休職復職後の「不当な扱い」事実確認の進め方

休職復職後の「不当な扱い」事実確認の進め方 メンタルヘルス対応
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「復職してから、明らかに扱いが変わった」と従業員から言われたとき、多くの経営者・人事担当者が最初に感じるのは「で、何をすればいいんだろう」という戸惑いです。申告の内容が事実なのか、本人の受け取り方の問題なのか、その判断すらつかないまま時間だけが過ぎていく——そんな状況に追い込まれることは、専任人事のいない中小企業では珍しくありません。この記事では、申告を受けた日からどう動くか、管理職にどう話を聞くか、法的リスクをどう考えるかを、実務の流れに沿って整理します。

申告を受けたら、まずこの順番で動く

休職復職後の不当な扱いに関する申告を受けたら、その日のうちに「調査プロセスに入った」という状態を作ることが最優先です。放置は安全配慮義務違反につながりえます。

申告内容を記録し、本人に「動く」と伝える

まず最初に行うべきは、申告を受けた日時・場所・申告者・内容・担当者名を文書で記録することです。口頭で聞いて「わかりました」で終わらせてはいけません。記録を残したうえで、本人に対して「いつまでに進捗を報告する」という期日を明示します。「1週間以内に確認状況をお伝えします」と一言添えるだけで、本人の不安感は大きく和らぎます。

この初動の記録が、後々のトラブル時に「会社が申告を認識していたか、いつ動いたか」を示す証拠になります。今から整備しても遅くはありません。「記録がなかった期間があること」より「これ以降は記録する体制にしたこと」のほうが重要です。

ヒアリングは「本人→関係者」の順を守る

次に、ヒアリングの順番を間違えないことが肝心です。原則として、まず本人から話を聞き、その後に管理職や周囲の関係者に確認します。先に管理職へ事情を聞いてしまうと、本人に「会社は最初から上司の味方だった」という印象を与え、信頼関係が崩れるリスクがあります。

本人へのヒアリングでは、「いつ、どこで、誰が、何をしたか(または何をしなかったか)」を具体的に確認します。「なんとなく冷たい」という感覚的な訴えの場合は、「具体的にどのような場面で感じましたか」と丁寧に掘り下げることが重要です。

事実確認の「比較軸」を設定する

「前と違う扱い」を判断するには、比較の基準が必要です。休職前の業務内容・役割・会議参加状況・上司とのコミュニケーション頻度などを、復職支援計画書や過去の面談記録と突き合わせます。計画書に「業務量を段階的に増やす」と明記されていれば、業務量が少ないこと自体は不当な扱いではなく、合理的な配慮です。一方、会議から外された・重要な情報共有を受けていない・挨拶を無視されるといった変化に「業務上の合理的理由」がなければ、問題として対処する必要があります。

管理職ヒアリングで防衛反応を引き出さない聞き方

管理職へのヒアリングは「問い詰め」ではなく「現場把握のための協力依頼」として設計することで、事実を引き出しやすくなります。

冒頭の「フレーム設定」が鍵になる

ヒアリングの冒頭で、管理職が「自分が疑われている」と感じないよう文脈を整えることが大切です。たとえば次のような入り方が有効です。「○○さんから、復職後の職場環境についていくつか感じていることがあると聞きました。会社として状況を正確に把握したいので、現場の実態を教えていただけますか。あなたの対応を責めるためではなく、どうすれば○○さんが働きやすくなるかを一緒に考えたいと思っています」

このフレーム設定をせずに「○○さんがこう言っているが、どういうことか」と切り出すと、管理職は即座に防衛モードに入り、事実より自己弁護が中心になります。

確認すべき具体的な質問の例

管理職に確認すべき内容は「評価・判断」ではなく「行動の事実」に絞ります。以下のような問いかけが有効です。

  • 復職後、業務の割り当て方を変えた場合、その理由と経緯は何か
  • 定例会議への参加状況に変化があったか。あった場合、その意図は何か
  • 1対1のコミュニケーション(声かけ・業務指示など)の頻度は以前と比べてどうか
  • チームメンバーとの関係について、気になる動きはあったか
  • 復職支援計画書の内容をどの程度認識し、現場で実施しているか

「○○をしましたか」という確認型より「どのような経緯でそうなりましたか」という開放型の質問のほうが、実態が把握しやすくなります。

言い分が食い違った場合の対処

本人の話と管理職の話が食い違うことは珍しくありません。その場合は、どちらかを「信じる」判断をすぐ下すのではなく、第三者(他のチームメンバーや隣席の社員など)への追加ヒアリングや、メール・チャット・業務記録などの客観的な証拠の確認に進みます。「どちらが正しいか」ではなく「何が起きていたか」を事実として積み上げていく姿勢が重要です。

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「本人の主観」か「実際の問題」かを判断する基準

復職後は精神的に敏感になっている時期でもあるため、実際には問題のない行動を「冷たくされた」と感じるケースもあります。一方で実際に不当な扱いが起きているケースもあり、両方の可能性を同時に検討しながら進める必要があります。

「客観的変化」があるかを確認する

判断の軸は「休職前と比べて客観的に変化した事実があるか」です。本人の感情や印象だけでなく、業務の割り当て記録、会議の参加履歴、業績評価の推移、メール・チャットのやり取りといった記録から変化の有無を確認します。以下の表を参考に、確認のポイントを整理してください。

確認項目 「合理的な変化」の例 「問題となりうる変化」の例
業務量・役割 復職支援計画に基づく段階的軽減 計画にない一方的な降格・役割剥奪
会議・情報共有 業務量軽減に伴う一部会議の不参加 理由なく重要会議から外される
コミュニケーション 業務上必要な会話は継続されている 挨拶・業務連絡を意図的に避けている
評価・処遇 休職期間を考慮した評価の調整(合理的説明あり) 休職したことを理由とした一方的な降給・降格

「復職後の敏感さ」を配慮しながら向き合う

復職後は、認知の歪みが生じやすい状態にある場合があります。そのため「本人が過剰に反応しているだけ」と片付けるのも、「すべて事実として受け取る」のも、どちらも適切ではありません。本人の訴えを否定せず「そう感じさせてしまっていることは重要なことだと受け止めています」と伝えながら、客観的な事実確認を並行して進める姿勢が求められます。

また、産業医や主治医が関与している場合は、本人の現在の状態について情報を共有してもらうことも検討してください。ただし、医療情報の取り扱いには本人同意が必要です。

放置すると生じる法的リスク

復職後の不当な扱いに関する申告を放置した場合、会社は複数の法令上の義務違反を問われる可能性があります。「知らなかった」「本人の思い込みだと思った」は免責理由になりません。

安全配慮義務とハラスメント防止措置義務

労働契約法第5条は、会社が労働者の生命・身体・精神の安全を確保する義務(安全配慮義務)を定めています。復職後の職場環境が精神的な健康を損なうものであれば、会社が申告を受けた時点で調査・対処義務が発生します。調査せずに放置した場合は不作為による義務違反となりえます。

また、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に基づくパワーハラスメント防止措置義務は、2022年4月から中小企業にも義務化されています。「前と違う扱い」が休職した事実を理由とした嫌がらせや不利益取扱いに該当する場合、同法の相談窓口整備・調査・対処義務に反することになります。

損害賠償責任と障害者差別禁止

管理職個人の行為が不当な扱いと認定された場合、民法709条(不法行為責任)および同715条(使用者責任)に基づき、会社と管理職の双方に損害賠償責任が生じる可能性があります。精神疾患を抱えた状態での復職であれば、障害者雇用促進法第35条の差別禁止規定にも抵触しうることを念頭に置いてください。

弁護士への相談は「訴訟になってから」ではなく、「申告内容が事実であると確認された段階」で早期に行うことを推奨します。特に降格・降給・配置転換が絡む場合は、初動の段階から法的観点で判断することが重要です。

対応が長引くリスクと当事者の状態悪化を防ぐ方法

事実確認に時間がかかること自体は避けられませんが、「何もされていない」と本人が感じさせてしまうことが最大のリスクです。対応スピードと丁寧さを両立するには、定期的な進捗報告が鍵になります。

「確認中」の期間をどう設計するか

事実確認の期間中は、1週間に一度程度、担当者から本人に「現在の進捗状況」を短く報告します。「確認を進めています。〇月〇日までに次の状況をお伝えします」という連絡を続けることで、「放置されている」という感覚を防げます。進捗報告の内容は詳細でなくて構いません。「動いている」という事実を伝えることが目的です。

再休職・退職リスクへの対応

対応が長引く間に本人の状態が悪化し、再休職や退職に至るケースもあります。本人の状態が不安定に見える場合は、産業医や主治医との連携を早期に検討してください。産業医が選任されていない企業(常時50人未満の職場)であれば、地域の産業保健総合支援センターへの相談も選択肢です。無料で利用できます。

管理職の反発を防ぐ再発防止策の進め方

事実確認後に再発防止策を打ち出す際、管理職が「自分が責められている」と感じると反発が生まれます。再発防止の場では「今後の職場全体の対応力を高めるための仕組みづくり」として設計することが重要です。管理職を「改善すべき対象」ではなく「改善を一緒に進めるパートナー」として位置づけ、「どんなサポートがあれば対応しやすかったか」を聞く姿勢を取ると協力を得やすくなります。

まとめ

復職後の「不当な扱い」申告への対応は、申告を受けた初日から調査プロセスに入ることが出発点です。本人→関係者の順でヒアリングを行い、復職支援計画書などの客観的な記録と照らし合わせながら、「合理的な理由のある変化か、そうでないか」を判断していきます。管理職ヒアリングは問い詰めではなく現場把握の協力依頼として設計し、事実が食い違う場合は第三者確認や記録照合に進みます。放置は安全配慮義務違反・ハラスメント防止措置義務違反・損害賠償責任につながりえるため、「本人の思い込みかもしれない」という段階でも会社として動いた記録を残すことが重要です。

これらの対応は、専門的な判断と丁寧な手順を要するものです。ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・人事担当者に向けて、復職後のトラブル対応・ヒアリング設計・再発防止策の整備を支援しています。人事だけで抱え込まず、一度気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 本人からの申告に記録がほとんどありません。今から記録を整備することに意味はありますか?

A. あります。記録がなかった期間をさかのぼって捏造することはできませんが、「この日以降に会社が申告を受け、対応を開始した」という事実は今日から記録できます。申告受理の日時・内容・担当者・対応方針・ヒアリングの概要を残していくことで、会社が誠実に対応していたことを後から証明できます。過去の記録がないことよりも、これ以降に記録が存在することのほうが重要な場面が多くあります。

Q. 管理職の対応に問題があったと確認できた場合、どんな対処が必要ですか?

A. まず管理職に対して事実を伝え、改善を求める面談を実施します。その内容も記録に残してください。悪意の有無や行為の程度によって、口頭注意・書面による指導・配置転換などの対応が変わります。懲戒処分を検討する場合は、就業規則に定められた手続きに従う必要があります。就業規則が整備されていない場合や、処分の妥当性に不安がある場合は、社労士または弁護士に相談することを強くお勧めします。

Q. 産業医がいない会社でも、本人の状態を確認する方法はありますか?

A. 常時50人未満の事業所では産業医の選任義務はありませんが、都道府県ごとに設置されている「産業保健総合支援センター」に相談することで、産業保健の専門家から無料でアドバイスを受けることができます。また、本人の同意のもと、主治医に対して職場での状況を共有し、意見をもらう「情報提供と意見聴取」の仕組みを活用することも有効です。

Q. 本人が「録音がある」と言ってきました。どう対応すればよいですか?

A. 録音データの提出を強要することは適切ではありませんが、本人が任意で提出・共有することは可能です。「そのような記録があるとのこと、確認した上で対応を検討します」と受け取る姿勢を示してください。録音データは事実確認の補助資料として活用できますが、その内容の解釈や対応方針への反映については、専門家(弁護士・社労士)に確認しながら進めることをお勧めします。感情的に反応せず、冷静に「事実確認の一資料」として扱う姿勢が会社への信頼を保ちます。

Q. 復職後に本人が「やっぱり働けない」と言い出した場合、どうすれば?

A. 再休職の可能性として受け止め、まず本人の状態を優先します。主治医への受診を促し、医師の判断に基づいて就業可否を判断することが基本です。「職場の扱いに問題があったことが原因で再休職になった」という状況を会社が把握している場合、その問題への対処を並行して進める必要があります。再休職中も不当な扱いの調査・対処は継続し、職場環境の改善状況を本人に伝えながら、復帰時の不安を軽減する働きかけを続けることが重要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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