時短勤務の終了手続き、書面で合意は必要?

時短勤務の終了手続き、書面で合意は必要? 組織運営
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「育児短時間勤務の期間がそろそろ終わるけれど、どのタイミングで、どんな書類を用意すれば良いのだろう」——時短勤務の終了手続きは、採用や退職と比べて情報が少なく、対応に迷う経営者・人事担当者が多い場面です。書面を残さずに口頭で済ませてしまい、後から「そんな話は聞いていない」とトラブルになるケースも少なくありません。この記事では、時短勤務の終了に必要な手続きを、法的根拠をふまえながら実務の流れとともに解説します。

時短勤務の「種類」によって終了手続きが変わる

時短勤務の終了手続きは、その時短がどんな根拠で始まったかによって大きく異なります。根拠を確認せずに「期間が過ぎたから終わり」と扱うと、契約違反や紛争の原因になります。

法定時短と会社規程による時短の違い

時短勤務には大きく分けて二種類あります。育児・介護休業法に基づく「法定時短」と、会社が独自に設けた「会社規程による時短」です。前者は法律が終了事由を定めていますが、後者は就業規則や個別の合意が根拠になるため、終了のルールも会社ごとに異なります。

種別 根拠 終了事由
育児のための短時間勤務 育児・介護休業法第23条 子が3歳に達するまで(会社が規程で延長することは可)
介護のための短時間勤務 育児・介護休業法第23条 対象家族1人につき利用開始から通算93日間(3回まで分割可)
休職復職後の時短(リハビリ勤務含む) 就業規則・労働契約 会社の規程・双方の合意による(法定期間なし)
本人申出による時短 労働契約・就業規則 合意した期間終了または双方合意による変更

最も注意が必要なのは「復職後の時短」と「期間不明確な時短」

メンタル不調などで休職した社員が復職する際に設ける時短勤務は、育児・介護休業法とは全く別の話です。根拠は就業規則または個別の労働契約にあり、終了の判断には主治医意見や産業医の所見が関係してきます。また、「本人から申し出があったので認めた」という形で始まった時短は、終了期日を最初に決めていないことも多く、後から終了させようとすると合意を得るのが難しくなります。自社の時短がどの類型に当たるかを、まず確認しましょう。

「法定期間が終われば自動終了」は誤り

育児短時間勤務は子が3歳に達した日で法定根拠が終わりますが、それだけで「明日から通常勤務に戻ってください」と告げるのは適切ではありません。実態として継続している場合は、個別の合意や変更手続きが必要です。

法定期間後も継続している実態がある場合のリスク

子が3歳を超えても時短を続けてきた場合、会社規程や個別合意によって時短が継続されていると見なされます。この状態で突然「法定期間は終わっているので通常勤務に戻す」と一方的に通知すると、労働条件の不利益変更として争われるリスクがあります。「法律上の義務はないが、契約上の権利は別にある」という点が見落とされがちです。

本人が「まだ続けたい」と言ったらどうするか

本人が終了に同意しない場合、強引に通常勤務へ戻そうとすることは避けてください。特に休職後の時短の場合は、健康状態の確認なしに変更を進めると、後日ハラスメントや安全配慮義務違反を問われるリスクがあります。まずは面談を重ね、本人の懸念を丁寧に聴き取り、主治医・産業医の意見をふまえて段階的に移行する形を検討するのが現実的な対処です。

書面による合意は必須か——労働契約法の原則

結論からいえば、時短勤務の終了に伴う労働条件の変更には、書面による合意の取得が実務上必須です。口頭のみでは「同意していない」と後から言われたときに反論できません

時短終了は「労働条件の変更」にあたる

時短勤務が終了すると、所定労働時間が延び、場合によっては給与も変わります。これは労働契約の内容を変更することであり、労働契約法第8条・第9条が適用されます。同法は「使用者は、労働者と合意することなく、労働契約を変更することができない」と定めており、合意なき変更は法律違反になります。

合意書に最低限記載すべき項目

合意書は難しい形式である必要はありませんが、以下の項目は必ず盛り込んでください。

  • 時短勤務の終了日(変更の発効日)
  • 変更後の所定労働時間・始業時刻・終業時刻
  • 変更後の賃金(手当を含む変更がある場合は明記)
  • 双方の署名・押印または電子署名・日付
  • (任意)これまでの経緯・合意に至った背景の概要

電子署名を用いた電子文書での取得も有効ですが、後日確認できるよう必ず保存してください。合意書は1部ずつ双方が保持するのが基本です。

合意書と労働条件通知書の違い

合意書は「変更に双方が同意した」ことを示す書類、労働条件通知書は「変更後の労働条件を使用者が通知した」書類です。両方を用意するのが望ましく、少なくとも労働条件通知書(または雇用契約書の変更覚書)を交付することは必須です。合意書だけでなく、変更後の条件を書面で示すことで、認識のずれを防ぐことができます。

面談はいつ・何を記録すればよいか

時短終了に向けた面談は、終了日の少なくとも1か月前を目安に始めるのが適切です。面談の記録は、後日トラブルになったときの重要な証拠になります。

面談のタイミングと回数の目安

法定時短(育児目的)の場合は、終了予定日の1〜2か月前に最初の面談を行い、本人の状況や意向を確認します。休職復職後の時短の場合は、主治医や産業医の意見をもとに終了時期を検討する必要があるため、医療情報の確認も含めて複数回の面談が必要になるケースが多いです。面談は最低2回——「終了の見通しを共有する回」と「具体的な条件を確定する回」——を分けて実施することをお勧めします。

面談記録に残すべき内容

面談後は、その日のうちに記録を作成する習慣をつけてください。記録に含めるべき内容は次のとおりです。

  • 面談の日時・場所・出席者
  • 会社側から伝えた内容(終了予定日・変更後の条件案)
  • 本人の発言・反応(同意・懸念・要望など)
  • 次回の面談日または合意書作成の予定
  • 記録作成者の氏名

メモ書き程度でも構いませんが、「誰が・いつ・何を言ったか」が後から読んでわかる形であることが重要です。感情的な表現は避け、事実をそのまま記録することを意識してください。

産業医・主治医の意見が必要なケース

休職後の時短を終了させる場合は、産業医や主治医の意見書を面談前に取得しておくことが強く推奨されます。会社が独断で「回復したと判断した」と進めると、安全配慮義務(労働契約法第5条)違反を問われるリスクがあります。産業医がいない場合(常時50人未満の事業場では選任義務がない)は、主治医に対して業務内容を具体的に伝えた上で意見を求めるか、外部の産業医サービスを活用することも選択肢です。医師の意見を軸に判断を進めることで、会社側の対応の妥当性を示すことができます。

就業規則に規定がない場合の対処法

就業規則に時短勤務の終了手続きが書かれていない場合でも、現在の案件をきちんと処理することと、規則を整備することの両方を同時に進める必要があります。

規程がない状態でのリスク

休職後のリハビリ勤務や試し出勤を「なんとなく運用してきた」という会社は少なくありません。この場合、終了の基準・手続きが明文化されていないため、トラブルが起きたときに会社側の対応の合理性を示しにくくなります。就業規則は常時10人以上の労働者を使用する事業場では作成・届出が義務ですが(労働基準法第89条)、10人未満の場合でも就業規則に準じるルールを整備しておくことは重要です。

今すぐできる暫定対処と中長期の整備

規程が整備されていない現状で、今まさに時短終了の案件を抱えている場合は、暫定的に「個別の合意書」で対応しつつ、並行して就業規則の整備を進めるという二段階の対応が現実的です。まず個別合意で目の前のケースを処理し、その後に「休職・復職後の時短勤務に関する規程」を就業規則に追記します。追記の際は、終了の基準(医師の意見・会社判断・本人の状態等)、手続きのフロー(面談回数・合意書の様式)、終了後の勤務条件の戻し方を明確に書き込むことがポイントです。

従業員規模・体制別の判断ポイント

産業医を選任している事業場(常時50人以上)は、復職後の時短終了にあたり産業医の関与を必ず求めてください。産業医がいない規模の会社では、外部の産業保健サービスや社会保険労務士に相談しながら手続きを進めることで、判断の根拠を確保することができます。兼務人事で専門知識が限られている場合は特に、判断の根拠を確保しながら進めることが重要です。

まとめ

時短勤務の終了手続きは、その時短がどんな根拠で始まったかによって必要な対応が変わります。法定時短(育児・介護)は期間満了で根拠がなくなりますが、その後も継続している実態があれば一方的な終了は契約違反になりえます。休職復職後の時短は医療情報の確認が欠かせません。いずれの場合も、時短の終了は所定労働時間・給与の変更を伴う「労働条件の変更」であり、書面による合意取得と労働条件通知書の交付が実務上必須です。就業規則に規程がない場合は、個別合意で目の前のケースを処理しながら、規程の整備を並行して進めることをお勧めします。

人事判断に迷う場面こそ、専門家への相談が確実な一歩になります。ウェルセンス株式会社では、中小企業の経営者・人事担当者からの人事労務・休職復職に関するご相談をお受けしています。個別ケースの対応方法や書類作成でお困りでしたら、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 育児短時間勤務は子が3歳になれば自動的に終了できますか?

A. 育児・介護休業法上の「法定義務」は子が3歳に達するまでですが、3歳以降も会社規程や個別合意で時短を継続してきた実態がある場合は、一方的に終了させることはできません。終了にあたっては本人との面談と書面による合意が必要です。「法定期間が終わった=自動終了」とはならない点にご注意ください。

Q. 時短終了の合意書は、会社が作った書式でよいですか?

A. 法律で定められた様式はなく、会社が独自に作成した書式で問題ありません。ただし、終了日・変更後の所定労働時間・変更後の賃金・双方の署名と日付は必ず盛り込んでください。記載漏れがあると後日「条件について合意していない」と争いになる可能性があります。

Q. 就業規則に時短終了の手続きが書かれていませんが、合意書だけで対応できますか?

A. 目の前のケースについては個別合意書で対応することは可能ですが、就業規則の整備も並行して進めることを強くお勧めします。規程がない状態が続くと、次回以降のケースでも同じ問題が繰り返されるほか、トラブルが起きたときに会社側の対応の合理性を示す根拠が乏しくなります。

Q. 休職後の時短勤務を終了させる際、産業医がいない場合はどうすればよいですか?

A. 常時50人未満の事業場は産業医の選任義務がありませんが、その場合は主治医に対して業務内容を具体的に伝えた上で意見を求めることが大切です。また、外部の産業保健サービスや社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めることで、判断の根拠を確保することができます。独断で終了を判断するのは安全配慮義務の観点からリスクがあります。

Q. 本人が時短終了に同意しない場合、会社は一方的に終了を進めることができますか?

A. 原則として、本人の同意なく労働条件を変更することは労働契約法上認められません。法定時短の期間が明確に終了しており、それ以上の継続合意もない場合は会社判断で戻すことが可能なケースもありますが、判断が難しい場面では専門家に相談することをお勧めします。強引な対応はハラスメントや安全配慮義務違反として争われるリスクがあるため、面談を重ねて合意形成を丁寧に進めることが最善策です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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