リファレンスチェックは違法になる?適法な実施方法とは

リファレンスチェックは違法になる?適法な実施方法とは 労務管理
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「採用したばかりの社員が、面接では見えなかった問題を抱えていた」——中小企業では、1人の採用ミスが組織全体を揺るがすことがあります。そこで注目されるのがリファレンスチェック(前職・関係者への照会)ですが、「応募者に無断で前職の会社に電話してもいいのか」「個人情報保護法に違反しないか」という不安から、実施に踏み出せない経営者・人事担当者も多いのが現状です。結論からいえば、適切な同意取得と質問内容の限定を守れば、リファレンスチェックは適法に実施できます。この記事では、中小企業が安心して実施できる具体的な手順と注意点を解説します。

リファレンスチェックが「違法」になるケースとは

リファレンスチェック自体は法律で禁止されていません。ただし、実施の方法によっては個人情報保護法・職業安定法・プライバシー権の侵害として法的責任を問われることがあります。まずは「何が問題になるのか」を整理しましょう。

本人に無断で現在の在籍先へ問い合わせる

最もリスクが高いのが、転職活動中であることを現職の会社に知られたくない応募者に無断で、在籍中の会社へ連絡するケースです。これにより応募者が解雇・降格などの不利益を被った場合、プライバシー侵害として民事上の損害賠償請求の対象になりえます。「応募者が履歴書に書いていた会社だから聞いてもいいだろう」という判断は危険です。在職中か退職後かを問わず、必ず本人の同意を得てから照会先に連絡することが大前提です。

利用目的を告げずに個人情報を収集する

個人情報保護法(令和4年改正施行)第17条・第21条は、個人情報を取得する際の利用目的の特定・通知・公表を義務付けています。「採用選考のためにリファレンスチェックを行うことがある」という旨を、エントリー時や採用プロセスの説明資料に明記していなければ、後から実施しようとしても適法な根拠が整っていないことになります。

聞いてはいけない情報を照会する

職業安定法第5条の4は、採用選考で収集できる個人情報を「業務遂行上必要な範囲」に限定しており、思想・信条・宗教・支持政党などの収集を禁じています。また、個人情報保護法第20条第2項が定める要配慮個人情報(精神疾患の既往・障害の有無・犯罪歴など)は、本人の明示的同意があっても採用選考での収集自体が問題となりえます。さらに家族構成・妊娠・育児予定の確認は、男女雇用機会均等法上の問題にも直結します。

適法に実施するための同意取得の手順

リファレンスチェックを適法に行うためには、「いつ・どのように・何を」同意してもらうかを事前にルール化しておくことが重要です。以下の流れを参考に、自社の採用フローに組み込んでください。

採用プロセスの早期に「実施の可能性」を明示する

求人票・エントリーフォーム・面接案内など、採用プロセスの開始時点で「当社では採用選考の一環としてリファレンスチェックを実施する場合があります」と明記します。この一文があるかどうかが、後の同意取得の有効性を左右します。専任人事がいない企業では、まず自社の採用フロー全体を見直し、この明示が抜けていないか確認することから始めましょう。

書面またはメールで明示的同意を取得する

口頭での同意は「言った・言わない」のトラブルにつながるため、必ず書面またはメールなど記録に残る方法で同意を取得します。同意書には「照会の目的(採用可否の判断)」「照会先(応募者が指定する元上司など)」「取得した情報の利用範囲と保管期間」を明記することが望ましいです。内定前・内定後どちらでも実施できますが、内定前に実施する場合は選考過程の一部であることを明確に伝えましょう。

照会先は応募者自身に指定・紹介してもらう

採用企業が独自に元職場へ問い合わせ先を探すのではなく、応募者本人に照会先(元上司・元同僚など)を指定してもらうのが原則です。これにより「本人が知らない相手に連絡した」というプライバシー侵害リスクを回避できます。照会先が在職中の上司である場合は特に注意が必要で、本人が現職に在籍中であれば原則として現職への問い合わせは避けるべきです。

質問してよい内容・してはいけない内容

同意を得たとしても、質問の内容が不適切であれば法的リスクは残ります。「聞いていい範囲」を明確にしておくことが、トラブル防止の核心です。

業務上必要な範囲に限定する

職業安定法第5条の4の「業務遂行上必要な範囲内」という原則に従い、リファレンスチェックで確認できるのは以下のような項目に限られます。

確認してよい項目の例 確認してはいけない項目の例
職務内容・担当業務の範囲 精神疾患・障害の有無(要配慮個人情報)
業務上の実績・成果 思想・信条・宗教・支持政党
勤怠状況(遅刻・無断欠勤の頻度など) 家族構成・妊娠・育児の予定
チームへの貢献・協調性 犯罪歴・逮捕歴(本人同意があっても慎重に)
退職理由(客観的な事実) 健康状態・通院歴・服薬状況

回答者(照会先担当者)への配慮も必要

リファレンスチェックでは応募者だけでなく、回答する元上司・元同僚自身の個人情報も収集対象になります。回答は任意であることを冒頭に伝え、回答内容を採用選考以外の目的に使用しないことを明示しましょう。また、回答者が「応募者の悪口を言わされた」と感じるような誘導的な質問は、回答者との関係においてもトラブルの原因になります。

「同意さえあれば何でも聞ける」は誤解

よくある誤解が、「本人同意を取っていれば何を聞いても問題ない」というものです。しかし前述のとおり、要配慮個人情報や思想・信条に関する情報は、同意の有無にかかわらず採用選考での収集が法令上問題となりえます。同意取得はあくまでリファレンスチェック実施の入口の条件であり、質問内容の適法性は別途判断が必要です。

取得した情報の管理と廃棄ルール

リファレンスチェックで得た情報は、採用目的以外に使用してはならず、適切な期間管理と廃棄が必要です。ここを曖昧にしたまま放置すると、個人情報保護法上の義務違反につながります。

利用目的は採用選考に限定する

取得した情報は採用可否の判断にのみ使用し、入社後の人事評価・配置・昇給判断などに流用することは本来の利用目的を逸脱します。採用担当者が変わったとき、あるいは人事システムに情報を入力するときに目的外利用が発生しやすいため、情報の利用範囲を社内ルールとして明文化しておくことが重要です。

不採用者の情報は速やかに廃棄する

採用に至らなかった応募者のリファレンスチェック情報は、選考終了後に速やかに廃棄することが望ましい対応です。保管が必要な場合でも、保管期間(例:選考終了後6か月以内)と廃棄方法(シュレッダー・データ削除など)を事前にルール化しておきましょう。専任人事がいない企業ほど、この種の手続きが属人化・形骸化しやすいため、簡単なチェックリストを作成しておくと実務上有効です。

外部サービス利用の判断基準

リファレンスチェック専門サービスを活用する企業も増えていますが、利用の適否は自社の採用規模・リスク許容度・費用対効果で判断します。外部委託にも注意点があります。

外部サービスを使うメリットと注意点

専門サービスを利用すると、質問設計・同意取得フロー・情報管理を一括して委託できるため、専任人事のいない企業にとって実務負担を大幅に軽減できます。一方で、外部に委託した場合でも個人情報の取り扱いに関する最終責任は採用企業(委託元)にある点は変わりません。委託先が個人情報保護法上の「委託先管理」の要件を満たしているか(個人情報の取り扱いに関する契約締結・監督体制など)を確認することが必要です。

自社規模・採用頻度による判断

年に数名しか採用しない20名未満の企業では、外部サービスの月額費用対効果が合わないケースもあります。その場合は自社で実施する際の同意書テンプレートと質問リストを整備し、都度運用する方法も現実的です。一方、採用を積極的に進めている30〜50名規模の成長期企業では、採用ミスのコストを考えると外部サービスの費用は十分に回収できる場合が多いです。まずは1件試験的に利用して精度と運用フィットを確認するアプローチも有効です。

まとめ

リファレンスチェックは、正しい手順を踏めば違法ではありません。適法な実施のポイントは、採用プロセスの早い段階で実施の可能性を明示すること、書面・メール等で記録に残る形で本人同意を取得すること、照会先は応募者自身に指定してもらうこと、質問は業務上必要な範囲(職務内容・勤怠・協調性など)に限定し要配慮個人情報や思想・信条は確認しないこと、そして取得情報を採用目的以外に使用せず廃棄ルールを設けることの5点です。専任人事がいない中小企業では、これらのルールを文書化・標準化することが、法的リスクと採用ミスマッチの両方を防ぐ近道です。

リファレンスチェックの導入に際して「うちの採用フローに当てはめるとどうすればいい?」「同意書のひな形はどう作ればいい?」といった疑問をお持ちの方は、ぜひウェルセンス株式会社にご相談ください。採用に関わる人事・労務の整備を、実務レベルでサポートしています。

よくある質問

Q. 応募者の同意なしにリファレンスチェックを実施した場合、具体的にどのような法的リスクがありますか?

A. 大きく二つのリスクがあります。一つは個人情報保護法・職業安定法上の義務違反(利用目的の未明示・同意なき収集)です。もう一つは民法上のプライバシー権侵害による損害賠償請求です。特に在職中の応募者の現職へ無断で問い合わせた場合、応募者が解雇等の不利益を受けたとして損害賠償を請求されるリスクが高くなります。

Q. リファレンスチェックの同意取得は内定前と内定後、どちらが適切ですか?

A. 法律上はどちらでも実施できますが、実務的には内定を条件付きで出し「内定承諾前にリファレンスチェックを実施する」と事前に伝えておく方法が多く採用されています。内定後に実施する場合は「内定取り消しにつながる可能性がある」ことを事前に説明しておかないと、応募者との信頼関係を損なうリスクがあります。いずれの場合も採用プロセスの説明資料に実施の可能性を明記しておくことが前提です。

Q. 応募者が「リファレンスチェックに同意しない」と言った場合、採用選考から外してよいですか?

A. リファレンスチェックへの同意を採用条件の一つとすること自体は、採用プロセスの開始時点でその旨を明示していれば直ちに違法とはなりません。ただし、同意しないことのみを理由とした不採用判断がどのような文脈で行われたかが問われる場面もあるため、実施が採用判断に不可欠な場合はその旨を採用条件として明文化しておくことが望ましいです。

Q. 前職の上司が「あの人は精神的に不安定だった」と話してくれた場合、採用判断に使ってもよいですか?

A. 精神的な健康状態に関する情報は、個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当する可能性があります。こちらから聞いた情報でなく相手が自発的に話したケースでも、それを採用判断の根拠として使用することには慎重であるべきです。その情報を記録・使用した場合、採用拒否の理由として問題になるリスクがあります。こうした情報が出てきた場合は記録に残さず、業務遂行能力に関する客観的な情報のみを判断材料とすることが安全です。

Q. 外部のリファレンスチェックサービスを利用する場合、どんな点を確認すればよいですか?

A. 個人情報の取り扱いに関する最終責任は委託元である採用企業が負うため、外部サービス利用時でも安心できません。個人情報保護法上、委託元はサービス提供者の管理体制を監督する義務があります。導入前に(1)個人情報取扱契約の締結状況、(2)同意取得の方法、(3)情報セキュリティ対策、(4)情報の廃棄方法について詳細に確認しましょう。また試験的に1件利用してから本格導入することをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
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