目標達成できない社員への対応|4つのパターン別関わり方

目標達成できない社員への対応|4つのパターン別関わり方 組織運営
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「また今月も未達か……」と画面を見つめながら、どう声をかけるべきか迷った経験はありませんか。注意はしてきた。面談もした。それでも目標達成できない状況が変わらないとき、次の一手が見えなくなるのが正直なところだと思います。

目標を達成できない社員への対応は、「厳しく叱れば解決する」問題ではありません。原因が能力不足なのか、意欲の問題なのか、あるいはメンタル不調が隠れているのかによって、とるべき対応はまったく異なります。対応を誤ると、改善どころか休職・離職・法的トラブルにつながるリスクもあります。

この記事では、目標達成できない社員を4つのパターンに分類し、それぞれに適した関わり方と、法的に有効な記録の残し方までを実務目線で解説します。

まず「なぜ達成できないのか」を4パターンで見極める

目標未達への対応で最初にすべきことは、原因のパターン分けです。同じ「未達」でも、原因が異なれば有効な対応策はまったく変わります。感情的に「なぜできないんだ」と問い詰める前に、どのパターンに当てはまるかを冷静に見極めることが出発点です。

能力不足型

スキルや知識が仕事の水準に追いついていないケースです。本人はやろうとしているが、やり方がわからない・技術が不足しているという状態が続きます。言い訳の内容に「やり方がわからなかった」「どう進めればよいか判断できなかった」という表現が繰り返し出てくる場合は、このパターンを疑いましょう。

意欲・態度型

能力はあるのに、取り組みが消極的・言い訳が多い・周囲のせいにするパターンです。「忙しかった」「他の業務が優先だった」など、外部要因への責任転嫁が続く場合は意欲・態度の問題が中心にある可能性があります。この場合は指導と動機づけのアプローチが有効です。

環境・マネジメント型

目標設定そのものが非現実的だった、業務量が過多だった、必要な情報や権限が与えられていなかったなど、職場側の問題が原因になっているケースです。本人だけを責めても状況は改善せず、まず環境を整えることが必要です。

メンタル不調・健康問題型

うつ病・適応障害・発達障害の特性などが影響しているケースです。遅刻やミスの増加、急激なパフォーマンス低下、表情や言動の変化が見られる場合はこのパターンを疑う必要があります。詳しくは後述しますが、このパターンへの対応を誤ると、会社が安全配慮義務違反を問われるリスクがあります。

パターン主なサイン最初の対応方針
能力不足型「やり方がわからなかった」が多いスキル習得・OJT・目標の再設定
意欲・態度型外部要因への責任転嫁が繰り返す指導の記録化・業務改善計画の締結
環境・マネジメント型複数の社員で同様の問題が起きている業務量・目標設定の見直し
メンタル不調型急激な変化・表情の曇り・ミスの急増受診勧奨・産業医・専門家との連携

言い訳を繰り返す社員への具体的な関わり方

言い訳が続く社員への対応で有効なのは、「言い訳を否定する」ことではなく、「言い訳の余地をなくす合意を作る」ことです。面談の場で双方が納得した目標・期限・支援内容を書面で残すことが、改善を促す実務的な起点になります。

事実ベースの面談を設計する

感情的なやりとりを避けるためには、面談前に「具体的な事実」を整理しておくことが重要です。「いつ・何を・どのレベルで達成するはずだったか」「実際の結果はどうだったか」「本人はどう説明したか」の3点をメモしてから臨みましょう。面談中は「なぜできなかったのか」よりも「次回どうするか」に焦点を当てると、建設的な対話が生まれやすくなります。

業務改善計画を文書で合意する

欧米ではPIP(Performance Improvement Plan)と呼ばれる手法ですが、日本の労務実務においても「指導計画+記録」の運用は重要な実務慣行として定着しています。法的な定義はありませんが、「何を・いつまでに・どのレベルで達成するか」「会社はどのようなサポートを提供するか」を書面で合意・交付し、定期的な進捗確認の記録を残すことで、後の法的対応の根拠にもなります。

重要なのは、会社からの一方的な通知ではなく、本人が内容を確認したうえでサインする形式にすることです。「押しつけられた」ではなく「自分も合意した」という事実を作ることが、本人の当事者意識を高める意味でも有効です。

指導の記録に何を書くべきか

「口頭で何度も注意した」は、法的・実務的な意味での「指導の積み重ね」として機能しないことがほとんどです。面談記録には少なくとも以下の内容を残しましょう。

  • 面談日時・場所・参加者
  • 確認した事実(目標値・実績値・具体的な行動の問題点)
  • 会社側が伝えた改善指示の内容
  • 本人の発言・回答
  • 次回の確認期日と達成目標

面談後は内容をメールで本人に送付し、「内容に相違があれば返信してください」と一文添えておくと、後日の「言った言わない」を防ぐ実務的な防衛策になります。

メンタル不調を見逃さないための確認ポイント

言い訳や目標未達の慢性化が、意欲・能力の問題ではなくメンタル不調のサインである場合があります。このケースを見落として厳しい指導を続けると、休職・労務トラブル・最悪の事態につながるリスクがあり、会社は安全配慮義務違反(労働契約法第5条)を問われる可能性もあります。

メンタル不調のサインを具体的に把握する

以下のような変化が短期間で複数現れた場合は、能力・意欲の問題ではなくメンタル不調を疑うことが重要です。

  • 以前はできていた業務でのミスが急増した
  • 遅刻・早退・欠勤が増えた
  • 表情が暗くなり、コミュニケーションが極端に減った
  • 以前とは別人のように業務スピードが落ちた
  • 「疲れた」「消えてしまいたい」などの発言が出た

受診勧奨のタイミングと進め方

不調のサインが見られた場合、まずは1対1で「最近、体調はどうですか」と声をかけることから始めましょう。「精神科に行け」という直接的な言い方は本人のプライドを傷つけることがあるため、「専門家に相談することで楽になる場合もあります」という言い方で産業医や医療機関への相談を勧める形が適切です。

産業医が選任されている場合(従業員50名以上の事業所では選任義務あり)は産業医面談を活用してください。50名未満の場合は、地域の産業保健総合支援センターや、外部のメンタルヘルス支援サービスを活用する方法があります。

メンタル不調が疑われる社員への指導における注意点

メンタル不調が疑われる状況での強い叱責・目標の押しつけ・周囲の前での注意は、本人の状態を悪化させるだけでなく、パワーハラスメントの認定要件(2020年施行の改正労働施策総合推進法)にも抵触するリスクがあります。「業務上の適正な指導」はパワハラに該当しませんが、「人格否定・必要以上の叱責」は該当しうると定義されています。不調が疑われる時期は指導より観察・配慮を優先し、専門家と連携してから方針を決める慎重さが必要です。

法的に有効な記録の残し方と降格・解雇の判断基準

能力不足や成績不良を理由とした解雇が法的に認められるためには、「繰り返しの指導・改善機会の付与・相当な猶予期間」が必要です。この要件を満たしていない場合、裁判例では不当解雇と判断されやすい傾向があります。記録の有無が、会社を守る最大の防衛線になります。

記録化の基本ルールと実務的な運用

記録として有効に機能させるためには、単に「注意した事実」を書くだけでは不十分です。「いつ・誰が・何を・どのように伝えたか」「本人の反応・回答は何だったか」「次回までの改善目標と確認期日は何か」の3点がセットで記録されていることが重要です。

小規模企業では口頭文化が強く、記録が残らないまま「指導した」と思い込むケースが多く見られます。面談後にメールで内容を送付する習慣を組織的に作ることが、もっとも実効性の高い対策です。

降格・解雇を検討する前の必須確認事項

降格・減給・解雇を実施する場合、就業規則に明文規定がなければ有効性を問われます。まず自社の就業規則に「成績不良」「業務命令違反の反復」が懲戒事由として明記されているかを確認してください。規定がない場合は、人事施策の変更前に就業規則の整備を優先する必要があります。

また、降格・解雇の検討に入る前に「書面での指導を複数回行ったか」「改善の機会と期間を付与したか」「本人が改善の努力をしたかどうかを確認したか」の3点を必ず振り返ってください。この積み重ねが法的な正当性の根拠になります。

従業員規模別の対応リソース

20〜49名の事業所では産業医の選任義務はありませんが、地域の産業保健総合支援センターが無料で相談に応じています。50名以上になると産業医の選任が義務となり、メンタル不調社員へのストレスチェック制度も適用されます。自社の規模に応じて活用できるリソースを把握しておくことが、有事の際の対応速度を大きく左右します。

周囲の社員への影響を最小化するマネジメントの視点

目標未達・言い訳を繰り返す社員を放置すると、真面目に取り組む社員の不満やモチベーション低下につながります。問題社員への対応は個人の課題解決であると同時に、チーム全体のパフォーマンス管理の問題です。

「見て見ぬふり」が組織に与えるダメージ

「なぜあの人は達成しなくても何もないのか」という疑問が組織内で広がると、目標管理そのものへの信頼が失われます。真面目に頑張っている社員が「頑張っても頑張らなくても同じだ」と感じ始めたとき、組織の生産性は静かに、しかし確実に低下します。問題を曖昧にしたまま放置することは、何もしないことではなく、組織に対してネガティブなメッセージを送り続けることと同義です。

マネージャー・経営者が発すべきメッセージ

個別の指導内容を公開する必要はありませんが、「目標に対して真剣に向き合うことを組織として大切にしている」という姿勢は、言葉と行動の両方で示す必要があります。問題社員への対応が進んでいる事実を、適切な範囲で周囲に伝えることで、「ちゃんと見ている」という安心感を組織に与えることができます。

まとめ

目標を達成できない社員への対応は、「なぜできないのか」の原因を見極めることから始まります。能力不足・意欲の問題・環境要因・メンタル不調の4パターンによって、有効な対応策はまったく異なります。共通して重要なのは、「口頭での注意で終わらせず、書面で指導の事実を積み重ねる」ことです。記録がなければ、指導の事実は法的にも実務的にも存在しないものと同じです。

また、言い訳や不調の背景にメンタル不調が隠れている可能性を常に意識してください。見落としたまま強い指導を続けると、会社が安全配慮義務違反(労働契約法第5条)を問われるリスクがあります。

「どのパターンに当てはまるのか判断できない」「記録の残し方に自信がない」「指導とパワハラの線引きが不安」といった場合、ひとりで抱え込まずに専門家に相談することが最善の選択です。ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・兼務人事担当者からのご相談を承っています。個別の状況に合わせた対応方針を一緒に整理するところから始められますので、気軽にお声がけください。

よくある質問

Q. 口頭で何度も注意してきましたが、記録がありません。今から記録を始めても意味はありますか?

A. 今からでも記録を始めることに十分な意味があります。過去の指導記録がなくても、これ以降の面談・指示・確認を書面で残し続けることで「指導の積み重ね」を作ることができます。今後の面談後はメールで内容を本人に送付し、改善目標と期日を明示した文書を交付するところから始めましょう。記録がある期間の指導が蓄積されれば、それが法的対応の根拠になります。

Q. 目標未達を理由に解雇することはできますか?

A. 可能ですが、法的に有効と認められるためにはハードルがあります。裁判例では、成績不良を理由とした解雇には「繰り返しの指導・改善の機会提供・相当な猶予期間」が必要とされています。また、就業規則に「成績不良」が懲戒事由として明記されているかの確認も必須です。記録のない状態で突然解雇した場合、不当解雇と判断されるリスクが高くなります。解雇を検討する前に、専門家への相談を強くお勧めします。

Q. 厳しく指導するとパワハラになる可能性が心配です。どこが境界線ですか?

A. 2020年施行の改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)では、「業務上の適正な指導」はパワハラに該当しないと整理されています。ただし「人格を否定する発言」「周囲の前での繰り返しの叱責」「必要以上の長時間拘束」などはパワハラに該当しうるとされています。指導の内容・方法を記録化することは、本人の改善を促すだけでなく、「適正な指導を行った」という会社側の証拠にもなります。判断に迷う場面では指導内容を記録し、専門家に確認する習慣を持つことが有効です。

Q. 言い訳が多い社員がメンタル不調なのか、単に怠慢なのかを見分けるにはどうすれば良いですか?

A. 重要なのは「変化があったかどうか」です。以前できていた業務でのミスが急増した、遅刻や欠勤が増えた、表情や会話の様子が短期間で変わったなどは、メンタル不調のサインである可能性があります。一方、入社当初から一貫してパフォーマンスが低い・特定の業務だけに問題が集中しているケースは能力・意欲の問題が中心の可能性があります。判断が難しい場合は、まず1対1で体調確認の対話を設け、必要に応じて産業医や外部の専門家に相談することをお勧めします。

Q. 産業医がいない30名規模の会社です。メンタル不調が疑われる社員への対応をどこに相談すれば良いですか?

A. 従業員50名未満の事業所では産業医の選任義務はありませんが、いくつかの相談窓口があります。まず、各都道府県にある「産業保健総合支援センター」では、中小企業向けに無料で産業保健や労務に関する相談を受け付けています。また、ウェルセンス株式会社のような外部のメンタルヘルス・人事労務支援サービスを活用することで、産業医がいなくても専門的なサポートを受けることができます。問題が深刻化してからではなく、「少し気になる」段階での早期相談が対応コストを最小化します。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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