休職中のSNS投稿、就労可能?判断する3つの手順

休職中のSNS投稿、就労可能?判断する3つの手順 組織運営
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「休職しているはずの社員が、SNSで旅行の写真を毎日アップしている。これって、もう働けるんじゃないか?」——ある日、そんな疑問が頭をよぎった経験はありませんか。他の社員からも「なぜ休んでいるのに遊んでいるの?」と不満の声が上がり、会社としてどう対応すべきか頭を抱えている。専任の人事担当者がいない中小企業では、こうした判断を下す仕組みが整っていないことがほとんどです。この記事では、SNS投稿を目にしたときに会社が踏むべき手順と、判断を誤ったときのリスクを具体的に解説します。

SNS投稿は「就労可能」の証拠にならない

結論から述べます。SNSへの投稿内容は、就労可能かどうかを示す医学的証拠にはなりません。「元気そうに見える」という事実と、メンタル疾患からの回復状況は、医学的に切り離して考える必要があります。

うつ病などは「波がある」状態が続く

うつ病や適応障害では、調子の良い日と悪い日が交互に訪れることが医学的に広く認められています。旅行や外食といった「楽しいこと」は、患者が気分転換のために短時間だけ行えても、継続的に就労できることとは別の話です。SNSに写真を投稿できる状態と、毎日決まった時間に出勤して業務をこなせる状態の間には、大きな隔たりがあります。

「公開情報だから使ってよい」は誤解

SNSが公開設定であっても、会社が組織的・継続的に投稿を収集・記録し、就労判断の根拠として活用する行為は、プライバシー権(民法上の不法行為)に抵触するリスクがあります。また、個人情報保護法の観点からも、目的外利用や体系的な収集には慎重な取り扱いが求められます。「公開されているから見てもいい」という認識は、法的には誤りです。

SNSを根拠にした復職命令・解雇の危険性

もし会社がSNS投稿だけを根拠に「就労可能」と判断して復職を命じたり、休職を打ち切って解雇したりした場合、労働契約法第16条(解雇権濫用法理)に抵触する可能性があります。「医学的根拠なき解雇」として争われれば、会社は敗訴リスクを負います。SNS投稿はあくまで「問題提起のきっかけ」にとどめ、それ単独で判断の根拠にしてはいけません。

就労可能かどうかを判断する権限は誰にあるか

就労可能かどうかの最終判断権は「会社」にあります。ただし、その判断は必ず医学的根拠を伴う必要があります。主治医・産業医・会社の三者が、それぞれ異なる役割を担っています。

主治医の役割

主治医は患者(社員)の治療を担う立場です。主治医が作成する診断書は「療養が必要か否か」を示すものであり、必ずしも「この職場のこの業務に復帰できるか」を判断するものではありません。診断書に「復職可」と書かれていても、それは主治医が一般的な社会復帰を認めたに過ぎず、実際の業務内容や職場環境への適合性は別途確認が必要です。

産業医の役割

産業医は「この会社のこの業務に就くことが医学的に適切か」を判断する役割を担います。従業員50名以上の事業所では産業医の選任が義務付けられていますが、50名未満では努力義務にとどまります。産業医がいない場合でも、後述する「地域産業保健センター(地さんぽ)」を活用すれば、無料で産業医への相談・面談を依頼できます。

会社の役割

会社は、主治医意見書や産業医の意見を踏まえた上で、復職可否の最終判断を下します。医学的情報なしに会社が独断で判断することは認められません。逆に、医学的根拠が揃っていれば、主治医が「復職可」と言っていても、産業医が「業務に耐えられない」と判断した場合に復職を見送る決定を下すことは法的に認められています。

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SNS投稿を目にしたときに踏むべき手順

SNS投稿が気になったとき、会社が取るべき手順は明確です。まず医学的確認を行い、次に就業規則に沿って手続きを進め、最後に判断を下します。この順番を守ることが、会社を守ることにつながります。

主治医意見書の提出を求める

まず最初に行うべきは、社員本人の同意を得た上で、主治医に「就労可能性に関する意見書」の提出を依頼することです。会社が主治医に直接連絡することは原則できませんが、本人の同意があれば書面でのやり取りが可能です。このとき、単に「復職できますか」と聞くだけでなく、具体的な業務内容(例:「週5日・8時間勤務」「パソコン作業が中心」「顧客対応あり」など)を伝えた上で意見を求めることが重要です。業務内容を知らずに書かれた診断書は、実態に合わない判断につながりやすいためです。

産業医または地域産業保健センターに相談する

次に、産業医がいる場合は産業医面談を実施します。産業医がいない50名未満の事業所では、各都道府県の労働基準監督署管轄区域に設置されている「地域産業保健センター(地さんぽ)」を活用してください。地さんぽは厚生労働省が設置した無料の相談窓口で、産業医への相談や面談依頼ができます。「産業医がいないから医学的判断を仰げない」という状況は、実は解決できます。

ただし、産業医選任や地さんぽの活用方法については、詳細な判断が必要です。まずはウェルセンス株式会社にご相談いただければ、貴社の状況に応じた具体的な手順をご案内できます。

就業規則の復職手続きに従って最終判断を下す

主治医意見書と産業医(または地さんぽの産業医)の意見が揃ったら、就業規則に定められた復職手続きに従って最終判断を下します。ここで就業規則に復職の手順が定められていない場合は、判断の根拠が曖昧になるため、会社が不利な立場に置かれるリスクがあります。就業規則の整備が急務である理由は次のセクションで詳しく説明します。

確認する相手 確認できること 確認できないこと
主治医 療養の必要性・一般的な社会復帰の可否 その職場・その業務への適合性
産業医・地さんぽ 当該業務への就労可否・職場復帰のタイミング 治療方針・疾患の詳細
会社 復職可否の最終決定・配置・業務調整 医学的判断(あくまで医療の意見を踏まえた上での判断)

就業規則に復職基準が書かれていない会社がすべき対応

労働基準法第89条により、10名以上の事業所は就業規則の作成・届出が義務付けられています。しかし「休職規定はあるが、復職の判断プロセスが書かれていない」という会社は少なくありません。この状態は、会社にとって大きなリスクです。

就業規則に最低限明記すべき内容

復職に関して就業規則に盛り込むべき最低限の項目は、以下のとおりです。復職申請の手続き(誰がいつまでに何を提出するか)、主治医意見書の提出を求める根拠、産業医面談の実施、会社が最終判断を下すこと、休職期間満了時の取り扱い(自動退職か解雇かなど)——これらが明記されていないと、社員から「なぜ復職を認めないのか」と争われた際に会社側の根拠が崩れやすくなります。

就業規則がない・不十分な場合の当面の対応

就業規則の整備には時間がかかります。今すぐ対応が必要な場合は、まず「復職判断フロー」を社内文書として作成し、社員に周知することを優先してください。書面として残しておくことで、判断の根拠を後から説明しやすくなります。並行して、社労士や弁護士に就業規則の見直しを依頼することをお勧めします。

休職期間の上限と期間満了の取り扱い

就業規則には「休職期間の上限(例:勤続年数に応じて3〜12ヶ月)」と「期間満了時の取り扱い」も明記しておく必要があります。期間満了後に就労可能な状態でなければ自動的に退職となる旨を規定しておかないと、無期限に休職が続くケースが生じます。ただし、この規定を設ける際も、社員に不利益変更とならないよう慎重に手続きを踏む必要があります。

SNS確認行為が問題になる前に知っておくべきこと

会社がSNSを確認すること自体が直ちに違法になるわけではありませんが、確認の方法・目的・活用のしかたによっては法的リスクが生じます。無意識に行っている確認行為を一度見直してください。

「見る」ことと「記録・活用」することの違い

公開設定のSNSを個人として目にすることと、会社として組織的にスクリーンショットを保存し、就労判断の証拠として活用することは全く異なります。前者は日常的に起こりうることですが、後者はプライバシー権の侵害(民法上の不法行為)に問われるリスクがあります。特に「休職社員のSNSを定期的にチェックするよう指示していた」という場合は、組織的な監視として問題視されやすくなります。

SNS投稿を知ったときに会社がすべきこと・すべきでないこと

SNS投稿の存在を知った場合、会社がすべきことは「その情報を単独の根拠にせず、医学的確認のプロセスを開始する」ことです。一方、すべきでないこととして、SNSのスクリーンショットを証拠として保存し復職命令や解雇通知に添付すること、「SNSで見たが元気そうだった」と社員を問い詰めること、他の社員にSNSの確認を依頼することなどが挙げられます。これらは、会社側のリスクを高める行為です。

他の社員からの不満への対応

「なぜあの人は休んでいるのに遊んでいるのか」という不満は、職場の士気に影響します。しかし、休職社員の病状や対応方針を他の社員に開示することは、プライバシー保護の観点から原則として行えません。「個人の事情については詳細をお伝えできないが、会社として適切な手続きを踏んでいる」と伝えた上で、チームへの業務負担軽減策を検討することが現実的な対応です。

まとめ

休職中の社員がSNSで活発に投稿していても、それだけを根拠に「就労可能」と判断することは、医学的にも法的にも根拠が薄く、会社にとってリスクのある行為です。就労可能かどうかを判断するには、主治医意見書の取得、産業医または地域産業保健センター(地さんぽ)への相談、就業規則に基づく判断プロセスの実施、という手順を踏くことが不可欠です。

「産業医がいないから医学的判断を仰げない」「就業規則に復職の手順が書いていない」「SNSを見て何となく対応している」——こうした状況は、一人で悩まず、まずは第三者の視点を取り入れることで変えられます。ウェルセンス株式会社では、専任人事がいない中小企業の経営者・兼務人事担当者が直面する休職・復職の課題に対して、具体的な対応の仕組みづくりからご支援しています。貴社の状況にあった対応が知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 休職中の社員のSNSを確認すること自体は違法ですか?

A. 公開設定のSNSを個人として目にすること自体は直ちに違法ではありません。ただし、会社として組織的・継続的にスクリーンショットを収集・記録し、就労判断の証拠として活用する行為は、プライバシー権侵害(民法上の不法行為)に問われるリスクがあります。確認した事実を単独の根拠として使わないことが重要です。

Q. 従業員が50名未満で産業医がいません。医学的な判断を仰ぐ方法はありますか?

A. 全国の労働基準監督署管轄区域に設置されている「地域産業保健センター(地さんぽ)」を活用できます。50名未満の事業所が無料で産業医への相談・面談を依頼できる、厚生労働省が設置した公的な窓口です。また、任意で産業医と契約することも可能です。「産業医がいないから対応できない」という状況は解決できます。

Q. 主治医が「復職可」と言っているのに、会社が復職を拒否することはできますか?

A. できます。主治医の判断はあくまで「一般的な社会復帰の可否」を示すものであり、特定の職場・業務への適合性を保証するものではありません。産業医が「当該業務に就くことは医学的に適切でない」と判断した場合、その意見を踏まえて会社が復職を見送ることは法的に認められています。ただし、その判断は医学的根拠に基づくものでなければなりません。

Q. 就業規則に復職手続きが書かれていません。今すぐ対応できることはありますか?

A. まず「復職判断フロー」を社内文書として作成し、社員に周知することを優先してください。「復職申請書の提出」「主治医意見書の提出」「産業医面談の実施」「会社による最終判断」という流れを書面で定めておくだけでも、判断の根拠を示しやすくなります。並行して、社労士や弁護士に就業規則の改定を依頼することをお勧めします。

Q. 休職社員のSNS投稿に対して他の社員が不満を持っています。どう対応すればよいですか?

A. 休職社員の病状や対応方針をプライバシー保護の観点から詳細に開示することは原則できません。「個人の事情については詳細をお伝えできないが、会社として適切な手続きを踏んでいる」と伝え、その上でチームの業務負担の軽減策を具体的に検討することが現実的な対応です。不満の根本にある「自分たちへの負担が増えている」という点に向き合うことが、チームの士気を保つ上で重要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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