休職中に会社移転→復職拒否された時の3つの対処法

休職中に会社移転→復職拒否された時の3つの対処法 休職・復職対応
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「移転前提で復職の話を進めようとしたら、本人に断られてしまった。どう対応すれば……」——休職者を抱える中小企業の担当者から、こういった相談が増えています。会社都合での事業所移転は珍しくありませんが、それが休職中に重なると、復職のタイミングで予期せぬトラブルに発展することがあります。この記事では、復職を拒否された場合の判断基準と、会社として取るべき3つの対処法を実務的に解説します。

まず「拒否の理由」を正確に把握することが最優先

復職拒否への対応は、本人がなぜ拒否しているのかを正確に把握することから始まります。理由を確認しないまま「規則通りに対応する」と進めると、後から法的リスクが顕在化する可能性があります。

拒否の理由は大きく3パターンに分かれる

復職拒否の背景は、実務上おおむね以下の3パターンに分けられます。どれか一つとは限らず、複合しているケースが最も多い点に注意が必要です。

パターン 主な主張内容 必要な対応
健康上の理由 新しい通勤条件では体力・精神的に通えない 主治医・産業医の意見を確認する
法的主張 通勤条件の不利益変更は無効だと主張 変更手続きの適法性を整理・説明する
意思・意欲の問題 復職の意欲がない、または退職を検討している 面談を通じて意向を確認し、記録に残す

健康上の理由の場合は医学的判断が前提になる

「通勤時間が片道30分から1時間半に増えた」「乗り換えが複数になった」といった変化は、療養中の従業員にとって復職の大きな障壁になり得ます。この場合、会社が「拒否は不当だ」と一方的に判断するのは危険です。主治医意見書や、産業医(在籍する場合)との面談を通じて、医学的に通勤が可能な状態かどうかを確認することが先決です。

法的主張が含まれる場合は変更手続きの記録を確認する

「そもそもこの条件変更は無効だ」という主張が含まれている場合、会社が移転に際して本人への通知・説明・同意確認を適切に行っていたかどうかが問われます。書面による通知日時、本人の署名・応答記録などを確認し、手続き上の不備がないかをチェックしてください。

就業場所の変更が「不利益変更」にあたるか確認する

会社都合の移転であっても、就業規則や雇用契約の内容によっては、従業員が変更を拒否できる正当な理由となります。「転勤条項があるから問題ない」という判断は、特に休職者に対しては慎重な検討が必要です。

就業規則の転勤条項だけでは不十分なケースがある

就業規則に「会社の指定する事業場での勤務」「会社都合による異動あり」といった包括条項があれば、原則として移転先への勤務を命じる根拠にはなります。ただし、労働契約法第10条が定めるように、就業規則の変更によって労働条件を不利益に変更するには、変更の合理性と周知が必要です。通勤時間が大幅に増える場合(目安として片道1時間以上の増加など)は、不利益の程度が大きいと評価されやすく、補償措置(通勤手当の実費精算、引っ越し補助など)の有無が争点になります。

休職中の従業員への通知は「省略できない」

休職中であっても労働契約は継続しています。そのため、移転に伴う就業場所の変更は休職者にも効力が及びますが、本人が業務に就いていない分、「知らなかった」という主張をされるリスクがあります。移転の事実・新住所・通勤経路の変化・補償内容などを書面で通知し、受領確認の記録を必ず残してください。メールでも可ですが、既読・受信の記録が残る方法が望ましいです。

合理的配慮の検討をしたかどうかが後から問われる

復職先として「移転後のオフィス以外に選択肢がない」という状況かどうかも確認が必要です。テレワークの部分的適用、フレックスタイムによる混雑回避、段階的出勤(最初は週数日から)など、通勤負担を軽減する配慮を検討したか否かは、後に紛争となった場合に安全配慮義務(労働契約法第5条)の観点から問われます。「検討したが導入が困難だった理由」も記録に残しておくことが重要です。

判断が難しい場合は、医療と人事の両面から状況を整理する専門家の支援があると、より安全な対応に繋がります。

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対処法の選択肢:3つのアプローチ

拒否の理由と自社の状況を把握したうえで、以下の3つのアプローチを状況に応じて組み合わせることが現実的な対処法です。

条件・環境の見直しで復職の実現を目指す

最初に検討すべきは、復職の壁となっている条件そのものを緩和できるかどうかです。通勤負担が理由の場合、テレワーク導入・出勤日数の段階的増加・通勤手当の実費支給への変更といった対応が有効なケースがあります。「会社側がどこまで歩み寄れるか」を具体的に提示することで、本人の意向が変わることもあります。特に精神疾患による休職の場合、復職時の環境変化への不安は症状の一部である場合も多く、「まず環境を整える」アプローチは医療的観点からも合理的です。面談では、具体的にどの条件が障壁になっているのかを本人から引き出し、対応策を共に検討する姿勢が重要です。

手続きを整えたうえで復職可否の判断プロセスを進める

本人が健康上の理由を主張している場合、「復職できる状態か否か」の判断プロセスを正式に進めることが必要です。具体的には、まず主治医による復職可否の診断書の提出を求めます。次に、可能であれば産業医との面談を設定し、就業上の配慮事項を含めた意見を書面でもらいます。そして復職面談を実施し、会社として復職の可否を正式に判断する——という流れです。このプロセスを踏むことで、「会社として適切に判断した」という記録が残り、その後の対応(休職期間満了の扱いなど)の根拠にもなります。

休職期間満了の扱いは就業規則と手続きの両方を確認する

復職拒否が続き、就業規則に定めた休職期間満了日が近づいている場合、「満了=自動退職」として扱えるかどうかは慎重な判断が必要です。就業規則に自動退職・解雇の規定があること、その規定が本人に周知されていること、そして復職判断のプロセスが適切に踏まれていることが前提条件です。注意が必要なのは、会社都合の移転によって生じた通勤条件の変化が「復職不能の実質的な原因」となっている場合です。この場合、満了を理由とした退職・解雇処理は権利濫用(労働契約法第3条第5項)と判断されるリスクがあります。この判断は実務上難易度が高く、個別事情に依存するため、専門家への相談が強く推奨されます。

自社の状況別:何から手をつけるか

対応の優先順位は、自社の体制によって異なります。自分のケースに当てはめて確認してください。

就業規則・雇用契約書の内容が整備されているかどうかで変わる

就業規則に休職・復職・転勤・退職に関する規定が整備されており、本人への周知が確認できる場合は、規定に沿ったプロセスを踏みながら対応を進められます。一方、就業規則が古い・転勤条項がない・休職期間満了の規定が曖昧、といった状況では、まず現状の規定の確認と、必要に応じた整備が先決です。規定のないまま対応を進めると、後から「そんなルールは聞いていない」という主張に反論できなくなります。

産業医の有無によって対応手順が変わる

産業医が在籍している(または委託している)場合は、主治医の診断書と合わせて産業医意見を取得することで、復職可否の判断をより客観的に記録できます。産業医がいない場合(従業員50人未満では義務ではありません)は、主治医の診断書を中心に判断することになりますが、その場合でも「会社として面談を実施し、意見を求めた記録」を残すことが重要です。産業医のいない事業所では、地域の産業保健総合支援センターが無料でアドバイスを提供しているため、活用を検討してください。

顧問社労士の専門性によって相談先を変える必要がある

顧問社労士がいても、精神疾患・休職・復職の事案に精通しているかどうかは別問題です。「こういうケースは初めて」と言われた場合や、相談しても具体的な回答が得られない場合は、メンタルヘルスや労務トラブルに特化した専門家への相談を並行して検討することが現実的です。初動の対応が後の紛争リスクを大きく左右するため、「誰に聞けばいいかわからない」という状態のまま時間を経過させることは避けてください。

人事判断だけでは解決しない法律・医学的リスクがあれば、早期に相談することが後の対応コストを下げます。

まとめ

休職中に会社移転が重なり、復職を拒否されたケースへの対応は、「拒否の理由を正確に把握する」「就業場所の変更手続きに不備がないか確認する」「状況に応じた3つのアプローチを選択する」という流れが基本です。就業規則の整備状況・産業医の有無・通勤変更の程度によって対応の優先順位は異なりますが、共通して重要なのは、対応の記録を丁寧に残すことと、健康配慮の姿勢を示し続けることです。

ウェルセンス株式会社では、専任人事がいない中小企業向けに、休職・復職・メンタルヘルスにまつわる人事対応のご相談をお受けしています。「うちのケースはどう対処すれば?」と迷った際は、まずお気軽にご相談ください。一緒に状況を整理し、リスクを最小化する対応方針を考えます。

よくある質問

Q. 就業規則に転勤条項があれば、移転後の勤務を拒否する従業員に強制できますか?

A. 転勤条項は業務命令の根拠にはなりますが、休職者に対しては「復職後の配置命令」として行使されるものです。休職中の本人に復職を強制することはできません。また、通勤条件が著しく悪化している場合は不利益変更として争われる可能性があるため、補償措置の検討や本人への丁寧な説明が不可欠です。

Q. 移転のことを休職中の本人に伝えていませんでした。今から通知しても大丈夫ですか?

A. 通知が遅れたこと自体がリスクになりますが、今から正式に書面で通知し、変更内容・補償措置・今後の対応方針を明確に伝えることが先決です。「移転を知らなかったため復職できなかった」という主張に対して反論できるよう、通知の日時・方法・本人の応答を記録に残してください。過去の未通知については、誠実に説明し謝罪のうえ、改めて手続きを踏み直すことが現実的な対応です。

Q. 本人は「通えない」と言っているが、主治医は復職可と言っています。どちらを優先すればよいですか?

A. 主治医の「復職可」の診断は、従来の通勤条件を前提にしている場合があります。まず主治医に「移転後の通勤条件(所要時間・乗り換え数など)でも問題ないか」を確認する必要があります。その回答を踏まえたうえで、産業医がいる場合は産業医意見も取得し、会社として総合的に復職可否を判断するプロセスを踏むことが重要です。

Q. 休職期間が満了しそうです。そのまま自動退職として処理してよいですか?

A. 就業規則に明確な規定と周知があることが前提ですが、それだけでは不十分です。会社都合の移転によって生じた通勤条件の変化が復職できない主な原因となっている場合、満了を理由とした退職・解雇処理は権利濫用と判断されるリスクがあります。満了日が近い場合でも、まず専門家に状況を相談し、対応方針を確認してから手続きを進めることを強くお勧めします。

Q. 産業医がいない小規模の会社でも、同様の対応ができますか?

A. 産業医がいなくても対応は可能ですが、復職可否の判断が主治医の診断書に依存しやすくなるため、面談記録・書面のやり取りをより丁寧に残す必要があります。都道府県ごとに設置されている「産業保健総合支援センター」では、産業医のいない小規模事業所向けの無料相談を実施しています。また、メンタルヘルス・休職対応に詳しい社労士への相談も有効な選択肢です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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