傷病手当金受給中の扶養切り替え、3つの判断ポイント

傷病手当金受給中の扶養切り替え、3つの判断ポイント 休職・復職対応
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「休職した社員の奥さんから、扶養に入りたいと連絡が来たけど、傷病手当金をもらっている間って扶養に入れるの?」——こんな問い合わせに、すぐ答えられる中小企業の人事担当者はほとんどいません。傷病手当金が収入に含まれるのか、月額いくらなら扶養に入れるのか、任意継続と扶養のどちらが得なのか。判断ポイントがわかれば、迷わず対応できます。この記事では、傷病手当金と扶養認定の関係に関する実務で使える3つの判断軸を中心に、手続きの流れまでわかりやすく整理します。

傷病手当金は「収入」として扱われる

扶養認定の年収130万円ルールの基本

配偶者の健康保険の被扶養者(扶養家族)として認定されるには、年間収入が130万円未満(60歳以上・障害者の場合は180万円未満)という要件を満たす必要があります。この「収入」には、給与だけでなく傷病手当金も含まれます。「給付金だから収入じゃないはず」と思われがちですが、健康保険の扶養認定においては継続して受け取れる見込みの金銭給付はすべて収入としてカウントされます。

月額で判定するという実務上の重要ルール

扶養認定では、過去1年間の実績収入ではなく、認定時点以降に継続して受け取ることが見込まれる収入で判断します。計算方法は「月額×12か月」です。たとえば傷病手当金が月額10万円であれば、年換算は120万円となり130万円未満のため、扶養認定を受けられる可能性があります。一方、月額108,334円以上(年換算130万円以上)であれば、扶養には入れません。

具体的な境界ラインは月額108,333円以下です。標準報酬月額が高かった社員は傷病手当金の額も高くなる(標準報酬日額の3分の2が支給される)ため、受給中はこの基準を超えるケースも少なくありません。まず実際の傷病手当金の月額を確認することが最初のステップです。

健保組合によって独自基準がある場合も

協会けんぽ(全国健康保険協会)は厚生労働省の通知に準じた標準的な基準を採用していますが、大企業が設立している健康保険組合(組合健保)は独自の認定基準を設けているケースが多くあります。たとえば「月額108,333円以下でも傷病手当金受給中は扶養不可」とする組合もあります。配偶者が組合健保に加入している場合は、必ず配偶者の勤務先または健保組合に直接確認してください。

扶養に切り替えるべき3つの判断ポイント

判断ポイント1:月額が基準を下回っているかどうか

判断の出発点は、傷病手当金の月額が108,333円以下かどうかの確認です。傷病手当金の計算式は「支給開始前12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2」です。健保から届く支給決定通知書か、会社の給与担当者に確認すれば月額はわかります。この金額が基準以下であれば、受給中でも扶養申請できる可能性があります。

判断ポイント2:受給が終了するタイミングを見逃さない

傷病手当金は最長1年6か月で受給が終了します。受給終了後は収入がゼロになるため、扶養認定の条件を満たすことができます。受給終了のタイミングは復職の見通しが立たない段階でも必ず訪れます。「受給終了=扶養に切り替えられるタイミング」と覚えておきましょう。受給終了後は速やかに手続きを進める必要があり、配偶者の勤務先への届出は事由発生から5日以内が原則です。

判断ポイント3:復職したときの扶養解除も忘れずに

復職して給与が支払われるようになれば、扶養の収入要件を超える可能性が高くなります。復職月から給与が発生した場合、復職日が扶養解除の事由発生日となります。扶養に入ったまま復職して給与をもらい続けると、健保から遡って取り消しを求められるケースもあります。復職が決まった時点で配偶者の勤務先に被扶養者異動届(削除)を提出するよう、社員本人に案内しておくことが重要です。

任意継続か扶養か、保険料で比較する

任意継続の保険料の特徴

会社を退職した場合、または休職中でも一定の条件を満たす場合、これまで加入していた健康保険を「任意継続」という形で最長2年間継続できます。ただし、在職中は会社と折半していた保険料を全額自己負担することになり、負担額はおよそ在職時の2倍です。保険料には上限があり(協会けんぽの場合、2024年度の標準報酬月額上限は30万円)、元の給与が高かった人ほど保険料が圧縮されます。

扶養に入れば保険料の自己負担はゼロ

配偶者の被扶養者として認定されれば、自分自身の保険料負担はかかりません。配偶者の保険料が増えるわけでもないため、家計全体でみると大きなメリットがあります。傷病手当金の月額が108,333円以下であれば、受給中であっても扶養申請が可能な場合があるため、「受給中だから任意継続するしかない」と決めつけず、まず月額を確認することが大切です。

傷病手当金は在職時の健保から支給される

ひとつ重要な注意点があります。傷病手当金は、休職開始時点で加入していた健康保険から支給されます。任意継続に切り替えても、すでに受給が始まっている傷病手当金は継続して受け取ることができます。一方、任意継続後に新たに発症した疾病については傷病手当金が支給されません。傷病手当金の受給継続を目的として「任意継続にすべきかどうか」を検討する必要はなく、保険料負担の観点だけで判断してかまいません。

手続きの流れと必要書類を整理する

受給中に扶養申請する場合の手順

傷病手当金の月額が基準以下で、受給中に扶養申請するケースです。まず、現在の傷病手当金の月額がわかる書類(支給決定通知書など)を準備します。次に、配偶者の勤務先の人事担当者に連絡し、被扶養者異動届と傷病手当金の支給額証明(健保発行)を提出します。その後、配偶者の健保が認定審査を行い、認定されれば新しい保険証が発行されます。

社員が在職中のまま休職している場合は会社の健康保険に引き続き加入していますが、退職して健保を脱退する場合は会社が発行する資格喪失証明書が必要になります。このタイミングで空白期間が生じないよう、脱退日と扶養認定日を揃える調整が必要です。

受給終了後に扶養申請する場合の手順

傷病手当金の受給が終了してから扶養申請するケースです。まず受給終了を確認する書類(支給終了の通知や不支給決定通知)を入手します。次に、収入がなくなったことを証明する書類とともに、配偶者の勤務先へ被扶養者異動届を提出します。受給終了日の翌日が「収入ゼロになった日」として扶養認定の基準日になります。

「受給終了後しばらく経ってから手続きしても遡れるか」という質問をよく受けますが、扶養認定は原則として事由発生日から5日以内の届出が求められます。時間が経つと遡及認定が認められないケースもあるため、受給終了が見えてきた段階で早めに配偶者の勤務先に相談を始めることをおすすめします。

書類準備の役割分担を明確にする

手続きで混乱しやすいのが「誰が何を用意するか」という役割分担です。整理すると、会社側が用意するのは資格喪失証明書(退職・脱退の場合)、社員本人または健保が用意するのは傷病手当金の支給決定通知書や支給額証明、配偶者が用意するのは被扶養者異動届(配偶者の勤務先の書式)です。会社の担当者として押さえておくべきは「資格喪失証明書の速やかな発行」と「社員本人への手続き案内」の2点です。

よくあるミスと対処法

二重加入と空白期間が起きる原因

最も起きやすいトラブルが、社会保険の「空白期間」と「二重加入」です。空白期間とは、会社の健保を脱退した日と、配偶者の扶養に認定された日の間に保険のない期間が生じてしまうケースです。逆に二重加入は、会社の健保がまだ有効な状態で扶養認定を受けてしまう場合に起こります。いずれも、会社側の脱退手続きと配偶者側の加入手続きのタイミングがずれることで発生します。

対処法としては、会社の脱退日(資格喪失日)を明確にした上で、その翌日を被扶養者認定の開始日とするよう配偶者の勤務先と連携することが重要です。

国民健康保険には「扶養」がない

配偶者が国民健康保険(自営業者や退職者が加入)に加入している場合、注意が必要です。国民健康保険には「被扶養者」という制度がなく、家族全員がそれぞれ被保険者として加入することになります。この場合、保険料は世帯の収入や人数に応じて計算されます。配偶者の加入している保険の種類を最初に確認することで、対応の方向性が変わります。

まとめ

傷病手当金受給中の扶養認定で迷ったときは、まず「月額108,333円以下かどうか」「受給が終了するタイミングはいつか」「配偶者の加入保険は協会けんぽか組合健保か国保か」の3点を確認することが出発点です。傷病手当金は収入として扱われますが、月額が基準以下であれば受給中でも扶養申請は可能です。また、受給終了後は速やかに手続きを進めないと空白期間が生じるリスクがあります。任意継続か扶養かの選択は、保険料の自己負担の有無で判断するのが基本で、傷病手当金の受給継続には影響しません。

「自社の状況に当てはめるとどう判断すればいいか」「配偶者の健保への確認の仕方がわからない」など、具体的なケースでお困りの場合は、お気軽にウェルセンス株式会社までご相談ください。休職・復職支援と社会保険の実務に精通した担当者が、貴社の状況に合わせた対応を一緒に考えます。

よくある質問

Q. 傷病手当金を受給中でも、配偶者の扶養に入れますか?

A. 傷病手当金の月額が108,333円以下(年換算130万円未満)であれば、受給中でも被扶養者として認定される可能性があります。ただし、配偶者が加入している健保の種類によって独自基準が設けられている場合があるため、配偶者の勤務先または健保組合に必ず確認してください。

Q. 任意継続にすると傷病手当金が受け取れなくなりますか?

A. 在職中(休職中を含む)に支給が始まった傷病手当金は、任意継続に切り替えた後も継続して受け取ることができます。任意継続後に新たに発症した疾病については傷病手当金の対象外になりますが、すでに受給中の場合は影響ありません。

Q. 傷病手当金の受給が終了した後、扶養手続きはいつまでにすればいいですか?

A. 原則として、扶養認定の事由が発生した日(受給終了日の翌日)から5日以内に配偶者の勤務先へ被扶養者異動届を提出することが求められます。期間が過ぎると遡及認定が認められない場合があるため、受給終了が近づいた段階で早めに動き始めることをおすすめします。

Q. 配偶者が国民健康保険に加入している場合、扶養に入れますか?

A. 国民健康保険には「被扶養者」という概念がないため、扶養に入ることはできません。休職した社員が自分自身で国民健康保険に加入するか、または会社の健保を任意継続するかを選択することになります。保険料を比較した上で、経済的に有利な方を選ぶとよいでしょう。

Q. 社員が復職したとき、扶養解除の手続きは誰が行いますか?

A. 扶養解除の手続きは、配偶者の勤務先の人事担当者が行います。会社としては、復職した社員本人に「復職日を配偶者の勤務先に連絡し、被扶養者異動届(削除)を提出するよう配偶者に依頼してください」と案内することが重要です。手続きを忘れると、給与をもらいながら扶養に入り続けるという状態になり、後から健保に遡及取り消しを求められるリスクがあります。

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