社に確認してもらうことをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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