「育休に入る社員が出たけど、今月の社会保険料はどうすればいい?」――人事担当を兼務している方なら、こうした疑問が突然降ってくることがあるはずです。育休中の社会保険料免除は制度として知っていても、開始月・終了月の扱いや、2022年10月に改正された新しいルール、申請書類の書き方まで正確に把握できている方は多くありません。対応を誤ると、保険料の徴収漏れや過剰免除が生じ、後から修正対応に追われることになります。この記事では、実務担当者が迷いやすいポイントを順を追って整理します。
育休中の社会保険料免除、基本のルール
育休中の社会保険料免除は「育休期間中、月末時点で育休中であるかどうか」が判定の基本軸です。開始月と終了月で扱いが異なる非対称なルールになっているため、ここをまず正確に理解することが出発点になります。
開始月は原則免除される
育休を開始した月は、月末時点で育休中であれば、その月の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除されます。たとえば7月15日から育休を開始した場合、7月31日時点で育休中であれば、7月分の保険料は免除対象です。「月の途中から始まったから半月分だけ払う」という計算にはならない点に注意してください。保険料は日割り計算をしないのが原則です。
終了月(復職月)は原則免除されない
育休が終了した月(復職した月)は、原則として社会保険料の免除対象外です。免除が終わるタイミングは「育休終了日の翌日が属する月」から徴収が再開されます。具体的には、8月20日に育休を終了して復職した場合、8月分の保険料は徴収されます。「育休中だった期間があるから少し安くなる」とはならない点が、担当者が最も誤解しやすいポイントです。
短期育休の扱い(2022年10月改正)
2022年10月の健康保険法・厚生年金保険法改正により、同じ月に育休が開始して終了する「短期育休」についての取り扱いが整理されました。同一月内に開始・終了する育休であっても、その月に14日以上の育休取得があれば、当該月の月額保険料が免除されます。たとえば、7月5日から7月25日(21日間)の育休であれば、月末をまたがなくても14日以上であるため、7月分の月額保険料は免除対象になります。
賞与月と育休が重なる場合の判定方法
賞与にかかる社会保険料(賞与保険料)の免除は、月額保険料とは別のルールで判定されます。2022年10月改正後は「連続して1か月を超える育休取得中に賞与支給月の末日が含まれる場合のみ免除」という条件に変わっています。
改正前後で何が変わったか
改正前は「育休中に賞与が支給された場合は保険料免除」という比較的シンプルな理解で運用できていました。しかし改正後は、短期育休中に賞与が支給されても、条件を満たさない限り賞与保険料は免除されません。「育休中なのに賞与から保険料を引くのか」という疑問が社員から出ることもありますが、制度として正しい運用です。
賞与保険料が免除される条件
賞与保険料が免除されるためには、以下の2つの条件を同時に満たす必要があります。
- 育休取得期間が連続して1か月を超えていること
- 賞与支給月の末日が育休期間中に含まれていること
たとえば、6月1日から8月31日まで育休を取得している社員に6月末に賞与が支給された場合、育休期間は連続して1か月を超え、賞与支給月(6月)の末日(6月30日)が育休期間中に含まれるため、賞与保険料は免除されます。一方、2週間のみの短期育休中に賞与が支給された場合は、連続1か月超の要件を満たさないため、免除されません。
給与計算ソフトの設定確認が重要
改正前のロジックがシステムに残っていると、賞与保険料を誤って免除してしまうリスクがあります。育休取得者が出たタイミングで、給与計算ソフトの賞与保険料の設定が最新の法令に対応しているかどうかを確認してください。ソフトベンダーのリリースノートやサポート窓口への確認が有効です。
男性社員が育休を取る場合のポイント
配偶者(妻)の出産に伴い、男性社員が育休を取得する場合も、社会保険料免除の判定ロジックは女性社員の育休と基本的に同じです。ただし、産後パパ育休には固有の運用上の注意点があります。
産後パパ育休とは
2022年10月に新設された産後パパ育休(育児・介護休業法に基づく出生時育児休業)は、子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)、2回に分割して取得できる制度です。通常の育児休業とは別に取得でき、有期雇用労働者も一定の要件を満たせば取得可能です。
産後パパ育休の保険料免除判定
産後パパ育休中の社会保険料免除は、通常の育休と同じロジックで判定されます。月末時点で育休中であれば月額保険料は免除、同一月内に完結する場合は14日以上の取得があれば免除という2022年10月改正の特例もそのまま適用されます。たとえば、子の出生翌日から14日間の産後パパ育休を取得し、その期間が月末をまたがない場合でも、14日以上であれば当月の月額保険料は免除対象です。
分割取得時の申請漏れに注意
産後パパ育休を2回に分けて取得する場合、取得ごとに申請手続きが必要になるケースがあります。1回目の育休申出書を提出していても、2回目の取得分について変更・追加の届出が必要かどうかを確認してください。提出先(日本年金機構または加入している健康保険組合)によって取り扱いが異なることがあるため、事前に確認しておくことを推奨します。
育児休業等取得者申出書の記載方法と提出手順
社会保険料免除を受けるには、事業主が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構(または加入している健康保険組合)に提出することが必要です。この手続きを正確・タイムリーに行うことが、免除の適用と給与計算の正確性を守ることにつながります。
提出先と提出タイミング
提出先は、健康保険の加入先によって異なります。協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入している場合は、所轄の年金事務所(日本年金機構)に提出します。健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合と年金事務所の両方に提出が必要なケースもあります。加入先に事前確認をしておきましょう。提出タイミングについては、育休開始後に速やかに行うことが実務上の基本です。月をまたいで給与計算が確定してしまう前に提出できると、遡及処理の手間が省けます。
記載時に特に注意すべき項目
書類の記載ミスで差し戻しが多いのは、以下の項目です。
| 記載項目 | よくあるミス・注意点 |
|---|---|
| 育休開始年月日 | 実際の開始日(会社が承認した日付)と一致しているか確認 |
| 育休終了(予定)年月日 | 子の生年月日から算出した最長期限と整合しているか確認 |
| 子の生年月日 | 出生届と一致しているか。男性社員の場合は配偶者の出産日を確認 |
| 被保険者との続柄 | 産後パパ育休の場合、出生時育児休業である旨の記載が必要なケースあり |
延長・短縮が生じた場合は変更届を提出
保育所への入所が決まらず育休を延長する場合や、予定より早く復職する場合は、「育児休業等取得者申出書(変更)」を別途提出する必要があります。この変更届を出し忘れると、免除期間が誤って処理されたままになります。特に、社員から「来月から早めに戻りたい」と連絡があった際は、口頭の了承だけで終わらせず、変更届の手続きをセットで進めるフローを社内に作っておくことを検討してください。
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専任人事がいない企業での運用ミスを防ぐ工夫
専任の人事担当者がいない中小企業では、育休対応が発生するたびに担当者がゼロから調べ直すことになりがちです。ミスを防ぐためには、チェックリストと確認フローの整備が現実的な対策です。
最低限持っておくべきチェックリスト
育休取得者が出たタイミングで確認すべき項目を事前にリスト化しておくと、対応漏れを防ぎやすくなります。まず、社員から育休取得の申出を受けたら、子の生年月日・育休開始日・育休終了予定日を書面で確認します。次に、申出書を作成し、提出先(年金事務所・健康保険組合)に速やかに提出します。そして、給与計算ソフトに免除期間を正しく設定し、賞与月が重なる場合は賞与保険料の判定を別途行います。最後に、延長・短縮が生じた場合の変更届提出フローを担当者間で共有しておきます。
自社の健康保険加入先を確認しておく
健康保険組合に加入している場合(主に大企業や特定業種の中小企業)は、組合独自の書式や手続きが定められていることがあります。協会けんぽ加入の場合は、日本年金機構の書式・手続きがそのまま適用されます。自社の加入先が協会けんぽか健康保険組合かを確認し、不明な場合は年金事務所またはハローワークに問い合わせることが確実です。また、育休中の給与が発生する場合(一部復帰・在宅勤務等)は、育休の扱いや免除可否についての判断が複雑になるため、専門家への相談を検討することを推奨します。
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まとめ
育休中の社会保険料免除は、開始月が原則免除・終了月が原則非免除という非対称なルールが基本です。2022年10月改正により、同一月内完結の短期育休には14日以上で月額保険料を免除する特例が加わり、賞与保険料は連続1か月超の育休かつ月末が育休期間内に含まれる場合のみ免除となりました。産後パパ育休を含む男性社員の育休も、判定ロジックは同じです。手続き面では、育児休業等取得者申出書の正確な記載・タイムリーな提出、そして延長・短縮時の変更届提出が実務上のポイントです。
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よくある質問
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