復職後に勤怠が乱れても「問題ない」と言う社員にどう介入すればいい?

復職後に勤怠が乱れても「問題ない」と言う社員にどう介入すればいい? 休職・復職対応
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「遅刻が続いているのは事実なのに、本人は『大丈夫です』の一点張り。面談を組もうにも、何を根拠に呼べばいいのかわからない——」

復職後の社員が勤怠の乱れを抱えながらも「体調は問題ない」と主張しているとき、多くの経営者・人事担当者は動けなくなります。本人の言葉を否定するのは気が引けるし、強引に動けばハラスメントになるかもしれない、という不安があるからです。

しかし、ここで動かないことにも深刻なリスクがあります。この記事では、勤怠記録を根拠にした面談の設け方から、再休職の判断基準、法的リスクの整理まで、専任人事がいない企業でも実践できる手順を解説します。

「本人が大丈夫と言っている」は会社が動かない理由にならない

結論から言えば、本人の「体調は問題ない」という申告があっても、会社は介入を控える必要はありません。むしろ、客観的なリスクを把握しながら放置することが、法的問題につながります。

安全配慮義務という会社の法的責務

労働契約法第5条は、使用者に「労働者の生命・身体等の安全を確保しながら労働させる義務」を定めています。これを安全配慮義務といいます。重要なのは、この義務は「本人が大丈夫と言っているかどうか」に左右されない点です。客観的に健康リスクが認められる状況であれば、会社は措置を講じる義務を負います。

「本人が拒否したので会社は動けなかった」という記録が残っていても、「リスクを認識しながら放置した」と判断されれば、免責にはなりません。本人の主観的な申告より、勤怠記録という客観的事実の方が法的には重く扱われます。

本人の自己申告を「否定」せずに「確認」する視点へ

介入が躊躇われる理由のひとつは、「本人の言葉を信じてあげたい」という気持ちです。しかしここで切り替えてほしい視点があります。介入は「あなたはウソをついている」と糾弾することではなく、「会社として状態を一緒に確認したい」という姿勢で行うものです。

「大丈夫と言ってくれているのはわかっている。ただ、会社としてきちんと確認する責任がある」というフレームで面談を設定すれば、責める構図にはなりません。この言い方は、後述する面談設定の場面でも活用できます。

勤怠記録を「介入の根拠」として整理する方法

感情や主観ではなく、客観的な事実に基づいて動くことが、会社にとって最も安全で説得力のある対応です。そのための武器が、日々の勤怠記録です。

記録すべき項目と整理の仕方

まず、以下の項目を時系列で整理します。

  • 遅刻の回数と時間(何時間遅刻したか)
  • 早退の回数と理由(体調不良・私用など)
  • 欠勤の頻度とパターン(週の前半に多い、月曜に多いなど)
  • 復職直後と現在の比較(最初の1ヶ月と現在の変化)

「なんとなく最近多い気がする」では介入の根拠として弱い。「復職後1ヶ月目は週に1回以内だった遅刻が、2ヶ月目から週に3回以上に増加している」という形にすることで、事実として提示できるようになります。

勤怠記録は復職開始時から整備しておく

よくある落とし穴は、問題が起きてから記録を振り返ろうとするケースです。勤怠システムがあっても、「誰が・いつ・何の目的で確認するか」が決まっていないと、情報が点在して使えません。復職支援計画を策定した時点から勤怠記録の確認担当者・頻度・保管方法を決めておくことが重要です。定期確認の習慣があれば、問題が顕在化する前に変化に気づけます。

勤怠記録に基づいた面談の設定方法

面談は「呼び出し」ではなく「会社の確認プロセス」として設定することが、本人の反発を和らげ、ハラスメントリスクを避ける上でも重要です。

面談設定の言葉と事前準備

面談を設定する際の声がけ例として、次のような言い方が有効です。「復職後のフォローとして、定期的に状況を確認させていただいています。ここ最近の勤怠を一緒に確認したいので、30分ほどお時間をいただけますか」。この言い方のポイントは、「勤怠が乱れているから責める」ではなく、「定期フォローの一環」として位置づけていることです。

面談前に準備するものは、整理した勤怠記録の一覧と、復職時に合意した勤務条件・フォロー計画の写しです。「約束と現状の乖離」を事実として示すことが、感情論に流れない面談の基本です。

面談で確認すべき内容と記録の残し方

面談では次の3点を確認します。まず、本人が自覚している体調や生活リズムの状況。次に、遅刻・早退の背景にある理由(睡眠、通勤、業務負荷など)。最後に、現在の主治医との通院状況と、直近の受診日です。

面談後は必ず記録を残し、本人に内容を確認してもらうことが重要です。「面談をした」という事実と、「本人がどう答えたか」を文書で残すことが、その後の対応の根拠になります。

人事判断に迷ったときは、早めに外部の専門家に相談することで、後々の手戻りや法的トラブルを防げます。

本人が「体調は問題ない」と主張する場合の会社介入

面談を経ても本人が「大丈夫」と繰り返す場合でも、会社は一定の条件のもとで受診命令や再休職命令を発令できます。ただし、手順と根拠が重要です。

就業規則の有無で対応の幅が変わる

会社の介入手段は、就業規則の内容によって大きく変わります。以下に整理します。

状況 会社が使える手段 根拠
就業規則に受診命令・休職命令の規定あり 受診命令・休職命令を発令できる 就業規則の規定+安全配慮義務
就業規則に規定なし 受診を強く促すことはできるが命令は難しい 安全配慮義務のみを根拠に説得的に対応
産業医が選任されている(50名以上) 産業医の意見を経た上での命令が可能 労働安全衛生法第13条
産業医が選任されていない(49名以下) 主治医への情報照会・外部機関の活用 本人同意のもとでの対応が基本

49名以下の企業では産業医の選任義務がないため(労働安全衛生法第13条)、主治医への意見照会や外部のEAP(従業員支援プログラム)・産業保健機関の活用が現実的な選択肢になります。その際、本人の同意を得た上で進めることが原則です。

受診を促す言葉と医師の意見の活用

本人に受診を促す際は、「あなたが信頼できないのではなく、会社として医師の見立てを確認する必要がある」という伝え方が有効です。「就業規則の定めとして、復職後の状況が一定の基準を下回った場合、主治医への確認をお願いしています」と、ルールとして説明することで、個人攻撃の印象を避けられます。

医師の意見書や診断書が得られれば、それを根拠にした対応が最も法的リスクの低い形になります。会社単独の判断より、医師の見解を経た判断の方が、後々の紛争リスクを大幅に下げます。

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再休職の判断基準と本人への伝え方

再休職を打診する場面は、担当者にとって最もストレスがかかる瞬間です。しかし、適切な手順と言葉を準備しておけば、本人の尊厳を傷つけずに打診できます。

再休職を検討すべき目安

以下のような状態が重なった場合、再休職の検討が必要です。

  • 遅刻・早退・欠勤が復職後1〜2ヶ月を過ぎてから増加傾向にある
  • 面談で本人が理由を説明できない、または説明が毎回変わる
  • 主治医との通院が途絶えている、または通院間隔が空いている
  • 業務パフォーマンスの低下が周囲から報告されている
  • 本人の言動に以前の不調期と類似したサインが見られる

再休職打診の言葉と手順

再休職を打診する際に最も避けるべきは、「また休んでほしい」という言い方です。これは本人に「戦力外」と受け取られるリスクがあります。代わりに「今の状態で無理を続けることで、回復が長引く可能性を会社として心配している。一度立て直す時間を取った方が、長く働ける可能性が高いと考えている」という言い方が適しています。

手順としては、まず面談で勤怠の事実を共有し、次に主治医への受診・意見確認を依頼します。その結果をもとに再休職の打診を行い、就業規則の規定がある場合は会社判断として発令するという流れが基本です。「会社が一方的に判断した」ではなく、「事実の確認・医師の見解・会社の判断」という段階を踏んだことを記録しておくことが重要です。

本人が再休職を拒否した場合

本人が拒否した場合でも、就業規則に休職命令の規定があれば、客観的根拠に基づき会社側が命令を発令できます。ただし、恣意的・一方的な運用は権利濫用と判断されるリスクがあるため、医師の意見・勤怠記録・面談記録という三つの根拠をセットで揃えておくことが不可欠です。規定がない場合は、今後のためにも就業規則の整備を急ぐ必要があります。

⚠ 注意:解雇を検討する段階に至った場合は、必ず労働問題を専門とする弁護士に相談してください。判断を誤ると重大な訴訟リスクになります。

まとめ

復職後に勤怠が乱れながら「体調は問題ない」と主張する社員への対応で最も大切なのは、「本人の言葉ではなく、勤怠記録という客観的事実を根拠にすること」です。安全配慮義務(労働契約法第5条)の観点から、本人申告があっても会社は介入を控える必要はなく、むしろ放置することがリスクになります。

対応の流れは、勤怠記録の整備・面談設定・受診促進・医師の意見確認・再休職打診という段階を踏むことが基本です。就業規則に受診命令・休職命令の規定があるかどうかで会社の手段が変わるため、現状の就業規則の確認も早めに行っておくことをおすすめします。

「記事の手順に沿いたいが、実際の判断に不安が残る」「医師の意見をどう取り付ければいいかわからない」といった場合は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。復職支援・メンタルヘルス対応の専門家として、御社の現在地に合わせた具体的な次のステップをご提案します。専任人事がいない中小企業の実情を踏まえた支援が強みです。

よくある質問

Q. 本人が「大丈夫」と言っているのに面談を設定しても、ハラスメントにはなりませんか?

A. 勤怠記録という客観的事実を根拠に、「定期フォローの一環」として設定する面談はハラスメントにはなりません。問題になるのは、事実の根拠なく感情的に責め立てる場合です。面談の目的と内容を事前に伝え、記録を残す形で進めることで、会社の正当な安全配慮義務の履行として位置づけられます。

Q. 産業医がいない会社(49名以下)でも受診を促すことはできますか?

A. できます。産業医が選任されていない場合でも、本人の同意を得た上で主治医への情報提供・意見照会を依頼することは可能です。また、外部のEAP(従業員支援プログラム)や地域産業保健センターを活用する方法もあります。就業規則に受診促進の規定を設けておくと、会社側の依頼が明確な根拠を持てます。

Q. 再休職を命じる場合、本人の同意は必要ですか?

A. 就業規則に休職命令の規定がある場合、本人の同意がなくても発令することは可能です。ただし、客観的な根拠(勤怠記録・面談記録・医師の意見)が揃っていることが前提です。一方的・恣意的な運用は権利濫用と判断されるリスクがあるため、段階を踏んだ記録の整備が不可欠です。就業規則に規定がない場合は、まず規定の整備を弁護士や社労士に相談することをおすすめします。

Q. 復職後のフォロー面談はいつまで続ければよいですか?

A. 一般的には復職後6ヶ月程度は定期面談を継続することが望ましいとされています。勤怠の乱れは復職後数ヶ月目に表れることが多く、「落ち着いてきたから」という理由で早期にフォローを終了すると、問題の発見が遅れます。復職支援計画に面談の期間・頻度・終了条件を明記しておくことで、対応の漏れを防げます。

Q. 勤怠の乱れを理由に解雇することはできますか?

A. 休職・復職に関連する事情がある場合、勤怠の乱れだけを理由とした解雇は法的リスクが非常に高く、慎重な判断が必要です。まず就業規則に基づく再休職命令・受診命令といった段階的な対応を尽くすことが先決です。解雇を検討する場合は、必ず労働問題を専門とする弁護士または社会保険労務士に相談してください。

【監修】ウェルセンス株式会社
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