無期転換ルール5年対応|申込権発生前にやるべき4つの契約管理

無期転換ルール5年対応|申込権発生前にやるべき4つの契約管理 労務管理
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「あのパートさん、もう何年いるんだろう?」と思ったとき、すぐに答えられますか?雇用開始日や更新回数を正確に把握していなければ、気づかないうちに無期転換申込権が発生しているかもしれません。無期転換ルールは企業規模を問わず適用され、対応が遅れるほど選択肢が狭まります。この記事では、申込権が発生する前に経営者・兼務人事担当者がやるべき4つの契約管理を、実務の落とし穴とあわせて解説します。

無期転換ルールとは何か、まず正確に理解する

無期転換ルールとは、同一の使用者との有期労働契約が通算5年を超えた場合、労働者が申し込めば無期労働契約に転換されるという制度です(労働契約法第18条)。「申込権」は条件を満たした瞬間に自動発生しますが、転換そのものは労働者が申込みをして初めて効力が生じます。ただし、申込みがあれば使用者は拒否できません。

「5年を超えた」とはどのタイミングか

通算期間のカウントは、同一の使用者との有期労働契約の合計期間で判断します。たとえば、1年契約を5回更新した場合、6年目の契約が始まった時点ではなく、通算期間が5年を「超えた」契約期間中に申込権が発生します。1年契約を5回更新すれば通算5年となり、次の更新(6年目の契約)が始まった日から申込みが可能になります。週3日勤務のパートタイマーであっても、勤務日数・時間は関係なく、契約期間の通算で判断されます。

中小企業にも例外はない

「うちは小さいから関係ない」という認識は誤りです。無期転換ルールには従業員数や企業規模による適用除外はなく、有期雇用労働者が1人でも条件を満たせば対象になります。パート・アルバイト・契約社員・嘱託社員など、雇用形態の名称にかかわらず、期間の定めのある労働契約であれば対象です。

無期転換後の労働条件は「正社員化」ではない

無期転換後の労働条件は、別段の定めがない限り転換直前の有期契約と同じでよいとされています(労働契約法第18条第2項)。つまり、週3日・時給制のパートタイマーが無期転換されても、勤務日数・賃金体系を変える必要は原則としてありません。ただし、パートタイム・有期雇用労働法に基づく同一労働同一賃金の観点から、正社員との待遇差に合理的な理由があるかどうかは別途確認が必要です。

申込権が発生する前にやるべき4つの契約管理

申込権が発生してからでは、企業に与えられる選択肢はほぼ「受け入れる」のみです。発生前であれば、雇用継続の方針や契約条件の整備など、複数の手を打てます。以下の4つを順に確認・対応してください。

在籍者の通算契約期間を一覧で把握する

まず最初に取り組むべきは、現在在籍しているすべての有期雇用労働者について、雇用開始日・更新回数・通算契約期間を一覧化することです。感覚で「あの人は長い」と認識しているだけでは管理とは言えません。雇用開始日が古い順に並べ、通算期間が4年を超えている人を「要注意リスト」として抽出します。契約書のコピーが残っていない場合は、給与台帳や社会保険の資格取得日を参照して近似値を算出し、原本を探す作業と並行させます。

契約書の記載内容を現行の法令水準に合わせる

毎回「日付だけ変えてコピー」している契約書は、法的リスクの温床です。2024年4月1日施行の労働基準法施行規則改正により、有期雇用労働者への書面明示事項が追加されました。更新時にも以下の3点を明示する義務があります。

  • 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)がある場合はその内容
  • 無期転換申込機会があること
  • 無期転換後の労働条件

既存の有期雇用労働者の次回更新時から適用されるため、現在使用している契約書のひな形を早急に見直す必要があります。

更新上限条項の設定と適切なタイミングを確認する

「更新は最大3回まで」「通算契約期間は3年を上限とする」といった更新上限条項(上限条項)を契約書に盛り込むこと自体は合法です。ただし、有効性が認められるためには、当初の契約締結時から明示されていること、労働者が十分に理解・同意していることが必要です。長期間にわたって更新を繰り返してきた後に突然「次回で終了」と告げる形での不更新条項の追加は、雇止め法理(労働契約法第19条)に抵触するリスクが高く、雇止め無効と判断されるケースがあります。上限条項は「これから新しく採用する人」から適用するのが安全な運用です。

「5年になる前に雇い止め」は危険な選択肢

申込権の発生を避けるために通算5年に達する前に雇い止めをするという対応は、雇止め法理(労働契約法第19条)に引っかかるリスクが非常に高く、推奨できません。

雇止め法理が適用される条件

労働契約法第19条は、有期労働契約が反復更新されてきた実態がある場合や、労働者が更新を合理的に期待できる状況である場合、客観的に合理的な理由および社会通念上の相当性がなければ雇止めを無効とするルールです。たとえば、5年間毎年更新してきた実績がある人を「5年目の終わりで打ち切る」場合、「無期転換を避けるためだけの雇止め」とみなされる可能性が高く、裁判になれば雇止め無効・地位確認が認められるリスクがあります。

クーリング期間を意図的に利用する場合の注意点

有期契約が終了してから次の契約開始まで6ヶ月以上の空白期間(クーリング)があれば、通算期間はリセットされます。ただし、クーリングを意図的・常態的に利用して無期転換を回避する運用は、公序良俗違反や権利濫用として問題になりえます。また、業務が実質的に継続している状態でクーリングだけ挟むケースは、偽装的なクーリングとして無効とされるリスクもあります。

申込みがあったときの対応フロー

無期転換の申込みを受けた場合、使用者はこれを拒否できません。拒否した場合でも、申込みがあった時点で法律上は無期労働契約が成立します。パニックにならないよう、あらかじめ社内の対応フローを整えておくことが重要です。

申込みを受けてから行うべき手続き

申込みを受けたら、まず転換後の労働条件を文書で確認・通知します。転換直前の有期契約の条件がそのまま引き継がれますが、別段の定め(就業規則の「無期転換社員」に関する規定など)があればそれが適用されます。就業規則に無期転換社員の区分と労働条件が定められていない場合、転換後の処遇が曖昧になります。就業規則の整備が先決です。

無期転換後の雇用管理の考え方

無期転換した労働者は「期間の定めのない労働契約」になるため、解雇するには解雇の4要件を満たす必要があります。一方で、勤務日数・職務内容・賃金体系は転換前と同一でよいため、実務上の変化は少ない場合がほとんどです。重要なのは、就業規則に「無期転換パートタイマー」などの雇用区分を設け、適用される規定を明確にしておくことです。

確認項目 対応が必要な場合 対応内容
通算契約期間の把握 台帳管理がない 雇用開始日・更新歴を一覧化
契約書の記載内容 2024年4月以降の更新で未対応 明示義務3項目を追記したひな形に更新
更新上限条項 新規採用者向けに設定したい 初回契約時から上限を明示
就業規則 無期転換社員の区分がない 雇用区分と適用条件を新設

対応が進まない背景にある「兼務人事あるある」

専任人事がいない中小企業で無期転換への対応が遅れる背景には、構造的な理由があります。問題は担当者の能力ではなく、仕組みと情報の問題です。

「誰かがやっているはず」という思い込み

経営者は「総務が管理しているだろう」、総務担当者は「社労士が教えてくれるだろう」と互いに依存しているケースが少なくありません。顧問社労士がいても、企業側から情報を提供しなければ個別の対応は難しいのが実情です。誰が責任者かを明確にし、少なくとも年に一度、在籍する有期雇用者の通算期間を確認する仕組みをつくることが出発点です。

「今は繁忙期だから後で」が積み重なるリスク

無期転換ルールは、対応しなかったからといってすぐに行政指導が来るわけではありません。しかし申込権が発生した後に何も準備ができていない状態で申込みを受けると、就業規則の未整備・契約書の不備・待遇設計のなさという三重の問題が一気に表面化します。繁忙期を理由に先送りにしていると、気づいたときには選択肢がない状態になります。

まとめ

無期転換ルールは企業規模を問わず適用され、通算5年を超えた時点で申込権が自動発生します。申込みがあれば拒否はできないため、発生前の契約管理が唯一の実効ある対策です。やるべきことは大きく4つ、在籍する有期雇用者の通算期間の一覧化、契約書ひな形の2024年対応版への更新、新規採用者への更新上限条項の明示、そして無期転換後の処遇を定めた就業規則の整備です。「5年になる前に雇い止め」という対応は雇止め法理のリスクが高く、推奨できません。

ウェルセンス株式会社では、専任人事がいない中小企業の人事労務課題に対して、経営者・兼務担当者の目線で一緒に整理・対応の仕組みをつくるサポートを行っています。「自社の有期雇用者が何人対象になるか確認したい」「契約書のひな形を見直したい」「無期転換申込みを受けたがどう対応すべきか」といったご相談から、お気軽にどうぞ。

よくある質問

Q. パートタイマーが週2〜3日勤務でも5年カウントの対象になりますか?

A. はい、対象になります。無期転換ルールの通算5年は勤務日数や労働時間ではなく、有期労働契約の期間の合計で判断します。週1日のアルバイトであっても、同一の使用者との有期契約が通算5年を超えれば申込権が発生します。

Q. 無期転換申込みを口頭で断った場合、どうなりますか?

A. 法律上、申込みがあった時点で無期労働契約は成立します(労働契約法第18条)。使用者が口頭・書面のいずれで断ったとしても、拒否の意思表示に法的効力はなく、無期転換は有効に成立しているとみなされます。拒否を続けると、労働審判や訴訟に発展するリスクがあります。

Q. グループ会社間で異動した場合、通算期間は引き継がれますか?

A. 原則として、通算期間は「同一の使用者」との契約に限られます。法人格が別であれば異なる使用者とみなされ、通算されません。ただし、実態として同一の指揮命令関係にある場合や、出向元・出向先の関係によっては判断が複雑になることがあります。グループ内での人事異動が多い企業は個別に専門家へ確認することをお勧めします。

Q. 2024年4月以前に締結・更新した契約書は今すぐ作り直す必要がありますか?

A. 既に締結・完了した契約書を遡って修正する義務はありません。ただし、2024年4月1日以降に行う更新や新規締結からは、新たな明示義務(更新上限・無期転換申込機会・転換後の労働条件)が適用されます。次回の更新タイミングまでに、使用しているひな形を改訂しておくことが必要です。

Q. 無期転換後、業績悪化を理由に解雇することは可能ですか?

A. 無期転換後は期間の定めのない労働契約になるため、解雇するには労働契約法が定める解雇権濫用法理(客観的に合理的な理由・社会通念上の相当性)を満たす必要があります。業績悪化による整理解雇であれば、いわゆる整理解雇の4要素(人員削減の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続きの妥当性)に照らした検討が必要です。有期契約のときより解雇のハードルは高くなると理解してください。

【監修】ウェルセンス株式会社
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