給与改定面談の伝え方|不満を出さない説明のポイント

給与改定面談の伝え方|不満を出さない説明のポイント 採用・定着
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「今年は少ししか上げられない。どう伝えればいいんだろう……」——給与改定の時期が近づくたびに、そんな憂鬱を感じている経営者・人事担当者は少なくないはずです。問題は金額の大小だけではありません。伝え方を間違えると、たとえ昇給していても社員の不満やモチベーション低下につながります。この記事では、評価制度が整っていない中小企業でも実践できる、給与改定面談の伝え方と構成、言葉の選び方を具体的に解説します。

給与改定面談で不満が生まれる本当の原因

給与改定後に社員が不満を持つ最大の原因は、金額の低さではなく「なぜこの金額なのか」が伝わっていないことです。説明のプロセスと根拠の明確さが、納得感を大きく左右します。

「不満が出なかった」は納得ではない

面談の場で社員が黙って「わかりました」と答えても、それは必ずしも納得ではありません。「言っても変わらない」という諦めや、その場をやり過ごそうとする表面的な受容である場合が多いのです。本当の不満は面談後に同僚への愚痴、モチベーションの低下、いわゆる「静かな退職(Quiet Quitting)」として現れます。数ヶ月後に突然退職届が届く、というケースの多くはここに原因があります。

昇給額より「説明のプロセス」が満足度を左右する

人事領域で広く観察される傾向として、同じ昇給額であっても、説明が丁寧で評価の根拠が明確なほうが社員の満足度は高くなります。逆に言えば、「少ししか上げられないから面談を短くする・省略する」という判断が、最悪の結果を招きます。金額が少ない年ほど、丁寧な面談が必要です。

評価制度がなくても「根拠」は作れる

20〜50名規模の企業では、等級制度や評価シートが整備されていないケースが大半です。「社長の判断で金額が決まっている」という実態の中で、根拠を問われると詰まってしまう——その経験をお持ちの方も多いでしょう。しかし、評価制度がなくても、期中に起きた具体的な出来事や行動を言語化するだけで、説明の根拠として十分機能します。フォーマルな制度よりも、「あの案件でこういう動きをしてくれたこと」という具体的なエピソードのほうが、むしろ社員に響くことが多いのです。

給与改定面談前に必ず準備しておくこと

給与改定面談の成否は、面談当日よりも準備段階で8割が決まります。「事実ベースの評価根拠」と「会社の状況との整理」を事前に行うことが、納得感ある説明の土台になります。

「事実」を具体的に書き出す

まず、対象者の今期の行動・成果・課題を具体的なエピソードとして書き出します。「積極的に動いてくれた」という印象論ではなく、「第2四半期の新規顧客対応で、クレームをゼロ件に抑えた」「後輩の育成に時間を割き、チームの定着率が上がった」といった事実の積み上げです。この準備があるだけで、面談中の説明が格段に安定します。

「会社の状況」と「個人の評価」を切り分けて整理する

給与改定額が少ない場合、「業績が厳しいから」という理由だけを持ち出すと、個人の努力を否定したように受け取られます。面談前に「この人の評価はどうなのか」「会社の財務状況はどうなのか」という二軸を整理しておきましょう。「あなたの評価は高い。ただし今期の会社の状況を踏まえると、この金額が限界だ」という説明構造を準備することが重要です。

就業規則・賃金規程との整合を確認する

労働基準法第89条・第90条により、賃金の決定・計算方法は就業規則に記載する義務があります。面談前に、今回の改定内容が就業規則や賃金規程の内容と整合しているかを確認してください。特に賃金を引き下げる場合は、労働契約法第9条・第10条に基づき、原則として労働者の同意が必要です。一方的な賃金引き下げは無効とされるリスクがあるため、慎重な対応が求められます。

給与改定面談の構成と進め方

給与改定面談は「事実→評価→理由→金額」の順で進めることが基本です。金額を先に開示すると、それ以降の説明を社員が聞かなくなるため、提示のタイミングに注意が必要です。

面談の流れを型として持つ

以下が、評価制度のない中小企業でも使える面談の基本構成です。

フェーズ 内容 ポイント
場の設定 面談の目的と流れを伝える 「今日は今期の振り返りと来期の処遇についてお話しします」
事実の共有 今期の行動・成果・課題を具体的に伝える 印象ではなく、具体的なエピソードを使う
評価の説明 その事実をどう評価したかを伝える 「なぜそう評価したか」の理由も添える
会社状況の共有 業績・財務の状況を簡潔に説明する 個人評価と切り分けて伝える
金額の提示 改定後の金額・変更幅を伝える 「以上を踏まえた結果として」と接続する
感想・質問の確認 社員の率直な反応を引き出す 「どう感じましたか?」と意図的に聞く

金額提示のタイミングを守る理由

人は金額という具体的な数字を見た瞬間から、それに感情が引っ張られます。「思ったより少ない」と感じた瞬間、それ以降の説明はほとんど耳に入らなくなります。だからこそ、金額は必ず「評価の根拠と理由の説明を終えた後」に提示することが重要です。「以上を踏まえた結果として、今回の改定額は月額〇〇円となります」という接続表現を使うことで、金額が「結論」として自然に受け取られやすくなります。

感想を引き出す一言を忘れない

面談の最後に「今日の話を聞いてどう感じましたか?」と一言聞く習慣をつけてください。これがあるかどうかで、社員が不満を抱えたまま退室するリスクが大きく変わります。沈黙や「大丈夫です」という返答があっても、「何か気になる点があれば後でもいつでも話しかけてください」と続けるだけで、心理的な出口を作ることができます。

不満が出にくい言葉の選び方

給与改定面談では、伝える「内容」と同じくらい、言葉の選び方が社員の受け取り方を左右します。特定のフレーズを避け、納得感を生む表現に替えるだけで、面談の質は大きく変わります。

避けるべき言葉と言い換えの例

以下のような言葉は、意図せず社員の感情を損ないやすいため注意が必要です。

  • 「頑張りは認めているんだけど……」 → 評価の根拠なしに使うと「でも上げない」の枕詞に聞こえる。具体的な事実を先に述べてから使う。
  • 「会社の状況が厳しくて」 → 単独では個人の努力を否定する印象を与える。「あなたの評価はこうだが、会社状況を踏まえると」と二軸で伝える。
  • 「他の人と比べてもこれが妥当」 → 個人情報に関わる比較は避ける。同業他社の相場に言及する場合は出典を示すか、「市場水準の観点から見ても」と言い換える。
  • 「これ以上は難しい」 → 将来への展望がないように聞こえる。「今期はこの水準だが、来期にこういう成長があれば見直す余地がある」と期待を伝える。

同僚比較・市場水準への質問への対応

「他の人はどうなの?」「同業他社のほうが給与が高い」という質問は、準備していないと面談が崩れる原因になります。他の社員の処遇は個人情報であるため、「個別の処遇については申し上げられませんが、あなた自身の評価と処遇の根拠についてはきちんとお伝えできます」と応答するのが基本です。市場水準については「業界の相場も参考にしながら設定しています」と伝え、具体的な出典がない場合は数字を断言しないことが重要です。

育休復帰者・女性社員への配慮

育児休業からの復帰者や女性社員の改定額が他と比較して低い場合、男女雇用機会均等法や育児介護休業法の観点から法的リスクが生じる可能性があります。改定根拠を透明化し、「業務上の成果・行動に基づく評価」であることを明確にしておくことが、差別認定を防ぐ実務上の対策になります。

給与改定面談後の記録と継続的なフォロー

給与改定面談は「伝えて終わり」ではありません。面談後の記録と継続的な関わりが、後々のトラブル防止と社員の定着につながります。

面談記録を必ず残す

口頭のみの面談は、後日「そんな説明は聞いていない」「合意した覚えはない」という認識の齟齬につながるリスクがあります。面談で話した内容(評価の根拠・改定額・社員のコメント)を簡単なメモとして残し、可能であれば社員本人にも内容を確認してもらう形が理想です。これは法的な観点からも重要で、賃金変更に関するやりとりが「合意の証跡」になりえます。特に賃金を引き下げる場合は、書面での同意取得を検討してください。

面談後のフォローアップを設ける

面談から2〜4週間後に、短時間でも「あの後どうですか?」と声をかける機会を作ってください。不満が翌日に表面化することは少なく、数週間かけて醸成されることが多いためです。小規模企業の強みは、経営者や上司が社員と距離が近いことです。面談後もオープンなコミュニケーションが続いていることを示すだけで、静かな退職のリスクを大きく下げることができます。

評価制度の整備を段階的に進める

評価制度がない企業では、まず「来期に何を期待するか」を面談の中で言語化するだけでも大きな前進です。フォーマルな等級制度を一気に作る必要はありません。「今期こういう点を評価した」「来期はこういう成長を期待している」という対話の積み重ねが、次の面談での説明根拠になります。制度の整備は、日々の対話の言語化から始まります。

まとめ

給与改定面談で不満を生まないために最も重要なのは、金額の大きさではなく「なぜこの金額なのか」を丁寧に伝えるプロセスです。給与改定面談の伝え方として、面談は「事実→評価→理由→金額」の順で構成し、金額を先に開示しないこと。評価制度がなくても、具体的なエピソードを根拠として使えること。そして面談後に感想を引き出す一言と、記録の習慣を持つこと——この三つが実践できれば、たとえ昇給幅が小さくても社員の納得感は大きく変わります。

とはいえ、「実際にどう言葉を組み立てればいいか」「自社の状況に合った面談の型が欲しい」「給与改定面談が毎年ストレス」と感じている経営者・人事担当者も多いでしょう。ウェルセンス株式会社では、評価制度が整っていない段階から使える給与改定面談の具体的な構成づくりや、人事担当者向けの実務サポートをご提供しています。年1回の重要な機会だからこそ、プロに相談しながら進めたいとお考えでしたら、気軽にお声がけください。

よくある質問

Q. 評価制度がない会社でも、給与改定の根拠を説明できますか?

A. できます。フォーマルな評価制度がなくても、今期に起きた具体的な出来事や行動を言語化することで十分な根拠になります。「あの案件でこういう対応をしてくれたこと」「チームの中でこういう役割を果たしてくれたこと」など、事実ベースのエピソードを面談前に書き出しておくことが有効です。制度の有無よりも、「具体的な根拠があるかどうか」が納得感を左右します。

Q. 業績が悪い年に「据え置き」を伝えるときのポイントは何ですか?

A. 「会社の状況が厳しい」という理由だけで伝えると、個人の努力を否定したように受け取られます。「あなたの評価はこうだった(具体的に)」という個人評価の説明をしっかり行った上で、「ただし今期の会社の財務状況を踏まえると、今回は据え置きが限界」という二軸で説明することが重要です。加えて「来期にこういう状況になれば改定を検討する」という展望を示すことで、社員が将来への期待を持てるようにします。

Q. 給与改定面談の記録はどのように残せばよいですか?

A. 最低限、「いつ・誰と・何を話したか・改定額・社員のコメント」を簡単なメモとして残してください。可能であれば、面談内容の要点を社員にも確認してもらい、メールや紙での確認を取ることが望ましいです。特に賃金を引き下げる場合は、労働契約法第9条・第10条の観点から書面での合意取得を検討してください。口頭のみの面談は「言った言わない」トラブルの原因になります。

Q. 「他の人の給与はどうなの?」と聞かれたらどう答えればよいですか?

A. 他の社員の処遇は個人情報に当たるため、「個別の処遇については申し上げられません」と明確に伝えることが基本です。その上で「あなた自身の評価と処遇の根拠については、今日きちんとお伝えしています」と本題に引き戻すのが有効です。市場水準との比較については、具体的な出典のない数字を断言することは避け、「業界の相場も参考にしながら設定しています」という表現にとどめるのが安全です。

Q. 給与改定面談はどのくらいの時間をかけるのが適切ですか?

A. 最低でも30分、できれば45〜60分を確保することを推奨します。昇給幅が少ない年ほど、丁寧な説明の時間が必要です。「少ししか上げられないから短く終わらせよう」という判断が不満を生む最大の原因の一つです。また、面談の場を一方的な通知の場にせず、社員が感想や疑問を話せる時間を10〜15分程度設けることで、面談後の不満の蓄積リスクを大幅に下げることができます。

【監修】ウェルセンス株式会社
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