本採用可否を決める5つの判断軸と見送り時の伝え方

本採用可否を決める5つの判断軸と見送り時の伝え方 採用・定着
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「試用期間が終わるけど、正直このまま本採用していいのか迷っている」。そんな悩みを抱えながら、結局なんとなく本採用してしまった経験はないでしょうか。専任人事がいない企業では、評価基準もなく、伝え方もわからないまま判断を迫られることが少なくありません。この記事では、中途採用の試用期間終了時に本採用可否を判断するための5つの軸と、見送りを伝える際の実務的な方法を、法的リスクへの配慮も含めて解説します。

試用期間の本採用拒否は「解雇」にあたる

「試用期間中はいつでも切れる」は大きな誤解

中小企業の経営者や兼務人事担当者の方から「試用期間中だから、合わなければ辞めてもらえばいい」という声をよく聞きます。しかし、これは法律上の誤解です。1973年の最高裁判決(三菱樹脂事件)により、試用期間中の雇用は「解約権留保付き労働契約」と定義されています。平たく言えば、「一定の理由があれば解雇できる権利を留保した上での、れっきとした雇用契約」です。本採用拒否は解雇の一種として扱われます。

通常の解雇よりはやや広い裁量が認められるものの、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がなければ、本採用拒否は無効と判断されるリスクがあります。「なんとなく合わない気がした」という理由では、法的には通用しません。

14日を超えたら解雇予告手当が必要になる

労働基準法第20条により、試用開始から14日以内であれば解雇予告・予告手当は不要です。しかし、試用期間が1〜3か月に設定されている場合、終了時点での本採用見送りはほぼ例外なく14日を超えます。この場合、30日前の予告か、30日分の平均賃金相当の「解雇予告手当」の支払いが必要です。

たとえば、月給25万円の方を試用期間終了日に本採用見送りとする場合、即日見送りなら約25万円分の予告手当が発生します。金額的なインパクトを把握した上で、スケジュールを組むことが重要です。

記録がなければ正当性を主張できない

本採用拒否が有効とされるには、採用時点では知り得なかった問題が試用期間中に判明し、かつその問題に対して指導やフィードバックを行った記録が必要です。「言いました」「伝えました」という口頭の主張だけでは、労働審判やあっせんの場では通用しません。面談記録・業務評価シート・メールや書面での指導記録を残しておくことが、後からトラブルを防ぐ唯一の手段です。

中途採用の本採用可否を判断する5つの軸

軸1:スキル・業務遂行能力を客観的に評価する

まず確認すべきは、採用時に想定していた業務を実際に遂行できているかどうかです。「できている/できていない」を感覚ではなく、具体的な業務成果で判断します。たとえば「週次の報告書を期限通りに提出できているか」「担当顧客への対応件数と品質はどうか」など、数値や事実ベースで見ることが重要です。

注意点は、入社直後であることを考慮した上で評価することです。「もう少し時間があれば伸びる」なのか、「根本的なスキルが不足している」なのかを見極める必要があります。

軸2:職場への適応・協調性を見る

スキルと同様に重要なのが、チームや組織文化への適応です。具体的には以下のような観点で判断します:上司・同僚とのコミュニケーションに問題がないか、指示やフィードバックを素直に受け入れられるか、チームの方針や社内ルールを守ろうとしているか、などです。

ここで気をつけたいのは、「自分と考え方が違う」というだけでは本採用見送りの理由になりにくいことです。あくまで「業務や職場環境に支障が出ているかどうか」を基準にします。

軸3:勤怠・信頼性・誠実さを確認する

遅刻・無断欠勤・報告漏れの常態化など、勤怠面の問題は本採用見送りの合理的な理由になりやすい領域です。また、業務上の虚偽報告や経歴詐称が判明した場合も、「採用時には知り得なかった事実」として本採用拒否の根拠になります。

ただし、一度の遅刻を理由にするのは社会通念上相当とは言えません。複数回・複数の問題が重なっており、その都度指導していた記録があることが重要です。

軸4:メンタル面・ストレス耐性の適性を見極める

「業務スキルは問題ないが、なんか心配」という感覚的な不安を抱えるケースも多くあります。たとえば、プレッシャーがかかる場面で過度に萎縮する、小さなミスで長期間落ち込む、職場の変化に適応するのに極端に時間がかかる、といったサインです。

これらは「感情的な印象」に見えますが、職場適応やストレス耐性に関するアセスメントツールを活用することで、主観を排した客観的な評価が可能になります。感覚を言語化・数値化できれば、本採用判断の根拠として使えます。

軸5:採用条件・期待値とのギャップを整理する

採用時に提示したポジション・役割・期待値と、実際のパフォーマンスや言動にどれほどギャップがあるかを確認します。「経験者として採用したが、実際には基礎知識が不足していた」「マネジメント経験があると聞いていたが、実際にはチームを動かす力がなかった」といったケースは、本採用見送りの根拠になりやすいです。

このギャップを整理するためにも、採用時点で「試用期間中に何を確認するか」を明確にしておくことが理想です。後づけで基準を作ると、公平性・客観性を問われる可能性があります。

本採用見送りを伝える前に準備すること

タイミングと期間の計算を先に行う

本採用見送りを決断したら、まず「いつ伝えるか」を逆算します。前述の通り、試用期間終了日に即日見送りを告げると解雇予告手当が発生します。30日前に予告することで手当の支払いを回避できますが、その場合は試用期間が実質延長される形になるため、就業規則や雇用契約書の記載と矛盾しないか確認が必要です。

多くの場合、解雇予告手当を支払いつつ試用期間終了日に見送りを告げる形が、実務上もっとも多いパターンです。金額の計算(30日分の平均賃金)は事前に済ませておきましょう。

書面を必ず用意する

本採用見送りの通知は、口頭のみでは絶対にいけません。後から「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも、書面で交付します。通知書に記載すべき主な内容は以下の通りです:本採用見送りの事実、見送りの理由(具体的な事実に基づいて記載)、最終就労日、解雇予告手当の有無と金額です。

理由の記載が曖昧だと、後から「不当解雇だ」と主張された際に反論しにくくなります。試用期間中の指導記録を参照しながら、具体的に記載することが重要です。

離職票の扱いと退職理由の区分を確認する

本採用拒否は「会社都合退職」として処理されることがほとんどです。離職票の離職理由コードを誤って記載すると、ハローワークから訂正を求められることがあります。また、会社都合の場合、本人はすぐに失業給付を受給できます。この点も本人に正確に伝えることで、不必要なトラブルを防げます。社会保険・雇用保険の喪失手続きも漏れなく行いましょう。

見送りを伝える面談の進め方

場所・時間・同席者を事前に設計する

伝える場は、必ず個室で行います。他の社員に聞こえる環境は厳禁です。同席者は経営者または人事担当者のほか、記録係として別の担当者を1名加えることが望ましいです。面談時間は30分程度を目安に設定し、長引かせないことが双方にとって得策です。

また、面談はできる限り週の前半・午前中に設定します。本人が動揺した状態で週末に入ることや、業務の切りが悪いタイミングは避けましょう。

伝える内容・順番を決めておく

面談では、まず「本採用を見送る」という事実を明確に伝えます。あいまいな言い回しは本人を混乱させ、後から「そういう意味だとは思っていなかった」というトラブルに発展します。その後、理由を具体的に・冷静に説明します。感情的にならず、「業務上の事実」として伝えることが重要です。

次に、最終出社日・解雇予告手当・離職票の発行について説明し、書面を手渡します。本人から質問があれば誠実に答えますが、その場での回答が難しいものは「確認の上、改めて連絡します」と伝えて持ち帰ることも選択肢です。

面談後の社内フォローも忘れずに

本採用見送りは当事者だけの問題ではありません。同じチームで働いていたメンバーは「自分も同じように見送られるのでは」と不安を感じることがあります。退職の事実と経緯について、チームに対して適切な範囲で共有し、心理的安全性を保つコミュニケーションを行いましょう。個人情報に関わる詳細は伏せながらも、組織として丁寧に対応している姿勢を示すことが重要です。

試用期間を機能させる仕組みを入社前に作る

評価基準は入社時に本人と共有する

本採用判断で最も多いミスは、「何をもって合格とするか」を決めないまま試用期間に突入することです。試用期間終了が近づいてから評価基準を後づけで作っても、公平性・客観性を担保できません。

理想は、入社初日に「試用期間中に何を見るか」を本人と書面で合意しておくことです。スキル面・勤怠面・適応面の3軸でチェックリストを用意し、中間面談で進捗を確認します。これにより、万が一見送りとなった際も「事前に説明していた基準に基づく判断である」という客観的な根拠が生まれます。

中間面談で早期にフィードバックを行う

試用期間が3か月であれば、1か月半〜2か月目に中間面談を設けることを強くお勧めします。問題がある場合はこの時点でフィードバックし、改善を求めた記録を残します。「言いにくいから終わりまで黙っていた」では、見送り時に「突然言われた」と受け取られるリスクが高まります。

逆に言えば、中間面談で問題を伝え、改善の機会を与えた上で終了時点でも改善が見られなかった場合は、本採用見送りの正当性が格段に高まります。

まとめ

本採用可否の判断は、「なんとなく合わない」という感覚を出発点にしながらも、スキル・適応・勤怠・誠実さ・採用条件とのギャップという5つの軸で客観的に整理することが重要です。また、本採用拒否は法的に解雇の一種であるため、試用期間中の指導記録・書面整備・解雇予告手当の計算・離職票の処理といった実務対応を、感情的にならず一つひとつ丁寧に進める必要があります。

「判断の基準が曖昧なまま試用期間が終わってしまった」「見送りを伝える場面のシミュレーションができていない」という状況は、専任人事がいない環境では珍しくありません。ウェルセンス株式会社では、本採用判断の評価基準設計から、見送り時の書面作成・面談サポート・社内フォローまで、一連の流れを一緒に整えるご支援をしています。一人で抱え込まず、まずは現状をお聞かせください。

よくある質問

Q. 試用期間中であれば、どんな理由でも本採用を拒否できますか?

A. いいえ、できません。試用期間中の雇用は解約権留保付き労働契約であり、本採用拒否は解雇の一種として扱われます。「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。「なんとなく合わない」「雰囲気が違う」だけでは法的に通用しないため、具体的な事実と指導記録の積み重ねが不可欠です。

Q. 試用期間終了日に見送りを告げる場合、解雇予告手当は必ず必要ですか?

A. 試用開始から14日以内であれば解雇予告・予告手当は不要ですが、試用期間が1〜3か月に設定されている場合はこの期間を必ず超えます。終了日に即日見送りを告げる場合は、30日分の平均賃金に相当する解雇予告手当の支払いが必要です。金額を事前に計算した上で対応するようにしてください。

Q. 本採用見送りを口頭だけで伝えてしまいました。問題はありますか?

A. リスクがあります。口頭のみの場合、後から「そのような話はなかった」「違う内容で理解していた」といったトラブルに発展する可能性があります。できる限り速やかに書面(本採用見送り通知書)を作成・交付してください。記載内容は、見送りの事実・理由・最終就労日・解雇予告手当の有無と金額が基本です。

Q. 離職票の退職理由は「自己都合」と「会社都合」どちらにすればいいですか?

A. 本採用拒否は「会社都合退職」として処理されるケースがほとんどです。離職理由コードを誤ると、ハローワークからの訂正指摘を受けることがあります。また、会社都合の場合、本人は給付制限なしにすぐ失業給付を受け取れるため、本人にも正確に伝えることが重要です。不安な場合は社労士や専門家に確認することをお勧めします。

Q. 試用期間中に特にトラブルはなかったが、「この人では難しい」という感覚がある場合、どうすればいいですか?

A. まず、その「感覚」を具体的な事実に落とし込む作業が必要です。業務成果・コミュニケーション・勤怠・期待値とのギャップなど、5つの判断軸に照らして整理してみてください。それでも言語化が難しい場合は、ストレス耐性や職場適応に関するアセスメントツールを活用することも有効です。感覚的な判断のまま見送ると法的リスクが高まるため、専門家に相談しながら整理することをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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