人事担当不在でも機能する!外部専門家の使い分け4つの判断基準

人事担当不在でも機能する!外部専門家の使い分け4つの判断基準 組織運営
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「急に社員がメンタル不調で休みたいと言ってきた。どう対応すればいいのか、誰に相談すればいいのかわからなかった」——採用面接から給与計算、社員面談まで一手に引き受けている経営者や兼務担当者から、こうした声を聞くことは少なくありません。社労士との契約はある、でもどこまで頼んでいいかわからない。外部専門家を使いたいけれど、費用対効果が見えない。この記事では、専任人事がいない中小企業が「人事機能を壊さずに回す」ための外部専門家の使い分けと、判断基準を実務レベルでお伝えします。

「全部自分でやる」が招く、見えないリスク

専任人事がいない会社では、人事業務が経営者や特定の担当者に集中し、対応が後手に回る構造が生まれやすくなります。これは忙しさの問題ではなく、仕組みの問題です。

属人化が引き起こす「緊急事態の常態化」

採用・勤怠管理・社員面談・給与確認・休職対応——これらがすべて一人の頭の中にある状態では、何か起きたときに即座に対応できません。休職の申し出、ハラスメントの訴え、突然の退職。これらは「突発的な緊急事態」ではなく、多くの場合は以前から兆候があったにもかかわらず、仕組みがないために見逃されていた問題です。

法的責任は「外部委託」では消えない

社労士や外部コンサルタントに業務を委託していても、労働基準法上の「使用者」としての責任は会社が負います。給与未払い、長時間労働、ハラスメント対応——これらの最終責任を外部に転嫁することはできません。また、労働契約法第5条が定める安全配慮義務(使用者が労働者の生命・身体・精神を守る義務)も、外部に丸投げすることで果たせるものではありません。「社労士に任せているから大丈夫」という認識は、実態として空白地帯を生むリスクがあります。

組織拡大で「なんとなくのルール」が機能しなくなる

10名から30名、30名から50名へと組織が成長する過程で、就業規則・評価制度・入退社フローが未整備のまま運用が続くケースが多くあります。常時10名以上の従業員を使用する事業場には、労働基準法第89条により就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務づけられています。「作った覚えはある」という場合でも、休職・復職・ハラスメント対応の実務に即した内容になっているかを確認することが重要です。

外部専門家の「守備範囲」を正確に把握する

外部専門家を使いこなすには、まず各専門家が「何をカバーしていて、何はカバーしていないか」を正確に理解することが出発点になります。

社労士の「独占業務」と「相談業務」の違い

社会保険労務士法では、社労士の業務は大きく二種類に分かれます。労働・社会保険関係書類の作成・提出代行は独占業務(社労士にしかできない)、一方で労務管理や人事制度に関するコンサルティング相談業務として位置づけられています。ただし、相談業務の提供範囲は事務所によって大きく異なります。給与計算と手続き代行のみを契約している場合、メンタル不調社員への対応や休職者との面談支援は契約対象外であることが少なくありません。

産業医・保健師・EAP(従業員支援プログラム)の役割

メンタルヘルス対応に特化した外部専門家としては、産業医・産業保健師・EAPサービスがあります。産業医は常時50名以上の事業場への選任が義務ですが、50名未満でも産業医と顧問契約を結ぶことは可能です。EAPは従業員が直接相談できる外部窓口を提供するサービスで、社内に相談できる相手がいない構造を補う手段として有効です。2022年4月には中小企業にもパワーハラスメント防止措置が義務化(労働施策総合推進法)されており、相談窓口の整備は義務要件でもあります。

「社労士がいるから安心」という過信の落とし穴

社労士と契約していても、休職者への面談・職場復帰支援・メンタル不調社員への個別対応まで対応してくれるとは限りません。契約範囲の認識が経営者と社労士の間でずれたまま放置されているケースは実務上よく見られます。まず自社の社労士との契約書・委託範囲を確認し、カバーされていない領域を明確にすることが、外部専門家を「使いこなす」第一歩です。

外部専門家を使う「判断基準」

どの業務を内部でやり、どの業務を外部に出すかを判断する基準は、大きく4つの視点で整理できます。この4基準を把握することで、「とりあえず社労士に」という曖昧な依頼から脱却できます。

専門知識・法的リスクが高い業務は外部へ

労働保険・社会保険の手続き、就業規則の作成・変更、ハラスメント調査の実施など、法令の知識と実務経験が直接必要な業務は外部専門家が担うべき領域です。誤った対応が労働基準監督署への申告や訴訟リスクに直結する業務を、知識のない担当者が担うことは会社にとってのリスクになります。

継続的な関係性が必要な業務は内部が担う

社員の日常的なコンディション把握、1on1面談、採用時の候補者との関係構築——これらは継続的な信頼関係があってはじめて機能する業務です。外部専門家が代替するには限界があり、経営者や兼務担当者が担う中核業務です。ただし、「問題が起きたときの対応手順」だけは事前に外部専門家と設計しておくことが重要です。

従業員数・状況別の「どこから外部に出すか」判断表

従業員規模・状況 優先的に外部委託すべき業務 内部で担うべき業務
10名未満 給与計算・社会保険手続き 採用・日常コミュニケーション・勤怠管理
10〜30名(就業規則義務発生) 就業規則整備・ハラスメント相談窓口設置 評価・面談・採用フロー管理
30〜50名(休職者・メンタル対応が増える時期) 復職支援・EAP導入・産業医との連携設計 日常的な1on1・組織文化の維持
休職者が発生している 復職支援プログラムの設計・主治医との連携 本人との日常連絡・復帰後のフォロー

緊急度が高い案件はスピードで判断する

メンタル不調の申し出、ハラスメントの訴え、突然の退職交渉——これらは対応が遅れるほど状況が悪化します。「どこに相談すればいいか」を事前に決めていない会社は、緊急時に経営者が孤立して判断することになります。外部専門家の選定は「問題が起きてから」ではなく、「何も起きていない平時」に行うことが重要です。

「専任人事がいない」ことを強みに変える設計の考え方

専任人事がいないことはリスクではなく、適切な外部リソースを組み合わせることで、大企業並みの対応力を持つことができる状態です。ポイントは「全部外部」でも「全部内部」でもなく、役割を明確にした分担設計にあります。

経営者が手放してはいけない「人事の核心」

どれほど外部専門家を活用しても、経営者が手放してはいけない業務があります。それは、「会社がどんな人を採り、どう育て、どう評価するか」という方針の決定です。採用基準・評価軸・組織文化の方向性は、外部の専門家には代替できません。外部委託は「実務を動かす手足」であり、「判断の軸」は内部に残す設計が機能する組織の基本です。

相談窓口の「空白地帯」を埋める

経営者と従業員が直接つながる構造の中小企業では、「上司に言いにくいこと」「精神的な不調」「退職の迷い」などが表面化しにくくなります。この空白地帯を埋めるのが、外部の相談窓口(EAPや産業保健師)の役割です。2022年4月より中小企業にも義務化されたパワーハラスメント防止措置(労働施策総合推進法)でも、相談窓口の設置が求められており、外部窓口の設置はその要件を満たす手段にもなります。

「何もない時期」の外部専門家との関係づくりが鍵

外部専門家との関係が「何かあったときだけ連絡する」では、緊急時に十分なサポートを受けることが難しくなります。社労士・産業医・メンタルヘルス支援の専門家とは、問題が起きていない時期から定期的なコミュニケーションを取り、「この会社はどんな職場環境か」「経営者はどんな考えを持っているか」を共有しておくことで、緊急時の対応精度が大きく変わります。

放置するとどうなるか——「今は大丈夫」の終わり方

「今のところ問題は起きていない」という状態は、「リスクがない」ことと同義ではありません。人事機能の不備が顕在化するのは、多くの場合、問題が深刻化した後です。

メンタル不調の放置が「安全配慮義務違反」になるとき

労働契約法第5条は、使用者が労働者の生命・身体・精神の健康を守るための安全配慮義務を負うことを定めています。メンタル不調のサインを「様子見」で放置し続けた結果、症状が悪化して休職・退職に至った場合、使用者が義務違反として損害賠償請求の対象となりうることが裁判例でも示されています。「相談されていなかった」ことは免責理由にはなりません。

ハラスメント対応の遅れが生む二次被害

ハラスメントの訴えが出た際、対応手順が社内にない場合、経営者が当事者双方と個別に話し合うという場当たり的な対応になりがちです。これは問題を解決するどころか、被害者が「会社は動いてくれない」と感じて労働基準監督署や弁護士に相談する事態を招くケースがあります。パワーハラスメント防止法(労働施策総合推進法)が義務化された現在、相談窓口と対応手順の整備は法的な要請でもあります。

ストレスチェック義務がなくても対応が必要な理由

ストレスチェック制度(労働安全衛生法第66条の10)の実施義務は常時50名以上の事業場ですが、50名未満では努力義務とされています。ただし「義務がないから対応不要」という判断は誤りです。メンタル不調による休職は従業員数が少ない会社ほど組織への影響が大きく、1名の長期休職が業務全体に波及するリスクがあります。義務の有無ではなく、自社の体力とリスクを踏まえた判断が必要です。

緊急時の対応手順は事前に専門家と決めておくことが、実務上の混乱を防ぎます。社内の人事機能が整う過程で、スポット相談や産業医のサービスを上手に活用している企業も多くあります。

まとめ

専任人事がいない中小企業でも、外部専門家の役割を正確に把握し、内部との分担を設計することで、人事機能を十分に機能させることができます。まず自社の社労士との契約範囲を確認し、カバーされていない領域(特にメンタルヘルス・復職支援・ハラスメント相談窓口)を洗い出すことが出発点です。次に、従業員数や組織の成長フェーズに応じて、産業医・EAP・メンタルヘルス専門家との連携を設計します。そして、問題が起きていない平時から外部専門家と関係を作ることで、緊急時に迷わず動ける体制が整います。

ウェルセンス株式会社では、専任人事がいない中小企業の経営者・兼務担当者を対象に、メンタルヘルス対応・休職復職支援・人事労務の体制づくりをご支援しています。「自社がどこから手をつければいいかわからない」という段階からご相談いただくことが可能です。現在の人事運用に不安を感じている、外部専門家をどう活用すればいいかわからない、といった方は、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 社労士と契約しているのに、なぜ別の専門家が必要なのですか?

A. 社労士の業務には「独占業務(手続き代行)」と「相談業務(コンサルティング)」があり、後者の範囲は事務所によって大きく異なります。特にメンタル不調社員への面談支援・休職者の職場復帰プログラムの設計・ハラスメント相談窓口の運営などは、社労士の契約範囲に含まれていないケースが多くあります。現在の契約書で委託範囲を確認し、カバーされていない領域には別の専門家を充てる設計が必要です。

Q. 従業員が30名未満の会社でも、産業医やEAPは必要ですか?

A. 法的な義務(産業医の選任・ストレスチェック)は常時50名以上の事業場に課されますが、30名未満でも対応は可能ですし、実務上のリスク管理として有効です。従業員数が少ない会社ほど、1名の長期休職が組織全体に与える影響が大きいため、早めに外部相談窓口を設ける価値があります。費用面では、EAPサービスは月額数万円程度から導入できるものもあり、従業員規模に応じたプランを選ぶことができます。

Q. ハラスメント防止措置は、中小企業でも義務ですか?

A. はい。2022年4月より、パワーハラスメント防止措置は中小企業にも義務化されています(労働施策総合推進法)。具体的には、会社としての方針の明確化・社内への周知・相談窓口の設置・相談があった際の適切な対応体制の整備が求められます。専任人事がいない会社では、相談窓口を外部(EAPや社労士)に設けることが現実的な対応策の一つです。

Q. 経営者自身が担うべき人事業務と、外部に出してよい業務の境界はどこですか?

A. 「どんな人を採り、どう評価し、どんな組織文化を作るか」という方針の決定は経営者が担うべき核心業務です。一方、その方針を実現するための手続き・法的対応・専門的判断(給与計算・社会保険手続き・就業規則の整備・メンタルヘルス対応)は外部専門家に委ねることで、経営者が本来の判断業務に集中できます。判断の軸は内部に残し、実務を動かす手足を外部に持つ、という設計が基本的な考え方です。

Q. 社員がメンタル不調で休職を申し出た場合、最初に何をすればよいですか?

A. まず本人の意向と主治医の診断書を確認し、休職開始の手続きを進めることが優先です。この段階で確認すべきことは、就業規則に休職規定があるか・休職期間の上限・傷病手当金の申請手続き・復職基準の有無です。社内に手順がない場合は、社労士またはメンタルヘルス対応の専門家に早期に相談することをお勧めします。「様子を見る」という対応を続けることは、労働契約法第5条の安全配慮義務の観点からリスクになります。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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