休職期間を評価対象外にする3つの根拠と評価シート記載例

休職期間を評価対象外にする3つの根拠と評価シート記載例 休職・復職対応
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「評価シートの休職期間欄、何て書けばいいんだろう……」。評価期間の途中で休職した社員の処理に直面したとき、こうした戸惑いを感じる人事担当者は少なくありません。空欄のまま提出しようとすると「手を抜いた」と見られないか不安になり、かといって無理に点数を付けると後でトラブルになるリスクもある。では、「評価対象外」とする根拠はどこにあり、評価シートには具体的に何と書けばよいのでしょうか。この記事では、休職期間を評価対象外にするための3つの根拠と、評価シートへの記載例を実務目線で解説します。

「評価対象外」にする3つの根拠

休職期間を評価対象外にするには、就業規則への明記・労働法令の趣旨・評価制度の設計原理という3つの根拠を組み合わせることが、後日トラブルを防ぐうえで最も確実な方法です。

就業規則への明記(労働基準法第89条)

労働基準法第89条は、昇給に関する事項を就業規則の絶対的記載事項と定めています。評価制度が昇給・賞与に連動している場合、「評価期間中に休職した社員の評価の取扱い」も当然この範囲に含まれます。就業規則に「評価期間のうち休職期間は評価対象外とする」と一文入れておくことで、本人から「なぜ評価されないのか」と問われたときに就業規則を根拠として示すことができます。現時点でこの条文がない会社は、まず就業規則の整備が最優先です。

育児・介護休業法による不利益取扱いの禁止

育児休業・介護休業を原因とする休職については、育児・介護休業法第10条・第16条が不利益取扱いを明示的に禁止しています。「育休取得を理由に評価を下げた」「評価点数をゼロにした」という処理は違法になりえます。一方、「評価期間外として除外する(評価しない)」処理は、評価を下げているわけではないため、一般的に不利益取扱いには該当しないと解されています。この違いを明確に理解しておくことが、制度設計の大前提です。

評価制度の設計原理(測定可能性の原則)

人事評価は、実際に観察・測定できる行動・成果を対象に行うものです。職場に不在だった期間の業績や行動を評価することは、制度の公平性・客観性の観点から合理的ではありません。この「測定可能性の原則」は法令ではなく評価制度の設計理論に基づく根拠ですが、本人への説明場面で「在籍していなかった期間を評価することは、公平な評価制度として成り立たない」という説明の裏付けになります。特に、上司が評価根拠を示す評価面談の場で有効な説明軸になります。

評価シートの3つの処理パターン

評価シートへの記載方法には代表的な3パターンがあり、会社の規模・評価制度の成熟度・休職の期間に応じて選択することが実務上のポイントです。

全期間除外型(20〜50名規模の会社に最も推奨)

評価期間全体を「評価対象外期間」として扱い、前期評価を次の評価期まで据え置く方式です。運用がシンプルで、評価者(上司)・被評価者(本人)・人事の三者にとって最も分かりやすい処理です。評価シートへの記載例は以下のとおりです。

  • 評価点数・評価ランク欄:「-」または「N/A」と記入
  • 評価コメント欄:「休職のため評価対象外(2024年8月1日〜2024年12月31日)」と記載
  • 総合評価欄:「当該評価期間は就業規則第○条に基づき評価対象外とする」と付記

専任人事がいない中小企業では、まずこのパターンを就業規則に明記したうえで運用を統一することをお勧めします。

在職期間按分型(一部休職・一部出勤のケース)

評価期間(例:4月〜翌3月)のうち、8月〜12月のみ休職した場合など、出勤期間と休職期間が混在するケースで使われる方式です。出勤実績のある期間のみを評価対象とし、評価コメントに評価対象期間を明示します。記載例は次のとおりです。

  • 評価対象期間欄:「2024年4月〜2024年7月、2025年1月〜2025年3月(出勤期間のみ)」と明記
  • 評価点数欄:在職日数を母数にした按分根拠を括弧書きで付記
  • 評価コメント欄:「上記在職期間における業務遂行状況を評価対象とする」と記載

ただし、按分方式は計算ルールが複雑になりやすく、担当者が変わると処理が属人化します。就業規則に按分の計算方法を明記しておかないと、ケースごとに判断がばらつくリスクがあります。

最低保証型(昇給・賞与への影響を最小化する設計)

評価対象外とした上で、賞与・昇給は前期評価ランクの最低保証額を適用する方式です。「評価対象外=賞与ゼロ」という誤解が生じやすい現場では、この方式を明示することで本人の不安を和らげる効果があります。評価シートは全期間除外型と同じ記載で問題ありませんが、賞与計算票には「休職者特例:前期評価ランクに基づく最低保証額を適用」と記載し、処理の根拠を残しておきます。就業規則の賞与規程にも「休職期間中は前期評価ランクの最低保証額を支給する」と明記することが必要です。

育児休業と私傷病休職で異なる処理上の注意点

休職の種類によって適用される法令が異なるため、評価対象外の処理方針も微妙に変わります。特に育児休業と私傷病休職は区別して理解しておくことが重要です。

育児休業・介護休業の場合

育児・介護休業法第10条・第16条により、育休・介護休業の取得を理由にした不利益取扱いは明示的に禁止されています。「評価対象外」処理自体は不利益取扱いに当たらないと一般的に解されていますが、評価対象外とした結果として昇格・昇給が遅れる場合には、その影響が「取得を理由とした不利益」と判断されるリスクがあります。この点は社会保険労務士や弁護士に確認したうえで制度設計することを推奨します。

私傷病(メンタルヘルス不調含む)による休職の場合

私傷病による休職に直接適用される不利益取扱い禁止の法令は現時点では存在しませんが、精神疾患を原因とする休職者への対応が、障害者差別解消法や合理的配慮の観点から問題になる可能性があります。「休職していたから評価できません」という一言だけの説明では、本人が「差別的扱いを受けた」と受け止めるリスクがあります。評価面談では「就業規則○条に基づき評価対象外として処理した」「前期評価を据え置いているため昇給ランクへの影響はない」といった具体的な説明を加えることが、復職後の信頼関係を保つうえで重要です。

就業規則に根拠がない会社がまず取り組むべきこと

就業規則に休職期間の評価取扱いが明記されていない場合は、まず条文の追加から始めることが最優先です。評価シートの記載方法を先に決めても、就業規則の根拠がなければ本人への説明が成立しません。

追加すべき条文の例

就業規則(または給与規程・人事評価規程)に以下のような条文を追加することを検討してください。

条文の位置づけ 文言例
評価対象期間の除外 「評価期間中に休職(私傷病・育児・介護)した場合、休職期間は人事評価の対象外とする。」
前期評価の据え置き 「前項の場合、直近の評価結果を次の評価期まで据え置くものとする。」
賞与への連動 「休職期間中の賞与は、前期評価ランクに基づく基準額に在職日数を乗じた按分額を上限として支給する。」

就業規則変更の手続き上の注意

既存の評価制度運用を変更してこの条文を追加する場合、労働契約法第10条(就業規則の不利益変更)の観点から、労働者への説明と意見聴取が必要です。特に「これまで評価対象外の規定がなく、暗黙的に評価されていた」社員にとっては変更として受け取られる可能性があります。変更内容と理由を社内で丁寧に説明し、意見書を徴取した記録を残しておくことが、後日のトラブル防止につながります。

専任人事がいない場合の現実的な進め方

専任人事がいない中小企業では、就業規則の改定を経営者や兼務人事担当者が一人で進めようとすると、法令の解釈に迷うケースが多くあります。社会保険労務士と連携して条文を整備し、評価シートの記載例・賞与計算ルールをセットで整備することが、属人化を防ぎ、次の担当者に引き継げる体制につながります。

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本人への説明・評価フィードバックのポイント

評価対象外の処理は、本人への説明の仕方によって受け取られ方が大きく変わります。特に復職直後の社員には、丁寧なコミュニケーションが復職後のモチベーション維持に直結します。

説明のNGワードと言い換え例

「休職していたから評価できません」という言い方は、本人に「自分だけ不利に扱われた」という印象を与えます。代わりに、「就業規則の規定に基づき、今期の評価期間は評価対象外として処理しています。前期の評価結果を据え置いているため、ランクへの影響はありません」という形で、根拠と影響範囲を明示した説明に切り替えましょう。

復職後の評価期間の設定

復職直後に通常の評価サイクルをそのまま適用すると、短い在職期間で評価されることになり、本人が焦りや不公平感を感じることがあります。復職後の最初の評価期間については「通常の評価対象期間の確保」を就業規則に規定しておく(例:「復職後3か月以上在職している場合に評価対象とする」)と、本人・評価者双方の混乱を防ぐことができます。

まとめ

休職期間を評価対象外にするための根拠は、労働基準法第89条に基づく就業規則への明記、育児・介護休業法による不利益取扱いの禁止規定、そして評価制度の測定可能性という3つの柱で構成されます。評価シートの記載方法は「全期間除外型」をベースに就業規則と連動させることが、20〜50名規模の会社では最も運用しやすい選択肢です。空欄のまま処理することは問題ではありませんが、「なぜ空欄なのか」を就業規則と評価シートの記載で誰でも確認できる状態にしておくことが、トラブル防止の核心です。

「うちの就業規則に該当条文があるか確認したい」「評価シートのひな型をどこから作ればいいかわからない」という場合、ウェルセンス株式会社では休職・復職支援と合わせて、評価制度の整備・就業規則の見直しに関する相談を受け付けています。専任人事がいない会社でも対応できる実務的なサポートを提供していますので、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 就業規則に根拠がないまま「評価対象外」と処理してしまいました。遡って問題になりますか?

A. 評価対象外の処理が本人に不利益をもたらしていない(前期評価の据え置きで昇給・賞与ランクへの影響がない等)であれば、直ちに法的問題になるケースは多くありません。ただし、本人から「評価されなかったことで不利益を受けた」と主張された場合に就業規則の根拠がないと反論が難しくなります。今後のトラブル防止のために、就業規則への条文追加を速やかに行うことを推奨します。

Q. 評価システム(人事システム)に点数の入力が必須になっています。何と入力すればよいですか?

A. システムが数値入力を必須とする場合は、「前期評価の点数をそのまま入力し、備考欄に『休職のため評価対象外(就業規則第○条)。前期評価を据え置き』と記載する」方法が一般的です。評価ゼロや最低点を入力するのは誤りで、後日の昇給・賞与計算に誤った影響が出ます。システムの仕様に合わせた処理ルールを社内マニュアル化しておくと、担当者交代時の引き継ぎにも役立ちます。

Q. 育児休業中の社員と私傷病休職中の社員で処理を変えるべきですか?

A. 評価対象外とする処理の基本的な考え方は同じです。ただし、育児休業については育児・介護休業法による不利益取扱い禁止規定があるため、「評価対象外の結果として育休取得者の昇格・昇給が遅れる」という影響が出ないよう、制度設計段階でより丁寧な確認が必要です。私傷病休職については直接の法令上の禁止規定はありませんが、精神疾患を理由とした差別的扱いにならないよう説明の仕方には配慮が必要です。どちらも就業規則上は同一条文で処理することが、運用の一貫性を保ちます。

Q. 評価期間の途中で復職した場合、その評価期間はどう処理しますか?

A. 評価期間のうち出勤実績のある期間のみを対象とする「在職期間按分型」か、評価期間を丸ごと対象外にする「全期間除外型」のどちらかで処理します。復職直後は業務範囲が限定されることも多いため、評価対象とするには「復職後○か月以上在職している場合に限る」といった基準を就業規則に設けておくと、本人・上司双方の混乱を防げます。具体的な判断は会社の評価制度の設計によって異なりますので、就業規則で明文化することが重要です。

Q. 評価対象外にすると賞与もゼロになりますか?

A. 評価対象外であることと、賞与の支給額は別の問題です。賞与の性質(功労報酬・生活補填等)や就業規則の規定によりますが、休職期間を除いた在職日数で按分した額を支給するか、前期評価ランクの最低保証額を支給するかを就業規則の賞与規程に明記しておくことが必要です。就業規則に根拠なく賞与をゼロにすると、支払い義務をめぐるトラブルに発展するリスクがあります。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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