復職予定日の朝、9時を過ぎても本人が現れない。電話しても出ない。連絡もない。——そのとき、あなたはどう動けばいいのか。「とにかく電話し続けるしかない」「もう解雇していいのか」「放置したら何か問題になるのか」。専任の人事担当がいない職場では、誰も教えてくれないまま時間だけが過ぎていくことがあります。この記事では、復職当日の無断欠勤が起きたときに会社がとるべき対応を、初動から法的手続き、再発防止まで順を追って解説します。
復職当日の無断欠勤、まず何をするか
復職予定日に連絡も出勤もない場合、会社が最初にすべきことは「記録を残しながら本人への連絡を試みること」です。感情的に動く前に、以下のフローで初動を固めてください。
当日~24時間以内の連絡手順
まず本人の携帯電話・固定電話に電話し、応答がなければ留守番メッセージを残します。次にメールやSMSなど文字で記録が残る方法でも連絡します。いずれも「復職予定日であること」「会社から連絡していること」「折り返しを求めていること」の3点を伝えます。連絡した日時・手段・内容を必ずメモしてください。この記録が後の法的対応の根拠になります。
24~72時間以内に緊急連絡先への確認を行う
本人と連絡が取れない場合は、採用時に登録された緊急連絡先(家族など)に状況を伝えます。ただし、連絡先への問い合わせは「安否確認のための最低限の情報共有」にとどめ、病状や休職理由の詳細を話すことは避けてください。個人情報保護の観点から、家族への情報開示には範囲の配慮が必要です。
書面での催告を準備する
電話・メールで連絡が取れない状態が続く場合(目安として3営業日以上)、書面による出頭催告を検討します。配達証明付きの書留郵便で、「〇月〇日までに出勤または連絡がない場合は就業規則の規定に基づき対応する」旨を明記した文書を送付します。この書面の送付記録が、後に就業規則上の手続きを進める際の証拠になります。
「無断欠勤だから解雇できる」は誤解。法的リスクを確認する
無断欠勤が発生したからといって、即日または数日での解雇は原則として認められません。解雇の有効性は、日数ではなく「会社がどれだけ誠実に対応したか」の記録で判断されます。
解雇権濫用法理が会社の行動を縛る
労働契約法第16条は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない解雇は無効」と定めています。無断欠勤の日数が長くても、会社が連絡の試みを十分に行っていない、就業規則上の手続きが踏まれていない、といった場合は解雇が無効と判断されるリスクがあります。特にメンタルヘルス不調による休職者の場合、「使用者として合理的配慮を尽くしたか」が裁判所や労働審判で厳しく問われます。
就業規則の「自然退職」条項の確認が先決
多くの就業規則には「休職期間満了時に復職できない場合は退職とする」という自然退職条項が設けられています。ただし、「復職予定日に出勤しなかった」ことが「復職できない状態」にあたるかどうかは、条項の文言と実態によって異なります。曖昧な条項のまま「自動的に退職扱い」にすると、後日、退職の効力をめぐり紛争になる可能性があります。就業規則を手元に出して、条項の文言を必ず確認してください。
就業規則が整備されていない会社は特に注意
就業規則がない、または休職・復職に関する規定が欠けている場合、会社側の対応の根拠が非常に弱くなります。このような場合は、社会保険労務士や弁護士に相談し、現在の状況をどう整理するかを確認することを強くすすめます。
病状悪化か就労意欲の問題か、状態の見極め方
復職当日に来られなかった理由が「再発・病状悪化」なのか「意欲の問題」なのかは、会社側が一方的に判断することはできません。判断を焦ると、ハラスメントや病状悪化につながるリスクがあります。
「なぜ来なかったのか」を確認する前に会社がすべきこと
本人と連絡が取れた段階で、責める口調を避け「体調はどうか」という安否確認から入ることが重要です。「なぜ来なかったのか」という問いかけは必要ですが、それよりも先に「今の状態を把握する」姿勢が求められます。会社の担当者が感情的になりやすい場合、連絡役を直属の上司ではなく総務担当や第三者に変えることも有効です。
主治医との連携を焦らない
「主治医から復職可能の診断書が出ていたのに、なぜ来られないのか」と感じる担当者も多いですが、主治医への直接照会は本人の書面による同意がなければ行えません(個人情報保護法および医師の守秘義務)。まずは本人を通じて主治医に状況を伝えてもらうよう求め、必要に応じて「主治医との情報共有に関する同意書」を取得した上で連携を進めます。
産業医がいない場合の対応
従業員50名未満の事業場には産業医の選任義務がありません。そのような職場では、地域の産業保健総合支援センター(各都道府県に設置)を活用する方法があります。相談員が無料でアドバイスを提供しており、会社側・労働者側どちらの立場でも利用できます。
再休職・退職・継続雇用、判断のための分岐整理
本人と連絡が取れた後、状況に応じて「再休職・退職・継続雇用」のいずれかを選択することになります。どれを選ぶかは会社が一方的に決めるのではなく、状況と本人の意思を確認しながら進めることが原則です。
| 状況 | 推奨される対応 | 注意点 |
|---|---|---|
| 病状が再悪化している | 再休職を検討(就業規則の休職条項を確認) | 休職期間の残日数・通算規定を確認する |
| 本人が退職を希望している | 退職手続きを進める | 強迫・誘導と受け取られない配慮が必要 |
| 本人が復職を希望している | 復職日の再設定・段階的復職を検討 | 復職条件(主治医・産業医の意見)を再確認する |
| 連絡がとれないまま長期化 | 書面催告の後、就業規則に基づく手続きへ | 手順の記録を残してから進める |
再休職を選ぶ場合の確認事項
再休職を認める場合は、就業規則上の「休職期間の通算規定」を必ず確認します。「同一または類似の傷病による休職は通算する」と定めている会社では、残りの休職可能期間が短くなっているケースがあります。また、再休職に入る前に「復職に向けた条件(主治医の診断書・職場環境の調整など)」を文書で合意しておくことが、次の復職をスムーズにするための実務的なポイントです。
退職・解雇を選ぶ場合のリスク管理
自然退職扱いや解雇を進める場合は、以下のすべてが揃っていることを確認してください。就業規則に明文の根拠条項があること、会社が誠実に連絡・催告を行った記録があること、本人が長期間(目安として2週間以上)無断欠勤を継続しており、連絡催告に対して応答がないこと。これらが揃っていない状態での解雇・自然退職処理は、労働審判や不当解雇訴訟のリスクを高めます。
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再発を防ぐための復職前プロセスの整備
復職当日の無断欠勤が起きる背景には、多くの場合「復職前のプロセスが不十分だった」という構造的な問題があります。次の復職に備えて、プロセスを整備することが根本的な対策になります。
復職判断を「診断書1枚」に頼らない
主治医の復職可能診断書は、「日常生活が送れる水準に回復した」という医学的判断であり、「その職場環境・業務負荷に耐えられる」という保証ではありません。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下「職場復帰支援の手引き」)では、復職判断には「職場の状況を踏まえた総合的な評価」が必要と示しています。会社側も診断書受領後に面談を設け、業務内容・出退勤のルール・フォロー体制を本人と確認することが重要です。
試し出勤制度を就業規則に位置づける
「職場復帰支援の手引き」が推奨する試し出勤(模擬出勤・通勤訓練・試験出勤)は、正式復職前に職場への適応を段階的に確認できる有効な仕組みです。ただし、就業規則上に位置づけがない場合、試し出勤中の労災扱いや賃金の有無があいまいになります。導入する場合は就業規則や復職支援規程に明記し、本人との書面合意を取ることが必要です。
復職後フォローアップの仕組みを事前に決めておく
復職後の最初の数ヶ月は再発リスクが高い時期です。「週1回の上司との面談を3ヶ月継続する」「業務量は最初の1ヶ月は通常の6割程度にする」など、フォローアップの具体的なルールを復職前に合意しておくことで、「また来られなかった」という事態を未然に防ぐことができます。
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まとめ
復職当日の無断欠勤は、担当者が最も困惑する人事対応のひとつです。焦って解雇・退職処理を急ぐと法的リスクを抱え、逆に放置すると状況が長期化します。まず記録を残しながら本人への連絡を試みること、就業規則の条項を確認すること、病状悪化の可能性を排除しないこと——この3点が初動の原則です。その上で、再休職・退職・継続雇用のどの選択肢を取るにも、手順と根拠の記録が会社を守る盾になります。
ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・担当者からの「今、どう動けばいいのか」という相談を受け付けています。復職対応の初動確認から就業規則の整備、再発防止の仕組みづくりまで、実務に沿った支援が可能です。判断に迷う場面が出てきたら、まず気軽にお問い合わせください。
よくある質問
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。
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